圭(BAROQUE)

圭(BAROQUE)インタビュー

現在の体制なってリリースした『PLANETERY SECRET』から約4年、遂にニュー・アルバム『PUER ET PUELLA』をリリースしたBAROQUE。アルバムを提げたツアー『THE BIRTH OF LIBERTY』を開催中にもかかわらず、圭(Gt)より『PUER ET PUELLA』を創造するまでの軌跡、また約10年振りのソロ・アルバム『4 deus.』がもたらしたものまでを語ってもらった。

ー 既に『THE BIRTH OF LIBERTY』を開催中ですが、このツアーでのサポートメンバーに、複数のサポート・メンバーがあるのは贅沢な楽しみですよね。

ポジティヴな意味で言えば本当にそうで、スケジュール面もあるけどやっぱりみんな良いドラマーですしね。音源を制作した観点からすれば、一緒に作ったKENZOが慣れているのはありますけど、ツアーが始まって山口大吾くんともクオリティという面で、ひとつのハードルは越えられつつあるなと感じてます。

ー 今さら言語化することでもないですが、2人がいればBAROQUEだという確固たるものがあるから、「楽しみ方が単純に増えた」ぐらいの気持ちでいられる?

正直な話、最初はそんな余裕はなかったですけどね(笑)。やっぱり、それぞれの特徴や良い部分は違うんで、人が変われば表現が変わるのは当たり前なんです。僕らも気持ち良く演奏してもらえるように、2人でムードを作ったり、そのドラマー本人が本人らしい演奏をできたりするように心がけるのも僕らの役割なんだと、やりながら気づいたっていう感じですね。演奏する人が変われば、曲の引き出される部分も変わるなと気づいたし、ツアーの序盤ですけど、楽しめるようにはなってきたかなとは思います。

ー そういった全体を考えながら表現されるというのは、ライヴ中でもその視点は変わらないんですか?

ライヴ中に関して言えば、僕は一(いち)ギタリストでいたいんです。ギターを持って、その曲の魂を表現する人でいたいっていうのは常に思っています。怜は同じなのかわからないですけど、やっぱりその曲を歌って、主人公になって表現する人ですよね。変な例えかもしれませんが、僕だったらアルバムに関しては監督業で、ライヴはその監督からもらった役を自分で演じるみたいなところに近いです。ただ、今回のツアーで思ったのは、ライヴ中に全体のことを考え過ぎると、ギタリストとして集中できなくなるので、ちょっと俯瞰で見た視点から”こういうギタリストになって欲しい”っていう自分に入り込むし、怜に関しても「好きなようにやったら」って言っています。ライヴにおいては、どっちが監督・俳優っていうよりは、同じ目線でやっているなって感じますし、そうしたいなって思っているかな。

BAROQUE

ー その『THE BIRTH OF LIBERTY』では『PLANETARY SECRET』と『PUER ET PUELLA』からの楽曲をメインに披露されていますが、『PLANETARY SECRET』で描いていた人生観や哲学的な部分を内包していた主人公のイメージは、『PUER ET PUELLA』での主人公と同じと考えてもいいのでしょうか?

そうですね、話としては繋がっています。『PLANETARY SECRET』に関しては、「魂の誕生」みたいなイメージだったというか。星をなぞらせて、少し難しい言い方をすると「自己の概念の誕生」みたいなところだったんですけど、今回は、そこから先の現実世界に生まれて感じるものとか”生から死”みたいなものがテーマで、同じ主人公ですね。

ー 現実世界という意味では、より怜さんと圭さんの”イズム”みたいなものが反映されている印象がありました。

これは良い意味でなんですけど、やっぱりBAROQUEはバンドじゃないんですよね。極端に言うと、シンガーとクリエイターだし、さっきも言った映画監督と俳優みたいな感じなんで(笑)。役割の関係で言うと、僕が脚本と演出を描いてそれを怜が噛み砕いて、自分で演じて表現するに近いんでしょうね。だから、自分たちというのが色濃く反映されているんだと感じてもらえるんでしょうし。

ー 『PUER ET PUELLA』=「少年少女」とは、例えばその人の核の部分であったり揺るぎないものと圭さん自身が捉えていらっしゃるとするならば、今の圭さんの本質もやはり少年時代にあったということですか?

