Sting、2年振りの日本ツアーが福岡よりスタート

続いてまたもアウトロに重なるようにエキゾチックなイントロに導かれて彼の90年代キャリアを締め括るに相応しかった大名曲「デザート・ローズ」へ(『BRAND NEW DAY』収録)。
白光のバックライトに照らされて両手を挙げるSTINGのシルエットが眩い!ここにきてヴォーカルはますます色気を帯び、ミステリアスな曲の雰囲気を相まってオーディエンスを完全にノッウアウト。
ホント、参りました!一方で荘厳なシンセサイザーを中心とした重厚なサウンド・プロダクションによるハードなロック・アレンジは、このバンドが持つポテンシャルの高さを見事に物語っていました。
曲終わりからほどなくしてジョシュのスネア・ドラムがカットイン…そう、「見つめていたい」(「EVERY BREATH YOU TAKE」/『SYNCHRONICITY』収録)。
エッ!もうこの曲やっちゃうの?ということはライヴも終わりが近いの??というさびしい予感をこらえながら、この「80’s BEST SINGLE楽曲(1983年第26回グラミー賞最優秀楽曲)」をかみしめる様にオーディエンスの皆が聴き入ります。
エンディングで再びメンバーの紹介を挟み、サビのフレーズのリフレイン。
この時間が永遠に終わらなければいいのに。。。という切なる願いは叶わず、やっぱり終わりは来てしまいます。ここまでノンストップで一気に聴かせる進行で本当に“アッという間”に本編終了。
「ほんの一瞬、夢を見ていたのか?」と思えるほど「秒速」で時が過ぎたような不思議感覚に。何だか身体も気持ちもフワフワしていました。

写真:田中紀彦

ほどなくして再びメンバーが登場、間延びすることなく高揚感が残った状態でのアンコールへ。
ここからは問答無用の鉄壁のレパートリー!まずは「キング・オブ・ペイン」から(『SYNCHRONICITY』収録)。イントロでは原曲のスチュワート・コープランドによる木琴の代りにルーファス・ミラーが奏でるミュート・ギターによるニュー・アレンジが施されていました。
「見つめていたい」と共にもう何百回と耳にしてきた曲ですが、やっぱりライヴでの味わいは格別。
ギター・ソロもきっちりとドミニク・ミラーがキメてくれます!続いてドミニクによる「ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ」というリフが。「ロクサーヌ」!(『OUTLANDS D’AMOUR』収録)。
おそらくSTINGのレパートリーの中で「最もキーが高い」曲のはずなのに、まぁ相変わらずよく声が出ること!!今月初めに68歳になったとは、とてもとても思えない「強靭なる声帯」にはただただ驚くばかりです。
続くは同じくザ・ポリスの1stアルバム冒頭を飾っていた「ネクスト・トゥ・ユー」。やんちゃなパンク・ロッカーよろしく、でも軽~く「大人の余裕」でサラリとやるあたりが彼らしいスマートさ。どこから見ても聴いてもカッコよくしかない「STINGの存在」って何なのでしょうね?
「サンキュー、フクオカ~ユーアー・ビューティフル・オーディエンス」と言葉を発してからベースからアコースティック・ギターに持ち替えて、いよいよラスト曲の定番である「フラジャイル」へ(『…NOTHING LIKE THE SUN』収録)。
あぁ、本当にライヴが終わってしまう。。。という気持ちに襲われながらも本編ラストの「見つめていたい」の時と同様に全オーディエンスが彼の歌声・音楽とその姿を静かながらも熱く見聴きする様はとても感動的で美しい光景でした。
「ドモアリガトウ~!See You Again,Good Night!」と言ってステージ袖に帰っていく「真っ赤なTシャツ姿」が変わらず眩しかったです!!
14年という長い年月を経て実現した待望の再来福公演は「ジャパン・ツアーの初日」を飾るに相応しい120点満点の思い出に深く残るライヴとなりました。
曲間の無駄なブランクやMCを入れることが全く無く、タイトに進行するライヴ構成をはじめとして。
大型ビジョンや派手なセット・照明も必要とせず「音楽そのもの」とそれを「演奏」し「歌う」8人のミュージシャンが正面からシンプルに音楽を届けるだけで、ライヴとは充分に感動できる音楽芸術の形なんだな、という事を今回のSTINGのライヴで教えてもらったような気がします。明日からの幕張2公演、12日の仙台公演、そして15日の大阪公演と進んでいくジャパン・ツアー。
もし今、迷っている方がいらっしゃるのであれば「絶対にご覧になること」をオススメします!STINGは誰も疑う余地のない真の天才ミュージシャンの一人だと思います。彼と同じ時代に生きて彼の音楽を享受できることの幸せを心の底から感じています。

テキスト:松田康宏

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