SUGIZO 聖誕半世紀祭 HALF CENTURY ANNIVERSARY FES.

6曲目は「ENOLA GAY RELOADED」。この曲は、ヴィジュアル面でもしっかりとメッセージを伝えた。原爆爆発のシーンなど、核に関する映像が流れる中、SUGIZO自身も曲の間に「NO NUKES」と記された旗を振った。そして曲が終わった瞬間に「NO MORE NUKES PRAY THE GUITAR」のメッセージがスクリーンに映し出された。
そしてトランシーなラウドロック「TELL ME WHY?」で本編が終了。

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オーディエンスは当然アンコールの拍手を送っていたが、奇蹟のようなことが起きた。
数人のオーディエンスが携帯のライトを照らしながら♪ハッピーバースデー・トゥー・ユー♪を歌い出した。最初は数える程度の人数だったが、歌が2巡目に入ることには会場全体が携帯ライトを翳し、♪ハッピーバースデー・トゥー・ユー♪を歌っている。
そんな奇蹟的な景色の中、SUGIZOがステージに登場。本当に嬉しそうだ。そして、意外なことをしゃべり出した。実はSUGIZOが誕生日にライヴをやるのがこれが初。しかも、誕生日にライヴをやるのは本当に嫌だったという。でも、50歳なので、最初で最後、誕生日にライヴをやろうと意を決したんだそうだ。「でも、長生きをしてみるもんだね」と、穏やかに語るSUGIZO。普段は自分は何のために生きているのか、自分は本当にこの世界に必要なのか苦悩しているそうだが、「ライヴでステージに立つと、メンバーやオーディエンス…自分には仲間がいると感じる。幸せです」と語った。が、その次の瞬間、「でも、世界に目を向けると戦禍に苦しんだり、難民になってさまよっている人達がいる。僕らは日本にいて幸せだけど、是非世界にも目と心を向けて欲しい」とSUGIZOらしいメッセージを放った。

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そして、ここで、突然lynch.の葉月が<フラワー・オブ・ライフ>模様のバースデーケーキを持ってステージに登場。葉月の呼び込みでsukekiyoもlynch.のメンバーもステージに登場し、会場の全員で改めて♪ハッピーバースデー・トゥー・ユー♪を歌い、SUGIZOがケーキのローソクを吹き消し、会場からこの日一番の祝福の拍手が起きた。

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更に、原田環境大臣がステージに登場し、SUGIZOに感謝状を寄与した。これはSUGIZOが水素エネルギー及び再生可能エネルギーの発展に貢献していて、この日のライヴもSUGIZO関連の演奏に関しては楽器用電源を水素エネルギーで賄っていた。とは言え、権力に対してアンチなSUGIZOが大臣賞を受けたのは正直意外な感じもした。ただ、受賞の直後ステージで「感謝状を受け取るかどうか正直迷いましたが、感謝状を受けることが広まることによって、再生可能エネルギーの必要性や、水素社会の実現に向けて、世の中のブースターになれればと思い、受取ました」とその素直な気持ちを語り、会場からは温かい大きな拍手が起きた。

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更にアンコールで着用しているロングのカラフルなジャケットについてもSUGIZOが語りだした。SUGIZOが着ているジャケット〝エデン″にはイラクの小児癌の子供たちが描いた絵がプリントされているという。この子供たちは、湾岸戦争、イラク戦争の時の劣化ウラン弾のために癌になった子供たちだ。しかも既に亡くなっている子供もいるという。SUGIZOは改めて、争いをなくすこと、そしてエネルギーシフトを行うことを念頭に邁進すると誓い、アンコールでは最高のサイケデリックトランス×ファンクチューン「DO-FUNK DANCE」と、MAIKOのピアノをフィーチャーした静かで神秘的な「Synchronicity」を全身全霊で演奏し、聖誕半世紀祭の初日は終演した。

実はこの日、リハーサルからSUGIZOに密着した。SUGIZOのリハーサルはスパルタリハと自他共に認めるストイックなリハで、納得できない箇所に関しては声を荒げてでも厳しく指導する。SUGIZOは自分にも他人にも厳しく、よりいいものを徹底的に要求するミュージシャンだ。
ただそれは、自分のためだけではなく、会場に足を運んでくれるオーディエンスのためでもあり、そして、この地球の未来を少しでもよくするためのものでもあるようにこの日のライヴを観て感じた。
全身全霊とはSUGIZOのためにある言葉のように感じた日だった。

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Text by ジョー横溝

DAY 2

SUGIZO

SUGIZOの誕生日当日となる7月8日(月)は、モジュラーシンセサイザー奏者の第一人者であるHATAKENとSUGIZOのデュオがオープニングアクトを務めた。開場BGMを奏でていたHATAKENの温めたステージに、SUGIZOが合流してセッションはスタート。生命の神秘を思わせる映像と連動し、HATAKENのシンセが繰り出す宇宙的な音色と、SUGIZOの宇宙的ギター、リボンコントローラーで操作するモジュラーシンセの音色とが、まるで交信し合うように掛け合う。会場は瞬時にアンビエントな異空間へと塗り替えられ、観客は息を呑んで立ち尽くした。

