高野 哲 インタビュー

衝撃の”アルバム4枚連続リリース”をおこなった高野 哲。異なるアーティストとして、4ヶ月間・4作品連続リリースについてを各バンド毎にインタビューをお届けします!

ー「高野 哲」史上、1年で40曲近くの作品を出したのは初ですよね?

高野 哲(以下:哲):初っすね。

ー今年は全てのバンドでリリースをする予定だったのですか?

哲:いや、たまたまなんですよ。”ZIGZO”をリリースしたのも、去年の末にディレクターから「アルバム作ろう」って話があったからだしね。”nil”は宣言していないものの、活動休止状態だったのを2014年は活動したいと思ってて、春くらいにアルバムを出そうとしてたのね。そういった中で「どういう順番で出そうか」って模索していたんだけど、”ZIGZO”が先に決まり、そのあと”nil”を出そうと思ってたら”インディーズ電力”が決まり、だったらジュンジュラ(THE JUNEJULYAUGUST)もアルバム分の曲があったから「今年、4タイトル出せるな」っていうのが漠然とあって。それが短期間で出るって決まってなかったんだけど、いつの間にかそうなっちゃった(笑)

ーそれはリリースのみならずライヴ活動も含め動かしていこうと?

哲:そうですね。”nil”を中心に活動しようと思ってたくらいなんだけど、”ZIGZO”はディレクターの熱意に押され、”インディーズ電力”はね…直ぐ出来ちゃう人たちの集まりなんで(笑)

ー哲さんも含めてですけどね(笑)作品毎にお話を伺いたいのですが、”ZIGZO”の 「FOREVER YOUNG」は潔いくらいナチュラルな歌詞・メロディ・サウンドで、バンドに持ち込む前段階からこの方向性は見えていたのでしょうか?

哲:ディレクターが宗清(裕之)さんていう人なんだけど、”LOUDNESS””RED WARRIORS””THE YELLOW MONKEY”とか数々の日本のロックを支えてきた人なのね。”ZIGZO”がデビューしたときからやってもらってるんだけど、今回は「メンバーでがっちりアレンジする前に俺を1回通してくれ」っていうのがあって。「”コード進行とメロディーの最善の形”っていうのは、もしかしたら今までの楽曲の中でもあったかもしれない」っていうのを彼は思ってたらしくて。だけどバンドで「こういう曲です」って渡したときには、ダイナミクスが決まっていて、いじる隙がないというか。いじりたいのに「もうこれはいじらせてくれないだろうな」っていうジレンマを抱えてたらしくて。で、今回はバンドで固める前に2人でやらないかという提案をされて。それは俺としても「自分がこれだ!」と思ったメロディー・コード進行をこの人がどういじってくれるんだろうっていうのもあってね。久し振りにプロデューサーとやるみたいな気持ちにもなったし、それはおもしろいなと思って。

ー再結成後にリリースした2枚の作品の曲作りとは変わったんですか?

哲:10数年前活動してたときは、ドラマーの櫻澤(泰徳)くんの家で、俺が持ってった楽曲をその場でデモテープ作って、リハーサルスタジオでバンドの熱量で完結させるみたいなやり方をしてて。で、復活してからはそのパターンと、俺とギターの(岡本)竜治くんでスタジオの中で、セッションとは違うけどお互いのギターのフレーズを探しなから、その場でお互いの引き出しを出し合って「これいいね」みたないのをその瞬間に捕まえて曲にするパターン。今回は俺が思いついたアイディアをまずはディレクターのとこに持ってってから。まあダメ出し貰ったりとか…最初はね、5曲くらい持って行ったら「ひねくれてる」と全部ダメ出しで。「メロディーには呼ばれて行きたい先があるはずだし、それは人が聴きたいものでもある。お前の場合はサビで違う方向に行ったりする傾向が多いから、それはお前にとってはロックかもしれないけど、今回やりたいことはそうじゃない」ということを言われて「あ、なるほどな。確かにメロディーが呼ばれて行きたい先っていうのはあるよな」って思った。ただそれをやると、他人と同じことをやるような気がしていてイヤでさ。

ー歪さが哲さんの感じるロックであると?