そう思います。やっぱり、大人になるにつれて物事の善悪を汲み取るフィルターもそうでしょうし、感性も育っていくし、自分のあらゆる要素が成長していきますよね。でも、それらを感じる本当の奥にある芯の部分っていうのは、少年時代からあまり変わってないなと思います。これは僕の主観的なことになっちゃうんですけど、物事に迷ったときに自分の本心や本当の気持ちに正直になるのが1番後悔しないなと、これまでの人生の経験からも思っていることです。『PLANETARY SECRET』のときにも話しましたけど、やっぱりその人それぞれ、いろいろな責任とか肩書を持ったりして、それを素直に実現できないこともあると思うんですけど、1人1人にその答えってある気がしてて。それらに素直になれることが、自分らしく生きることかなと、「少年少女」っていう童心を書こうと思った理由です。

ー 一方で、現実世界では避けられない”生から死”というテーマもあるわけですよね。

実は当初、気持ちの良いものだけで満たそうと思っていたんです。楽曲で言えばポップなものだけで満たそうとしてたというか。制作を始めて『GIRL』や『PERFECT WORLD』とかが最初の方に出来て、その方向で作っていこうとしていたんですけど、やっぱり躓いちゃったんですよね。アルバムを通して「少年少女」の童心を書こうと思ってたんですけど、例えば『PERFECT WORLD』の1曲で童心の部分を描けちゃったりしたんで。じゃあ、人生っていうのを考えたときに、そんなに良いことばっかりじゃないっていうのに気づいたりして。

ー コンセプトは変わらないんだけど、掲げた理想と現実のズレが楽曲の中で生じてきちゃったんですね。

そうです。綺麗なものをすごく作ろうと思い過ぎてたから、曲が出来なくなっちゃった時期とかも実際にあったし。『GIRL』を出した頃、『PARTY ZOO』のイベントに出してもらって、新しいお客さんとかも来てくれたり、いろいろ協力してくれる人たちも増えて、もっとポピュラリティがあるものを作った方が良いんじゃないかっていう流れになった瞬間もあったんです。そういうときにちょっと考えすぎちゃったというか…。考え過ぎちゃって、自分で”待てよ”と。それをあんまり頑張り過ぎると、昔にいろいろ苦労したことと同じになっちゃうなと思って、もう1回、軌道修正しよう・原点に戻ろうとしたのが2017年の終わりぐらいで、半年ぐらいライヴ活動をしないで、1回時間が欲しいと。

ー そう伺うと、『AN ETERNITY』『FLOWER OF ROMANCE』がもたらしたものというのは、とてつもなく重要だったんですね。

まさにそう。2016年に『GIRL』を出して、その頃はまだ綺麗なままの「少年少女」を作ろうっていうコンセプトに基づいていたんですけど、そうじゃないものにしないといけないんじゃないかって思った時期もあったし、それについて考え過ぎた僕が甘かったし、弱かったんです。もう、タイトルさえ変えないとって思ったこともあったくらいで。そこで半年もらった時期に、ちょうど『AN ETERNITY』が出来るきっかけになった事があって、この2曲はすごく大きかったですね。

ー まさに現実世界で出来事を反映させられたことにはなりましたが、敢えて避けていた苦しみだったり痛みを表現することが、『PUER ET PUELLA』に必要なピースだったんですね。

そうなんです。僕の少年時代を思い返しても、確かに輝かしいこともあったし、すごく無条件に幸せだった時期もあるけど、それと同じぐらいに苦しいことや死というのは、自分の人格形成に影響を与えている、大きな記憶なんですよね。それを封印したままでは、このアルバムは完成しないんだろうなって。

ー そういった、所謂閉ざしておきたいような感情を出すことに、圭さん自身に恐怖みたいなものはなかったんですか?

やっぱり、最初はちょっとビビってましたね。僕自身、そういう心の闇みたいなものをけっこう持ってる人だったので。『PLANETARY SECRET』のときに1度開放をして、また音楽をやっていこうと思えたけど、それ以前の扉をもう1度開けないといけないことへの恐怖ですね。でもそれを開けみたら、逆に楽にもなりましたし、これが自分だなとは思いましたね。最初に掲げたテーマを絶対に感じさせるアルバムにするには、ポピュラリティがないと伝わらないのかなって思ってたし、それ自体は自分のハードルでもあったんです。『PLANETARY SECRET』がめちゃくちゃマニアックかって言われたら、僕はそう感じないんですけど、それまではけっこう現実的な世界を書くことが苦手でしたし。ある意味、芸術性のあるアルバムを作れたなって思ってたんですけど、そういうときって必ず空想の世界だったり、自分の内面的世界を書いてたと思うんですね。ポピュラリティがある曲を作るんだったら、もっと割り切って「シングルのために作りましょう」「バンドのために作りましょう」ってなるんですけど、その両方を持っているものを作れるようになりたいっていうハードルですね。

