あいみょん インタビューvol.52

—“イタズラも恋愛も、全てにおいて青春”

—そう訊くと、曲を聴くことで、あいみょんの描いたストーリーに入らせてもらった感覚もあって。僕はあいみょんと世代は違うけど、断定された世界ではなかったから、ある意味、どの世代であっても入りやすいなって。

あいみょん:そうやったら嬉しいです。私は共感して欲しくて曲を書いている訳ではないけど、それでも私の恋愛感や想像に入り込んでくれたんやったら、物語のラストを作ってくれたんだと思いますし。今は嬉しいことでありがたいことに、同世代の女の子のファンが多いんです。あとは、せっかくいろんな世代の音楽に憧れて、今の私の音楽があるので、老若男女問わずいろんな人にとって、残る音楽になって欲しいと思ってます。

—あいみょん自身がそういう経験をしてきたからこそだし、「君はロックを聴かない」の中にあるドーナツ盤みたいに、その人の何かになっていられる音楽は、あいみょんが言う”残る音楽”なんだと思うしね。

あいみょん:この曲でもそうですけど、私の曲でそうなってくれたら嬉しいです。

—もう1曲の「青春と青春と青春」のストーリーでは、場面展開も含めて”夢の中”が伝わってきますね。

あいみょん:夢と現実の狭間感があって、ホンマに夢ってわけわからんって(笑)。夢の中のくせに、ちょっと現実っぽさもあって。

—だからこそ、「まるで二人は駆け落ちして親から逃げているようだ」のように、メタファーがより引き立ててくれていて。

あいみょん:私、比喩表現の話をしてくれるのがすごい嬉しくて(笑)。昔から比喩がすごく上手なアーティストが大好きだから、憧れてたんですよね。実はすごい恋愛ソングを歌っているのに、超絶どうでも良いカステラのことを歌ってるとか(笑)。

—うん、あいみょんっぽい(笑)。題材を出さずに想像させるとことか。

あいみょん:文章を書くことがずっと好きで、読書感想文とかも得意だったんです。だから、勉強になると思って官能小説もメッチャ読みました。

—比喩のオンパレードだもんね(笑)。

あいみょん:そう。どれだけキレイな言葉を使ってイヤらしいこと表現するかとか、作詞に通ずる部分がありましたね。言葉のレパートリーとかボキャブラリーが全然足りないと思っているので、もっと本を読まなアカンと思ってますね。

—「電車の中 腰を丸めて文庫本を読む姿が本当神秘的で」の読んでる本が官能小説だったら面白いけどね(笑)。

あいみょん:あはは(笑)。でもこの曲の1節のきっかけは、アメトーークの「読書芸人」なんですよ。オアシスの光浦靖子さんが、女の子が文庫本を読むときの姿勢でモテる・モテないの話をされてて、その真逆を言おうと思ったんです(笑)。

—そんな話も入ってるのに、「君はロックを聴かない」と共通して、青春がありますよね。

あいみょん:本当にたまたまなんですよ。「青春と青春と青春」を入れようと思ったら、「あ、青春ってメッチャ言ってる」って(笑)。よく考えたら、私が「青春」って言葉が好きなんですよ。なんでも許される感があるというか。「あのとき、ピンポンダッシュしてムッチャ近所のおばちゃんを困らせた」とか言っても、「そうやな」って丸く収まるズルさがあるじゃないですか。

—しかも青い春って書くしね(笑)。青春でいうそのズルさって、恋愛でもあると思う?

あいみょん:うーん、イタズラって表現になると思うんですけど、例えば好きな女の子に男の子がイタズラするって、恋愛丸ごとやと思うんですよね(笑)。これって、メチャメチャ青春やと思うし、子供のときしかできないじゃないですか。大人になってからやってたら、相当ヤバイですけどね(笑)。この曲の「カレーライスの匂いなんかで誰かを愛おしく思う」の部分は、私の実家の近くって夕方になると、鯖の煮付けかカレーライスの匂いがするんですよ。だから、今でもカレーライスの匂いを嗅ぐと実家に帰りたくなるし、きっとそんなイタズラも恋愛も、全てにおいて青春やって思いますね。

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