哲:それが俺の持ち味だと思ってたしね。でも、確かに20歳そこそこのときに書いた曲って、5分で頭から最後まで作れちゃってたから「俺、天才!」って思ってたんだけど(笑)やっぱメロディーってものに人格があるとしたら、その人格を素直に成長させてあげることなんだなって。飽きたからひねくれ出したんだけど、デビュー前・デビュー時の曲がボンボン出来てたときの感覚に戻ることなのかなって思ったしね。その感覚ってすぐ戻れるかなって思ってたら、意外と直ぐ戻れて次の曲出しのときに12,3曲作って全部OK貰って。その中から厳選しようって、今回収めた曲を選んで構成もある程度決めてから、メンバーに渡して「ここからいつも通りの肉付けをしていこう」という作業に入りましたね。

ー感覚が戻ったのは曲のみならず、歌詞についてもそう感じたのですが?

哲:そうかも(笑)同じなんでしょうね。それもやっぱディレクターに言われて、デモテープ持ってったときに、いくら仮歌でも言葉がないと歌い辛いし伝わり辛いから、すんごい適当に書いたのね。そしたら「歌詞もいいぞお前。素直で宜しい」なんつって(笑)「こんなん、何も面白くねえじゃん」って言ったら「お前の歌詞はこねくり回して自分で良いと思ってるかもしれないけど、あんなもん、俺には意味がわからん」って。「それってずっと思ってた?」って聞いたら、デビューからずっと思ってたって(笑)そう考えると、今回の歌詞は想像力を掻き立てるというよりは、誰もが見たことがある景色を意識してたかもしれないですね。

ー歌詞の情景が身近であることで、人間の暖かみとして伝わるのを感じたんです。「My Sweet Shame」の一節にある”言葉にしたら嘘っぽくなるのはなんでだろう”が「FOREVER YOUNG」でストレートに表現することの、全てに繋がっていると思うんですよね。

哲:そうですね。「嘘っぽくなる」って言っても自分で「嘘くさい」って思いながらやってることもあるし(笑)「B型ゆえのLOVE SONG」なんて「LOVE SONG なんて歌いたくないけど今夜は仕方が無い」って歌ってるのは、このアルバム制作のことを歌ってるし。自分の中では、言っても熱が込められる、ありのままを歌ってるはずだしね。

ー全てにおいて余計なものがないから、ストレートに心に飛び込んでくる感覚がありました。もし、10代・20代の哲さん、もしくは「MONSTER MUSIC」を制作したタイミングの哲さんがこのアルバムを聴いたら”悔しいけどカッコイイ”って思えるアルバムだと思うんです。

哲:あぁ…どうかな(笑)

ー若いロックバンドならそう思いますね。「ストレート」という部分って、どこか若い時代に出来る専売特許感があると思うんですけど、歴史のある”ZIGZO”がそれをやってのけてしまったわけですから。

哲:ちゃんと”40代のロック”をやってる気がしますよね。歴史があるバンドだと、過去のレパートリーを求められる瞬間があって、「これ今歌うの?」っていう歌詞とか、ものすごく青くて熱い歌詞とか。あとはムチャクチャな展開でややこしい曲とか、「これ将来のこと何も考えていない時代」っていう曲だったり。だけど、今回の「FOREVER YOUNG」の曲達は、ずっと60歳になっても70歳になっても歌えるんだろうなって。どこかそういうのは意識してたかもしれないですね。

