デヴィッド・ボウイは“Let’s Dance”のミュージック・ビデオに登場するオーストラリアのパブのオーナーが部件を売りに出した理由と新しいオーナーに望むことを『NME』に語っている。
カリンダ・ホテルの共同オーナーであるディーン・ジョージとマルコム・ジョージの親子は3月4日にオーストラリアの不動産売買サイト「ガムツリー」で22万オーストラリア・ドル(約1560万円)で売りに出している。最新の統計によれば、カリンダの人口はわずか158人だという。
息子のディーン・ジョージは『NME』に対して父のマルコム・ジョージが、カリンダから7時間も離れたニューサウスウェールズ州のゴスフォードで暮らしながらパブの経営を行うことが困難になってきたことを明かしている。
「彼は引退するまでホテルを経営したいと思っていたのですが、残念ながら今の彼には荷が重すぎるし、近くに住んでいる家族がいない彼にとってはあまりにも忙しくなってしまったのです」とディーン・ジョージは語っている。「賃貸に出したり、マネージャーを雇うことも検討しましたが、ふさわしい人物を見つけることが次の関門となりました」
親子は直近5年間にわたってホテルの経営を行ってきたという。
「私たちが引き継いだ時、ホテルは閉まっていて空っぽとなっていました」とディーン・ジョージは振り返っている。「地元の人々が本当に素晴らしく、応援してくれました。私たちが経営を再開できるように、今現在の姿に至るまでのリノベーションを支援してくれた上に、バーにある有名なボウイの壁を含むホテルの独自性を保つ手助けもしてくれました」
デヴィッド・ボウイが“Let’s Dance”のミュージック・ビデオで寄りかかっていた壁は「今日まで変わらずに」残っているとされている。
カリンダ・ホテルがフェイスブックで売りに出すことを告知すると、年に一度開催されているデヴィッド・ボウイの追悼イベント「レッツ・ダンス・カリンダ」が二度と開催されなくなるのではないかという懸念が寄せられている。ティーン・ジョージは彼らの懸念をなだめて次のように語っている。
「レッツ・ダンス・フェスティバルはこれからも長年にわたって続けていく予定です」と彼は語っている。「フェスティバルは、地元の人々からなる特別な委員会によって運営されています。彼らは本当に情熱的ですし、イベント開催に向けて全力を捧げてくれています」
物件の内見は4月中旬から開始される。ディーン・ジョージは次のオーナーに対して「独自性を維持する」ことを望むと語っている。
「新しいオーナーが最も聞くことになるのは地元の家族の物語です。地元の人々にとってホテルのあらゆるところが思い出となっていて、それを話すのが大好きなのです」
「このホテルには築年数もあっていくらか修理が必要ですが、デヴィッド・ボウイを含めて地元の人々にとっての遺産を持っています。最近彼が亡くなったことで、このホテルとコミュニティには新たな命が吹き込まれました」
「新しいオーナーには、このホテルに残る彼の精神を生かし続けて欲しいし、レッツ・ダンス・フェスティバルの開催に向けて全面的に協力して欲しいと思います。きっと地元の人々は新しいオーナーに還元してくれるはずです」
デヴィッド・マレットが監督を務めた“Let’s Dance”のミュージック・ビデオは1983年に公開され、オーストラリア先住民への人種差別構造に対する注意を喚起する意図で制作されている。
デヴィッド・ボウイは1983年に米『ローリング・ストーン』誌で“Let’s Dance”のミュージック・ビデオについて次のように語っている。「メッセージはとても単純なんだ。人種差別主義は間違いだよ」
オーストラリアについて次のように語っている。「僕がこの国を好きなのと同じくらい、人種的に最も不寛容な国の一つなんだ。南アフリカと同じくらいね。北部は信じられないほど、不寛容なんだよ」
デヴィッド・ボウイは今年のレコード・ストア・デイに『アイム・オンリー・ダンシング(ザ・ソウル・ツアー74)』と『チェンジズナウボウイ』がリリースされることが決定している。