高野 哲インタビューvol.34

ー美しさのあとに「ALL ILL」が入って来る辺りが面白いですよね。このアルバムの中でも、1番退廃的な曲ですが(笑)。

アルバムの中で、急に「ん?」って思う曲があったりするのが好きだし。寧ろ、こういう曲調ならジュンジュラでやろうかな?とか、そもそもこの曲は今回のアルバムには要らないか?と思った瞬間があったんだけど、ドラマー2人が「2人で全く同じことを叩いてやろう」って言ってたから、そういうのも見てみたいかなと思って。

ーそれでもこの位置に収める天邪鬼というか(笑)。

これ飛ばして次に行けば気持ちよく終われるのにね(笑)。そういうところは、nilの3人とジュンジュラの3人が集まったから、ちょっとの捻くれがこういうところに出てはいるんだろうな。

ー哲さんの皮肉ったリリックがまんま出てますしね(笑)。

そうですね(笑)。

ー象徴的なあのベース音はワウですか?

オート・ワウですね。スイッチを入れとくと、勝手に「ビョン・ビョン」っていうやつ。曲を作ってたら、勝さんが急に思いついて、その機材を引っ張り出してきたんだけど、あのベースの音色が全部持っていく曲になったね。

ーこんなにも救われない楽曲の後に、「BWY」で一気に救われるこの流れは…

コントラストが激しい(笑)。歌詞カードを並べると、「病気」って言った真横に「異常ない」って書いてあるからね(笑)。「ただちに健康に影響ありません」の後に「問題ありません」って、これはおもしろいな(笑)。

ー楽曲の持つ匂いもそうだし、歌詞の内容も含め、所謂エンディング曲かなとも思えるのですが?

そうなんだよね、だから6曲目と12曲目は蛇足っていう(笑)。いや、ボーナストラック!

ーそんな(笑)。

でも本当にそう。「BWY」で終われる意見もあったんだけど、曲のムードとバンドの方向性が見えだした頃に「Little Light, Big Shadow」をスタジオに持っていって、なんとなくA面の「BANDEIRA」までの流れをメンバーには共有してて。多分みんなは「えっ?」って言うだろうなと思いながらも、歌を披露して「例えばなんだけどさぁ…」って、言い訳的に説明しようとしたら梶が「こんなの待ってた。こういうメロディをやりたいと思ってた」って。

ーバンドの方向性が見え出したというよりも、方向性が全員一緒になっているような話ですね!

そうだね。さらに「サンバっぽくアレンジしよう」って、梶のアイディアもあって。色んな流れがあっても、アルバムの最後がハッピーな曲だったら、絶対ハッピーエンドだよねってアルバムが好きだし、「そういうアルバムの最後の曲ってイメージってことでどう?」って言ったら、みんな賛同してくれて。アルバムの最後の曲と決め込んで作ってたから、B面の最後に入れるしかなかったっていう(笑)。

ー(笑)。そもそも、こんなに救えない「ALL ILL」の後に「BWY」を持ってくることは決めていたんですか?

決めてなくて、他に何曲か候補があったよ。やっぱりアナログも出すし、A面5曲:B面5曲・A面6曲:B面6曲とかパターンはあって。アナログだと後半の曲で音質が下がっていくのを考えると5:5なんだけど、アルバムのバランスを考えると6:6だから、音質の面は気にはなるけど、どうせCDで聴くだろうって(笑)。

ー現実的な矛盾を抱えて(笑)。

それで、他に候補があったんだけどスタジオで録ってるデモをアルバムの曲順にして、メンバーみんなで聴いて、全員の意見は固まったんだけど、そこで統が「因みにこの曲も良いっすよね」って、曲作りの初期段階に録ったデモを引っ張ってきて。

ー要はお蔵入りにしていた曲ということですか?

