The BONEZ ( JESSE & T$UYO$HI ) インタビュー vol.42

—“The BONEZの人間性を表している”

—そうやって作り上げたアルバムは、楽曲1つ1つもそうですが、聴いている最中、そして聴き終わったあとに残ったのは、4人のアイデンティティが融合した現在進行形のスケール感でした。

T$UYO$HI:そう思ってもらえたなら嬉しいです。所詮、ただの人なわけで、この4人でやっている音楽をとにかく出したかったから。例えば俺が「オペラみたいな曲をやりたいんだ」っつっても、そんなのJESSEが歌ってどうすんのよっていう(笑)。JESSEの良さ、NAKAの良さ、ZAXの良さ、俺の良さ。個々のアイデンティティが出るから、バンドの魅力になるわけだからね。

—特に象徴的だったのが「Waking up」の音数の少なさで。余白がこれ程まで心地よく感じられる楽曲をThe BONEZはもう表現できる術を得ていることが驚きであると同時に、今のカッコよさが詰まった楽曲だと思います。

T$UYO$HI:まぁ、10代のキッズにこのアダルトさは出来ないんじゃないかな(笑)。俺らとか辻さんの世代がカッコイイって思ってくれてるのはわかるというか、ど真ん中ですよね。でも若い世代にも新鮮なんじゃないかな。「音数が少なくてもこんなにカッコイイんだ」って思ってくれたら良いですね。普遍的なカッコよさというか、俺ら自身もやっとこれが出来たって思ってるので。

—究極に言えば、作曲者クレジットが誰であってもThe BONEZになってる気がしまよね?

T$UYO$HI:それはありますね。例えばJESSEが持ってきた「Leaf」に関して言えば、ストレートで明るくてキャッチーな原曲で。そこにその要素を引き継いだまま、切ない要素を後半の展開にくっつけたんです。ベースをコード弾きしてコード進行を作ってみれば、そこにZAXがエモーショナルなハーフのリズムを叩き、NAKAが泣きメロのギターを弾く。そしてJESSEのダメ押しグッドメロディー。
そういったみんなの要素が混じりあって、ただ明るいだけじゃない、ただシリアスなだけじゃないThe BONEZになったかなぁと。

—どの楽曲も、4人の間で自然とその要素を持ち合える状態にあるんでしょうね。

T$UYO$HI:「Paper Crane」なんか、キッカケはNAKAがベースで弾いたフレーズなんですよ。合宿スタジオで「ちょっとベース貸して」って弾いたNAKAのリフがいいね!てなってその場で作りました。「Louder」は、The BONEZ作曲になってますけど、実はクレジットに迷った曲です。1番最初に、下北沢SHELTERで”JESSE and The BONEZ”としてやったライブのアンコールでやってたんですよ。

—ええ?!

T$UYO$HI:そのときは歌のないリフだけをやったんですけど、それを元に作ったんです。だから、ZUZUに音源を送ったら「あのときの曲なんですね!」って憶えてた(笑)。

—「To a person that may save someone」「Remember」などの作曲者であるT$UYO$HIさんから、JESSEにオファーした要素はありますか?

T$UYO$HI:まず、JESSEのメロディーセンスがどんどんパワーアップしてるから、メロに関しては基本お任せ。俺が作る曲って基本キャッチーだから、相性というか。それをきれいな声の人が歌うと、ただのポップソングになっちゃうけど、JESSEが歌うことでザラついてカッコ良くなるから、すごくバランス良いなぁって思う。で、歌詞について言ったのはこの2曲だけ。
「To a person that may save someone」は今年に入ってから作った曲なんですけど、細かく言うとKの命日の前日に、24時を過ぎてから家で酒を飲んでたんです。で、命日は「昨日、酒を飲んだから今日はいいや。今、やるべきことをやろう」って、夜からイントロのSE部分を作って。

—ちょっと待ってください。アルバムタイトルともなった「To a person that may save someone」は、まさにアルバムの中でも最新曲ということですか?

