WANIMA全国ツアーのファイナル公演「WANIMA COMINATCHA!! TOUR FINAL LIVE VIEWING ZOZO MARINESTADIUM」はスタジアムでの初の無観客ライブ!!ド迫力ライブを10万人が視聴!!

「ZOZOマリンスタジアム、めちゃくちゃ楽しいです、ありがとう!」そうオーディエンスに語りかけるKENTA。ライブでの彼はいつもお客さんひとりひとりの目を見るように語りかけるが、この日は直接顔を合わせられないぶん、いっそう丁寧に言葉を重ねているように見えた。自宅、映画館、ライブハウス、それぞれの場所でこのライブに参加しているひとりひとりに向けて、「どんどん行きます!」と宣言するKENTA。「いつもと違う夏をどんな感じでお過ごしでしょうか?」という一言から放たれた「夏のどこかへ」と「GONG」を挟んで、KENTAがひとり語り始める。遠くに行ってしまったお祖母ちゃんに向けて書いた歌をやります、自分のことで申し訳なかだけど、たぶん今もどっかで見とるはずだから――そうして演奏されたのは、そう、「Mom」だ。さらに強まったように見える雨に打たれながら、思いの丈を広く、遠く届けていくKENTAの歌。FUJIの叩くドラムからも水しぶきがあがる。スタジアムのスケール感と曲に込めた感情が相まって深い感動を覚えるシーンだった。

ここでメンバーは「Baby Sniper」を歌いながら花道の先に作られたセンターステージに移動。SNSでのコメントを読み上げたりしながらたどり着いたステージでは3人で向かい合うポジションで新曲「MILK」を力強く鳴らすと、立て続けに真夏のエロかっこいいソング「渚の泡沫」へ。この曲と続く「いいから」では、この日のために準備された世界初の映像技術「soundiv.」によって、ステージを取り囲むようにセッティングされたカメラによるリアルタイル360°映像が映し出されると、配信ライブならではのインパクトを生み出した。そして、「今見てる場所からともに歌ってもらってもいいですか?」という問いかけを経て、WANIMAとファンを結ぶ1曲「ともに」を届ける。メンバー3人がお互いを鼓舞するように向き合って鳴らし出すテンションの高い音がひときわ力強い。

センターステージで4曲を披露し、再びメインステージに戻った3人。KENTAは会場の美しさを「みんなに見せたかった」と正直な感想を口にする。それでも「なんとかみんなに届いていることが嬉しい」とこのライブを実現できた喜びを語ると、今日という日に懸けた思いを語り始めた。「俺らもライブ中止になったけど、みんなもいろいろあったと思う。これからもWANIMAとともに生きていってほしいと思います。いつも大丈夫とは言わんけど、今日は言わせてください。大丈夫やから。生きとったらなんとかなるから」。なぜこういう形でライブをするという決断をしたのか。どんな思いを抱いてこのステージに上がったのか。その思いのすべてを乗せた「りんどう」で、全身全霊で歌うKENTA、気持ちの入ったギターを弾くKOSHIN、雨に時折顔をしかめながらもスティックを思いっきり振り続けるFUJI。生のストリングスセクションも参加した温かみのあるサウンドが心に響いた。本編ラストは一転してアッパーな「GET DOWN」。明るく照らし出されたステージで、3人の笑顔が弾ける。曲の終わりには3人の後ろに大輪の花火がいくつも上がった。それを見上げるKENTAの表情が印象的だった。

と、そこにいきなりカウントダウンの映像が挿入される。「緊急告知」の文字に続いて明らかにされたのは、9月23日(つまりこのライブの翌日!)に新作ミニアルバム『Cheddar Flavor』をリリースするというWANIMAからのプレゼントだった。今アナウンスして、明日にはお店にCDが並んでいる。いろいろな人の協力のもと実現したこのサプライズに、KENTAも「ヤバくない?」とはしゃいでいる。3人がピザを囲んでいるジャケット写真も公開して、その新作からタイトル曲「Cheddar Flavor」を披露。重たいリフとリズムが引っ張るパワフルなナンバーだ。そして最後に演奏されたのは、こちらも新作に収録される……というより、「COMINATCHA!! TOUR」で演奏され、その後ツアーが中止になるやいなや最速で配信リリースされたという意味で今年のここまでのWANIMAの始まりとなった1曲「春を待って」だった。前と同じようにゼロ距離でともに歌える「春」が来るその日までの約束の歌。「応援するから、応援してくれよ!」。WANIMAとファンの関係を一言で言い表したようなKENTAの言葉とともに、長かったツアーの「ファイナル」は幕をおろしたのだった。

今回のライブ、筆者はスマートフォンで配信を観つつ、後半は実際にライブビューイングが行われている映画館でも体験した。声を出したり暴れたりということはこのご時世もあってできないが、それでも大画面に映るライブの迫力に、客席からは大きな拍手が巻き起こっていた。『Cheddar Flavor』のリリース情報が解禁されると、思わず「え? 明日?」と驚く人も。終演後に何人かのお客さんと話をすることができたが、「COMINATCHA!! TOUR」に行った人、行く予定だった人、初めてWANIMAのライブを観たという人。友達どうしやカップルから親子連れまで、さまざまな人がこの日を心待ちにしていたことが伝わってきたし、ステージからKENTAが放っていたメッセージがリアルタイムで届いていることもちゃんとわかった。物理的な距離はあるけれど、その意味ではこれもまたたしかに「ライブ」だったのだ。

WANIMA

【LIVE VIEWING @横浜F.A.D】 text by矢島大地

9月22日(火・祝)、WANIMAが無観客配信ライヴ『COMINATCHA!! TOUR FINAL ライヴビューイング』をZOZO MARINE STADIUMにて行った。この模様は全国286ヵ所の映画館と12ヵ所のライヴハウスでも中継された。大声禁止・マスク着用・着席が徹底されている中でも、特にライヴハウスでは「久々にここ(ライヴハウス)に来られて嬉しい」という声を聞くことができた。WANIMAがバンド初期から出演し、彼らのホームのひとつとなっている横浜F.A.Dでは、開演前からこのライヴハウス特有のズッシリとした爆音と、ライヴハウスという空間を人と共有することの喜びが充満していた。ライヴハウスの音響でライヴ配信を楽しむ体験は多くの人にとって初のことだっただろう。しかし違和感を覚えるどころか、壁や床がビリビリと鳴るほどの巨大な音に包まれながら観るライヴには驚くほどの没入感があり、観客それぞれが「歌ってはいけない」というガイドラインを守りながらも、表情、握った拳、体の小刻みな揺れ……それぞれの興奮と高揚を隠さなかった。

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