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BGMでなだらかに繋げられ、1バンド目のTK from 凛として時雨が登場。細かく鋭利なカッティングを筆頭に、超絶技巧ギタープレイをまるで息をするように自在に繰り出しながら、感情迸るハイトーンで歌唱する孤高の異才TK。ドラムのBOBOら抜群のリズム感を誇るサポートメンバーらと共に、イメージ喚起力に富んだ映像と照明を駆使しつつ、1曲目の「Fantastic Magic」から、緩急のついた小気味よい歌と演奏で、驚きを与え続けていく。TKは、「SUGIZOさん50歳の誕生日おめでとうございます。今日は少年の頃の僕には夢のようなイベントです」とMCで語り、兼ねてからリスペクトを公言してきたSUGIZOへの敬愛を示した。「katharsis」は4つ打ちのダンスビートに始まり、予想不能のめくるめく展開を見せるドラマチックな楽曲。美しいメロディーをウルトラハイトーンで切々と歌う「Signal」では、ギターソロの伸び渡る音づくりに、SUGIZOの美学の影響を感じ取れた。ヴァイオリン、ピアノ、それぞれのプレイが生き物のようにうごめきながら怒涛の展開を見せていく「film A moment」で締め括ると、会場は熱を帯びた歓声と大拍手に包まれた。圧倒し、純粋な音楽的快感を味わわせてくれる刺激的なステージだった。

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続いて、SUGIZOとは25年来の付き合いであるGLAYのTAKUROが、ソロ名義でJourney without a map BANDを従えて登場。GLAYとは全く異なるジャジーな音楽性に挑戦中で(それはSUGIZOがTAKUROにジャズをリコメンドした影響でもあるのだが)、音と音との対話をゆったりと味わうような、心地よい空間をこの日も冒頭から生み出していた。TAKUROはSUGIZOに捧げる曲を書いて来たと言い、「スギちゃん、生きてなさい」「SUGIZOのハワイ旅行」などと名付けた楽曲を披露。自分のことは後回しで世界平和や社会問題に心を傾ける先輩に、ユーモア満載の音楽で愛を贈った。「なんだかんだ言って、僕が一番のSUGIZOさんファンですよ!」との言葉からSUGIZOを招き入れると、まずはハグ。「僕が一番大事にしている曲を一緒に」と「Journey without a map」をセッションした。

SUGIZO

哀切を帯びたブルージーなロックナンバーで、TAKUROが音楽人生について問い直した自叙的楽曲。SUGIZOの全身全霊のギターソロに、TAKUROはそっと寄り添うようなフレーズを重ね、TOSHI NAGAIのドラムが高まりを見せていくと、「もっとお祝いしたいって人がいるので」と呼び込んだのは、TERU、さらには事前告知されていなかったHISASHI、JIRO。会場は沸き立ち、TERUは「50歳おめでとうございます!」と朗らかに祝い、GLAYの「誘惑」を大所帯で賑やかにセッション。HISASHIギターソロの直前に「カモーン、SUGIZO!」とTERUにコールされ、ギュインと唸るSUGIZO印のサウンドを響かせた。「ハッピーバースデー、SUGIZO!」とTERUが再度叫びステージから送り出すと、GLAYメンバーはそのまま残って「彼女の“Modern…“」を披露し、4人は前列へ。「誘惑」の際には後方で守りを担っていたJIROも、飛び跳ねながら全身でこの場を楽しんでいる様子。GLAYというバンドの温かい人柄が隅々から伝わってくるような、一連のパフォーマンスだった。

SUGIZO

青いスクリーンに白い翼が浮かび上がり、レーザーと紫のスモークが立ち上る中、SUGIZO COSMIC DANCE QUINTETのアクトがいよいよスタート。右手を挙げてバルカンポーズを取ると、オーディエンスはそれに応える。「改めましてSUGIZOです。皆今日はありがとう」と挨拶、出演者への謝辞に続き、「飛ばして行ける? 誕生日だろうが関係ない。アゲアゲで、皆さんついて来られますか?」と挑発し、咆哮するようにギターを一弾き。右手を挙げて振り下ろすと、真っ白な光に切り替わり、「禊」がスタート。〝SUGIZO 聖誕半世祭″とのタイトルが大きくスクリーンに出現すると、会場からはどよめきが起こった。まるでキレ味の鋭い刀を振り下ろすような、気迫と殺気に満ちたギターサウンド。よしうらけんじ(Per)が前へ転がり出るようにやってきて、ジャンベをプレイ。SUGIZOはギターを掻きむしり、向き合って髪を振り乱す。

SUGIZO

「TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA」の乱れ弾くギターソロ、「NEO COSMOSCAPE」でよしうらと入れ替わり強打したパワフルなパーカッション、SUGIZOはいついかなる瞬間も全霊を掛けて音を鳴らしていた。言葉通りアゲアゲを実現するため、MaZDA(mani)、komaki(Dr)もハンドクラップを先導するなど、果敢に煽っていたのも印象的。「FATIMA」では、SUGIZOはゆったりと身を揺らしながら艶やかなヴァイオリンの音色を響かせ、海中で身をくねらせる人魚のようなダンサーの映像も相まって、幻想的な世界へ。VJ ZAKROCKが手掛ける映像、ステージと客席の境を超えて大胆に放たれるレーザー、照明の絡み合う視覚効果はすさまじく、3Dアートの一部に自分がなったような空間没入感があった。

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