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The Cheserasera インタビュー

The Cheseraseraの4th full album『幻』が2019年5月8日にリリースされる。
前作『dry blues』から約2年、バンドとしての意志を更に高く活動に反映していくために自主レーベルを立ち上げ、全国各地で絶えず繰り広げられるライヴから得た気づきを見事に反映したこのアルバムは、まさに今のThe Cheseraseraが惜しみなく詰め込まれた作品だ。今回はメンバー全員から『幻』に込めた想いを語ってもらった。

10年も一緒にやっていれば、信頼感で繋がっている(宍戸)

ー 今年に入ってからも、相変わらずライヴの数が多いですね。

宍戸:結成してからずっとですからね。当時はノルマのお金を払ってでもライヴをやってたくらいなんで、単純にライヴがないと恐れがありますね。

ー 恐れですか?ライヴをやっている方が日常すぎて、早くやりたい!ってなるような?

宍戸:タイミングにもよりますけどね。やっぱり、何本も続けてやったあとは「疲れちゃった〜」ってなるんですけど、自分的に全然満足のいかないライヴをしちゃった次の日以降は、それを更新する為にずっとやりたいですね(笑)。あとは、ライヴをやらな過ぎると感覚がどんどん遠ざかってる感じがするので、そういう意味での恐れがありますね。

西田:まあ、ライヴあるのが普通になっちゃってるんで、久しぶりにライヴがない期間になると不思議な気持ちになりますね。ただ、僕の場合は焦りもそんなにないですし、逆に次のライヴまでにいろんな準備ができるなって考えてます。

美代:西田が言った準備じゃないですけど、僕は結構インプットが好きだったりするんですよ。ライヴがなかったらなかったで、そういうことができるけど、ありがたいことにライヴのお誘いも増えてきて、やり続けられてるのはありますね。毎年のように大晦日とかもやってますからね(笑)。

宍戸:やってるね、来年はいいか(笑)?

美代:(笑)。って言うくらい、年末年始も関係なくずっとやってますね。

ー 昼行灯(The Cheserasera前身バンド)から10年以上も変わらず、むしろ増えていくライヴを軸にバンドを続けておられますが、その頃から3人の関係性って変わりました?

宍戸:僕は変わったのも変わってないのも両方あると思いますね。もともと先輩後輩で始まって、そういう関係からはちょっとずつ変わっていきましたし。

美代:宍戸と大学が一緒だったんで、彼の同期の友達と会うと宍戸が”後輩”っていう感覚が不思議になりますね。そういう関係云々より、もっと突っ込んだことを話し合ってるし。

宍戸:例えば敬語で喋ることもありますし、そういう表面的な部分は逆に多分変わってないとは思いますけどね(笑)。笑いながら言うことじゃないですけど、内面的な部分では10年も一緒にやっていれば、信頼感で繋がっていると思います。

ー 先輩だからって、レコーディングとかで遠慮しててもしょうがないですしね。

宍戸:最初は、バンドの成り立ち的にどうしてもありましたけどね。

西田:僕の場合はドラムの美代くんとは小学校からの付き合いで、過去にもいろんなバンドを2人でやってきてるので、同じ関係性の中で変わり続けている気はします。対する宍戸くんは最初は他人だったけど(笑)、宍戸くんが言ったように信頼感がないと続かないと思います。あとは、これだけこだわりの強い人たちが集まっているので、ここは放っておこう、ここは突っ込んでみようとか、付き合い方の経験値が増えたと思います。

ー 長く続けないと、逆に強固な絆みたいなものがバンド内で生まれないだなと思います。一方、環境的な面でいうと、dry blues labelを立ち上げて2年経ちます。

美代:やりやすいですよ。

宍戸:めちゃめちゃ今が好きですね。多分、自分にルーズなところがあるわりに、責任がある方が好きなんですよね。

ー 宍戸さんがルーズって言うのは知らなかったですけど(笑)。

宍戸:実はそういう部分があるんですけど、デザインでも映像でも人に任せずに自分でやることによって、やる気が出てくる性分みたいで。気持ち的にもストレスがない分、すごく楽しく、厳しくやらせていただいてる感じです。

ー 今まで任せられる環境にあったけれど、今は自分で自分のケツが拭ける分、遠慮なく自我を出せる環境であって、試行錯誤さえ楽しんでいると。

宍戸:まさにそうですね。メジャーでやってるときも、「The Cheserasera、結局どんなバンドなんだろう?」って言われちゃう始末で、何を見出すかを明確にできなかった部分があって。そういう部分から自分たちのDIYで始めて、やっと面白くみられるようになったかなっていう実感があるので、より積極的にバンドに気持ちが向いていると思います。