ー再レコーディングされた「ひまわり」が、ここまでアルバムに違和感なく収まっている理由もここにあると思います。

哲:そうだよね。楽器の音も良い枯れ具合だし、ホント良い感じ。あれ、”ZIGZO”のレコーディングはちゃんとクリックを使うんですけど、早くなっても遅くなってもいけないから、当時のBPMでやったんですよね。いくつか、当時入れてなかった歌のハーモニーとかあるけど、ギターソロとか歌いまわしとかは極力再現しようと思って。それはバンドなりのファンサービスっていうか…よくセルフカバーとかライヴアレンジとかで「そうじゃないのに」っていうあるでしょ?特に来日バンドとかでちゃんと演って欲しいのに「えー」ってなるみたいな。

ーありますね(笑)

哲:そういう意味ではストーンズって、ちゃんと演ってるんだよね。面倒臭がってるのかもしれないけど(笑)そういうのって、お客さんのコアでマニアックなところを擽りたい自分もいるけど、大多数の人を喜ばせたいっていうのもある。今回の「FOREVER YOUNG」に関しては、「より多くの人に」ってテーマをディレクターからすっごい言われてたから。ひねくれたりとか俺の面倒臭い部分とかは(笑)このあと”nil”も”ジュンジュラ”のレコーディングあるし、そっちで爆発させればいいだろうって。それはディレクターにも言われたんだけど、その住み分けをしっかり出来てたかな。

ー歪さのない、”素直な高野 哲”を自然と?

哲:”良い人の自分”というのもいなくはないんで(笑)今回の”ZIGZO”は良い人でいこうと(笑)良い人が歌ってるアルバムな感じがするなぁ。

ーそれでいて、演ってることはロックなので先程おっしゃっていた”40代のロック”という部分に通じますしね。来月から始まるツアーでの意気込みもお願いします。

哲:あのアルバムの”ちゃんとしてる40歳たち”が観れるんだろうなと。まだわかんないけど、スーツ来てやりたいって思いもあるし、今回客席ありのところを選んでいるのも、ちゃんと歌も演奏も聴かせたいっていうのがあるからね。スタンディングのライブハウスでグチャってなるのも好きだけど、今回はしっかり楽しんでもらいたいね。

ーインディーズ電力については前回のインタビューでも伺ったのですが、「忘れても電力」「HIGH&LOW電力」「オリジナル電力」「風が吹いて電力」の4曲を持ち寄られましたが、「オリジナル電力」は100%SOLAR’Sでも収録されていました。

哲:第1回目の「SOLAR BUDOKAN」のときに「1人1曲、オリジナルを作ろう」っていうのから3人でアレンジ、レコーディングしたときに出したのが「オリジナル電力」ですね。次に総務の山本ようじ(佐藤タイジ:マネージャー)から、「次はワンマンなんで新曲演った方がいいですよ」って言われて、また1人◯曲っていう作り方をしてきたんですよね。

ーということは、今回収められた楽曲の作曲タイミングはバラバラなんですね。

哲:そう。今回も「アルバムだよ」って言われて、前の3曲(100%SOLAR’S収録)はアレンジもレコーディングもし直すとして、また1人◯曲書き下ろすっていう進め方ですね。

ーなるほど。歌詞にその部分が色濃く出ていますよね。「オリジナル電力」は正に震災直後であるが故の描写ですし、「風が吹いて電力」は震災から3年経過した哲さん流のプロテスト・ソングと解釈できます。

哲:それを3日で仕上げましたからね。死ぬかと思いましたよ(笑)実は俺、”インディーズ電力”に関しては、アレンジとか殆ど貢献してないんですよね。

ーそれは哲さん以外がイニシアティブを取って進めているということですか?

哲:トータル的なプロデューサーとしてもだし、特に(佐藤)タイジさんなんだけど、俺に比べたら2人のアレンジが早くて。どんな曲かというのを察知してくれて、「あそこでハーモニー欲しいね」ってなったら(うつみ)ようこちゃんがパッと付けてくれるし、あっという間なんですよね。

ーそれは哲さんの曲であっても?

