金子ノブアキ インタビュー

時間と余裕とWi-Fiあったら聴いてみてぐらいの感じで。縁があった人には何でも力になりたいけど、全人類を救うことはできないじゃんっていうのもあったり。そこを永久に行ったり来たりしてる。変な言い方だけど、今回はそういうとことは全然切り離した無責任なところで、正直にやろうっていう中で『illusions』が生まれたっていうのはありますね。

― その生まれた『illusions』のMVでは、先ほどからキーワードになっている”東京”がフィーチャーされています。個人的な興味でもあるのですが、東京で生まれ育って、ずっと東京で生きている人から見る東京は、どう映っていますか?

街としては、メチャメチャ受動的ですよね。やっぱり、外から来た人が回してくれてる街だと思うし、回ってる場所って人が集まってるからそういうことになると思うし、情報の通り道であっても終着点ではないです。個人的には、そこで止まってるイメージがなくてパーっと通り過ぎていくし、それをインストールしていく感じ。島国で戦争に負けた歴史の中で、いろんな文化が開かれてバーッと入ってくるようになってる。例えば、オリンピックが2年後っていうのも含めて、今すごく活性化しているけどそれがワーッと引いて、そのときに何が残るかっていうと、この街の受け身な部分っていうか、元々暮らしてる人たちはただ普通にしてるはずだと思うんですよね。そのときも、僕はこういうものを作ってたいなと思うし、『illusions』はその始まりの曲かもしれない。そういう意味では、テーマ性も合ってて、祭りのあともちゃんと気高くやってるんだっていうことを、ずっと宣言し続けなきゃいけないと思う。

― 今のお話を伺うと、『defeat illusions』もすっと入ってきますね。『illusions』と相反するような、静寂にある灯火のようなサウンドも、金子ノブアキの真骨頂というか。

個人的にですが、カップリングやリミックスでよく意識するのは、肉体と意識みたいなところなんです。今回は表題曲がこれでもかっていうくらいの肉体性を持ってるんで、逆に引いてったら面白いだろうなと思って。『defeat illusions』の方はPABLOのギターをすごいフィーチャーしてるんだけど、レコーディングではギターが1番最後だったんです。彼はカッコイイ音をたくさん送ってきてくれたんだけど、入り切る場所が限られてて。それで、ギターの音とかもMIDI化したりして、彼の音を基にリスペクトも込めてあの曲になっていったんですよね。あとは逆張りのリスペクトで、日高君のラップはブリッジから出てくるっていう作りで、極限まで引いていったところでも、あのラップを響かせてみたくて。テンポもコードも『illusions』と同じままで、半分は遊びかもしれないですけど、そういう感覚を大事にしながら、禁じ手やってナンボみたいなとこもあるかなと(笑)。『whitenight』もそういう意識で作りました。

時代が進むとやっぱ面白いことがある

― 繊細でいながら、飽きが全く来ないんですよね。

元々はあさみちゃんと美術館の個展の曲として存在してたんだけど、それを草間さんと2人で改良して。アンビエントだと、同じものが出ずに繰り返さないっていうは重要なんです。本当にゆっくりと通り過ぎてく感じで、ストーリーを作るのは難しいです。おっしゃる通り、音を作っても”これは◯分ぐらいから入れよう”って、意外と繊細なんですよね。

― 逆にロックをずっとやってきて、リフレインの良さを知っていながらのこのアプローチは驚かされました。

ロックだと音もでかいし、ある程度は誤魔化せるんだけどゆっくりになると、打点に誤魔化しがきかないし、掛け違えたまんまゆっくりいくとか超気持ち悪い(笑)。そう考えると、すごく納得のいく内容になりましたね。

― 『illusions』もそうですが、こうやって金子ノブアキとして今の時代に何を提示していくかということが、どの曲にも凝縮されているからその納得度も高い気がします。

