ドラマストア インタビュー

—全ては僕の歌を立たせるため

—サポートギタリスト入れると、現状維持にもならないし、更に長谷川さんぽくなく、強いて言うならドラマストアぽくなかったんですよね。

長谷川:そう思います。逆にそういう音楽の中で、今光ってる僕を好きになってくれる人が多いんじゃないかなっていう風にも思ったんですよね。「中途半端な時期にピアノが加わりました」じゃなくて、やりたい音楽をやりたいメンバーで止まらずに作って、その上で歌詞の内容や世界観にブレがないまま、進化していけるのじゃないかなって思ったことが踏み切ったきっかけでしたね。

—敢えて言えば、ドラマストアは発展途上じゃないですか。だからこそ、新しいことを取り入れるのは、実はごく自然なことだったようにも思えます。長谷川さんの軸、それはドラマストアの軸とも言えますが、軸がしっかりしていればピアノという武器でも三味線という武器でも良かったわけなんですよね。

長谷川:そうですね。僕は自然やと思ってたんですけど、でも全部のリスナーさんはそうじゃないじゃないですか。そこはワガママにというか、バイオリンでも良かったでしょうし。そのワガママが迷わずできるくらい、本当にメンバーに愛されてるというか、守ってもらってる部分も強いと思うんで。近くに「お前の音楽は間違ってないよ」って言ってくれる人が居る現状だからこそ、思い切った判断ができるきっかけになったのかなって思います。

—実際、『白紙台本』を制作するにあたって、ピアノのフレーズは作曲のタイミングで出てくるんですか?

長谷川:僕は全く出てこないんですよ(笑)。自分の作る曲のアレンジに拘りがなさすぎる人間で。シンガ-ソングライター憧れからギターを始めた人間だったので、曲はギターで作りますけど、それを打ち込みデータでやり取りしようとすると、ドラムが嫌って「海くん、こんな人間味のあるヤツがボーカルで生の歌を届けなあかんバンドが、なんで顔も合わせずにデータでやり取りしてんねん。そんなん理にかなってない」って。だからどんだけ下手でピッチがズレてても、その状態を送って欲しいって言われてて。だから3年経った今でも、携帯で録音したきったない音を聴きながら、スタジオに集まって合わすというのがスタンダードなんですよ。

—変な言い方ですけど、バンドっぽいですよね(笑)。

長谷川:そうですね。ワンコーラスだけ録って持っていって「イントロ決まってない、イントロ考えよ」「これってCメロありそうやん、考えるわ」とかそんな状態なんですよ。「これサビはいいけど、そこまで微妙やな」って話だったら「あ、全然作り変えて!」って言うくらい全然こだわり無いし、寧ろ僕はもう着手しないくらいです。その分、歌いたいことは歌わせてもらってるし、「歌詞とメロディの内容は、海くんが書くんだったら」と信頼してもらってと、全てまる投げしてもらってるから。

—作曲者がメインコンポーザーってイメージだったんですけど、全然違うんですね。

長谷川:それ、よく言われますけど全然しないです。「俺、ベースのことオマエよりわからへんし、ドラムのことオマエよりわからへんし、それでやろやろ」って。

—それでいて軸がブレないのは、楽曲の中心に歌があること?

長谷川:全ては僕の歌を立たせるためにやってくれてますね。僕、自分でいうのも何なんですけど、人徳がすごいんですよ(笑)。

—(笑)。

長谷川:人を惹きつける力が強くて(笑)。今はインタビューだし、少しは言葉を選んでますけど、めっちゃ口悪くて棘があるし、更にB型でワガママなんですけど、僕のことを嫌う人間はあまりいないんですよね。メンバーも「海くんだからやってる」みたいな状況だから、怒られたり急かされるとか無いですし、1番分かってくれてますね。

—表現方法に困りますけど、めちゃくちゃ仲のいい夫婦みたいですよ。

長谷川:そうですね。ただ、組織としてはめっちゃ破天荒で計画性がないです(笑)。

—(笑)。因みに今回のリリースは決めていたんですか?

長谷川:決まってました。ただ、ギターの脱退前から決めてたことだったんで、僕たちの活動スピードから考えると、全く無理な話やったんですよね(笑)。でも、マネージャーとか自分の味方になってくれてる人が関わったリリースがまだ1枚もなかったから、面白半分で「一旦、死ぬ気になってやってみようや」って言ってみたんです。出来たらみんなで打ち上げして、出来んかったらみんなでマネージャーに謝ろうって。そうしたら、作曲もトントンって進むし、振り返ってみると全員が頑張ったなって。

—曲を作るのが遅いのに、こうやって仕上がったことが良い経験になったんですね。

長谷川:そのくらいの地獄を味わったから(笑)。でもこんなんが地獄って、生ぬるい話やと思うんですけど、僕自身がすごくぬるま湯で育った人間なんで。大事にされて守られてきた人間なんで、「腹括ってやりましょう」って言ったことも、それをやり切れたということも、僕としてもすごく自信になりました。

1

2

3 4