哲:「こういう曲です」って披露したら、タイジさんが「エエやんエエやん、じゃあこうするわ」ってハーモニー付けてくれて「ソロのコードはこれです」って言ったら、ギターソロからエンディングまで早い早い(笑)要は、2人のアイディアの引き出しがすごいんだよね。”佐藤タイジマナー”と”うつみようこマナー”っていうのがあって、俺の曲にハマってくれるし、遠慮なくアレンジしてくれるし、そのすごさを”インディーズ電力”では感じてますね。

ー哲さん自身、そのアレンジに違和感もなく?

哲:全くないですね。例えばレコーディングのときに「風が吹いて電力」に「ピアノあったら良いな」って思ってたら、ようこちゃんが「ピアノ弾いてエエ?」って。「え!言おうと思ってたんだけど、弾いて下さい」って。逆に俺が2人の曲のときは”ジャマしないように”くらいに思ってて。「ここハモリましょうか?」って言うよりは「ここハモって欲しいね」「ここに掛け合いでコーラス欲しい」っていうリクエストに答える感じ(笑)

ー(笑)「ジャマしないように」というより、”インディーズ電力”においては、2人のアレンジへの信頼ですよね?

哲:そうだね。あの2人のアレンジ能力とコーラス能力はすごいですよ。ってようこちゃんに言うと「それで食っとんねん」って言われるんだけど(笑)タイジさんもプロデュース・楽曲提供・シアターブルック以外の活動をたくさんされてるし、その経験値がやっぱり出てますよね。タイジさんは俺にそれを教えてくれてる認識はないだろうけど、そういうのを見てて俺は「やっぱすごいなぁ」って素直に思うと同時に、面白いし勉強にもなるんですよね。

ーそれで言うと哲さんも4バンドの経験値がありますよね?

哲:う~ん…俺の場合は、例えば歌やコーラスとかはレコーディングになってから考える方だし、アレンジとかもバンドの熱量の中で決めていくというのを続けていたし、みんなで盛り上がる方向にいつも行っていたよね。

ー哲さんの場合は”瞬間・瞬間のダイナミズム”を求めることで、その意外性や突発性を楽しめるし、作品としての面白さを味わってこられたのもありますよね。

哲:それと比べると2人の場合は、楽曲の完成形がすぐに見えているんだと思いますよね。俺の場合は辿り着くまですごく悩んだりするんだけど、2人のプロデュース能力が高すぎるからあっという間なんだよね。でもようこちゃんはようこちゃんで、自分の曲のときはタイジさんと俺に任せてくれるから、結構提案は出来たりするんだけどね。最終的な拘りはもちろんあるから、彼女の判断で修めてくれるし。

ーだからこそ、役割分担が出来ているんだと思います。

哲:分業ですね。曲の作曲者が責任を持ってプロデュースを行う。でトータル的にプロデュースするのはタイジさんというね。

ー初のアルバムリリースとなりましたが、震災から3年が経って、その歴史がインディーズ電力の歴史でもあります。3年経ったタイミングで思うことを作品として残せたと思うのですが、率直に哲さんから見た今の現状をどう感じていますか?

哲:こんなに酷くなるとは思わなかったんで…余りにも今の状況が酷いからさ。タイジさんの「SOLAR BUDOKAN」で掲げてる”エネルギー選択の自由”、俺達は太陽光を選ぶという賛成運動に俺も賛同して、割りとそばにいることで精神的には保たれてるけど、呆れてモノが言えない状態というのが本音だよね。

ー国の判断に疑問が生まれる場面も多いですし。

哲:で、最近も汚染水のニュースとか見て疑問を持つわけで。やっぱり子供たちの為に、ここで何とかしないと将来が見えないんだよね。タイジさんも良く言ってるけど、たまたま自分達が40歳くらいのときにとんでもないことが起こり、気付かされて。20,30代より40代の方がちゃんと色んなことをわかった上で、日本ていう国で暮らしてるから。それはすごく責任のある立場だなって。放っておくと、これが次の世代にそのまま移行しちゃうし、ここで食い止めないといけない。集団的自衛権とかもそうだし、他にも食い止めないといけない問題が山程出てきているので。

