人時(黒夢)インタビュー

ー 「CREATURE CREATURE」への参加、「黒夢」の正式解散~再スタート。ソロ・サポートを通じて築き上げた「信頼関係」…PART.4では「黒夢」・「CREATURE CREATURE」・ソロ・サポートを中心にお届けします。

ー「CREATURE CREATURE」についてもお伺いしたいのですが。

MORRIEさんが選んだMORRIEさんをリスペクトしている人達が集まった気がしてます。実は「CREATURE CREATURE」についてはMORRIEさんが言ってることが僕はチンプンカンプンなんですよ(笑)やっぱり詩人でもあるし、音もロックの世界をとっくに超越して、現代音楽だったりクラシックだったり自身でスケールを作ったり。最近は「エニグマ」っていうスケールが気に入ってるとか言われても(笑)みたいな。でも、分かんないから嫌だじゃなくて、謎だけどその世界観に高揚していて。こんな事言ったら怒られるけど、正直「DEAD END」「MORRIE」フリークの方からしたら「お前ファンじゃないだろ」って言われるくらいだと思います。それは反論出来ないと思ってて、何故なら「DEAD END」を知ったのは清さんの影響だから。勿論、全部聴いてるし好きだけど、MORRIEさんとお話させて頂いて演奏を一緒に出来るのは「恐れ多い」って感じではなく、やられたい事に対して自分がどこまでその世界観に添っていけるかっていうのは刺激になりますよね。

ー観ていても、確実に引き込まれますけどね。

1ライブで大して暴れてもいないのにホント疲れますから。曲が難しい云々っていう前に、あの世界観の重さみたいなものが演奏しててズシっと来ますね。軽くやっているように見えて、実際はそんなことなくて。終わった後はそんなに曲数やってないのにいっぱいやったあとみたいな。

ー人時さん以外のメンバーの方もですか?

みんなそうですよ(笑)「黒夢」の時のソリッドな演奏やパフォーマンスによる、体力的な疲労感とは真逆ですね。

ープレイヤー・ベーシストとして充実した活動をされている中、2009年1月29日に「黒夢」の正式な解散ライブがありました。

なんでしょう、同じ音楽の世界にいるからか東京にいるからかは分からないけど、年を重ねる毎に距離が近くなってくるんですね。現実的な話で言うと、スタジオとか行くと「さっきまで居たよ」みたいなニアミスがあったり。清さんのサポートしてるyoshitsugu(Eins:Vier)さんと別のサポートで一緒になったりもして、yoshitsuguさんを介して「清さんに宜しく伝えておいて」っていう風になったりね。清さんはどうだったか分からないけど、会わなくなって10年近く経つのに徐々に自分にとって存在を感じるようになって。そうなると、必然的に気になってきますよね。あんなに嫌だったのに「今やったらどうなるんだろう?」っていう気持ちがあってコンタクトしましたね。

ーキャパシティオーバーだった頃からソロ活動を通じて「黒夢」が自分のプラスになると再認識されたと?

うん、おもしろかったら良いなって思ってたくらいです。結局「終わりにしましょう」ってなりましたけど、2人だから話が早いんですよね。それで踏ん切りがつくのかなとも思ったし、また次に進めるとも思ったし。

ー実際やってみていかがでした?

僕が思ってるようなライブにはなっていなかったので、勿論悔いは残ったけど後に清さんから東条さんのことが発端で再始動する申し入れがあったのは、嬉しかったし時間が解決してくれるなと思いましたね。

ー高円寺で定期的に開催されているアコースティックライブについては、先程の「CREATURE CREATURE」とは違い、”ホーム”的な世界というか…

弾き語りでやってる世界観ってよく”等身大”って言葉を使うけど、それ以上の事は踵1・2センチ伸ばすくらいまでしかやらないので。自分がその時々思った事を言葉で綴ったり、曲にしたりしてるから。それは弱い自分も、嫌な事も、世の中に対しても全部リアルな事だけでそれ以外いらないと思って、今高円寺ONEはホームグラウンドとしてやってますね。突き放すわけではないけど、来たい人だけいればいいなって。自分のその時の精神状態で曲を決めるから、楽しみたかったらそういうセレクトだけど暗かったら全部暗くするし(笑)

ーリアルですね(笑)

うん、精神状態と相当リンクさせてやってるので。これは辞める気もないですね。好き勝手なのでテンポもキーも変えちゃうし、間違えたりもするし(笑)

ー作品という観点ですと「ちっぽけな僕の世界」から「I Never Kill The Groove」まで今お話にあったアコースティックから昔好きではなかったとのお話を頂いたインストまで、相反するアプローチを取られていますが、これは今後も続いていくのでしょうか?

