Billboard LIVE TOKYO「冨田ラボ 即興作編曲SHOW 〜NEW ALBUM レコーディング初日大公開!〜」@1st Stage

Billboard LIVE TOKYO「冨田ラボ 即興作編曲SHOW 〜NEW ALBUM レコーディング初日大公開!〜」@1st Stage

12月2日、Billboard LIVE TOKYOにて「冨田ラボ 即興作編曲SHOW 〜NEW ALBUM レコーディング初日大公開!〜」が開催された。 これまで、過去に行われた3回のワンマン・ライブとは異なり、5枚目のオリジナル・アルバム制作開始にあたり、その制作行程を体験出来るというレコーディング・ショウである。 冨田ラボファンはもちろん、「ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法」にて、まったく新しい音楽批評と分析を書き下ろし、録音ファンからも支持が熱い中で集まった観客にとって、そのエンターテイメントを味わえる、プレミアムな公演となった。

ステージには、デスクに置かれたPC・モニター・機材ラック・アコースティックピアノ・弦楽器等、スタジオの一室を切り取ったかのような配置となっており、スクリーンにはLogic Pro(音楽制作ソフト)の画面が映し出され、PC画面の作業風景まで体験出来るようになっている。

拍手で迎えられた冨田から「こんばんは冨田です。作編曲の発想という部分については、何かきっかけで生まれて、また広がっていくのか。その瞬間を観るというのは稀だと思います。普段は1人でやっていることなので、出来るだけ知らんぷりをして頂いて(笑)飲食を楽しんで頂ければと思います。」と、和やかな雰囲気で話始め「Bill Evansの”Waltz For Debby”の様に、演奏中でも食事やおしゃべりがあっても、集中出来ますので。」と、ショウに先立ち、冨田らしい解説も伝えられた。

作曲開始前に、リハーサル時に作成した音源を用いて、本公演時間で垣間見れる内容を音で説明をする冨田から「これをやったあと、全く違うものを作る予定なのに、この曲が頭から離れなくて。やっと忘れたのにまた聴いちゃった(笑)」と笑いを誘いつつ、作曲が始まった。

クラシック・ピアノに向かう冨田が早速演奏し、旋律が紡がれていく。いくつものリズム・和音を奏で、頭の中に思い浮かんだであろうフレーズたちが、正に音として響き渡る。ドラムパターンはPC内で作成され、ループされたリズムに合わせ、クラシック・ピアノを録音していく。繰り返されるフレーズ、次のコードを探す様は、まさに楽曲の形成における瞬間であり、我々はその目撃者となっている。

ベースを手に取り、コード進行に合わせたフレーズを探す。ピアノと織りなす32音符と64音符の交差は、まさにスリリングそのものである。
冨田のファルセットでメロディを録音し、ハーモニーを重ねていく中、ここでシーケンスがフリーズするというトラブルに見舞われる。
対応中に冨田から「この氷り方(フリーズ)見たことある方います?」と話しながらも「実は焦ってます」という心境を話す。
レコーディング時や作曲時のトラブルはなるべく避けたいものの、必ず付きまとうことであり、冨田ファンや録音技術者の方ならこの気持ちがわかるはずだ。

結果的にベース・トラックとコーラス・トラックが録音出来ていないという災難に見舞われたが、先程のトラック分を再録音していく。
そして、シンセサイザー等の音色で装飾していく過程は、”マエストロ”としての編曲の断片を垣間見ることが出来る。ギターの録音では、様々なシュミレーターで音色を操作し、さらに楽曲の構成を施していく。

「まだ作業をしたい」という冨田からの声もあったが、残念ながらこの時点で時間が来てしまう。だが、5枚目のオリジナル・アルバム発売前に、収録されるであろう”生まれたて”の楽曲を全員で視聴することが出来た。

この瞬間に立ち会った我々は、「この楽曲は好きです」と言う冨田と同様に”どのように進化し、変化を重ねて完成型にたどり着くのか”という想像を持ちながら、アルバムを待ち望める楽しみを手に入れた。また、断片ではあるものの、次のアルバム楽曲の方向性をいち早く感じることが出来たのは、この上ない喜びである。

「レコーディング初日を公開」という、新しいアプローチでショウを行った冨田ラボ。レコーディング過程をエンターテイメントとして成立させ、その楽曲が収められる5枚目のオリジナル・アルバムを心待ちにしたい。


取材:2014.12.02
テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330