なり掛けた(笑)。完全にこの曲の存在を忘れてて、ものすごい新鮮な気持ちで聴いたら「スゲエ良い曲だ」って。慌ててみんなでアレンジして、他の候補曲と差し替えて、「BWY」を入れることになった。

ーもし、佐藤さんが言ってくれなかったら…

本当にそうで。でも彼は、そういう危機管理マネジメントが出来るから(笑)、次のアルバムを出すってときに、多分引っ張り出してくれたと思う。だから、永久にお蔵入りってことはなかったと思いますけどね。まだライブ2〜3回だけど、もう手応えのある楽曲ですね。

ーそしてラストの「Little Light, Big Shadow」で、改めて5人であることを感じました。もちろんnilでもジュンジュラでもない中で「THE BLACK COMET CLUB BAND」というロックバンドをこの曲で1つ、完成させられてるようなイメージもありますし。歌詞でもマーチン履いててブレーキは壊れてるし(笑)。

「大丈夫?」っていう(笑)。これ、環七から246で第三京浜って、完全に横浜方面に行ってるよね。

ー「何のルートなんだ?」っていう(笑)。この曲が最後にあることによって、横浜への道のりの時間もそうですけど(笑)、これまでの11曲が、本当にカーステから流れているような情景が浮かぶというか。

確かに。この曲は、ルーツミュージックに対する、尊敬とか感謝を示せたらいいなって。半世紀前の大発明に、未だ衝撃を受けながら「ありがたく音楽を続けさせていただいてます」っていう感じなのかな。

ー先ほど「BWY」が最後と言っておきながらなんですが、この曲でまた「The Party Song」に戻れる、決して最後の曲という風に思えない錯覚要素があるような気がしていて。

それはあるね。「Little Light, Big Shadow」のサンバっぽい感じとコード進行、ちょっと軽いタッチでアルバムが終わって、もう一度聴こうって1曲目の「The Party Song」に戻ったとき、音階としてすごいヘヴィな印象を受けるんだよね。

ーそれで繰り返し聴けてしまうんですよね。

すーっと上昇していって、また落っこちていく感じが、何回でも聴けちゃうよね。カセットテープ世代・アナログレコード世代だし、A面B面っていう流れを大事にしていきたいなって。CDって、7曲とか8曲で十分な気がしてるから。

ーこのバンドをやることで、再確認も出来た感じがしますよね。

ルーツミュージックを辿って、そういう部分も感じられましたね。これを機会に、みんなレコードプレイヤーを買えばいいのに。

ーそれは書いておきます(笑)。そのための「THE BLACK COMET CLUB BAND」のアナログ発売ですから!そして、このアルバムを提げたツアーが10月から始まりますが、初ワンマンということもあり、これまでお披露目してきたフェスや2マンイベント内容とは、別プランになりそうですか?

そう、ワンマンだからね。アルバム曲が12曲で、今から曲を作ってもいいんだけど、さらに馴染みのない曲を増やしてもみなさん退屈しちゃうだろうから(笑)。

ーそんなことないですよ(笑)。

プラスアルファでカバー曲はやります。1マンで、だいたい20曲ぐらいできれば良いかな。

ーおお!アルバムの感触が良いだけに、それも期待大ですね!

だとすると、カバー曲で…7〜8曲か。20曲もやんなくていいか(笑)。


取材:2015.09.16
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330
撮影:大参久人

リリース

1st full album 2015.10.7 Release
1.Party Song
2.Hide&Seek
3.No.9
4.Jolly Roger
5.Soma
6.Odyssey
7.VAGABOND
8.Running Bird
9.BANDEIRA
10.ALL ILL
11.BWY
12.Little Light, Big Shadow

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【ライブ】

THE BLACK COMET CLUB BAND TOUR 2015
10/17(土) 大阪:JANUS  開場17:30/開演18:00
チケット前売り¥4,000 一般発売日8/29(土)
チケットぴあ Pコード:271-458 / ローソンチケット Lコード:52342 / e+ / CNプレイガイド / 楽天チケット10/18(日) 名古屋:ell.FITS ALL 開場17:30/開演18:00
チケット前売り¥4,000 一般発売日8/15(土) チケットぴあ Pコード:271-604 / ローソンチケット Lコード:4143110/24(土) 東京:下北沢GARDEN  開場17:30/開演18:00
チケット前売り¥4,000 一般発売日8/15(土) チケットぴあ Pコード:236-006 / ローソンチケット Lコード:73267 / e+ / 店頭【アーティスト情報】
WEB http://theblackcometclubband.com/
Twitter https://twitter.com/afro_skull/

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