寺岡呼人 インタビュー

「バトン」は目に見えるものではない

ー歌詞について詳しく伺いたいのですが、例えば「君」というフレーズだったり、二人称が主としてある詞の世界が、より身近な情景を見せてくれていると感じました。

寺岡:そこには、なるべくシンプルな言葉を選んでいると思います。歌いたいことが歌詞になっていますし、その中で例えば「流星」では途方もない時間が流れていたり、「バトン」では人生という時間が流れていたり。

ー確かに今作の時間軸が印象的で、「流星」では”何千年”・「BLOOD,SWEAT&LOVE」では”何万年”・「バックミラー」では”永遠”と、途方もない時間の中で「今」という時間がきちんと流れているんですよね。

寺岡:そうですね。「青山通り」はジュンスカの為に書いたんですけど、実際に自分が見た風景を切り取っていますし、「バックミラー」ではワンシーンを切り取っていますし、色んな時間が流れていますね。

ーアルバムタイトルでもある「バトン」の主人公を寺岡さんとしたときに、現在の活動とすごくリンクしていますよね。例えばさだまさしさん、はたまたTHE BEATLESから受け取ったバトンを、桜井さんに渡す横の動きだけでなく、Kさんやグッドモーニングアメリカ等への縦への動き、ジャンルレスという意味では斜めにも渡していると思うんです。

寺岡:グラウンドのサークルを人生に置き換えたんですけど、共作した桜井はデビュー前からの付き合いだし、今回の楽曲提供頂いた竹善さん・多保くんはここ1~2年だけど、本当に色んな人との出会いがあって、今の自分があると思っています。「バトン」は目に見えるものではないんですけど、僕も色んな角度からたくさんの人のバトンを受け取っているんですよね。またそれを色んな角度で、たくさんの人に渡すことが出来たらと思っています。

ーしかも、そのバトンは1つではなく、また受け取ったバトンをまた他の誰かに渡すことが出来るバトンでもありますよね。

寺岡:色んな受け取られ方もあると思っていますし、僕が渡すバトンはボーダレスであればと思いますね。

ーアルバムの最後を締めくくる「ご贔屓に」は、直接的な言葉はないのにファンの方への愛や感謝で溢れていて、今の寺岡さんの気持ちが見事に反映されていますよね。

寺岡:最初、「ファン」というタイトルを思いついたんですけど、ウィキペディアで「ファン」を調べたら「贔屓」と書いてあって(笑)これだ!と。ミュージシャンとファンの間柄だけではなく、色んなお客さんを持つ人にも反映出来る作品になりましたし、20周年を迎えたタイミングに、この名曲が出来たことは良かったですね。

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