THE MAN インタビュー

5月21日にメジャーデビューアルバムをリリースTHE MAN。そのリーダーとして長年、スカシーンの最前線で活躍し続ける冷牟田竜之。THE MAN結成から進化の過程をPART.1ではお届けします。

ーメジャーデビューおめでとうございます!

ありがとう。

ー改めて「THE MAN」結成について、詳しくお伺いさせて下さい。

あのね、DMG(DAD MOM GOD)で活動するにあたって、中々メンバーのスケジュールが押さえられなくてね、バンドがスムーズに稼働出来ない状態が続いていて。結局、ライブが出来ないってことは”自分がやりたいこと=みなさんの前で披露する場がない”ってことなので。その広がりを見せられない閉塞感に耐え兼ねて、「これはもう1つ、動けるバンドを作らないとダメだな」と思っていたところに、ウチの前のIKEAで”ザリガニを食べる”っていうパーティーがあって(笑)

ー(笑)

それに行ったら、知らないバンドが演奏してたんだけど、そのバンドのドラマーがモカキリ(Mountain Mocha Kilimanjaro)の岡野 “Tiger” 諭で。それ見て、”アイツのドラム好きだな”と思って、その場で声を掛けて連絡先を聞いたの。その日に自分のtwitterで「良いドラムを見つけた」って呟いたのを覚えてる。

ー中村達也さん然り、池畑潤二さん然り、冷牟田さんとドラマーの方との引き合わせはすごいですよね。

いつもそうなんだけど、ドラマーから考えていくので。良いドラマーがいれば、あとはコンセプトにそってシミュレーションをしながら、メンバーを集めていけば良いなと思ってるから。だから、今考えるとそれがスタートだったかな。

ーそうなると音楽的構想より、ライブがしたいという冷牟田さんの欲求と、合わさるように軸となるドラマーの巡り合わせが、「THE MAN」に繋がっていったと考えてられますね。

実はね、新たなバンドを始めるにあたって同時に、どういう音を作っていくかっていうのは、自分の中に明確にあった。やっぱりね、オリジナル・スカをしっかりベースにしているバンドが演りたくて。さらにオリジナル・スカが持っている”凶暴性”を抽出して、テンポアップさせたような曲、パンクの要素をエッセンスとして取り入れた音だね。

ー冷牟田さんとスカの音楽は、いつの活動においても重要な割合を占めていますが、その中で今回は敢えて”原点回帰”とも言えるオーセンティックスカがベースとなった背景には何があったのでしょうか?

最近、若いときに聴いて影響受けた曲を聴き直してたんだよね。色々聞いてたけどやっぱりオリジナル・スカを改めて聴いてみると、暫く聴いていなかったこともあるけど新鮮な気がして。オーセンティックスカってやっぱり不良の音楽で、そういう”匂い”や”ムード”を持ったバンドが最近いないなって思ってたし、やるなら自分だと。

ー冷牟田さんの構想にあった音を具現化していくにあたり、DMGとは別のアプローチでバンド結成されたという印象を持ったのですが?

自分より若いメンバーとやりたいっていうのが明確にあった。「THE MAN」をやるなら1から積み上げていこうと決めて。ある程度の形になるまで時間が掛かるだろうなと覚悟していたし。それで次に会ったのが洋平だった。RIDDIMATESを観に行って「あ、キーボード良いね」って(笑)それとほぼ同時に潤に会ってたっていう…

ー冷牟田さんが動くとすごいスピードでメンバーというピースが集まってくる印象を受けますね。

今までの過程を見てると、このメンバーで「THE MAN」をやることになっていたような気がするよね。自然と呼び合うんだろうね。baritoneだったらケイタって決めてたし、ギターってなったら輝ちゃん(中村 和輝)に会おうと思ったし、その後増井くん(増井朗人)だね。何で増井くんだったかっていうと、スカの基本中の基本を押さえてて、ホーンのアレンジや演奏の仕方の深い知識を持っていたし。加えて、例えばスカバンドでホーンが彼一人だったとしてもやれる実力があるので。

ーそういった構想から集まった「THE MAN」ですが、先程のお話の通り、”匂い”や”ムード”をまとわせられるメンバーですよね。

そうだね、そうなって欲しいね。でもそういう部分はまだまだこれからだと思う。少しずつ積み上げていくしかないね。

ー実際のライブ活動にあたって、楽曲の制作がありましたが冷牟田さん以外のメンバーも作曲に関わっているのに驚きました。

音の部分についてはメンバーで創り上げていくものだし、それぞれが切磋琢磨していく環境も作りたかった。プライベートではもちろん仲良くもなるけど、音楽の場だけは言いたくないことも言わないといけない場面もあるしね。お互いに厳しくそれぞれのレベルを上げていきたかった。

