高野 哲 インタビュー

ー3枚目となる今作は、4つのバンドを同じ時間軸で聴くからなのか、”闇”の部分がより鮮明に表現されているように思うのですが、哲さん自身に意識的なところでそういった要素の抽出はあったのでしょうか?

哲:それはすごいあった。”ZIGZO”を真ん中に置いて、”nil””インディーズ電力”の方向があった上で、ジュンジュラはとことん闇に行こうと決めてて。実はジャケットの写真は、ニューヨークに住んでる岩切天平さんというカメラマンにお願いしたんだけど、「Edelweiss」のときも撮ってくれた人なんです。俺がすごく好きなカメラマンさんで、「Edelweiss」お願いしたときに、ジュンジュラはこの人にずっとお願いしようって決めてたのね。「Two Petals & Three Legends」のときもお願いしようと、写真を見させてもらった中に、今回の写真があって。1発で気に入って「これすごいから、次のアルバム用に取っておきたい」って決めてたんですよ。

ー今回の音の表現にリンクしたジャケットと思ったのですが、写真からインスピレーションを先に得ているんですね。

哲:そう。この写真を軸にイメージを膨らませて曲作りに入りましたね。

ータイトルでもある「Paradise」は既にライブで披露されていましたが、そのタイミングではもうイメージを得ていたんですね。

哲:そうですね。最終的にはアルバムタイトルが「Paradise」でなくても良いかなくらいに思っていたんですけど、あの写真から得て広がっていったから、このタイトルに落ち着いたんです。

ーということは「Paradise」が出来上がったときは、そこまで全体像が見えていたわけではなかったんですか?

哲:そうだね。漠然としてたと思う。

ーサウンド面で言えば、ベースレスであるにもかかわらず、低音がないことを軽く感じないんです。

哲:そうかも。バスドラはフロアタムを改造したやつで、16インチなんです。あとはピアノの存在がデカイよね。フルレンジだから「低音が足りない」って感じたら、1オクターブ下で弾けば良かったりするしね。今回、サンプリング音源も積極的に入れてて、梶原 幸嗣のタイトでコンパクトなドラムがすごいハマったよね。

ーさらに闇の美しさが1つの物語のように表現されているから、しっかりと聴くことが出来ますね。

哲:曲の長さじゃない奥深さは、今回うまく表現出来た気がしますね。

ー「さよならダヴィンチ」の再録もすごくフィットしていますし。

哲:あれはカジが、俺という存在を知ったのはこの曲だったらしいんですよね。「買って聴いたらすごいと思った」って。それをカバーしたいっていうリクエストでライヴで演ったんだけど、ドラムのフィルまで前のメンバーの演奏を再現してて。それは彼なりの敬意だったし、それはそれで良かった部分もあるけど、もしちゃんとレコーディングするならジュンジュラのアレンジにしたくて今の形になったんですよね。

ー”nil”でもそうでしたが、どちらの曲もこういった表現が出来るのは単純に面白いですよね。

哲:”nil”の初期に作った曲もそうだし、最近の曲でも「これ、ジュンジュラで演ったら面白いかも」って思ってて。逆もあるかもしれないし、そういうクロスオーバーがあっても良いって気がしてるんだよね。

ー先程、各バンドでのfeaturingを仰っていましたが、ジュンジュラでもあるんですか?

哲:いや、2人とも個性が強いからジュンジュラの場合は勝手に出ますね。俺の場合だと、歌い手というか…「ストーリーテラーでいたい」っていうのがありますね。どちらかと言えば、ギターはそんなに重要視してないかも。それはピアノの佐藤 統が、ギターの音がなくても表現してくれるから、どの曲も俺が手ブラだとしても問題ないって思ってるのね。カジも俺の歌を支えるということを念頭にやってくれているし、歌に集中して表現出来てると思うんだよね。

ー今年は4バンドでの表現という偉業をなされましたが…

哲:いや、異形かもしんない(笑)

ー(笑)”高野 哲”という1人の人間の、4つの側面を表現されたと思うんですね。

哲:今回、たまたま気づいたら4枚リリース出来たけど、人間の素直な側面を音楽を通して表現出来たのは、「随分ワガママな人生送ってるな」って気がしますよね。4つもやってるんでどれか1つ当たって欲しいというのはあるけど(笑)どのアルバムもすごく良いんですよ。

ー哲さん自身、どの作品でも楽しまれているのが伝わって来ます。

哲:そうだね。「音楽、楽しいな」って改めて思わせてくれたのは、タイジさんの影響デカイな。

ータイジさんの何にそこまで影響があったんですか?

哲:あの人、ものすごい笑いながらギター弾くんですよ。ソロも止まらないし、気持ち良さそうにしてる。改めて「そうだったよな」って思うよ。俺はどっちかっていうと、歌が軸だからギターはよりは歌に集中力使ってたのね。あのタイジさんの楽しそうにギター弾いてるのと、振り返ると沼澤さんが満面の笑みでドラミングしてて。「音楽・楽器を楽しむってこういうことですよね」って気付かされましたね。気持ち良いことってこういうことだなって。

ーそれがどのアルバムにも収められている。

哲:「今回、4枚出るぞ」ってときに「俺、ダメなアルバムを1枚でも作ったら、全て終わりだ」と思って臨んだから、すごい成功出来たと自負してるんだよね。俺っていう人間を知らない人は「どれを聴いたら良いんだろう?」って思ったとしても「どれでも聴いて下さい」って言えるし、何かをきっかけで全部聴いて欲しいよね。気に入ってくれたら、是非ライヴにも来て欲しいですね。


取材:2014.09.19
photo:大参久人/今井俊彦
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330

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