高野 哲 インタビュー

衝撃の”アルバム4枚連続リリース”をおこなった高野 哲。異なるアーティストとして、4ヶ月間・4作品連続リリースについてを各バンド毎にインタビューをお届けします!

ー「高野 哲」史上、1年で40曲近くの作品を出したのは初ですよね?

高野 哲(以下:哲):初っすね。

ー今年は全てのバンドでリリースをする予定だったのですか?

哲:いや、たまたまなんですよ。”ZIGZO”をリリースしたのも、去年の末にディレクターから「アルバム作ろう」って話があったからだしね。”nil”は宣言していないものの、活動休止状態だったのを2014年は活動したいと思ってて、春くらいにアルバムを出そうとしてたのね。そういった中で「どういう順番で出そうか」って模索していたんだけど、”ZIGZO”が先に決まり、そのあと”nil”を出そうと思ってたら”インディーズ電力”が決まり、だったらジュンジュラ(THE JUNEJULYAUGUST)もアルバム分の曲があったから「今年、4タイトル出せるな」っていうのが漠然とあって。それが短期間で出るって決まってなかったんだけど、いつの間にかそうなっちゃった(笑)

ーそれはリリースのみならずライヴ活動も含め動かしていこうと?

哲:そうですね。”nil”を中心に活動しようと思ってたくらいなんだけど、”ZIGZO”はディレクターの熱意に押され、”インディーズ電力”はね…直ぐ出来ちゃう人たちの集まりなんで(笑)

ー哲さんも含めてですけどね(笑)作品毎にお話を伺いたいのですが、”ZIGZO”の 「FOREVER YOUNG」は潔いくらいナチュラルな歌詞・メロディ・サウンドで、バンドに持ち込む前段階からこの方向性は見えていたのでしょうか?

哲:ディレクターが宗清(裕之)さんていう人なんだけど、”LOUDNESS””RED WARRIORS””THE YELLOW MONKEY”とか数々の日本のロックを支えてきた人なのね。”ZIGZO”がデビューしたときからやってもらってるんだけど、今回は「メンバーでがっちりアレンジする前に俺を1回通してくれ」っていうのがあって。「”コード進行とメロディーの最善の形”っていうのは、もしかしたら今までの楽曲の中でもあったかもしれない」っていうのを彼は思ってたらしくて。だけどバンドで「こういう曲です」って渡したときには、ダイナミクスが決まっていて、いじる隙がないというか。いじりたいのに「もうこれはいじらせてくれないだろうな」っていうジレンマを抱えてたらしくて。で、今回はバンドで固める前に2人でやらないかという提案をされて。それは俺としても「自分がこれだ!」と思ったメロディー・コード進行をこの人がどういじってくれるんだろうっていうのもあってね。久し振りにプロデューサーとやるみたいな気持ちにもなったし、それはおもしろいなと思って。

ー再結成後にリリースした2枚の作品の曲作りとは変わったんですか?

哲:10数年前活動してたときは、ドラマーの櫻澤(泰徳)くんの家で、俺が持ってった楽曲をその場でデモテープ作って、リハーサルスタジオでバンドの熱量で完結させるみたいなやり方をしてて。で、復活してからはそのパターンと、俺とギターの(岡本)竜治くんでスタジオの中で、セッションとは違うけどお互いのギターのフレーズを探しなから、その場でお互いの引き出しを出し合って「これいいね」みたないのをその瞬間に捕まえて曲にするパターン。今回は俺が思いついたアイディアをまずはディレクターのとこに持ってってから。まあダメ出し貰ったりとか…最初はね、5曲くらい持って行ったら「ひねくれてる」と全部ダメ出しで。「メロディーには呼ばれて行きたい先があるはずだし、それは人が聴きたいものでもある。お前の場合はサビで違う方向に行ったりする傾向が多いから、それはお前にとってはロックかもしれないけど、今回やりたいことはそうじゃない」ということを言われて「あ、なるほどな。確かにメロディーが呼ばれて行きたい先っていうのはあるよな」って思った。ただそれをやると、他人と同じことをやるような気がしていてイヤでさ。

ー歪さが哲さんの感じるロックであると?

哲:それが俺の持ち味だと思ってたしね。でも、確かに20歳そこそこのときに書いた曲って、5分で頭から最後まで作れちゃってたから「俺、天才!」って思ってたんだけど(笑)やっぱメロディーってものに人格があるとしたら、その人格を素直に成長させてあげることなんだなって。飽きたからひねくれ出したんだけど、デビュー前・デビュー時の曲がボンボン出来てたときの感覚に戻ることなのかなって思ったしね。その感覚ってすぐ戻れるかなって思ってたら、意外と直ぐ戻れて次の曲出しのときに12,3曲作って全部OK貰って。その中から厳選しようって、今回収めた曲を選んで構成もある程度決めてから、メンバーに渡して「ここからいつも通りの肉付けをしていこう」という作業に入りましたね。

ー感覚が戻ったのは曲のみならず、歌詞についてもそう感じたのですが?

