T$UYO$HI (The BONEZ)インタビューvol.49

—絶妙なバランス感覚ってのを俺が大事にしてるとこ

—(笑)。自分の正解と依頼側の正解の差分みたいなモノを、最初から隔たりがなく進めるのも、それ相当なスキルが必要なんでしょうね。

T$UYO$HI:「これバッチリでしょ」って思った曲がダメになって、初めて「人とやるのはこういう事か」ってわかりましたねぇ。まあ、プロデュースの仕事をしてるJIN(ex. Pay money To my Pain)君とかには聞いてたんだけど、映像関係の仕事は大変だよってみんな言ってたから。自分が良いと思ったものがOKじゃなくて、相手の要望に応えて初めてOKっていうのは本当難しいなって。具体的なことでいうと、2月3日から公開された「咲-Saki-」って映画は女子高生が麻雀するお話なんですけど、麻雀シーンがメインになってくるんで、場面展開がほとんど無いんですね。だから音楽でメリハリをつけて欲しいっていう要望があって、最終的には割と生楽器というか、ストリングスピアノをメインで使った感じに仕上げたんですね。ただ、俺が最初にイメージしたのは、「LIAR GAME」ってドラマみたいな感じというか。DJ的じゃないけど、クラブとかだとテンポ感が一緒で、どんどん曲が繋がっていくじゃないですか。麻雀のバトルシーンで、まるでDJが曲を繋いでいってるかの如く、そういうアッパーな曲がどんどん展開したら面白いなって。

—ああ、BPM変わらないんだけど、転調してるみたいな。

T$UYO$HI:そうそうそう。そういう感じで映画館をクラブ化してしまえ!って。これはイケてるぞって思ったら、もう、全くのダメ出しをくらい「ええええー」って(笑)。自分が思っていた、最初の方向性で10曲くらい曲を付けたんですけど、全くダメになったときは頭が真っ白になりましたね。「これ…俺やれんの?どうする?俺」みたいな。「もう、辞めます」って言おうかって思ったくらいで。でも嫁さんに絶対にやった方がいいって言われて頑張りましたねー(笑)。それからいろんな映画やドラマをチェックして、こういう感じかな?とかやっていくうちに掴んでいって、自分にとってすごく良い経験でした。自分の作った音が映像にハマった瞬間はやっぱ面白いし「やっぱこれは辞められんな」って思いましたし、またやりたいですね。けど、そのときにメンバーが居るという心強さも改めて思い知らされて、ホント早く12月になって、The BONEZのライブが復活してくれって(笑)。

—血肉となる経験を得られた良さもあるけれど、加えてバンドへの枯渇が始まるという(笑)。

T$UYO$HI:そう。あくまで1人の石川剛として、違うことやるのも楽しいけど、やっぱり僕はバンドありきですね。

—因みに、監督がジャッジをしてくれる役割って、バンドのレコーディングでいうところのディレクターみたいな感覚なんですか?

T$UYO$HI:それでいうと、俺らというか、俺が関わってきたバンドって、レコード会社のディレクターに「ああしろ、こうしろ」とか言われた事が一切なくて。

—あ、そうなんですか?

T$UYO$HI:だから、そもそもダメ出しを食らうという経験がないんですよね。ほぼ自分で決断、OKというか。

—そうか、The BONEZにしても特にプロデューサー立てるとかじゃないですもんね。

T$UYO$HI:メンバー同士と、後はMOBY DICKの永野さんに聞いたりしますけど、誰かのOKが無いと進まないとか無いから。drug store cowboy、P.T.P.、The BONEZも常にセルフジャッジができてたから、ディレクター的な感覚っていうのもわかんないんだよね。

—そうか。でもそこはある種、バンドと一緒でコミュニケーションやフィーリングで解決していったりとか?