ー私たちも、自分の親はもちろん、誰かが残してくれた未来に立っているわけで、哲さんが仰った「次の世代にどう未来を残していくのか」という問題に対して”インディーズ電力”の活動を通してもそうですし、音楽を通して変えていけることを実践されていると思うんです。

哲:ただ、そういう人の密度は濃くなっているけど、俺はそんなに増えてると思ってない。忘れたい人は忘れたいし、あとは政府の発表だけを信じたい人もいるわけだし。車に乗ってると良く思うんだけど、交通ルールって信号と標識を守っていけば、そんなに事故は起こらないよね。但し、ルールの中で生きているということと同時に、ものを考えないで済むということだよね。

ーこれだけのことが起こっても、考え・行動する人がすぐに増えるわけではないと。

哲:そういう人が多いと思う。誰かが決めた「こうだよ」っていうルールに対して、我々の前の世代の人の中でも、「次の世代の為にこうしていこうぜ」ってすごく考えてくれた部分もあるだろうし、そうじゃなかった部分もあるだろうし。そこで今の自分達が、次の世代にこの街をスライドするとしたら、責任重大だけどチャンスだしね。”ピンチはチャンス”だから。

ーそれを音楽の力でですよね。

哲:俺らは音楽家だから。正直、「音楽の力で世界を変えるんだぜ」ってことをやっぱ出来ないのかなって思ったこともあった。でも3.11以降、「今こそ音楽の力で世界を変えるっていうことをもう1度チャレンジすべきなんだ」っていう気持ちになって。「風が吹いて電力」はタイジさんのことを歌ってるんだけど、タイジさんはものすごい直接的なメッセージが多い。俺はそもそも役回りというか、理想論を掲げてしまいがちなタイプであるけど、思ってることは一緒だしさ。”インディーズ電力”に関しては、2人の補佐役なところで俺はいたいし、最終的には来てもらうお客さんに楽しんで頂きたいっていうのがあるので、それを音楽の力で出来ればと思いますね。

ーまず時間軸の話ですが4年振りというのが意外ですね。

哲:実はね(笑)やっぱり、新しい曲のあとに古い曲をやると「うわっ差があるな」って思うタイミングで久し振り感はあって。それをどう今のノリに持っていくかってところに、アレンジを施したりしてるしね。歳も取ったから、1年が短く感じるんだけど(笑)リリースしたものについても過去の音源と並べて聴いても、音が全然違うのがわかるよね。4年ていう月日はそういう風に感じてるかな。

ー”nil”らしい多彩な楽曲群ですが、3ピースでこの表現をするにはギタリストとしての哲さんが改めて重要だと感じました。

哲:今回は特にね。久し振りにギター弾いてて楽しいんだよね。例えば”インディーズ電力”だと、タイジさんのギターにリズムギター的なサポートの位置にいて、”ZIGZO”だと、竜くんと2人で和音を作りながらだけど、ギターソロとかおいしいところは全部竜くんに持ってってもらって。それは「竜くんの良さを引き出したい」っていうのがあるんだけど、竜くんが過小評価されてる気がしててさ。もっと評価されるべきだと思うから、俺は竜くん推しをしてる。

ー現在の”ZIGZO”に関しては、哲さんがプロデューサー的な位置ですしね。

哲:そうだね。元々、そういう位置でやりながらも、3人の意思も尊重しつつという進め方をしてきたから。でも、今回の新型”ZIGZO”はプロデュースの役回りをなんとなく担ってて、DENさんも櫻澤 泰徳くんも「哲のやりやすいように俺らはなんでもやるし、何なら俺らをバックバンドって思ってくれ」って。それは”歌”を軸に考えてくれてだから、そこに岡本 竜治くんを”ギター・ヒーロー”に仕上げるっていう(笑)そういう2つのバンドがあるから、”nil”で「好き放題弾いてやるぞ!」っていう。

ー変にテクニックに走らないことも、哲さんらしい気がしているのですが?