ー クリエイターとして、そういったことを越えていく戦いもあったんですね。

例えば『YOU』はすごい現実的な恋愛のことで、僕からするとけっこう苦手だけど、現実をもっと逆に幻想的に見せることで、現実を超えられるというか。幻想的なものはすごく作りやすいんですけど、僕はどうしても現実的なものになると冷めちゃうっていうのがあったんで。

ー それこそ、空想の世界でわざわざ痛みや苦しみを想像しないことはいくらでも出来ますけど、現実と対峙すると嫌でも目にいないといけないこともありますしね。

そう。感性的な意味でも、もっと鋭くならなきゃいけなかったんでしょうね。要は現実の景色を見て、美しいものも醜いものもキャッチ出来る力みたいなのを養わなきゃいけなかったのがあると思うんです。

ー そういう意味で言うと、『PLANETARY SECRET』と『PUER ET PUELLA』を映画に例えたら、主人公は同じでも明らかに異なる視点が含まれていますよね。

『PLANETARY SECRET』で言えば、空を見上げて単純に星や月が綺麗でとか、そこで何かを想像して音に変えるっていう得意な部分ですよね。今回の『YOU』で例えるなら、カップルがいたとして、そのカップルがなんとなく手を握った瞬間から何かを感じるとか、そういうのに近かったですし、そういう感性が今まで得意じゃなかったんで『PUER ET PUELLA』にすごい時間が掛かっちゃいました(笑)。

ー その背景を伺えば伺う程、納得はできますけどね(笑)。

ただ、自分で言うのもなんですけど、それに関しては自分のことを1番認めてないですよ(笑)。よく冗談でというか…本気で言ってるんですけど「良いアルバムですね」って言われても、4年も掛かってるんです。もし、4ヶ月でこれを作ってたら、自分で自分のこと褒められたなとは思います。

ー 次の作品はもしかしたら可能なのかもですが、最初に自分を曝け出すことに躊躇や恐怖が伴わない方が逆に嘘っぽいので、『PUER ET PUELLA』には必要な時間だったんだと思いますよ。

そうかもしれないですね。その面で言えば『4 deus.』を出したことで、本当の意味で自分を曝け出したり表現することの重要性が得られましたし、自分自身に勇気を持てたのかもしれないです。

撮影=KEIKO TANABE

ー 確かに。アルバムの中で『LAST SCENE』はポピュラリティのある楽曲ですけど、世界観はその曝け出された1つですよね?

単純にデュエットだし特殊ですよね。本来、提供するはずで作った曲が、別の曲で採用されて。これを怜が聴いて、BAROQUEでやりたいっていうとこからこのアルバムに入れようとなった曲です。元々が女性に向けて提供するために作ったので、すごいキーが高くて下げちゃうと雰囲気が変わっちゃったんです。じゃあどうしよう?ってなったときに、アルバムは「少年少女」っていうタイトルだし、少年と少女が交わるじゃないですけど、そういう瞬間にしようかなっていうところから、怜とのデュエットに決めたんです。話的には、思春期の少年少女の時代を書いています。本来、提供する子と会ったときに、曲を提供するのであれば、自分と共通点ある部分を探そうと思って、その彼女には怒られちゃいそうですけど、僕は闇を感じたっていうか。もしかしたら、自分が思春期のときに感じたことに近いんじゃないかって。

ー 見出した共通項の世界に、『PUER ET PUELLA』で描けるストーリーと一致したんですね。

僕が少年のとき、もちろん幸せだった瞬間もありますけど、もう今すぐにでも死にたいと思ったような時代もあったので、そういうときに「もし似たような境遇の人がいたらどうなるんだろう?」みたいなところから始めた曲です。怜にも同じように説明したんですけど、『LAST SCENE』の1番恐ろしいところは、女の子と男の子は別に愛し合ってるわけじゃないんです。それぞれ別に「死のう」みたいに言ってるというか。たまたま目的が同じだから一緒にいる、みたいなところをすごく大事にしようと思って作ったものです。

ー そういう“死”の部分で言えば、『BIRTH OF VICTORY』で始まった”生”から、”死”の景色が描かれた『RINGING THE LIBERTY』、その後に迎える『PERFECT WORLD』の流れは、『LAST SCENE』も然り、それまでの楽曲があってこその説得力があるように思えました。

『PUER ET PUELLA』を人の一生として考えたときに、『BIRTH OF VICTORY』からスタートしてますけど、『RINGING THE LIBERTY』の最後のメロディーが『BIRTH OF VICTORY』と一緒なんです。『BIRTH OF VICTORY』ではギターを弾いて、『RINGING THE LIBERTY』では歌っていて、死ぬ瞬間の景色みたいのをイメージしたんです。『PERFECT WORLD』がなぜ『RINGING THE LIBERTY』の後にあるかは、死んでも残したいと思うような記憶とか、人生で得た宝物みたいなものを表現したかったからですね。

ー それは感情的なことでも良いし物理的なことでも良い?

