高野 哲 インタビュー

ーインディーズ電力については前回のインタビューでも伺ったのですが、「忘れても電力」「HIGH&LOW電力」「オリジナル電力」「風が吹いて電力」の4曲を持ち寄られましたが、「オリジナル電力」は100%SOLAR’Sでも収録されていました。

哲:第1回目の「SOLAR BUDOKAN」のときに「1人1曲、オリジナルを作ろう」っていうのから3人でアレンジ、レコーディングしたときに出したのが「オリジナル電力」ですね。次に総務の山本ようじ(佐藤タイジ:マネージャー)から、「次はワンマンなんで新曲演った方がいいですよ」って言われて、また1人◯曲っていう作り方をしてきたんですよね。

ーということは、今回収められた楽曲の作曲タイミングはバラバラなんですね。

哲:そう。今回も「アルバムだよ」って言われて、前の3曲(100%SOLAR’S収録)はアレンジもレコーディングもし直すとして、また1人◯曲書き下ろすっていう進め方ですね。

ーなるほど。歌詞にその部分が色濃く出ていますよね。「オリジナル電力」は正に震災直後であるが故の描写ですし、「風が吹いて電力」は震災から3年経過した哲さん流のプロテスト・ソングと解釈できます。

哲:それを3日で仕上げましたからね。死ぬかと思いましたよ(笑)実は俺、”インディーズ電力”に関しては、アレンジとか殆ど貢献してないんですよね。

ーそれは哲さん以外がイニシアティブを取って進めているということですか?

哲:トータル的なプロデューサーとしてもだし、特に(佐藤)タイジさんなんだけど、俺に比べたら2人のアレンジが早くて。どんな曲かというのを察知してくれて、「あそこでハーモニー欲しいね」ってなったら(うつみ)ようこちゃんがパッと付けてくれるし、あっという間なんですよね。

ーそれは哲さんの曲であっても?

哲:「こういう曲です」って披露したら、タイジさんが「エエやんエエやん、じゃあこうするわ」ってハーモニー付けてくれて「ソロのコードはこれです」って言ったら、ギターソロからエンディングまで早い早い(笑)要は、2人のアイディアの引き出しがすごいんだよね。”佐藤タイジマナー”と”うつみようこマナー”っていうのがあって、俺の曲にハマってくれるし、遠慮なくアレンジしてくれるし、そのすごさを”インディーズ電力”では感じてますね。

ー哲さん自身、そのアレンジに違和感もなく?

哲:全くないですね。例えばレコーディングのときに「風が吹いて電力」に「ピアノあったら良いな」って思ってたら、ようこちゃんが「ピアノ弾いてエエ?」って。「え!言おうと思ってたんだけど、弾いて下さい」って。逆に俺が2人の曲のときは”ジャマしないように”くらいに思ってて。「ここハモリましょうか?」って言うよりは「ここハモって欲しいね」「ここに掛け合いでコーラス欲しい」っていうリクエストに答える感じ(笑)

ー(笑)「ジャマしないように」というより、”インディーズ電力”においては、2人のアレンジへの信頼ですよね?

哲:そうだね。あの2人のアレンジ能力とコーラス能力はすごいですよ。ってようこちゃんに言うと「それで食っとんねん」って言われるんだけど(笑)タイジさんもプロデュース・楽曲提供・シアターブルック以外の活動をたくさんされてるし、その経験値がやっぱり出てますよね。タイジさんは俺にそれを教えてくれてる認識はないだろうけど、そういうのを見てて俺は「やっぱすごいなぁ」って素直に思うと同時に、面白いし勉強にもなるんですよね。

ーそれで言うと哲さんも4バンドの経験値がありますよね?