T$UYO$HI:です。2016年になって「1905」「Leaf」「To a person that may save someone」のレコーディングをしたんですけど、「1905」は俺のデモがあったし、「Leaf」は既にジャムってたから「To a person that may save someone」だけ、まるまる書き下ろしです。
それこそ、さっき言ったBlood In Blood Outツアーをやったことがすごく良くて、そこで得たエネルギーみたいなものが、俺の心とカラダの中で充満してたんですけど、2015年の年末はそれを温存してて。そのツアーの感触や今までのThe BONEZの感触、そして「これが今のThe BONEZの4人だ」っていうものを元に「アルバムの1曲目になる曲をちょっと作らしてくんない?」ってメンバーに言って、2016年の1月2日の夜から作って、6日にはできた!ってメンバーに送りましたね。

—1曲目どころか、アルバムを象徴するような楽曲となりましたが、それまでその位置を担う楽曲は定めていなかったんですか?

T$UYO$HI:最初は「Remember」推しで行きたかったんですけど、プリプロで「To a person that may save someone」を録っていくうちに、メンバーもスタッフも「これがいいんじゃないか?」って。
普段のJESSEからはあまりないんですけど、ツアー中に「最近、こういうのハマってるんだよね」って掛けた曲が「To a person that may save someone」のコーラスの感じもあって、JESSEからのインスパイアもありますね。そして実際、俺が思ってる以上の良い歌をつけてきて「さすが、決める男だな!」って思うし、頼もしいっすね。

—しかも「To a person that may save someone」で描かれた世界は、今のThe BONEZの人間味そのものだと思うんです。

T$UYO$HI:そう。建(降谷建志)ちゃんが出てくれた、福岡でのツアーファイナルで感じたことは”それぞれの今”だったんです。10数年知ってるメンツだけど、PABLOはP.T.Pとしてじゃなく、武史くんも山嵐としてじゃない、建ちゃんサクちゃんもDragonAshとは違う、ウェットな部分の自分を出している。そのそれぞれの今でステージに立っているのがカッコイイなって。
そういう“今”を更新していく強さやポジティブさを出したくて、JESSEに「トンネルを抜けたその先にある希望」のような歌にしたいってニュアンスを伝えたかな。
もちろん、それで世の中が変わっちゃうわけではないし、いきなりスーパーマンにはなれないけど、ほんの少しだけプラスになるなら、それがリアルだと思うし、今のThe BONEZの人間性を表していると思う。

—“それでも僕らは生きていく”

—なるほど。オファーした要素は、T$UYO$HIさんの主観ではなく、あくまでThe BONEZを表すことがキーワードだったんですね。

T$UYO$HI:ですね。ただ、もう1曲の「Remember」は、俺の一貫してのテーマでもあるんですけど「それでも僕らは生きていく」っていうのを出したかったんです。

—そう伺うと、どうしてもKのことが頭を過ってしまいますが?

T$UYO$HI:まさしく。具体的なことを言うと、P.T.Pの夢を見たんですよ。ライブが終わって、ツアーバスみたいなのに乗り込んで「今日はお疲れ、いい感じだったね」なんて言い合うメンバーみんながいて。その会話で「ツアーファイナルまで宜しく」なんて言ってるそのファイナルが、日本武道館なんですけど、俺たちはそこで解散が決まってるっていう設定の夢で。
しかも、夢の中で握手した手の感覚までもが目が覚めてからも俺の手に残ってて…。そこにはもちろんKもいたし武道館でやることも決まってたけど、解散っていうなんとも言えない夢だった。
現実の今は、P.T.Pでの活動は出来ないっていうのがあるけど、もしアイツが生きてたら…っていうのもそうだし、例えばそうやって枝分かれした人生があったとして、その道があってもバラ色の人生になるのか?って言ったら、そうとも限らないよなというか。そういう不思議な感覚になって、そのときに思ったのが「人生は良くも悪くも予想出来ないことが起こる。それでも僕らは生きていくんだ」ってことでした。

—叶えられない夢の中で、しかも終わりを見なきゃいけない。

T$UYO$HI:うん。ホントなんとも言えない気持ちになった夢で。
口ではうまく言えない感情、感覚を曲にしたくて「Sun forevr」を作ったとき以来、吐き出したくて作ったのが「Remember」です。

—詰めた想いに差がないにせよ、「Remember」がアルバムのリード曲となっていたら、また受ける印象も違っていたかもしれないなと思いました。因みにその内容以外にも、P.T.Pの夢はよく見られるんですか?

