SUGIZO『LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE Ⅰ~RE-ECHO TO COSMIC DANCE~』LIVE REPORT

鈍色の海が大写しになって始まった「ARC MOON」では、水中を泳ぐイルカの群れやその影、螺旋を描く白い文様が重なり合って得も言われぬ美しさが出現。LEDスクリーンと配信画面上の2つの月の間にひっそりと佇むSUGIZOの姿は、絵画的な強いインパクトを残した。サッと手を振り払ったのを合図に始まった「FATIMA」では、SUGIZOは寄せては返す波のようになだらかに高まっていく情感をヴァイオリンで表現。宇宙と海をコラージュした背景に、艶めかしいベリーダンサーが人魚のように身を揺らすイメージを投影。通常のライヴでも美しい視覚効果に見入って夢見心地になることの多い曲だが、配信ではその作用が増幅、虚実入り混じる幽玄なヴィジュアルアートにただただ圧倒された。

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非現実の世界に陶酔させたかと思えば、「Lux Aeterna」からはメッセージ性の強い楽曲で覚醒を促す。無慈悲に攻め立てる銃声のようにループする、鋭利なエレクトロニック・ビート。スクリーンには腐食した女神像、銃を構える戦士、爆撃の白煙といった戦禍のイメージが照射されていく。ステージは闇のごとき漆黒に沈み、斬り込むようなストロボライトが緊迫感を高めた。「SAVE SYRIA」と記されたギターを手に、あらゆる暴力に無言でNOを突き付けるSUGIZO。人間らしさの証のように繊細に揺らめく音色を爪弾くたび、画像が切り替わっていく。それは、ヨルダンで出会ったシリア難民の子どもたちが微笑むモノクロ写真。真っ直ぐな眼差しが、心に激しく揺さぶりを掛けてくる。続く「FOLLY」からはより具体的に、戦争や独裁政治への抗議が見て取れた。しかし、怒りの炎に身を焦がすような映像・照明の表現は、ストリングスパートを境に一変する。チェ・ゲバラ、キング牧師、ガンジー、マザーテレサといった自由と平等、そして平和を希求し果敢に行動した人物のポートレイトが次々に映し出されると、SUGIZOは手を合わせ深く祈りを捧げた。地獄の業火のように赤く燃え盛っていた炎はやがて青白く変貌。怒りと悲しみを復讐心に変えることなく、尊厳を取り戻すため、連帯への道を探ろうと決意するまでの軌跡を見るかのようで、息を呑んだ。このように、受け手の想像を掻き立てるインスタレーションのようなSUGIZOの表現は、配信というスタイルを味方につけ、更なる飛躍を遂げていた。

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本編を締め括ったのは「禊」。序盤でライヴタイトルが大写しになる演出は鮮烈で鳥肌が立った。サウンド面では、直前の「FOLLY」同様、ロックギタリストSUGIZOの神髄を堪能できるヘヴィーチューンであり、変則的なリズムがスリリングでもある1曲。同時に、多国籍の楽器が入り混じりながら、万国共通の祭囃子とでも呼びたくなる摩訶不思議な高揚感には心がほぐされていく。ジャンベを乱打するよしうらとSUGIZOは互いに向き合い、連獅子のように髪を振り乱しながらプレイバトル。SUGIZOは荒々しい叫びを会場に響かせると、リボンコントローラーに指を這わせ、昂った感情を吹き込むように音程を乱高下させた。約1時間に及ぶノンストップのパフォーマンスを経て、深いお辞儀をして初めてのMC。息が上がった状態のまま「SUGIZO初の配信ライヴ、皆ありがとうございました。楽しんでもらえましたか?」と画面越しに問い掛け、メンバー紹介。「また後程会いましょう」の言葉を残し、一旦ステージを去った。

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HATAKENのモジュラーシンセサイザー演奏がSEとして流れる贅沢な環境下、SUGIZOはiPadを手に再登場。感謝と共に、まずは、トラブルにより配信画面が表示されないケースが続出しているとの報告を受け陳謝。配信時点では原因不明だったものの、「急遽、アーカイヴをすることにしました」との緊急対応を自ら表明した(※後に、チャット機能のアクセスが集中したことにより、表示機能への負荷が予想以上に掛かったためと判明。SUGIZOの公式サイトとTwitterアカウントには、謝罪と対応の詳細が掲示されている)。

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