「ピアスにフード」をはじめとして、アンコールでは計4曲を聴かせてくれたキズがこの夜のラストソングとして提示してくれたのは「My
Bitch」と名付けられた初公開にしてリリース予定未定のバラード。
思うに、この「My
Bitch」というタイトルについては意図して露悪的な言葉を使ったと推測出来るフシがあり、この場で聴いた感覚では生々しさの滲む真摯なラヴソングだと捉えることが出来る一方で、そこにはキズらしい暗喩も含まれているように感じられた。〈雨が降るなら
僕がきっとそばに 死ぬ時も
君がきっとそばに〉というくだりからはどこか「雨男」とのつながりも浮かび上がるせいか、これはむしろキズが現在地点で歌うひとつの声明になっていると受け止めた方がしっくり来るというか…ともあれ、ここはいずれこの曲が正式発表される際に詳細が解明されることを待ちたい。
かくして、全曲をパフォーマンスし終わったあとのメンバーたちは全員が確かな手応えを感じていたようで、reikiがはしゃぎながらきょうのすけに抱きついたり、ユエは柔和な表情で場内を見わたしたり、来夢は半ばへたりこむようにステージに座っていたのだが、そんな彼らの姿からうかがえたのは良い意味でのやりきった感。
「ステージで死んでもかまわない、ステージに全てを賭ける、っていう姿勢。それが僕にとってはVISUAL
ROCKの本質なんです」
以前に来夢はインタビューでこのような発言もしていたことがあり、キズは今回のNHKホール公演[残党]で、その精神をこれまで以上の次元で実践することになったのだろう。来たる6月16日にはSpotify
O-EASTでの[キズ BLOG MAGAZINE 限定GIG 「ELISE」-Members
only-]、梅雨が明けるかどうかのタイミングとなる7月17日
には日本青年館ホール単独公演[君の涙で遊んでいたい]、また8月26日には豊洲PITでのライヴも決定したという今、ここで彼らが得た経験値は相当に大きい。
雨が降ろうと、槍が降ろうと、あるいは世界のどこかで鉛の粒が降りやまずとも。残党たちが全身全霊を賭して臨む聖戦が、もしここからいっそう熾烈さを増していくことになったとて、キズの4人はあの大きな旗を翻しながらこれからもVISUAL
ROCKの本質を貫き、その志を全うしていくことになると確信する。何故なら、あの「My
Bitch」で歌われていたように。彼らは〈もう今更 後戻りはできない〉のだから。
取材・文◎杉江由紀
写真◎尾形隆夫、小林弘輔
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