ー 今回のアルバムをリリースすることさえも、契約云々ではなく自分たちの意志であると。

宍戸:そうです、フル・アルバムを出そうっていう。特に僕が今回思っていたのは、ライヴでのバリエーションの部分なんです。良いメロディを追求して、一辺倒になってしまったと感じたときに、もっと単純に音楽的にアンサンブルとかグルーヴにこだわったものを出したいっていうイメージがあって。

ー まさにライヴをやり続けていないと気づけない要素ですね。

宍戸:本当にそうで、ずっと同じ感じになりつつあったんですよ。リード曲を聴きたいお客さんもいるし、それはそれで嬉しいんですけど、そういう曲を入れてセットリストを組んでいくと、曲調が近いことに気づいていって。

美代:そういうときに”こんな曲があったらいいんだけどな”みたいな。バンドの持ち曲自体は増えてるんですけど、かゆい部分に届く曲みたいな風に絞っていくと、実はなかったりして。そういう要素は、曲を求める上で無意識に反映されて言った気がしますね。

ー イベント出演時とかはまさにそうですよね。時間は限られるけど、キラー曲以外もやりたい。そうするとバンドのアイデンティティを表すのに、難しくなる局面があるっていう。

宍戸:そうなんですよね。やっていくうちに、結局似たようなセットリストになったりして、自分たちが飽きてくるなっていうのもあって。今描いているライヴの理想があったからこそという感じはあります。

ー 因みに『dry blues』を作られたときは、その感情は生まれていなかったんですか?。

宍戸:作品っていうものに夢中だったイメージがありますね。どれもそうですけど、『dry blues』は作品としてのクオリティがめちゃめちゃ高いと思ってるんです。どっちらかというと、ライヴより作品に没頭していたと思います。

美代:まだツアーをやる前ですけど、『dry blues』のときよりはライヴ映えを意識してるのはあるかな。「この曲をライヴでやると、こういう動きができるよね」っていう観点があります。

宍戸:確かにパフォーマンス性が視野に入ってる感じはしますね。どう魅せるかとかいうところは、今作が1番強いと思います。

ー アルバムを出すことで、バンドが”こうなりたい”というより”こうする”という意志には、ライヴへの理想という起点があったと解釈をしても良いですか?

西田:そうですね。『dry blues』のときが、レーベル離れて自主になってっていう時期だったんで、今あるものですごく良いものを作らなきゃっていう気持ちが強くて。時間が経ったこともあるんですけど、そういう意味で今は地に足がついたところもあって、余計なことを考えずに1つのアルバムとか曲とかを作れるようになったんじゃないかなって気はします。

宍戸:スタートとしてそういう起点があったところに、今思っているメッセージを乗せていくっていう。

美代:再録曲とかもありますけど、単純にこのアルバムがThe Cheseraseraの決定版として届いて欲しいっていうだけなので。

より音楽的なディスカッションを掛け合わせていった(美代)

ー 実際に『幻』を聴くと、驚くほどに幅広いバリエーションのある楽曲が収められていて、まさに伺ったことが頷ける作品だと思います。そこには、今までのThe Cheseraseraで見せてくれていた白黒つけない曖昧さの面白さもそれぞれに成立していて、それは『12人の主人公の他愛ないお話』というコピーにも集約されていると思います。

宍戸:1人のThe Cheseraseraっていう作者の短編小説集みたいな感じです。昔から曖昧さっていうのを脈々と言われ続けてきたことだけど、作品性そのものなんですよね。例えば『ワンモアタイム』とかも、ストーリーは行ったり来たりするじゃないですか。街中を歩いてて「そういえばあれもやってないな、これもやってないな、けどあれやりたいな、次まだやってないな、あいつのことめちゃくちゃムカついたな」とか考えながら移動したりするわけじゃないですか。全てがそのものの瞬間の歌なんですよね。

ー それがリアルだし、そうやって言語化していくと” ぶれないもの”が『ワンモアタイム』を象徴する一節の1つだと思えました。

宍戸:その前に出てくる『夜は勝手に終わるから』の夜は、1つの盛り上がりで、必ずどんどん別のものに転がっていくじゃないですか。そういうものを追いかけるよりも、ぶれないものを持ちたいよねっていうことを、ここで言っているんですよね。この辺が『ワンモアタイム』で1番面白いし言いたいことなんですよね。

