BAROQUEの圭(Gt)、ソロワンマンライヴ-振替公演-を開催!これから歩んでいく新たな未来への希望… すべてを音楽に込めて届けようとする覚悟

続く「moon dreams.」(『4 deus.』)では、新国立劇場バレエ団のファースト・アーティスト益田裕子とコラボレーション(振付協力 丸澤芙由子)。スクリーンには月や海の神秘的な映像が映し出され、舞台上には淡い光が月光のように降り注いでいる。白いドレスをまとった益田は、まるで月の精のような透明感を内から放ち、軽やかに優美に舞い踊りつつ、ステージを左右広く使いきったダイナミックな回転や飛翔でも圧倒。クラシックとモダンが融合し、エレガントでありながらエモーショナル。強い生命力に満ちたバレエは、圭が紡ぐ音楽の世界と高次で融合し、幻想的な美しさを描き出していた。曲を終えて送り出した後、圭は「すごいね」と感嘆し、「『moon dreams.』でやりたかったんだよね。イメージがあったというか…実現できてよかったと思います」と、願いが叶ったことを喜び、初の試みに手応えを感じているようだった。

ライヴは終盤を迎え、バンドセッションへ。ピラミッドなどエジプトのモチーフが背後に映し出される中、妖しくエキゾティックなギター音階を奏でる圭。4人の音と音とがぶつかり合って次第にボルテージが昂っていき、圭は激しく頭を振って、弾くというよりもほとんど打ち鳴らすようにギターを鳴らし、音に没入していく。曲が終わらないうちに客席からは自然と興奮の拍手が沸き起こる、熱狂的な演奏だった。本編のラストは「eve.」。上述のイベント『Adam et Eve₋Adam₋』のために書き下ろした楽曲だ。花の蕾が開いたり風に揺れたりする映像には、走り去る電車も織り込まれていたのが印象的。全身全霊で鳴らすギターを鳴らす圭の姿からは、この現実世界を見つめ、生きとし生ける者の全てをあるがままに受け止める広い視座し、すべてを音楽に込めて届けようとする覚悟が感じられた。

アンコールでは黒いシャツに着替えて圭が一人で登場。「今日は本当にありがとう!」と感謝を述べ、「大変な状況だったけど、楽しんでくれたでしょうか?」と問い掛けた。やがて意を決したように、BAROQUEの無期限活動休止の発表について言及。詳細な経緯に関しては発表直後に配信番組で語っており、説明を繰り返すことはしなかったが、「この件が決まった時、ファンの皆に対しては胸が痛かった。これを聞いたらどう感じるんだろう? すごく傷付くんじゃないかって…」と胸の内を明かした。「一番大切なことは、それぞれ…俺たちだけじゃなくて、一人一人の人が、本当に自分らしい生き方、自分が納得した、自分が毎日朝起きて楽しいと思える、幸せだと思える生き方をするっていうこと。この世界に生まれた誰にも壊せないものだと俺は思うので、それを今回は尊重させてもらいました」と大切にした理念を述べ、現時点では、「いい意味で流れに身を任せていく」と語った。

バンドの決断に理解を示すファンの優しさに感謝を繰り返し述べながら、「でも、簡単に受け入れられる話ではないのはよく分かってるので」「飲み込まなくていいと思うんだよね」とファンの奥底にある本心を推し量り、喪失感、虚しさ、悲しさをも肯定。「その気持ちに蓋をする必要もない」と語ったのが印象深かった。人の命の喪失も挙げながら、「失った時に思う心の穴、代わりになるものはない。でも、俺たちは生きてるし、生きていればどういう人生になるか分からない」とも。気持ちが辛い時には「逃げていいと思う」と受け止め、音楽が「そういう助けになったら一番いいし。俺自身もやっぱり、今日も改めてステージにあって思ったけど、すごく音楽に救われてるから。その救われたものを、自分を通して皆に表現して、何か役に立ったらいい、というのが俺の人生」と、自身の存在意義、音楽との向き合い方を再認識したようだった。「俺はしんどい時、嘆くし、〝もう一人の自分″に閉じ籠ることもある。けど必ず、傷付いたものとか失ったものの後には、もっと大きな素敵なものが生まれるのも、これまでの経験で知ってる。だから…すごく大きなものが今止まったけど、大きいからこそもっと大きいことを感じて、人生を良くして行ける。ステージに立ってそういうことを今日感じたので、どういう形であれ、俺がここにいることで皆の人生を…おこがましいけど、少しでもいいものにできたら、生まれて来た意味があると思う。その信念が無くならない限り、俺は絶対に諦めないんで」と強い口調で宣誓。「大変な時はたまに言うんで(笑)、心配しないでください。ありがとう!」と最後は笑った。

率直な想いの吐露に続き、アコースティックギター弾き語りで届けたのは、「I LUCIFER」。BAROQUEの最新アルバム『SIN DIVISION』において、圭が自身の少年期の喪失体験と怒り、その奥にあった哀しみ、抑圧してきた心の叫びと向き合って生み出した特別な曲だ。ところどころ声を震わせながら、しかし力強く歌い終えた圭の姿を、観客は身じろぎもせずじっと見つめていた。

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