<ライブレポート>Billie Eilish、自身初の単独来日公演が2年越しで実現

セットリストは2015年の「オーシャン・アイズ」から、最新シングル『Guitar Song』からの「The 30th」までバランスよくパフォーマンスした。セカンド・アルバム収録の「オキシトシン」にデビュー前の「コピー・キャット」を入れ込むなど、1時間15分のセットでむだがない。メインステージ後方が高くなっている傾斜を登ったり降りたり(寝転がったり)し、センターステージも効果的に使って緩急をつける。バックドロップも抽象的なビジュアル・アートから、「どこから持ってきた?」と思った古い質感のダンスする4組の「脚」やメリーゴーランドなど、ノスタルジックな映像を使って飽きさせない構成は完璧。無造作なツインテールを途中で解いただけで、「Cry Baby」と描かれたコミック風の女の子のピンクのTシャツとピンクのショートパンツを着替えることもなかった。その潔さときたら。

Billie Eilish

ビリー・アイリッシュは、社会的なコメントをしっかり発するアーティストだ。今回も、アクティヴィストとしての顔もしっかり伝えた。コンサートが始まる直前に流れた気象変動についてのメッセージが英語だけだったのは少し残念だが、プラスティック・ゴミを減らすためにマイボトルの持ち込みを奨励し、ビニール傘はNGであったのも考えるきっかけになった点で意味があっただろう。「オール・ザ・グッド・ガールズ・ゴー・トゥ・ザ・ヘル」に合わせ、BLMや反戦デモ、地元であるカリフォルニア州の山火事を伝えるヴィデオを流す一幕も。だが、けっして説教くさくはならず、MC時の言葉づかいはむしろ穏やかだ。海外に比べ、日本の観客は静かで有名である。加えて、新型コロナウィルスの感染者数を鑑み、「なるべく一緒に歌わない」マナーも浸透している。ビリーは「いやー、静かだね。緊張するかも」とポロッと本音をこぼしたあと、「You guys are so sweet(みんな、すごく優しいよね)」と言い換えたのだ。「みんなおしゃれで、マジでびっくりしたよ!」とも。海外旅行で来日した人の口からわりと聞くコメントではあるが、ステージ上で言っているアーティストは初めて見た。「ビリーって人柄もかわいい」と驚いた。

大ヒット曲「バッド・ガイ」で飛び跳ねたあと、ラストの「ハピアー・ザン・エヴァー」へ。「あなたがいないほうが私はずっと幸せ」と歌う、暗めさとポジティヴさが同居する曲だ。「I don’t relate to you(あなたには共感できない)」と歌うコーラスで、アリーナいっぱいのファンの気持ちをひとつにしたあたりが孤独を共有する時代のアイコン、ビリー・アイリッシュらしかった。

文:池城美菜子
写真:Kazumichi Kokei

■Setlist
bury a friend
I Didn’t Change My Number
NDA
Therefore I Am
my strange addiction
idontwannabeyouanymore
lovely
you should see me in a crown
Billie Bossa Nova
GOLDWING
Halley’s Comet
Oxytocin
COPYCAT
ilomilo
i love you
Your Power
The 30th
bellyache
ocean eyes
Bored
Getting Older
when the party’s over
all the good girls go to hell
everything i wanted
bad guy
Happier Than Ever
goodbye

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