ー 加えて”nineteen eighty nine”を英語表記にされた部分にちょっと驚きました。勝手な思い込みかもしれませんが、宍戸さんの歌詞は英語に逃げないっていう印象だったので。

宍戸:なるほど、確かにそうですね。

西田:あんまり出てこないよね。

宍戸:実際に表記をすごい悩んだところでもあります。カタカナか数字で書こうかとも思ったけど、当たり前ですけど1番”nineteen eighty nine感のあるのって、これでしかないし、いろんな意味があるような単語でもないんで(笑)。

ー そうですよね。変な深読みをしてしまいました(笑)。序盤で印象的だったのが『残像film』で、歌詞の情景的にもイントロのフレーズから持っていかれる曲だなと。

西田:出来てみてなんですけど、ライヴで1番どういうポジションになっていくのが楽しみだなっていうようなリズム感ですよね。これ、イントロのベースフレーズはほとんど宍戸が考えてきて。スリーピース独特の不思議な雰囲気を出したかったのかなって思ってます。

宍戸:この曲はメロディーがすごく自然に浮かんできて。そのままイントロのフレーズやリズムパターンとかのイメージも出てきて、基本的なグルーヴは維持して守ってもらいながら、幅広げてもらった感じですね。

美代:このアルバムの中で落ち着いたというか、そんなキーワードが当てはまる曲なんですけど、僕はジャズも好きでジャズミュージシャンがやるような繊細なムードを演出したつもりですね。

ーしかも『Random Killer』のあとにですからね。

宍戸:いろんなバリエーションの曲をどう並べるかってもちろん悩んだんですけど、幅の広さと面白さがあるなっていうところですね。

ー 『幻』への流れはグッとくるものがあります。アルバム・タイトルにもなりましたが、曲名とセームタイトルになるのは『WHATEVER WILL BE, WILL BE』以来じゃないですか?

宍戸:確かに、楽曲名をアルバム名にしたのはそれ以来ですね。

ー アルバムのタイトル自体は楽曲完成前から決めていたんですか?

宍戸:完全に後です。いつもそうなんですけど、曲が出揃ってきてから「このアルバムはどういう感じだろう?」って考えています。その中で『幻』っていう曲が、僕たちの中ですごく新しくて、その割に肌に馴染んで。詩の世界観をとっても、何とも言えない脱力感となんとも言えない真理感みたいなのを僕は感じていて、それがアルバムの深みをより一層出してくれたなっていう意味でも、選んでいいなと思ったんです。

ー そのバンドにとって”新しい”ことを、具体的にあげるとしたら?

宍戸:横乗りが強いっていうところはそのうちの1つですし、曲のコードも凝っているんですけど、AORでよく出てくるようなビート感を前からやりたいと言っていて、この曲に落とし込めたんですよね。

美代:AOR、山下達郎さんのような感じだったりとかですね。他にも、シューゲイザー的なものもありますし。一方で『Random Killer』とかは結構ハード・コアかな思うし、ちょっと音楽で遊ぶって言えて、音楽で幅を持たせてバリエーション提供できるっていうのが、新しい部分かなとは思ってます。音楽的な偏差値じゃないですけど、みんな各々が高まってきてるのもあるし。宍戸がこういうアプローチで弾きたかったとか西田がこういうの弾きたかったみたいなものに僕のアイディアも入れて、より音楽的なディスカッションを掛け合わせていったこと自体も新しかったりします。

ー ジャンルで括るより”The Cheserasera”って括った方がむしろしっくりくると思います。

宍戸:確かにそうですね。

美代:もっとそうしていきたいですけどね、そういう意味では聴き応えもあると思います。

ー “まぼろし”っていう言葉を使っていながら、ここまでポジティブさが垣間見れる歌詞は深いと思います。

宍戸: 30歳にもなって、今はこういうことを思うってことですよね。辛いなっていうことをずっと吐き出し続けてきたんですけど、この曲だって辛いことがあってのこの答えで。辛いことありきだと思ってるんですけど、そういうことをわざわざ説教くさく垂れるんじゃなくて、こういう言い方でポジティブになれたらいいなっていう深みは、表現できた気はしますね。

グレーは別に曖昧なものじゃないし、白や黒と同じようにただそこにあるだけ(西田)

ー なのに、そのまま『ずっと浮かれてる』を聴いたときは…

西田:なんとなくハメられました?

ー はい(笑)。

宍戸:全然違いますよね。ふざけてるみたいですもんね(笑)。でも面白みがあってこの位置にっていうのはありますね。

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