Kitri

新しい編成で挑んだ『Kitri Live Tour 2021 AW キトリの音楽会 # 4 “羊飼いの娘たち”』 12月18日(土)東京公演@恵比寿ザ・ガーデンホール

Kitriが開催しているワンマンツアー『Kitri Live Tour 2021 AW キトリの音楽会 #4 “羊飼いの娘たち”』の東京公演が、12月18日、恵比寿 ザ・ガーデンホールにて行われた。この『キトリの音楽会』というタイトルを冠して積み重ねてきたツアーは、もともと“ピアノ以外の様々な楽器も2人で演奏する”ところから始まったが、前回の「#3」ではギター&マンドリンに羊毛(羊毛とおはな)が参加し、3人編成でのパフォーマンスに挑んだ。そして今回「#4」では、チェロ&クラリネットの吉良都が加わり、4人編成へ。ライブ全体を通して、ふくよかなアレンジで楽曲を届けていくツアーとなった。

 今年6月には『Kitri Billboard Live 2021SS「Kitri & The Bremenz Live」』と称して、5人編成でのライブをビルボードライブ横浜で行っているため、今回がKitriにとっての最大編成というわけではない。しかし、その「The Bremenz Live」でのジャズテイストな演奏が会場にフィットしていたのと同様、チェロ&クラリネットを交えたというのは、ホールで最も効果的に楽曲を響かせるためだったと言っていい。2人組のユニットだからこそ、会場や環境に合わせて届け方を変えていける。それもライブにおけるKitriの強みだろう。

 そしてもう1つ、今回の編成が示唆しているのは、Kitriの音楽そのものがより開けたものになってきているということ。アニメ『古見さんは、コミュ症です。』(テレビ東京系)主題歌である最新シングル曲「ヒカレイノチ」を筆頭に、アルバム『Kitrist II』収録曲「青い春」など、今年リリースされた楽曲はポップスとしての意識がより高まっている。もちろん、網守将平の秀逸なアレンジによって一筋縄ではいかない楽曲になっているのだが、クラシックと同じくらい影響を受けているという大橋トリオのように、ポップスとしての完成度も体得してきている、ということだろう。この日はホールという最高の場所で、そんなKitri流ポップスを存分に味わえる一夜となった。

 開演時刻、ゆっくり照明が暗くなると、Mona、Hinaの2人がステージに登場。クラシック曲「マ・メール・ロワ No.3」からライブがスタートした。続く「シンパシー」では、ささやくように静かに、それでいて確かな熱量を伝えていくMonaの歌声に、Hinaが温かいコーラスを重ねる。「NEW ME」も連弾スタイルで披露されたが、音源ではサックスやギターも自由に交えたダンスミュージック的な印象が強かったのに対し、こうして2人だけのピアノ演奏で聴くと、技巧的な鍵盤運びや、歌詞に込められた〈好きなようにそのまま生きていけ〉という意志が、一層強く浮き彫りになる。

 ここでサポートメンバーの羊毛、吉良が加わり、4人での演奏が始まった。まず、この日のセットリストの中でもとりわけファンタジックな1曲「水とシンフォニア」からいきなり引き込まれた。軽やかな歌から、グリーグ「ペール・ギュント」組曲「朝」にオマージュを捧げた間奏への繋ぎにおいて、ギターが生き物のように、チェロが森に吹く風のようになって、楽曲に壮大さを与えていく。「赤い月」では、爪弾かれるギターと、メランコリックなピアノフレーズが夢の世界へ誘ったかと思えば、Kitriのもう1つの側面である“妖しさ”を、吉良のクラリネットが艶やかに引き立てていく。4人編成になったことで、特に間奏における聴き応えがグッと増した印象だが、次の「傘」と「Lily」では、Kitriの魅力が陽だまりのような“歌”であることも再確認できた。“ライブ前のルーティーン”をテーマに話したMCで会場の笑いを誘うと、「時の詩」を丁寧に聴かせて第一部が終了した。

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