一年ぶりのワンマンライブ『キトリの音楽会 #3 “木鳥と羊毛”』オフィシャルレポート

アンコールでは再び羊毛を招き入れ、「羊毛さんがSNSで私の身長当てクイズを出してくれるんですけど、なかなか正解が出なくて……」と緩くて楽しいMCで場を盛り上げると、そこから、たま「パルテノン銀座通り」のカバーを聴かせたのだから、これまた驚きだ。いきなりピアノから入るのではなく、原曲の良さを活かしてギターとMonaの歌から入るのが新鮮で、Kitriのカバーのレパートリーの広さには感嘆させられる。フラワーカンパニーズ「深夜高速」のカバーを初めて聴いた時もそうだったが、世代が上のロックバンドの曲をセレクトすることで、彼女たちも自ら「Kitriらしさ」の壁を壊しにいってるのかもしれない。それを音源以上に感じられるのがライブなのだから、やはりKitriは面白い。そして「自分たちが歌えばKitriになる」という自信もますます漲ってきているのだろう。今後どんなカバーを聴かせてくれるのか、早くも次なるライブへの期待が高まる。

Kitri

最後はKitriの名刺曲「羅針鳥」を披露し、「Lento」で締めくくった。〈夕映えが綺麗/今まばたきはできない/焼き付けた瞳の奥/まだここにいたいと思った〉というHinaの優しい筆致の歌詞が、「このライブが終わらなければいいのに」という会場内の空気と重なって、温かな高揚感を生み出した。羊毛という心強いギタリストをサポートに迎え、Hinaが多様な楽器に挑戦し、ピアノ連弾ユニットの枠に収まらない刺激的なパフォーマンスを見せてくれたKitri。しかし何度か特筆したように、静謐なピアノ演奏と、繊細な歌やコーラスワークという持ち味もしっかりと感じられたライブであり、それは姉妹という関係性でしか出せないものだ。己の武器に磨きをかける2人は、これから新たなKitristとの出会いを糧に、ますます大きな空へと羽を広げていくことだろう。2ndアルバム『Kitrist Ⅱ』リリースまでもうまもなくだ。
文=信太卓実(Real Sound)
写真:Masatsugu ide

<セットリスト>
M1 水族館(クラシック曲)
M2 鏡
M3 Akari
M4 矛盾律
M5 青空カケル
M6 雨上がり
M7 異邦人
M8 二人セゾン
M9 バルカローレ
M10 春
M11 未知階段
M12 別世界
M13 さよなら、涙目
E1 パルテノン銀座通り
E2 羅針鳥
E3 Lento

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