“CREATURE”を皮切りに始まった次のブロックにおいても、5人は攻撃の手を緩めることなく、さまざまな時代に生まれたキラー・チューンたちを次々と繰り出してきた。彼らには、世間の誰もが一度は耳にしたことがあるようなヒット曲というものがない。ただ、熱心なファンに愛され、ライヴハウスで育てられてきた宝物のような楽曲がいくつもある。だからこそ、彼らのライヴから初期の楽曲が完全に排除されることはないのだ。
ことに2025年には、4月に『GREEDEY DEAD SOULS/UNDERNEATH THE SKIN』、9月には『THE AVOIDED SUN/SHADOWS』というふたつのリテイク・アルバム、すなわちインディーズ時代の楽曲が今現在の5人により再録されたアルバムがリリースされている。結成当時、lynch.は葉月、玲央、晁直の3人体制だった。その後、2006年に悠介、2010年に明徳が加入しているが、この2作品の登場によって、彼らは過去すべての楽曲を現在の体制、最新型の水準とバランス感覚で形にするというミッションを終えているのだ。しかも両作品に伴うツアーも経てきただけに、現在のlynch.においては結成当初から近年に至るまでの楽曲すべてが温度差のない同列の状態になっており、インディーズ期やメジャー進出まもない頃を原体験していないファンも、そのすべてを温度差なく受け止めている状況にある。だからこそ往年の楽曲が登場しても、それが過度にノスタルジックな空気をもたらすことはない。もちろん長年演奏されてきた楽曲には相応の思い入れが伴うものだが、それが「懐かしくも新鮮なもの」として響き、今現在にリンクするものを伝えてくれるのだ。
ところで熱気の充満するライヴハウスには機材トラブルやアクシデントもつきものだが、実際、この夜の彼らもそれに見舞われることになった。機材的な相性の問題なのか、CO2の白煙が噴出する演出を伴う場面において同期音源が止まってしまうという現象が発生し、演奏中断を余儀なくされることになった。ただ、そんな局面においても百戦錬磨のライヴ・バンドはたじろぐことがない。葉月は自虐的な笑みを浮かべながら「ここで、非常にlynch.らしいトラブルです」と客席に報告し、さらに「21年もやっておりますと、これぐらいへっちゃらなんです」と言って笑いを誘う。そして、そんな話をしているうちに問題は一旦解消され、演奏が再開されると同時に、場内はそれまでと同じ熱気を取り戻していく。結果、こうした出来事もマイナス要素にはならず、このバンドの動じない強さを伝えてくれることになった。
また、容赦のない攻撃性はlynch.の大きな魅力だが、彼らの持ち味はそればかりではない。まさしく万華鏡のように移り変わっていく映像を背にしながら披露された“KALEIDO”から始まった3つ目のブロックにおいては、スピードやアグレッシヴさに答えを求めていない楽曲が続けざまに披露され、このバンドの音楽的な奥行きと多面性が示されていた。テンポ良く続く攻撃の狭間で、ねっとりと絡み付くような空気を醸し出していたこのブロックは、ライヴ全体の物語においては“山”というよりも“谷”の部分にあたるものだが、実はこの部分こそがエモーショナルな意味での肝だったようにも思う。ただ単に明暗のコントラストを演出するだけではなく、今や長い歴史を持つようになったこのバンドならではの説得力、円熟味が感じられる場面でもあった。



