T$UYO$HI:そんときが初めてかも…あ、他にも印象的なのがあって。実家へ帰ったときに、4人がアコースティックで囲んで、Kが歌ってる夢で「ヤバイ、俺P.T.Pの新曲を聴いちゃった!」と思って、速攻で寝ぼけながら携帯にKが歌ったメロディを録音して2度寝したんすけど、起きてから後でゆっくり曲を聴いたら、メッチャダサかった(笑)。

—いい落ち(笑)。

T$UYO$HI:と別にドラマチックな事だけが起こってるわけじゃないってことが、このエピソードで伝わったかなと(笑)。話を戻すと、「Remember」は大事な曲です。そのときはメロディがなかったけど、自分の感情を楽曲としてデモに表せたかな。それこそ、嫁さんとLAに行ったとき、海辺を散歩しながらそのデモを聴いたけど、あの景色でもハマるなぁと思ったし。

—その大事な曲をThe BONEZで形にするからこそ、「生きていく」に意味があるものになるというか。

T$UYO$HI:俺が今やってるのはThe BONEZですからね。もちろん、ライブとかでP.T.PのTシャツを着てくれてたり、ライブ中にタオルを掲げてくれたりするのはすごく嬉しいし、ありがとうって思う。もちろん、俺は今でもP.T.Pのメンバーって思ってるけど、答える場所はThe BONEZだから。みんなが思ってくれている気持ちは、俺の今であるThe BONEZで返すというつもりでやってるかな。

—今回はThe BONEZのアルバムについてなので、P.T.Pの話をしないようにしていたんですが、たまたま今日(取材日)が3.11で、震災以降の5年間にはP.T.PやKのこと、そしてJESSE and The BONEZを経ての今があります。このアルバムはそういった過去をというより、その上に立って今を生きる4人のサウンドトラックという位置付けになるんじゃないかと。

T$UYO$HI:今回、俺たち自身のサウンドトラックというか、今まで俺たちが経験してきたことを経てのアルバムですね。小さいときからdrug store cowboy、P.T.Pを経験した俺、KAMINARI、P.T.P、魚屋を経たZAX、RIZEだったり、色んな経験をしてきたNAKA、RIZEがあって、スーパー芸能人みたいな家に住んでたJESSEが、娘に弁当を作ったりチャリンコで学校に送ったりするナイスダディーになって…を経た4人で作ったアルバム。ネガティブなことも含めて、全ての要素を経たから出来た思うし。

—その放ち方も、ネガティブなことも含めてと仰いましたが、ネガティブには放たないのもThe BONEZだと思います。

T$UYO$HI:基本、そんなネガティブなことを全面に語るバンドじゃないからね。そこには、フロントマンのJESSEの存在があってこそ。よく、Kと比べられると言うか、背格好やTatoo、カリスマ的ポジションまで含めて言われてきたけど、似てるようで違う。
Kを筆頭にしたP.T.Pは「オマエの辛さはわかるぜ、俺も痛いんだよ」っていうことを歌った。JESSEやThe BONEZは「オマエら辛いことあんだろ?知ってるよ、俺だってあるよ。じゃあこっちに来て楽しいとこにみんなで行こうぜ」って言う。そこで、「人生は楽しいから大丈夫。辛いことなんかないよ」とは決して言わない。

—今を楽しくするために何かをするのがThe BONEZだし、冒頭でも仰った行動するヤツがきっとBONERでしょうし。きっと、その根本には愛とか暖かさが備わってるんだと思います。

T$UYO$HI:少年ジャンプです(笑)。だから、The BONEZがワンピースの主題歌をやったら良いんじゃないかなー(笑)。大人になったくせに、未だに“ヤンジャン”じゃなく、“少年ジャンプ”を読んでるような人がやってるバンドかな(笑)。

—(笑)。しかも「To a person that may save someone」では、そのありのままのThe BONEZをさらけ出してますしね。

T$UYO$HI:今って、曲にしても情報量が多ければ展開までも早いものが多い。でも、シンプルな方が響くこともあると思うから。例えば好きな子とデートするときや大事な場面に、18歳の子が白の無地Tシャツを着ていけるかっていうと難しいかもしれないけど、今の俺たちは着ていけるっていう感じかな。今までに何万もするような服も色々着てきたから、その良さも知ってるけど、今はそれを経て白の無地Tシャツでも自分を出せる自信があるんだよね。

—“詰まっているエネルギーや感情は、今の俺たち≒人間って感じ”

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