哲:俺はギターソロとか、テクニカルな部分については、練習もしてこなかったし、「このバンド、テクニカルだな」って思った瞬間に聴きたくない(笑)それよりも、印象深いテーマ、音色、コード感があるバンドが好きだからね。

ー哲さんがCHABOさんを好きな理由も頷けますね。

哲:確かにそうかもしんない。今回は、その竜くんとタイジさんの影響があって、ギターを弾くのがすごく楽しいんだと思うんだよね。それが今回のnilのアルバムに入れられたな。

ー「FOREVER YOUNG」とは対照的な”歪さ”がnilのカッコ良さですよね。

哲:そうですね(笑)

ー「Weirdo」では”WE ARE”って言ってますし(笑)

哲:「Weirdo」は最初アコギで作ってたんだよね。”nil”って3.11の前は「全部忘れちまえ!」「日常の嫌なことを全部こっちに持ってこい」「ライヴで全部弾き飛ばしちゃうぜ」っていうバンドだったと思うんだよね。でも3.11を受けて、「いや、忘れてはダメだ。今、そんなこと言ってはダメだ」と思ったと同時に、そういうライヴのやり方を忘れてたし、ライヴ自体を控えてたから。

ーそれが4年の経過に繋がるんですね。

哲:で、この状況でも”nil”として、みんなに楽しんでもらえるやり方がなんとなく見えてきた時期があって。それは風化というより「俺達は今の状況を消化出来てるよね」って、自分の中で見えたんですよね。それが2013年で、「よし2014年にはアルバム出したいから、2013年は曲作りをしよう」って。

ーそこでアコギを持つことに?

哲:まず、バンドをゼロから作り直したくて、”アコギのトリオバンド”になってみようと思ったのね。SURFROCKとまで言わないんだけど、Sublime・Jack Johnson的な感じ。前のまま勢いで行こうとすると、どうしても8ビートになってしまって「今回はそうじゃないな」って思ってた時期だったのね。勢いを真っ直ぐじゃなくて、横に逃しなからやっていくバンドでありたいと。

ー実際にその作業を通して、楽曲の骨組みを作っていったのでしょうか?

哲:半年くらいそのスタイルで「Weirdo」「Wake up, hey」が出来たんだけど、リハスタで風間(弘行)のドラムのダイナミクスと、アコギに限界を感じた瞬間があったのね。そうすると、曲作りも停滞気味になっていったときに(小林)勝さんが「そろそろ骨組みも出来たし、エレキに持ち替えてもいいんじゃない?」って。俺が逆に拘り過ぎて、自由度がなくなってたのに気づいたんだよね。「じゃあ、次回からエレキ持ってくるわ」って、そのときにジュンジュラでメインで使ってるストラトキャスターが玄関に置いてあって。”nil”はテレキャスターか335でやってたんだけど、ストラトも良いんじゃないかって。

ー偶然のひらめきですか?

哲:実際にアコギスタイルで作ってきた曲をストラトの硬い音で弾いたときに「あれ、これじゃない?」って。テレキャスターのジャリ感じゃなくて、ストラトのこのトーンでやるのは、半年間アコギで作ってきた出口だったんだよね。みんなもそう思ったし、ストラトはジュンジュラ用だけど「関係ねぇ!」って。それで一気に曲が出来始めた最初が「バクテリア」。”4年のブランク”で、俺の中では2013年がすごい大事な時間になったし、休んでて良かったと思う。ずっとフォローしてくれてるお客さんの中には「昔の方が好き」って言う人もいるだろうけど、今が好きな人って言う人もいてくれるだろうし。今の”nil”はすごく良い感じかな。

ー今回の目玉として「Roly Poly」を”nil”で再録されましたが、アコギの部分が勝さんのベースに変わったことで、いっきに”nil”になってしまうところが驚きでした。

