SUGIZO

SUGIZO『LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE Ⅰ~RE-ECHO TO COSMIC DANCE~』LIVE REPORT

10月14日(水)、SUGIZOが自身初となる配信ライヴ『SUGIZO LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE Ⅰ~RE-ECHO TO COSMIC DANCE~』を開催した。この試みは、ソロキャリア初のライヴアルバム『LIVE IN TOKYO』のリリースを祝して企画されたもので、LivePartner-ONLINE-を通じてstudio W (WOMB LIVE)から生配信。かねてからSUGIZOが追求してきた音楽・映像・照明が三位一体となったステージ表現は、〝対面ではなく画面越し″というコロナ禍の障壁をむしろプラスに転じ、新たなライヴの在り方として進化を遂げた。

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全スタッフ及びリハーサル中はメンバーも含めマスク着用の上、検温、消毒、換気を徹底。現場では油断のないコロナ対策が施されていた。本公演はCOSMIC DANCE QUARTETと名付けられた編成で行われ、センターに立つSUGIZOの左右にMaZDA(マニピュレーター、シンセサイザー)、よしうらけんじ(パーカッション)、対面にはZAKROCK(VJ)、ゲストのHATAKEN(モジュラーシンセサイザー)が構え、全員が向き合う円形のフォーメーション。本レポートは、会場の様子を交えつつ、配信内容について詳しくお伝えしていく。

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定刻より10分ほど遅れた19:40頃、スタンバイしたSUGIZOは静けさの中、合掌し目を閉じて配信がスタート。1曲目「DO-FUNK DANCE」のイントロが鳴り始め、巨大ミラーボールの下、両腕を大きく広げたSUGIZO。たちまちカラフルなレーザーが立体交錯し、光と音のサイケデリアに没入することとなる。SUGIZOはギターを掻き鳴らしながら前方へ歩み出たりターンしたりと華麗にパフォーマンス。力強く躍動的な幕開けだった。本公演のPAはライン出力方式を選択。配信視聴時に最適の音響バランスとなるよう、SUGIZOが全幅の信頼を寄せ〝サウンドアルケミスト″と讃えるDub Master Xがオンライン用ミックスを担当。ヘッドフォン等で聴くとより分かりやすいが、音の位相をありありと体感できる立体的かつ臨場感に満ちた音づくりに度肝を抜かれた。「TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?」ではムードを一変、不穏な重低音が響き渡る。激しく吠えるような高速ギタープレイを繰り出し、緊迫感を最高潮まで高めた末、すっと訪れる静寂。逆光に照らされて高く手を挙げるSUGIZOのシルエットは、息を呑むほど神秘的である。こうした静と動のメリハリは、巧みな映像加工によって画面上で増幅。撮影はクレーンカメラ、至近距離までSUGIZOに迫るステディカム、複数台のハンディカメラ及び定点カメラを駆使した多様なアングルで行われ、小気味よいスイッチングによってライヴのダイナミズムを視覚化。通常は細部まで確認できない手元のアップや表情などをふんだんに映し出したのは、配信の利点を活かしたリアルの伝え方だった。加えてこの公演では、通常通り巨大LEDスクリーンに映像を映し出すだけでなく、配信画面上にも映像をオーバーラップさせ、奥行きのある幻想的なヴィジュアル効果を実現。現実にそこにあるものをただ映すのではなく、心象風景やサウンドスケープといった抽象的な内的世界を表すのに適した手法であり、基本的にインストゥルメンタルで言葉による情報の無いSUGIZOワールドの深みを雄弁に伝えてもいた。全編を通じ、生身の人間らしい息遣いや熱量に満ちた生々しさと、緻密に練り上げられた構築美、すなわちSUGIZOの持つ両面の魅力を具象化する〝映像作品″となっていた。

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碧緑の宇宙ガラスがスクリーンに映し出されると、HATAKENが加わって「NEO COSMOSCAPE」がスタート。無観客ながら手を振り上げてMaZDAが煽り、SUGIZOは宇宙の彼方へと呼び掛けるかのような、念のこもったギターリックを奏でた。弾むように前方へ歩み出たよしうらがジャンベを打ち鳴らすと、入れ替わりにSUGIZOはパーカッションセットへ。力強くスティックを振り下ろすSUGIZOとよしうらの映像がリズミカルに切り替わり、ボルテージが上昇していく。センターに戻って艶やかなギターソロを弾き終えたSUGIZOは、剣のような形状のリボンコントローラーを手に、モジュラーシンセサイザーを演奏、プレイヤーとしての多面性でも魅了した。続く「Raummusik」はシュトックハウゼンにインスパイアされたミニマルな電子音楽。アタック感を消し去ったような、撫でるように柔らかいフェザータッチでコードを奏でたかと思えば、リボンコントローラーに指を這わせ仰け反る姿は大胆で妖艶。浮遊するクラゲ、青空や海の空撮などネイチャー感溢れる映像の世界に溶け込みながら、起伏に富んだ音色を繰り出し、心地よいトリップへと誘った。

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鈍色の海が大写しになって始まった「ARC MOON」では、水中を泳ぐイルカの群れやその影、螺旋を描く白い文様が重なり合って得も言われぬ美しさが出現。LEDスクリーンと配信画面上の2つの月の間にひっそりと佇むSUGIZOの姿は、絵画的な強いインパクトを残した。サッと手を振り払ったのを合図に始まった「FATIMA」では、SUGIZOは寄せては返す波のようになだらかに高まっていく情感をヴァイオリンで表現。宇宙と海をコラージュした背景に、艶めかしいベリーダンサーが人魚のように身を揺らすイメージを投影。通常のライヴでも美しい視覚効果に見入って夢見心地になることの多い曲だが、配信ではその作用が増幅、虚実入り混じる幽玄なヴィジュアルアートにただただ圧倒された。

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非現実の世界に陶酔させたかと思えば、「Lux Aeterna」からはメッセージ性の強い楽曲で覚醒を促す。無慈悲に攻め立てる銃声のようにループする、鋭利なエレクトロニック・ビート。スクリーンには腐食した女神像、銃を構える戦士、爆撃の白煙といった戦禍のイメージが照射されていく。ステージは闇のごとき漆黒に沈み、斬り込むようなストロボライトが緊迫感を高めた。「SAVE SYRIA」と記されたギターを手に、あらゆる暴力に無言でNOを突き付けるSUGIZO。人間らしさの証のように繊細に揺らめく音色を爪弾くたび、画像が切り替わっていく。それは、ヨルダンで出会ったシリア難民の子どもたちが微笑むモノクロ写真。真っ直ぐな眼差しが、心に激しく揺さぶりを掛けてくる。続く「FOLLY」からはより具体的に、戦争や独裁政治への抗議が見て取れた。しかし、怒りの炎に身を焦がすような映像・照明の表現は、ストリングスパートを境に一変する。チェ・ゲバラ、キング牧師、ガンジー、マザーテレサといった自由と平等、そして平和を希求し果敢に行動した人物のポートレイトが次々に映し出されると、SUGIZOは手を合わせ深く祈りを捧げた。地獄の業火のように赤く燃え盛っていた炎はやがて青白く変貌。怒りと悲しみを復讐心に変えることなく、尊厳を取り戻すため、連帯への道を探ろうと決意するまでの軌跡を見るかのようで、息を呑んだ。このように、受け手の想像を掻き立てるインスタレーションのようなSUGIZOの表現は、配信というスタイルを味方につけ、更なる飛躍を遂げていた。

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