SUGIZO『LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE Ⅰ~RE-ECHO TO COSMIC DANCE~』LIVE REPORT

Twitterのハッシュタグで続々と寄せられるコメントを辿りながら、「ネットを介して日本中の、各国の皆と繋がっているという実感がめちゃくちゃある。せっかくなので皆と繋がりたいと思ってる」と述べ、いくつかを紹介。「SUGIZOの音楽のあり方は元々、音と映像と光と、あとは肉体表現と、すべてが絡み合って生まれる化学反応。こういった今の時代だからこその新しい表現のアプローチは、やってみたらとてもしっくり来たので、これから続けられたらな、とも思っています」と手応えも得た様子。コロナ禍でファンとの断絶を余儀なくされ、早半年。「俺はすごく〝皆ロス″でした」と寂しさも吐露。〝ライヴロス″でもあったと言い、「この状況になってみて初めて、皆との繋がりが、そしてライヴというものが、いかに自分の人生に対してかけがえのなかったものか、ということをとても痛感している……」と率直に語った。コロナ以前の時代に戻るのは難しいとの認識を示しつつ、「こうやって音楽や表現を通して皆と繋がるってことは、かけがえのないこと。『早く始めなきゃ』と思っていましたし、これからSUGIZOはどんどん動きます」と宣言。12月にはLUNA SEAのライヴ開催が決定していることにも言及し、「誰かがやっぱり動いていかないとね」との使命感も。「この凍り付いてしまった時間、このシーンを少しずつ解かしていかなきゃいけない。そのために一刻も早い皆との再会を待ち望みつつ、こうやって今回配信ライヴを実施しました」と、今回の初挑戦に至る心の動きを明かした。原因不明のトラブルを繰り返し謝罪し、完璧主義者らしく演奏への反省点と悔しさもしきりに述べながら、「このオンラインという逆境を最大限に利用して、できる表現を追求してみた。そして、これからもそうしていきたい」と前を向いた。

SUGIZO

現在、年内リリースを目指す新しいアルバムのレコーディングが佳境を迎えていると伝え、ソロもLUNA SEAも、「(2021年は)今年の雪辱戦という意味でガンガン動きますので、期待してください。新しい時代の扉を一緒に開けましょう」と呼び掛けた。「世界中の皆が、分断や争いや憎しみからいつか解放されて、本当に自分たちのホームに……それは土地でもいいし心の奥でもいい、本当の自分の居場所にいつか帰れますように。そしていつか、なかなか難しいかもしれないけど真の意味での平和を、俺たちの文明が手にできますように。祈りを込めて」と最後に届けたのは、「The Voyage Home」。黄金色に輝く美しい海を背後に、まるで子守唄を歌って聞かせるかのような、慈しみ深いヴァイオリンの音色を響かせるSUGIZO。懐かしい過去、あるいは今後訪れる幸せな未来とのコンタクトを試みる通信音のような、HATAKENのモジュラーシンセサイザー音。MaZDAが穏やかな波の音を送り出し、よしうらの刻むシンバルのさざ波のような音も加わって、心身を温かい空気が包み込んでいった。ゆったりとしたテンポに乗せ、再掲されたシリア難民の子どもたちの写真。遠くを見つめるSUGIZOの祈るような横顔は、深い余韻を残した。「皆本当にどうもありがとう。早く、一刻も早く実際に生で会えますように。一緒にこの時代を乗り切って、新しい扉を開けて、一緒にハッピーになりましょう。SUGIZOでした」との挨拶に続き、再びメンバー紹介。スタッフと参加してくれた視聴者の方々への感謝で締め括ると、メンバー勢揃いで肩を組みカーテンコール。夕陽に照らされる海の映像をバックにエンドロールが流れ、初配信ライヴは幕を閉じた。

SUGIZO

まず音の面から振り返ると、事前にプログラミングされたエレクトロニックトラックを同期し、そこに生楽器を絡めるスタイルで以前から行われてきたSUGIZOのライヴは、配信というスタイルに適していることを実感。加えて、映像・照明を音楽と同等に重視して築き上げてきたヴィジュアル面のクオリティーは、下がるどころか画面越しならではのポジティヴな変異を遂げていた。美的な観点のみならず、精神性や社会活動におけるメッセージをも包括するSUGIZOの音楽を余すことなく届けるには、むしろ有利なフォーマットと言えるかもしれない。また、多数存在する海外のファンや、国内でも遠方であったり障害や様々な事情によって参加が難しかったりする人々にとって、配信ライヴが貴重な機会となるのは言うまでもない。コロナの収束した暁には対面でのライヴを熱望するのは当然だが、この配信フォーマットを有力な〝プランB″として並走させ、SUGIZOは表現の幅を拡張していくだろう。聴覚・視覚のあらゆるシミュレーションを重ねて構築した世界観と、その日その場所で生まれたリアルな音・生のパフォーマンスとの高次な融合。このライヴの形を、SUGIZOは「皆との架け橋になれば、とすごく思っています」と語ったが、その通りになるに違いない。〝EPISODE Ⅰ″と銘打たれているこのストリーミングライヴ、その未来に大きな可能性を感じる一夜だった。

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text by 大前多恵
Photo by Keiko Tanabe

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