ー先程の”原点回帰”とも通ずる部分ですね。

メンバーで創っていく過程が、バンドの面白いところだから。DMGより更にバンドっぽいことをやりたかったし。振り返ってみて、バンド活動を今までやってきて思うのは民主主義で進めてしまうと、ほぼつまらない音楽になるっていう(笑) そういう経験があるから。今は、自分が先導していくタイミングだと思ってやってる。でもこれから先、他の誰かが自分がやりたいって言う時期が来るだろうし、それを願ってるし。そうしていかないと10年〜20年のスパンで考えたら、自分1人で曲作ってやれるわけないから。

ーすごく納得ができます。その考えが冷牟田さんにあるからこそ、良い意味で「THE MAN」のメンバーとして、ストリートでもライブをされたというところも繋がりますし。

元々スカパラを始めたときにストリートでやってたってのもある。ちょっと悪い兄ちゃん達が集まったバンドが、大勢でしかも道端でやってるってのが当時良かったんだろうね。ストリートには時代の匂いがあったし。そんな事もあって久し振りに「THE MAN」で路上に戻ってそこから始めようと思ったんだよ。そういう精神性を持ったタフなバンドをやりたかった。他のメンバーも路上でやった経験があったし、敢えてというよりは自然な流れだったな。

ー特に昨年はかなりのライブ本数を重ねられて、何度も観させて頂いたのですが楽曲自体の進化をすごく感じます。

やっぱりそう?メンバー自体が進化していったのもあるし、ライブを演る度に各楽曲の可能性の発見が未だにあるのが面白いよね。これから先の進化も楽しみ。それが自然に出来る奇跡的なメンバーの集まりだよね。妙にね…このバンドやっててスカパラを始めた頃の感覚が蘇ってくるんだよね。本当に色んな場面で、「こういうことあったよな」っていうのが。

ーそれは過去を懐かしむということではなく、バンドの成長過程をもう1度「THE MAN」で体現出来ているということですね。

そうだね。ライブを多く演っているのも、バンドなんて鍛えていかないとモノにならないからだし。自分達主体の環境の中で毎回爆発させることはもちろん、アウェーな環境でもお客さんの圧力に負けず、いかに押し返せるかとか。普段頭で分かっていても実際に現場で克服していかないと身についていかないよね。一人一人が大きくなれないとバンドの未来は無い。そういう経験がメンバーそれぞれに蓄積していって、その先にバンドとしてのオーラがあると思うな。

ーでは、今回メジャーデビューという節目も迎えますが、あくまで成長過程の1つに過ぎないと?

そう、まだバンドとしては50%くらいのところにしか来てないと思う。まだ上があるよ。

ーその上に向かうに術は、既に冷牟田さんの中に描かれているのでしょうか?

もちろん色々と考えてるよ。オレらの世代って、プロになって武道館でライブを演るっていうのが夢だったわけ。10代の頃なんてそんなの夢の世界で。今でも武道館で演るっていうのは、自分の中で特別な意味があるし、あそこで演れるくらいの実力にならない限り、ミュージシャンとしてはやっていけないと思ってる。

ーその地点が”上がある”という部分だと?

いや、まだ80%くらいだね。100%はもっと上になると思う。

ースカパラ時代ではその80%は経験されていますが、「THE MAN」としてさらにその上を目指すということですね。

そうだね。但し、あのときとは時代が違うから難しいだろうな。スカっていう音楽が全く浸透していない状況でスカパラが世の中に与えたインパクトと、既にスカが浸透してる状況の中で、これから敢えてスカバンドとして世に問うのは全く違うからね。それから THE MANにはまだ見せ方のスキルが圧倒的に足りていないと思ってる。同じ楽曲を演奏していても見せ方が変わるだけで、伝わり方が全く違うってことがわかってるから何とかしたいね。例えばステージにしても、照明やPAの細かな部分まで含めてね。そういう細かいことも詰めれたら、バンドの爆発力はケタ違いになると思う。2ndか3rdアルバムを出すタイミングまでに一つの完成形を作って、皆さんに観てもらいたいな。

ー現在の「THE MAN」では”毒”を感じる楽曲やステージの印象を受けますが、見せ方が広がるということは、新たな要素や世界を取り入れることになりそうですか?

楽曲で言えば、夏の空みたいに突き抜けた明るい曲は必要だね。今までやってきたことと真逆になるけど、それがあることによって、ダークな部分や凶暴な部分をより鮮明に出すことができるし、コントラストで互いの曲がより引き立つと思う。あとは全員が稼働していない楽曲やパートチェンジも考えていて。例えばオレがギターやベースを弾いたりね。その他にも、あるパートをメインにして、他のパート全員がバッキングにまわるとか。元々アイディアはあったんだけど、やっとこのあたりに着手できる段階になった。

ーまさに進化の過程ですね。

もちろん根幹の部分は変わらないけど、バンドは細胞のように死んで生きてを繰り返して代謝していかないといけないし、付随する部分も常に新しいものを取り入れて行かないと上を目指すことはできないだろうから。今回のアルバムに追加した4曲も、そういった要素が垣間見れると思うよ。

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