独自の画風を確立したコロンビアの巨匠、フェルナンド・ボテロの波乱万丈な人生と、多幸感あふれる創作の秘密に迫る傑作ドキュメンタリー『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』が4月29日(金・祝)よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショー、公開する映画と展覧会に向け、事前に知っておくと見どころがわかるボテロ作品の鑑賞ポイントをご紹介します。
鑑賞ポイント①:ふくよかなポイント、そうでないポイントを探す
ボテロの絵に出てくる人物や動植物、モノなどのイメージは、どれも大きく膨れ上がっているが、よくよく見てみると、すべてのパーツが一様にパンパンに膨れ上がっているわけではないことに気づく。
たとえば人物画なら、まずは「顔」を見てみると、目や鼻、耳といった顔のパーツは、膨張した顔そのものに比べると非常に小さく見え、顔のパーツは通常サイズのままに据え置かれている。
あるいは手や足を見てみると、腕や太ももは大きく膨らんでいるのに、指先や足先は、通常サイズで描かれている。
このように、ボテロの絵ではメリハリのついた、設計された「ふくよかさ」が演出されている。
彼の絵画や彫刻を鑑賞する時は、作品のどのポイントが特に大きく、豊満に誇張されているのかをじっくりと観察してみてほしい。
「ふくよかではない」部分を合わせて見ていくことで、ボテロの表現したかった「ふくよかさ」の本質がよりクリアに見えてくるはず。
鑑賞ポイント②:色彩のバランスを楽しむ
ボテロの「ふくよかさ」は、第一に「かたち」として描き出されるが、そのかたちの面白さをさらに引き出しているのが、ボテロに備わった抜群の色彩感覚。
彼の色彩感覚は生まれながらのものではなく、長年の絵画修行によって少しずつ獲得してきたもの。
明るく華やかで、安定した色使いはルネサンス絵画から学び取ったもの。
イタリアの古典絵画では数百年前から伝統的に使われてきた、「緑」と「赤」、「黄」と「紫」など、色相環上の反対色を効果的に使う配置も面白い。
鑑賞ポイント③:背景に見る、ワンポイントの遊び心
ボテロの作品は、画面の中央に描かれた主役以外にも見どころがたくさん。
主役の人物を一通り見たら、彼らが手に持っている小物や足元に落ちているアイテム、そして画面の背景などにもくまなく目線を走らせていただきたい。
大抵の作品で、絵にストーリー性を持たせるような小道具や、過去の名作へのオマージュ、クスリと笑えるような人物などが描き加えられていることに気づくはず。
かつてラファエロやゴヤ、ベラスケスがそうしたように、さりげなくボテロ本人が絵の中に登場するケースもある。
室内画では、画面内に描かれた引き出しやドアの一つが、なぜか少しだけ必ず半開きになっていたり、室内灯は必ずといっていいほど天井から垂れ下がった裸電球で表現されていたりと、ボテロならではのこだわりが詰まっている。
フェルナンド・ボテロ 豊満な人生
監督:ドン・ミラー |2018 年|カナダ|英語・スペイン語|ビスタ|デジタル5.1|82分|原題:BOTERO
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム
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