両方ともなんですけど、時間があればですね。ライブに関してはその日に会場が抑えられれば出来るけど、音源となるとある程度の制作期間が必要ですし、金銭的な部分もあるし1人で気軽に出来るわけでないので、スケジュールの問題ですね。弾き語りに関してはライフワークなので空き時間に歌詞を先からやったり、浮かんだフレーズをiPhoneに入れたりとかしてて。インストは嫌いだったけどベース始めて20年経った時に何が出来るかって考えた時に「そういえばベース好きなのに作ってないな」って。インストも環境さえあれば1人でもやれるから、弾き語り同様にライフワークとしてですね。ベーシストとしてのインスト、等身大としての弾き語りという両極端をやれる環境があるうちはやっていたいですね。

ーさらに今は「黒夢」が中心となっていますよね。

来年「黒夢」のデビュー20周年と銘打って、僕にとっても清さんにとっても印象的な年になると思うので、僕はなるべくそのスケジュールを優先したくて。冗談抜きで今の関係性が1番良いので、その状態で20周年を迎えられる事がすごく大きいから大事にしたいんですよね。

ー今日のインタビューを振り返ってもその想いはすごく伝わってきました。あと、人時さんは純粋に音楽が好きなんでしょうね。

全ての事に言えるんですけど、音楽に携わっていたいだけなんですよね。自分の立ち位置を維持しながら、色んな人と関わってベースを弾いていきたいっていう1番の根底があるので。

ー様々なプロジェクトに携わっていらっしゃいますがバランスもすごく良いですよね。

うん、最近そのバランス感覚が分かるようになってきたかな。一時期、「黒夢」・「CREATURE CREATURE」・ソロ・サポートってやってるのがしんどい時があったんですけど、乗り越えたので。そういう経験が今は活かせているのがあるからだと思いますね。

ー人時さんが思い描いていた事が本当に実現していってますね。

いや、まだまだですよ。ロック寄りの方だったり、元V系の人とかが大半ですけど、ポップスのお仕事もしたいですし、極論から言うと演歌もやってみたいですし。将来的にはオールジャンルで弾けるとか、初見で譜面を読めるとかが目標なので。何年か前に泉谷しげるさんとお仕事させて頂いた時、ものすごく勉強になったんですよね。僕と通ずるものがないけどいざやってみて、知らない世界で得るものってたくさんあるし、わくわくするっていうのがあって。

ーそうる透さんがそうですよね、天童よしみさんともやられてますし。

僕の中でミュージシャンの指標は透さんでもあるしね。透さんの名前ばっかり出しやがってって言われそうだけど(笑)僕の中にそれだけ強烈なインパクトを残された方だから。過去にご自身で「24時間営業のコンビニです」って言ってるくらいの人ですから。いつでも呼んで下さいって意味ですけど、そのくらいの感覚でプライドを持ってやられているので。

ー信頼も厚いでしょうし。

うん。インターネットが普及して10年以上経って、人との接触も少しずつ希薄になって、電話もしなくなりメールで済ましたりとかね。それで伝わる事って実はすごく少ないと思ってて。結局、音楽をやっていく中で人と演奏をするから”人との繋がり・人との付き合い”なんですよね。色んな進化や発達によって、コンタクトを取らなくても仕事が出来るようになったとしても、そういった繋がりや付き合いが大事だっていう事をソロになってからより強く思うようになったし、より人間臭くなった気がしますね。「他人を信用しない」っていう部分が減ってきたし、信頼関係を大事にしていきたいですね。


取材:2013.11.14
撮影:Eri Shibata
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330

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