T$UYO$HI:だし「絶対に作った曲でねじ伏せてやる!」って思って(笑)。最終的には、監督が「今回の音楽は、正直かなり難しかったと思うけど、石川さんが頑張ってくれて、今回はすごく助かった」って言ってくれてたみたいで。それを聞いたときに「よっしゃー!」って(笑)。頑張って良かったと思いましたね。でも、ちょっとした続きがあって、映画の作業は11月で終わったのかな?で、12月に入って念願のプレステ4を買って「よし!ゲームタイムだ」みたいに思ってたら、AIR JAMの5日位前の夜中3:00に監督からメールが来てて、映画の公開前に「TVドラマ版のスピンオフ用のリスト」ってのが10曲くらい書いてあって(笑)、お願いしますと。

—逆にねじ伏せられそうに(笑)。

T$UYO$HI:もう完全に終わってリラックスしてたし、バンドモードに突入してたから。でも、そこで「え、できません」じゃなくて、俺は断らずにやっちゃうんですけど、そういうことの繰り返しで今があるんだと思うかな。今までこうやって来たから、何かのときに「T$UYO$HIくん」って声が掛けてもらえるのかな?とは思いますね。

—そこはもう、T$UYO$HIさんの生き方そのものじゃないですか。

T$UYO$HI:ホント、毎日が勉強なんです、人生は。1月に発表したUEGxP.T.P.のウインドランナーなんて、ハイストリートの海外ブランドなんで定価は高いんですけど、関税とか諸々あって、ぶっちゃけメンバーにはそんな利益も残らないんです。けど、海外ブランドとP.T.P.がコラボしたっていう形を残したかったのと、まぁ単純に自分も欲しかったからやってみた。でも、例えば今回のコラボにしても、関税だったり販売サイトのパーセンテージだったり、その仕組みに疑問を持ったり知っていくことも勉強なんですよ。言われるがまま「あ、そうなんだ」っていうのじゃなく、「なんでそうなんだろう?」というか。もっとインディペンデントな精神というか、「だったらこうやって販売した方が、メンバーも買ってくれる人にとってもプラスなんじゃないかな?」とかね。何か知らないで損するの凄く嫌っていう気持ちが、小さい頃から俺は強いかもしれない。自分がちょっとワンアクション動くことで、自分にとって何かがプラスに変わるのであれば、俺は面倒臭がらずに動くタイプですね。

—何事も、自分が納得や知識を持たないままっていうのがイヤだと。でも、それがあるから自信を持っていけると。

T$UYO$HI:うん。ただ、何でも知りたい訳じゃないというのが、俺のミソなんですけど。自分が関わることや興味あることは知りたいんだけど、社会常識とかはわかってない(笑)。

—(笑)。

T$UYO$HI:細かいことに俺は拘らないのかな、という気はする。完璧主義というか緻密なことに情熱を費やす人っていると思うんだけど、俺はそれとちょっと違うんですよね。例えば小さい頃はそうだったんですけど、絵を描くときにすごく細かい部分を描いて、最終的に全体が描けないとか。何か1つが飛び抜けているのは良いことですけど、それによって何処かがダメになるのは好まないというか。トータルバランスが良くて、全体にこだわるというか。

—大きなディティールに拘りを持ってるんじゃないですか?

T$UYO$HI:そう。今飲んでるコーヒーもそうだけど、◯◯産のコーヒーが良いって突き詰めはしないで、俺はコーヒーが飲みたいっていうざっくりした感じです。

—ベースならどうですか?

T$UYO$HI:ベースに至っても、俺はそうかもしれない。最近、Warwick系のベースが再び良いなと思ったりしてるんですけど、それは音だけじゃないんですよね。時代感というか、服装もセットでこういう物を持ちたいという気がしてます。

—そこが全体のディティールになるんですね。

T$UYO$HI:そうっすね。まあ、曲も勿論そうなんですけど、時代とセットで2017年の今、このベースを弾いたらカッコいいとか、こういう曲を今鳴らしたらカッコいいっていう。でも、それは「今」の話であって、95年は95年の話であって、去年だったらこれは微妙だけど、2017年だとなんかいいなとか。その感覚を俺は大事にしていきたい。同時にもう1本、揺るぐことがない絶対的に好きな音楽ってのも自分の中にズドーンとあるんだけど、そのMIX具合というか。常にそういった、うまく言葉にはできないけど、絶妙なバランス感覚ってのを俺が大事にしてるとこかな。

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