哲:あれは今年の1月にファンクラブのイベントで、「nil/THE JUNEJULYAUGUST」を同時に演ってて、ジュンジュラの方では「さよならダヴィンチ」をドラムのカジが演りたいって言って。こっちは”ベースがいないバンドの曲をベースがいるバンドがやる”っていう部分で、ベースが大活躍する曲を演りたいってなって。で、勝さんて元々すんごいスラップな人だから、スラップが活きる曲として「Roly Poly」だったんだよね。やってるリズムとかプレイとかって、ただのレッチリのコピーなんだけど(笑)

ーいやいや(笑)勝さんの良さが出てますよね。

哲:今回は音も良いと思うしね。曲作りの段階から、俺の中では”ZIGZO”だと「featuring.岡本 竜治くん」”nil”だと「featuring.小林 勝さん」。あの人、こんなにすごいプレイヤーなのに、表に出さない理由はないなって。

ー”ザ・クロマニヨンズ”での8ビートもすごいですけど、”nil”でのプレイの引き出しは存在感が大きいですよね。

哲:8ビートってすごく難しくて、ものすごくカッコイイんだけど、ルート弾きになりがちで、存在感が薄いんですよね。「”nil”では何を演ってもらおう?」ってなって、もうバチバチ弾いてもらおうと。

ー哲さんと、ちゃんと音で戦ってくれていますよね。

哲:そう、それがカッコイイ。巧いし、反応もすごい早いから。札幌でアコースティックライヴをファンクラブでやったんだけど、アレンジも曲順も決めずにお客さんの前に出てってさ(笑)俺がギターのリフを崩して弾き出すんだけど、俺が歌い出すまで何の曲か分かってないのね。歌い出して「その曲か(笑)」って。でも、「ドレスコードはTシャツ」をものすごいファンキーに弾いても勝さんがすぐ反応して弾いてくれて。あの人の力量っていうのはすごい。面倒くさがりだし、「手が痛い」って演ってくれないんだけど、今回は演ってくれて、ノリに乗ってますね。

ー新曲を引っ提げたツアーの感触はいかがでしたか?

哲:良いですよ。レコーディングした音をライヴでも近い表現が出来てて。それにトリオだと自由度が高いんで、それぞれが膨らましているし。ステージからフロアを観てると、前は縦に揺れてたのが横に揺れてるのも観えて良いですね。もちろん、縦に行きたい人はいっていいんだけど、今の自由さがお客さんにも届いてる気がしますね。

ー3枚目となる今作は、4つのバンドを同じ時間軸で聴くからなのか、”闇”の部分がより鮮明に表現されているように思うのですが、哲さん自身に意識的なところでそういった要素の抽出はあったのでしょうか?

哲:それはすごいあった。”ZIGZO”を真ん中に置いて、”nil””インディーズ電力”の方向があった上で、ジュンジュラはとことん闇に行こうと決めてて。実はジャケットの写真は、ニューヨークに住んでる岩切天平さんというカメラマンにお願いしたんだけど、「Edelweiss」のときも撮ってくれた人なんです。俺がすごく好きなカメラマンさんで、「Edelweiss」お願いしたときに、ジュンジュラはこの人にずっとお願いしようって決めてたのね。「Two Petals & Three Legends」のときもお願いしようと、写真を見させてもらった中に、今回の写真があって。1発で気に入って「これすごいから、次のアルバム用に取っておきたい」って決めてたんですよ。

ー今回の音の表現にリンクしたジャケットと思ったのですが、写真からインスピレーションを先に得ているんですね。

哲:そう。この写真を軸にイメージを膨らませて曲作りに入りましたね。

ータイトルでもある「Paradise」は既にライブで披露されていましたが、そのタイミングではもうイメージを得ていたんですね。

哲:そうですね。最終的にはアルバムタイトルが「Paradise」でなくても良いかなくらいに思っていたんですけど、あの写真から得て広がっていったから、このタイトルに落ち着いたんです。

ーということは「Paradise」が出来上がったときは、そこまで全体像が見えていたわけではなかったんですか?

