「この世界の渦中のひとり」として時代と、人と向き合う歌。初の全国ホールツアー「須田景凪 HALL TOUR 2021 “Billow”」

客席を見回して感慨深げに口にした須田は、自ら「Billow(渦)」と名付けたアルバムについて「声が出せなかったりとか、20時までに終わらなきゃとか、いろんな規制があってシビアな時代になって。だからこそ、その中でできた作品なのかなと思って。自分も、この世界の渦中のひとりとして作ったものなので。みなさんに少しでも寄り添っていけば嬉しいなと思っていて。本当はこのライブも、『声が出せないから楽しめないんじゃないか?』とか、いろんな不安はあったんだけど……みなさんの表情を見てたら、そんなことはないなというか、『やってよかった』と思いました。本当にありがとう!」

と語り、須田の万感のMCに、割れんばかりの拍手が降り注ぐ。

須田景凪

そしてこの困難な時代における音楽家としての想いの言葉とともに披露したのは「ゆるる」。モリシーのアコースティックギターの音色と、須田の切実な歌声がせめぎ合う珠玉のバラードが、会場を美しく彩っていた。

感激冷めやらぬ客席を、アンコールでさらなる歓喜へと誘ってみせた須田。「こうやって同じ空間を共有することができて、本当に幸せだなあと思います。これからも、音楽もライブも続いていきますが、タイミングが合えばまた一緒に遊んでください」と呼びかけ、最後にモリシーのピアノとともに歌い始めたのは「はるどなり」。壮麗な歌とサウンドが、舞い散る銀色の紙吹雪と乱反射し合いながら、ホールの大空間に清冽な幸福感を残していった。

須田景凪

翌・3月13日には同じくLINE CUBE SHIBUYAにて追加公演も行われた「須田景凪 HALL TOUR 2021 “Billow”」。延期となった2月の福岡・名古屋公演に関しては、5月8日・福岡国際会議場メインホール、5月28日・愛知県芸術劇場大ホールにて振替公演が開催される。

文:高橋智樹
撮影:Takeshi Yao

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