冨田ラボ インタビュー

ー冨田さんと言えば数少ない貴重なコンサートがありますが、冨田ラボの初ステージは渋谷AXが最初ですか?

そうです。冨田ラボを一過性のものにしたくないという想いが強くあって。プロデュース活動を続けていくのはもちろんですけど、同様に冨田ラボも継続しておこなっていくのにコンサートという流れは自然だったと思いますね。で、「Shipbuilding」のときもそういう話は出ていたんですけど、実現には至らずに「Shiplaunching」で実現しましたね。

ーそれでは1回目は満を持してだったのでしょうか?

それがですね、「Shiplaunching」制作タイミングに「今回はコンサートをやろう」という話はしていたんですけど、制作に集中してるからあんまり考えてなかったんですね(笑)「レコーディングしてるメンバーが揃うならね」って上の空なことを言ってましたね。

ーアルバムの制作の構想も出来上がってないタイミングなのに、考えられないよってことだったんでしょうね(笑)

もちろん、コンサートをやれるっていうのは嬉しいことだったんですよ。ただ、ストリングスやホーン・セクションはいつもやって頂いている方はいますけど、リズム隊は自分なので(笑)要はいつもやっているっていう、リズムセクションの方がいないんですよ。そうなると、1からどういう人がいてとかから始まるから、満を持してかというと演ることについてはそうでしたけど、実際はそういうこともあって(笑)

ーそこで、実際のコンサートの1曲目が新曲だったのが、冨田さんらしいなって思いました(笑)

2部の最初がジャズのギター・カルテットのような長い曲なんですけど、それを1曲目にしようとしていましたからね。それはないだろうって辞めましたけど(笑)

ー(笑)そういったコンサートの構成とアルバム制作での構成は、冨田さんの中で違いはありますか?

特別ないですけど、もちろん楽しんでもらえるようにということは考えました。インスト2曲はリハの最中に作った曲なんですけど、最初はインストでそのあとに歌モノっていう構成で、さらに2部にしようというのは考えていましたね。スタンディングのコンサートで2部構成はないだろうというのをあとで聞かされましたね。僕が今でもそうなんですけど、そんなに多くコンサートを観る方ではないのと、観るにしても座って観るものが多いので、せっかくだから2部構成の方がゆったり出来て良いと思ったんですが、スタンディングだと動けないですからね(笑)

ー2度目のブルーノートで、それは解消されているから大丈夫だと思います(笑)今年開催された“INSTRUMENTS & VOICES”では、コンサートに向けた事前施策として、YouTubeにデモ音源を発表するという試みがありました。

あれはスタッフのアイディアですね。今までのShipシリーズだと曲毎にアーティストが違うので、違うボーカリストが何曲か歌ってもコンサートとしての違和感はそんなに感じなかったんですけど、「Joyous」はあの4人を強固にし過ぎてしまっているというか…あれは作品としてすごく成立しているんですけど、4人に絞る構成にしてしまったので、今までと同じようにその「Joyous」収録曲を演って、それらを違った人達が普通に歌うということは”置き換え”という印象が強くなってしまうなと。そうならない為に何が出来るだろう?ということで、「VOICES」として3人が殆ど全曲にいて、3人が一緒に歌ったり、半分インストのようなボーカル曲も入るスタイルにしました。そのアイディアにしようと思って最初にできたのがYouTubeにアップした曲なので、僕の中では今回のユニット用っていう位置づけだし、1曲目に演る以外考えられなかったですね。先にYouTubeで予習してもらってからコンサートで演奏する形は楽しかったですよ。

ーもちろん、今回のコンサートでも披露された「都会の夜 わたしの街」と「この世は不思議」のアナログ(7inch)を昨年リリースされましたが、実は冨田さん初なんですよね?

そうなんですよ。僕がプロデュースしている作品の99%がCDフォーマットなので、CDのマスタリングについてはたくさんの経験があるんですけど、アナログは去年の7inchが初なのでカッティングということに対して、どういうスタンスでいれば良いかが僕の中にないわけです。で、CDのマスターをそのまま使用するか、アナログを作るためにマスタリングし直すのかを考えて、去年はマスタリングし直したんですね。当然、初めてだから「なるほど」っていう発見があるわけです。

ーでは今回の「Shipbuilding」と「Joyous」のアナログはそれを踏まえて?

CDのマスターをそのまま使用することにしました。アナログ・マルチでハーフといった時代のものと、マルチ段階でデジタルのものでは根本的に違いますしね。今回、CDマスターをそのままアナログにした理由も、そもそも最終形がCDではないという時点で別の要素が加わるということ、そしてそれは対応しなければいけないような悪いことではないとの考えからですね。元々がハーフではないし、アナログマルチでもないですけど、制作時に表現したかった質感が損なわれるということはなかったからですね。

ー質感もそうですし、アナログ特有のシチュエーションという部分で、A面からB面へ返す作業というのは、音楽を聴くためだけに使う時間を確保することにも繋がると思います。

それは重要ですね。音楽に対する集中度が全然違いますから。ラジオから流れてくるものとも違って、一面が短いから”ながら聴き”していても若干音楽を気にかけてしまう(笑)音楽と対峙して聴く姿勢が出来るという部分はありますね。レコードになることによって、そういう聴き方をしていなかった人達にまた楽しんでもらえたらと思いますね。

ー最後に、既にいくつかの新曲も披露されていますし、コンサートも待ち遠しいファンが多いと思います。冨田ラボとしての今後の活動について、お聞かせ下さい。

あまり具体的には話せることがないんですけどね(笑)ないんですけど、年内には新しい制作を始める予定です。フォーマットをどうしようかも、まだ何も決めてませんけど。今度こそは、そこまで間隔を空けずにリリースと、それに伴うコンサートを行えたらと思います。って本当に毎回言ってますけどね(笑)


取材:2014.04.24
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330
Photo by kamiiisaka hajime

1 2 3

4