大森南朋率いる”月に吠える。”、第三思春期の男たちが放つ煩悩具足のロックンロール

MCをはさみ、大森がジョニー・サンダースとお揃いのギターに持ち替えM-8「気まぐれジョニー」を披露、静と動、ドライからエモーショナルへ移ろう感情のコントラストで、曲にドラマが生まれるその様は胸に迫り息を呑む。そして余韻を切り裂くかのようにM-9「月に吠える。」へなだれ込み、牙を剥くような攻めの姿勢とサイケデリックなアプローチでトランス感覚へと誘い、すでに沸点超えの中での各メンバーのソロパートの見せ場も実に圧巻だ。間髪入れずにM-10「ズリぃな」は、完全にリミッターを振り切った怒涛のパフォーマンスで熾烈にラウドなロックンロールを畳みかけ、爆発力と高揚感は最高潮に。

月に吠える

ラストとなるM-11「ロマンチックブギー」、すっかりオーバーヒートした空気を痛快かつ明快なキラーチューンで軽快に落とし込む、心憎いその展開にバンドの粋と心意気を感じつつ、本編が締めくくられた。

アンコールではアコースティックギターを携えた大森が“フォークソング・クラブ部長”を名乗り「今日は皆に会えて嬉しかったんだぜ、また来年~」と即興ソングをサービス。オーラスには「オールドでヤングなロックンロール」、武骨で泥臭くも温かみを感じさせるフォーキーなミドル・バラードは、赤裸々に思いの丈を吠えまくるパフォーマンスと相まって、ライブでいっそう生々しく放出される大森の気迫に圧倒せざるを得ない。約1時間のセットを千変万化に駆け抜けるように、しかし月に吠える。を余すところなく凝縮した今夜のステージが幕を閉じた。

月に吠える

「50過ぎてもやってやるぞ!」とバンド活動への気概に溢れた決意を放った大森南朋。役者業と音楽とのボーダーを意識させる隙も与えないほどに、純粋にプリミティブに“バンドマン”であり続ける姿がそこにあった。と同時に、4人が生み出すグルーヴと阿吽の呼吸に、結成から5年間で培ってきた強固なバンド感と確かな足跡を示した一夜となった。

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