ムーンライダーズ、名盤「カメラ=万年筆」完全再現ライブを開催

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演奏の途中、フロア・ステージのセンターには2台のバケツが置かれ、鈴木博文が両手で水を掬ってチャプチャプと音を出す。各楽器が各々不協和音めいたノイズを発信し、やがて、そのノイズが映画「第三の男」の、お馴染みのメロディに変わる。
続いて、間髪入れず白井良明のギターリフがかき鳴らされ、3曲目の「無防備都市」に移行。画面の向こうのライダーズ・ファンなら既に気がついているだろう。そう、この日のパフォーマンスはアルバム「カメラ=万年筆」の収録曲順に演奏されているのだ。
まさに同アルバムの完全再現。前述のバケツ・パフォーマンスは、後半の「ロリータ・ヤ・ヤ」にも登場し、今度は鈴木慶一が担う。なんだか実験工房での光景のように見えるが、これは当時のレコーディングで実際に使われていたものをステージで再現。
楽器以外の音も貪欲に取り込む、今ならサンプリングで簡単に出来ることを敢えてアナログ・スタイルでアプローチしていた。ちなみにこのバケツ、故・かしぶち哲郎がステージで”演奏(?!)”用に購入したもので今回、それ以来2度目の使用となったこの実験工房スタイル、5曲目の「24時間の情事」でも登場。
後半の「エーヤーオー」コーラス・パートになると、鈴木慶一が電気掃除機を手に持って各々のメンバーの前に立ち、歌を吸い取っていくというパフォーマンス。なんとも不思議な光景だが、これも実際のレコーディングに使っていた電気掃除機の音をを再現。

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7曲目の「沈黙」の後半、(本来の)ステージにはスポットライトが当てられる。浮かび上がったのは、真っ赤なドレスを纏ったゲストの佐藤奈々子。その場で佐藤は詩の朗読を始める。続いて、本アルバムで佐藤が書き下ろしたLPではA面ラストの「幕間」に。
武川雅寛のヴァイオリン、白井良明のガット・ギターの演奏をバックに淡々と歌うさまは、歌詞にある「デカダンス」の雰囲気が横溢。彼女は、その後「Kのトランク/MANIA MANIERA(1982)収録」でも曲を提供しているが、ステージでの共演は久々だという。
佐藤は当時のレコーディングにも参加した唯一のゲストで、実際のアルバムに沿って、続く「ロリータ・ヤ・ヤ」「狂ったバカンス」「欲望」でもボーカル、コーラスで参加。

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