The Cheserasera 『最後の恋 e.p. 』を引っ提げた完売御礼のツアーファイナル

宍戸はThe Cheseraseraの今を「一番良い状態にある」と語ったが、バンドを取り巻く状況は決して楽なものではない。彼らは昨年メジャーレーベルを離れて自主レーベルを立ち上げ、今は事務所との二人三脚で活動をしている。通常ならば逆境ともいえるこの状況が、彼らにとってはどうやら追い風になったようだ。その一因は、メンバー自らがバンドを動かしてゆく上で生まれた〈手作り〉の風土だろう。ジャケット写真やミュージックビデオなど、楽曲以外の要素もメンバー自ら手掛けるようになった。そして手をかければ愛おしくなるのは当然で、メンバーが作品に対する想いを語る場面も増え、それがより多くの人を惹きつけるという好循環が生まれていったのだ。

だからこそ、このタイミングで彼らが『最後の恋 e.p.』という作品を会場限定で発売したことはとても自然な流れに思えた。手作りしたCDを自分の足で全国に届ける。そういう地道だけど血の通った歩みがバンドをより強く、そして雄弁にしていったのだろう。ライヴの中盤は、その『最後の恋 e.p.』の収録曲で固める。焦燥感と繊細さを併せもつ美代のドラムが肝の「退屈」と、しょうもないけど愛しい青春を転がるビートに乗っけた「物語はいつも」を立て続けに演奏すると、新曲を心待ちにしていた観客たちの歓びも最高潮に達していった。

「Blues Driver」を経ての本編最後のMC。宍戸は堰を切ったように思いの丈を語り始めた。『最後の恋 e.p.』を事務所とバンドだけでプロモーションしてきたこと、それゆえに思い入れが強いこと。そしてバンドを続ける中で経験した色々な別れにも触れ、「他には嘘をついたかもしれないけど音楽だけは嘘を吐かずにやってきました。すごくいいバンドだと思っています」と、会場を埋めた大勢の観客たちに改めて宣言したのだった。そして「ここになかったらどこにあるんだろう……〈最後の恋〉という曲です」と「最後の恋」へ。颯爽とした曲調に次々と手が上がると、美代は立ち上がってドラムを叩き、西田も前に出てハンドクラップを煽る。そこからラストまでは、まさにキラーチューンの揃い踏みだった。「春らしく前向きな曲を」と前置いて始めた「ファンファーレ」も、「東京タワーも」も一瞬の曇りもなく冴え冴えと響き渡る。そしてラストはジャキジャキのロックンロール「I Hate Love Song」で終了。サビ終わりの〈笑わせんなよ〉は、宍戸に代わって観客たちが大合唱し、ステージとフロアがひとつになっての大団円となった。

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