そうですね。子供のときからずっと僕は「死んだらどうなるんだろう?なんで死ぬのは嫌とか、怖いって思うんだろう?」って考えてて。個人的には、別に肉体的な痛みが伴うことを怖いと思わないんです。病気になったり事故にあって、もちろんそれはそれで苦しいんでしょうけど、それよりも死んで自我がなくなるとか、何かがなくなったり忘れるっていうことが、やっぱり僕の中では怖いなと思って。それって、やっぱり自分が忘れたくないなと思うものがあるからだし、それは自分自身さえもそうかもしれない。自分自身のことを愛していて、近くにあるものを愛しているからこそ、忘れるとか失くなってしまうのが怖いんじゃないかなっていう。そう思っていた子供の時の感情がすごく今回のアルバムには影響を与えてて。もし、死んだあとに大事なものだけ持って行けるとしたら、喜んで死にますよじゃないですけど、そのくらい『PERFECT WORLD』は『PUER ET PUELLA』のラストを飾って欲しかった曲です。

ー 『PERFECT WORLD』という理想の世界ではありますけど、ちょっと怖いなとも思ったんですよね。『RINGING THE LIBERTY』まで、自分がそういうものを見つけられる人生を過ごせているかなっていう。

それに近い話で、難民支援の活動の話を聞くタイミングがあって、その活動で内戦とか起こっている国の子供にインタビューをしていて。状況で言ったら悲惨な環境にいるんですけど、「あなたが生まれ変わったら何になりたいですか?」って聞いたら、その子は「私はまた同じ場所に、同じ自分として生まれたい」って言ってて。まだまだ色んな世界を知らないからっていうのももちろんあるし、年齢もあるでしょうけど。でもどんな環境であれ、完璧な世界なんてないし、逆にどんな環境であれ、自分が完璧だと思ったら完璧な世界だし。それは生き方次第でもあるし、自分が何を大切にしているかでもあると思ったんです。当たり前ですけど、完璧な理想の世界なんてないですし、その人自身がそう思える人生を送るとか、そう思えるものを見つけられたら、それでいいんじゃないかなって、そのときすごい思ったんですよね。

ー 人によって、その”理想”って違って当たり前で、それぞれの『PERFECT WORLD』があるっていう。

そうなんですよ。誰しもがね、億万長者になりたいと思ってるわけではないし、お金がなくても、すごく大事なものを持ってる人の方が幸せかもしれないし。

ー 『PLANETARY SECRET』から『PUER ET PUELLA』に辿り着くにあたって、BAROQUEとしての『PERFECT WORLD』も、また他のバンドやミュージシャンと違って唯一のものでしょうし。

やっぱり今のBAROQUEは2人になって、それぞれが1番好きなことをやってる感じがするんですよね。僕は表現したい何かがあって、それを楽曲として表現出来ている。多分、怜の場合はそういうのを近くに作る人がいて、それを自分の感性で歌うのが楽しい。だからお互いが1番楽しいと思ってることが自然に出来てるんじゃないですかね。

ー そこまでBAROQUEに対して腹が括れた、とも言えますよね。

そうですね。もはや、2人で「こういうバンドになろう」っていう部分は、あんまり話さないですし。次何を表現したいのかまず考えるのは僕で、そこから膨らませて、自分の表現を見つけてくのが怜で。もちろん、2人になった『PLANETARY SECRET』を出す前に話はしましたけど、今はこのスタイルやクリエイティブの仕方を、2人で突き詰めて極めていくのが僕らの道だなと思っているというか。

ー 突き詰めれば、圭さんと怜さんの出会いこそが、BAROQUEの核の部分でもあるのかなと。

間違いなく、怜との出会いが起点になって今のストーリーになってるんで、そこが僕らの核なんでしょうね。怜が初めて僕の家に来た頃に、なんとなく作曲とかやってて、「ちょっとそれ歌ってみてよ」っていうところから始まったのが、結局今はそこに戻ってるっていう。そこから、「じゃあ演奏してくれるいいメンバー見つけようぜ、こういうバンドやろうぜ」っていう時期がありましたけど、色々あってそういう人たちも去っていって、そこに戻ったっていう。

ー 同様に『4 deus.』も、このタイミングや環境があってこそ産み出されたものなんでしょうね。

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