哲:そうだね。漠然としてたと思う。

ーサウンド面で言えば、ベースレスであるにもかかわらず、低音がないことを軽く感じないんです。

哲:そうかも。バスドラはフロアタムを改造したやつで、16インチなんです。あとはピアノの存在がデカイよね。フルレンジだから「低音が足りない」って感じたら、1オクターブ下で弾けば良かったりするしね。今回、サンプリング音源も積極的に入れてて、梶原 幸嗣のタイトでコンパクトなドラムがすごいハマったよね。

ーさらに闇の美しさが1つの物語のように表現されているから、しっかりと聴くことが出来ますね。

哲:曲の長さじゃない奥深さは、今回うまく表現出来た気がしますね。

ー「さよならダヴィンチ」の再録もすごくフィットしていますし。

哲:あれはカジが、俺という存在を知ったのはこの曲だったらしいんですよね。「買って聴いたらすごいと思った」って。それをカバーしたいっていうリクエストでライヴで演ったんだけど、ドラムのフィルまで前のメンバーの演奏を再現してて。それは彼なりの敬意だったし、それはそれで良かった部分もあるけど、もしちゃんとレコーディングするならジュンジュラのアレンジにしたくて今の形になったんですよね。

ー”nil”でもそうでしたが、どちらの曲もこういった表現が出来るのは単純に面白いですよね。

哲:”nil”の初期に作った曲もそうだし、最近の曲でも「これ、ジュンジュラで演ったら面白いかも」って思ってて。逆もあるかもしれないし、そういうクロスオーバーがあっても良いって気がしてるんだよね。

ー先程、各バンドでのfeaturingを仰っていましたが、ジュンジュラでもあるんですか?

哲:いや、2人とも個性が強いからジュンジュラの場合は勝手に出ますね。俺の場合だと、歌い手というか…「ストーリーテラーでいたい」っていうのがありますね。どちらかと言えば、ギターはそんなに重要視してないかも。それはピアノの佐藤 統が、ギターの音がなくても表現してくれるから、どの曲も俺が手ブラだとしても問題ないって思ってるのね。カジも俺の歌を支えるということを念頭にやってくれているし、歌に集中して表現出来てると思うんだよね。

ー今年は4バンドでの表現という偉業をなされましたが…

哲:いや、異形かもしんない(笑)

ー(笑)”高野 哲”という1人の人間の、4つの側面を表現されたと思うんですね。

哲:今回、たまたま気づいたら4枚リリース出来たけど、人間の素直な側面を音楽を通して表現出来たのは、「随分ワガママな人生送ってるな」って気がしますよね。4つもやってるんでどれか1つ当たって欲しいというのはあるけど(笑)どのアルバムもすごく良いんですよ。

ー哲さん自身、どの作品でも楽しまれているのが伝わって来ます。

哲:そうだね。「音楽、楽しいな」って改めて思わせてくれたのは、タイジさんの影響デカイな。

ータイジさんの何にそこまで影響があったんですか?

哲:あの人、ものすごい笑いながらギター弾くんですよ。ソロも止まらないし、気持ち良さそうにしてる。改めて「そうだったよな」って思うよ。俺はどっちかっていうと、歌が軸だからギターはよりは歌に集中力使ってたのね。あのタイジさんの楽しそうにギター弾いてるのと、振り返ると沼澤さんが満面の笑みでドラミングしてて。「音楽・楽器を楽しむってこういうことですよね」って気付かされましたね。気持ち良いことってこういうことだなって。

ーそれがどのアルバムにも収められている。

哲:「今回、4枚出るぞ」ってときに「俺、ダメなアルバムを1枚でも作ったら、全て終わりだ」と思って臨んだから、すごい成功出来たと自負してるんだよね。俺っていう人間を知らない人は「どれを聴いたら良いんだろう?」って思ったとしても「どれでも聴いて下さい」って言えるし、何かをきっかけで全部聴いて欲しいよね。気に入ってくれたら、是非ライヴにも来て欲しいですね。


取材:2014.09.19
photo:大参久人/今井俊彦
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330