哲:そうかも(笑)同じなんでしょうね。それもやっぱディレクターに言われて、デモテープ持ってったときに、いくら仮歌でも言葉がないと歌い辛いし伝わり辛いから、すんごい適当に書いたのね。そしたら「歌詞もいいぞお前。素直で宜しい」なんつって(笑)「こんなん、何も面白くねえじゃん」って言ったら「お前の歌詞はこねくり回して自分で良いと思ってるかもしれないけど、あんなもん、俺には意味がわからん」って。「それってずっと思ってた?」って聞いたら、デビューからずっと思ってたって(笑)そう考えると、今回の歌詞は想像力を掻き立てるというよりは、誰もが見たことがある景色を意識してたかもしれないですね。

ー歌詞の情景が身近であることで、人間の暖かみとして伝わるのを感じたんです。「My Sweet Shame」の一節にある”言葉にしたら嘘っぽくなるのはなんでだろう”が「FOREVER YOUNG」でストレートに表現することの、全てに繋がっていると思うんですよね。

哲:そうですね。「嘘っぽくなる」って言っても自分で「嘘くさい」って思いながらやってることもあるし(笑)「B型ゆえのLOVE SONG」なんて「LOVE SONG なんて歌いたくないけど今夜は仕方が無い」って歌ってるのは、このアルバム制作のことを歌ってるし。自分の中では、言っても熱が込められる、ありのままを歌ってるはずだしね。

ー全てにおいて余計なものがないから、ストレートに心に飛び込んでくる感覚がありました。もし、10代・20代の哲さん、もしくは「MONSTER MUSIC」を制作したタイミングの哲さんがこのアルバムを聴いたら”悔しいけどカッコイイ”って思えるアルバムだと思うんです。

哲:あぁ…どうかな(笑)

ー若いロックバンドならそう思いますね。「ストレート」という部分って、どこか若い時代に出来る専売特許感があると思うんですけど、歴史のある”ZIGZO”がそれをやってのけてしまったわけですから。

哲:ちゃんと”40代のロック”をやってる気がしますよね。歴史があるバンドだと、過去のレパートリーを求められる瞬間があって、「これ今歌うの?」っていう歌詞とか、ものすごく青くて熱い歌詞とか。あとはムチャクチャな展開でややこしい曲とか、「これ将来のこと何も考えていない時代」っていう曲だったり。だけど、今回の「FOREVER YOUNG」の曲達は、ずっと60歳になっても70歳になっても歌えるんだろうなって。どこかそういうのは意識してたかもしれないですね。

ー再レコーディングされた「ひまわり」が、ここまでアルバムに違和感なく収まっている理由もここにあると思います。

哲:そうだよね。楽器の音も良い枯れ具合だし、ホント良い感じ。あれ、”ZIGZO”のレコーディングはちゃんとクリックを使うんですけど、早くなっても遅くなってもいけないから、当時のBPMでやったんですよね。いくつか、当時入れてなかった歌のハーモニーとかあるけど、ギターソロとか歌いまわしとかは極力再現しようと思って。それはバンドなりのファンサービスっていうか…よくセルフカバーとかライヴアレンジとかで「そうじゃないのに」っていうあるでしょ?特に来日バンドとかでちゃんと演って欲しいのに「えー」ってなるみたいな。

ーありますね(笑)

哲:そういう意味ではストーンズって、ちゃんと演ってるんだよね。面倒臭がってるのかもしれないけど(笑)そういうのって、お客さんのコアでマニアックなところを擽りたい自分もいるけど、大多数の人を喜ばせたいっていうのもある。今回の「FOREVER YOUNG」に関しては、「より多くの人に」ってテーマをディレクターからすっごい言われてたから。ひねくれたりとか俺の面倒臭い部分とかは(笑)このあと”nil”も”ジュンジュラ”のレコーディングあるし、そっちで爆発させればいいだろうって。それはディレクターにも言われたんだけど、その住み分けをしっかり出来てたかな。

ー歪さのない、”素直な高野 哲”を自然と?

哲:”良い人の自分”というのもいなくはないんで(笑)今回の”ZIGZO”は良い人でいこうと(笑)良い人が歌ってるアルバムな感じがするなぁ。

ーそれでいて、演ってることはロックなので先程おっしゃっていた”40代のロック”という部分に通じますしね。来月から始まるツアーでの意気込みもお願いします。

哲:あのアルバムの”ちゃんとしてる40歳たち”が観れるんだろうなと。まだわかんないけど、スーツ来てやりたいって思いもあるし、今回客席ありのところを選んでいるのも、ちゃんと歌も演奏も聴かせたいっていうのがあるからね。スタンディングのライブハウスでグチャってなるのも好きだけど、今回はしっかり楽しんでもらいたいね。

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