清春、東京&大阪ホール公演『Covers』ファイナルでみせた、自由で麗しき美学

清春のライヴは、毎回その場でしか味わえないようなスリルに満ちている。この日はたとえば、『Covers』からの甘く切ない「SAKURA」や浮遊感と包容力を宿した「シャレード」などが絶品で、客席のあちこちから、声にならないような感嘆の声が聞こえてくる。

本編中盤の「影絵」や「loved」などの感情の高まりも特筆に値する場面だろう。ライヴが進行するにつれて、ますます歌が強靭になっていくのが清春という稀有なシンガーなのだ。いずれの曲にも、25年の活動を経てきた彼の現在の境地が感じられ、まぎれもない美が宿っていた。特に、本編を締め括る「輪廻」と「MELODIES」は、清春がいついかなる時も詩情に富んだ歌を作り出してきたことを再認識するハイライトだった。

観客の温かい拍手に迎えられたアンコールでは、『Covers』より「傘がない」の詩の世界が清春の解釈を得て、ひと味違った情緒を生み出す。「MOMENT」「FAIDIA」「海岸線」と立て続けに披露したブロックも、ステージに思わず手を伸ばしたくなるような名場面だった。

まだまだ清春の歌声に浸っていたいオーディエンスの願いに応えて、ダブルアンコールが放たれる。マイクが落下するというアクシデントにより、最初から歌い直すことになった「EMILY」は、清春ならではの鬼気迫る熱演。ラストは「heavenly」「ミザリー」で畳みかけ、輝かしい一体感を場内に生み出した。客席に幸せな笑顔が広がる頃、時計の針は午後10時近くを示していた。

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