哲:う~ん…俺の場合は、例えば歌やコーラスとかはレコーディングになってから考える方だし、アレンジとかもバンドの熱量の中で決めていくというのを続けていたし、みんなで盛り上がる方向にいつも行っていたよね。

ー哲さんの場合は”瞬間・瞬間のダイナミズム”を求めることで、その意外性や突発性を楽しめるし、作品としての面白さを味わってこられたのもありますよね。

哲:それと比べると2人の場合は、楽曲の完成形がすぐに見えているんだと思いますよね。俺の場合は辿り着くまですごく悩んだりするんだけど、2人のプロデュース能力が高すぎるからあっという間なんだよね。でもようこちゃんはようこちゃんで、自分の曲のときはタイジさんと俺に任せてくれるから、結構提案は出来たりするんだけどね。最終的な拘りはもちろんあるから、彼女の判断で修めてくれるし。

ーだからこそ、役割分担が出来ているんだと思います。

哲:分業ですね。曲の作曲者が責任を持ってプロデュースを行う。でトータル的にプロデュースするのはタイジさんというね。

ー初のアルバムリリースとなりましたが、震災から3年が経って、その歴史がインディーズ電力の歴史でもあります。3年経ったタイミングで思うことを作品として残せたと思うのですが、率直に哲さんから見た今の現状をどう感じていますか?

哲:こんなに酷くなるとは思わなかったんで…余りにも今の状況が酷いからさ。タイジさんの「SOLAR BUDOKAN」で掲げてる”エネルギー選択の自由”、俺達は太陽光を選ぶという賛成運動に俺も賛同して、割りとそばにいることで精神的には保たれてるけど、呆れてモノが言えない状態というのが本音だよね。

ー国の判断に疑問が生まれる場面も多いですし。

哲:で、最近も汚染水のニュースとか見て疑問を持つわけで。やっぱり子供たちの為に、ここで何とかしないと将来が見えないんだよね。タイジさんも良く言ってるけど、たまたま自分達が40歳くらいのときにとんでもないことが起こり、気付かされて。20,30代より40代の方がちゃんと色んなことをわかった上で、日本ていう国で暮らしてるから。それはすごく責任のある立場だなって。放っておくと、これが次の世代にそのまま移行しちゃうし、ここで食い止めないといけない。集団的自衛権とかもそうだし、他にも食い止めないといけない問題が山程出てきているので。

ー私たちも、自分の親はもちろん、誰かが残してくれた未来に立っているわけで、哲さんが仰った「次の世代にどう未来を残していくのか」という問題に対して”インディーズ電力”の活動を通してもそうですし、音楽を通して変えていけることを実践されていると思うんです。

哲:ただ、そういう人の密度は濃くなっているけど、俺はそんなに増えてると思ってない。忘れたい人は忘れたいし、あとは政府の発表だけを信じたい人もいるわけだし。車に乗ってると良く思うんだけど、交通ルールって信号と標識を守っていけば、そんなに事故は起こらないよね。但し、ルールの中で生きているということと同時に、ものを考えないで済むということだよね。

ーこれだけのことが起こっても、考え・行動する人がすぐに増えるわけではないと。

哲:そういう人が多いと思う。誰かが決めた「こうだよ」っていうルールに対して、我々の前の世代の人の中でも、「次の世代の為にこうしていこうぜ」ってすごく考えてくれた部分もあるだろうし、そうじゃなかった部分もあるだろうし。そこで今の自分達が、次の世代にこの街をスライドするとしたら、責任重大だけどチャンスだしね。”ピンチはチャンス”だから。

ーそれを音楽の力でですよね。

哲:俺らは音楽家だから。正直、「音楽の力で世界を変えるんだぜ」ってことをやっぱ出来ないのかなって思ったこともあった。でも3.11以降、「今こそ音楽の力で世界を変えるっていうことをもう1度チャレンジすべきなんだ」っていう気持ちになって。「風が吹いて電力」はタイジさんのことを歌ってるんだけど、タイジさんはものすごい直接的なメッセージが多い。俺はそもそも役回りというか、理想論を掲げてしまいがちなタイプであるけど、思ってることは一緒だしさ。”インディーズ電力”に関しては、2人の補佐役なところで俺はいたいし、最終的には来てもらうお客さんに楽しんで頂きたいっていうのがあるので、それを音楽の力で出来ればと思いますね。

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