個人レベルの名前でリリースというのは、ものすごい提示に近くなりますよね。バンドで「一緒にいこうぜ」とか「ライヴにきてくれ」ってやってるときよりも、「俺はこう思うけどみんなはどうだ?」っていう、押し付けない提示みたいなね。青臭いですけど、バンドって青春なので、最近だと映画の『SUNNY』みたいに一瞬で15、6歳に立ち返るような美しさがあるけど、僕個人でやってるときはもうちょっと違いますよね。提示そのものというか、手渡しでそれを渡すんなら渡すし、ここに置いとくんでぐらいの感じと思ってもらえるとすごく嬉しくて。バンドも僕個人も同じぐらいの熱量と繊細さで臨んで、そこにあったある種の境界線が取っ払われたっていうのは、初めてのことだし個人的にもすごく興味深いんです。アンビエントとラップでいけるじゃんみたいな盛り上がりあるし、すごく異端でどこにもないみたいなものを企みたいんですけど、その発端が『illusions』なのかもしれません。

― イントロからすでに彷彿してますからね。

38秒ぐらい歌が出てこないからね(笑)。先日も『illusions』のテレビ収録(Love Music)があったんですけど、この曲で民放がフル尺ですからね。昔出ていたポンキッキーズとかの頃を思い出したりして、胸が熱くなってました。バンドでも来たけど、ソロでも来てまさかの生演奏でフル尺はスゲェと思って。RIZEを始めた頃に「覚えてろよ!」と思ったときから、時代が進むとやっぱ面白いことがあるなと、本当に胸がいっぱいでした。

― (笑)。その気持ちって、すべての原動力の源じゃないですか。

エンジンですよね。説教くさいけど、若いときに苦労は買ってでもしろみたいなのって、案外あながちだなと思った。

― 今年の頭に、ニューヨークタイムズの調査で10代に聴いた音楽が、成人になったときの好みを形成するっていう内容があって。音楽はもちろんのこと、そのときに感じたことが今に繋がっているんだろうなと思います。

間違いないですね。僕はこっちの現場で、今回の日高君からenraや清川あさみちゃんっていう、同じ根幹だけど物理的な方法が違う人とやってるのは、学生時代、周りに歌舞伎役者とかバレエダンサーとかいっぱいいた環境だったのは大きいと思う。そのバレエダンサーのヤツが仲間内でやってた舞台があるんですけど、そのBGMを僕が作ったりしてたんですよ。最近、ふと思い返したときに”原体験はなんだろう?”ってまさに13歳から18歳までなんです。90年代のストリートカルチャーと所謂古典も含めた芸能のあらゆる表現をする人と、同じ学び舎にいた体験が財産ですね。

― 自分へのギフトみたいな感じですよね。今バンドもソロもやっているのは、そういう原体験があってっていうのはとても納得できます。

報酬ですよね、本当に。中学でRIZEを始めて、高校で表現者たちとの交流があって。僕は子役時代も含めて、今成立して飯が食えてるのはかなり運が良くて、そう考えると時間がもたらすものって計り知れないものがありますよね。だからこそ、現在進行形のものに関しては、やっぱり切り開いて破壊していかなきゃいけないなって。作り始めたときに、同じことを出しちゃうと「それは停滞だ!」って自分が感じるところにいたんでしょうね。みんなを良い意味で裏切りたいし、今回のように「トライバルかい!」みたいな(笑)。

― (笑)。ある種、原始的な立ち還りもありながら、そういった破壊をすることでもたらされる新しさが、この『illusions』にはありますよね。

そうそう。トライバルに乗せてグレゴリオ聖歌みたいなコーラスも入れてね(笑)。両極なところだけど、それを東京でやったらカッコイイだろうなというのに、僕なりのパンク精神が込められているんです。”マジでバカはパクられろ!”ってことをトラックに乗せて言っていくことだと思った。

― 『illusions』はその象徴的な作品ですが、金子ノブアキ・RIZE・AA=・俳優業のどのチャンネルからも、金子ノブアキの姿勢とか生き様を見せてもらってる感じがするんですよね。

それは嬉しいですけど、まさか全部をやれれるとは思っていなかったんで(笑)。それでも唯一、まだまだ掘りたいのは、映画のサントラや舞台の音楽監督とか、表に立たない裏方の仕事ですね。40歳手前で家族もできて、年齢的にもどういう風になったら1番いいかなみたいな。生涯現役はもちろんなんだけど、僕はドラマーっていう性分もあるから、相手ありきでバランスをとることが得意な気がしてるんです。

― 昔からすごいフロントマンとバンド組んでますからね(笑)。

ものすごく恵まれてきたキャリアですね(笑)。JESSEと子どものときからバンドを組んでやってたっていうね。そういう中で、映画のサントラや舞台の音楽監督というとこにリーチし始めているから、足りないスキルも分かってきてて、とにかくそれを磨く時間が欲しいのが今です(笑)。

― こんなに忙しいのに(笑)。情熱を注いで、どうこの時代に爪痕を残してやろうかみたいな気概は、表に立っていなくても出せますしね。逆に作品が手を離れて、秋から始まる「nobuaki kaneko showcase 2018」があるように、もう1度オーディエンスと作り上げていくことには、どういった楽しみを期待していますか?

とにかく、びっくりするぐらいどんどん変わっていくんですよね。よく「ライヴで育っていく」って言うけど、本当にそうで。先日のテレビ収録で生演奏でさえ、メチャクチャ新鮮ですごい楽しかったんですよね。今回は3本ですけど、特にこんな曲を出して回るツアーだから、過去の作品とかがすごく際立ってくると思うんですよね。この曲をどの辺に入れ込むかっていうのもあって悩んでます(笑)。

― コントラストは、間違いなくハンパないと思います(笑)。

例えばパティスミスがやってる朗読は素人ながらパンクじゃんと思える。今回ラップを乗せたのはそういう精神があるからで、誰もいないところに行きたいからなんです。振り返れば、急に芸能界へ戻ったこともそうだったかもしれないし、バタフライエフェクト的にいろんなことが起こるように、どんな場所にいてもちょっとした穴を見つけて開きたいんですよね。

― RIZEを始めたことでさえ、パンクの精神じゃないと組まないですからね。

本当そう、親が全員バリバリのミュージシャンの2世で生まれちゃったしね(笑)。人間は育った環境がほとんどだと思うし、それこそさっきの10代で構成されてるところから、その中でもどんどん変わっていけるんだっていう、僕自身の欲望みたいなもを凝縮しているのが、全ての活動で出していると思う。そこに自分の何かを軽く当てはめてもらえたら、それが1番幸せなことですね。

― 『illusions』で見つけた穴が、大人の悪巧みでどう開かれていくかが楽しみです。

「これオモロくね?」「これ本気で出すの?」「ヤバイ、何これ?」みたいなリアクションが来たら、最高に嬉しいです。やっぱり、僕たちみたいなヤツらは気持ち良く、楽しくてカッコイイと思ってることを、純粋にパコーンとやるのが1番良いでしょ。それがアンビエントみたいな音像でもやる精神性が重要だし、草間さんと作ってきたアンビエントの音源をまとめたものがあるんだけど、どこかで使えないかなと今も悪巧み中です(笑)。


text Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330
Photo Atsushi Tsuji

デジタル配信 EP「illusions」


2018年10月3日リリース
1. illusions feat. SKY-HI
2. defeat illusions
3. whitenight
4. オルカ Live from Voyager 2017※
5. Firebird Live from Voyager 2017※
※2017 年 enra × 金子ノブアキ VOYEGER 世田谷パブリックシアター LIVE 音源
Spotify:https://open.spotify.com/album/0DGR7ZB0DHRDgNzC0tjcIj
iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/id1435484520?at=10l7qr&app=itunes&ls=1
Apple Music:https://itunes.apple.com/jp/album/id1435484520?at=10l7qr&app=music&ls=1

ライブ情報

nobuaki kaneko showcase 2018 autumn

10月27日 (土) 大阪・バナナホール
10月29日 (月) 名古屋・ブルーノート
11月4日 (日) 渋谷・WWW X
チケットぴあ:http://w.pia.jp/t/kanekonobuaki/
ローソンチケット:http://l-tike.com/nobuakikaneko
イープラス: http://eplus.jp/kanekonobuaki/
楽天チケット:http://r-t.jp/nobuakikaneko
名古屋公演:https://www.nagoya-bluenote.com/ticket/rsvpub/seatsel.aspx?eventdatefrom=18/10/29&eventdateto=18/10/29

enra × 金子ノブアキ「VOYAGER」

開催日:12/9(日)
会場:仙台 電力ホール
時間:OPEN 15:30/START 16:00
チケット:全席指定 ¥6,000

金子ノブアキ

ホームページ:http://kanekonobuaki.com
Twitter:https://twitter.com/KanekoNobuaki
Instagram:https://www.instagram.com/nobuakikaneko_official

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