T$UYO$HI (The BONEZ)インタビューvol.49

—「価値とか値段ってなんだろう」ってすごく思う

—時代性という言葉をT$UYO$HIさんは使ってくれたんですけど、キャッチ出来るから気付けるわけで、そういう変わり続けることへのカッコよさというのを持ち合わせていられるのは、T$UYO$HIさんが不変でいてくれるからこそだと思うし。

T$UYO$HI:うん。よくさ、例えば高価なバッグや洋服を「これは一生モノだから」みたいに自分に言いきかせて買うことってあるじゃないすか(笑)?でも、実際あんま一生着てる人も見たことねえなーというか(笑)。俺は、翌年には違うものが欲しくなるタイプというか。色んなものを着たいし、色んなものを見てみたいってのがあるから、今は一生俺はこのライダースしか着ないってタイプではないかな。まぁ「ライダース」って括りでいえば、CRIMIEの同じ物を6年くらい着てますけど、ダウンジャケットも着たいんです的な(笑)。

—(笑)。ライダース繋がりで、洋服のディレクションで参加された「MUSIC SAVED MY LIFE」は、T$UYO$HIさんの命名ですか?

T$UYO$HI:これはぶっちゃけた話をいうと、俺が付けた名前ではなくて。CRIMIEとコウちゃん(KOJI ( CHORD NUMBER EIGHT ディレクター / TEARS OF THE REBEL ))でコラボモノをやろうって企画から、「コラボする第1号はやっぱT$UYO$HIかなあ、やんない?」「やるやるやる」って。結果、俺も含めた3人で今後もやっていくことになったんだけど、今回はT$UYO$HI・エディションということで、俺が作りたい服を作った感じ。

—ブランド名というよりは、プロジェクト名に近い感じですね。

T$UYO$HI:そうそうそう。カプセルコレクションという感じで、「MUSIC SAVED MY LIFE」の今回はT$UYO$HIエディション。で、次はセカンドコレクションが出る予定だし、夏だったら色んなアーティストに声を掛けて、Katsuma(coldrain)、CRYSTAL LAKEのRyoやCrossfaithのTeruとか、色んなヤツがデザインしたTシャツを「MUSIC SAVED MY LIFE」で出すとかね、オモロイことをやりたい。

—因みにT$UYO$HIさんはThe BONEZでもGOODSで関わっていたと思うんですけど、違いってありました?

T$UYO$HI:圧倒的な違いが、ボディからいけるってことですね。こんなこと言うとあれなんだけど、無地が本当は1番好きだからなぁ(笑)。でも無地なんて作っても、バンドの物販で売れないでしょ?やっぱり俺はプリントよりも形とかシルエットが気になるから。The BONEZの物販ではボディから作るまでには至ってないんですけど、今回はカットソーとか自分で丈をもうちょっと長いのが良いとかできるのは楽しかった。と同時に、価格設定とか非常に難しくって。俺、男の服って高すぎると思うんだよね。そこもまた勉強だったんでけすど、「T$UYO$HI、これでこの値段で出そうと思ったら、大量に作らないといけないよ」とか。そうかこんな感じのものをH&Mでこの値段で出されちゃ、ブランドはたまんねえよって思うわなとか。

—ファストブランドとの闘いですよね。音楽でいう、メジャーとインディーみたいな相関性というか。

T$UYO$HI:だね。やっぱり曲と一緒で、自分の頭の中に「こういうのがいいな」ってあったものが形になったとき、おぉ!ってアガったし、と同時にだいぶ違うものもあった。実際にモノとして上がってくると、予想通りのものもあれば「あれ?何か違う、何が違うんだろう?」とか。それで今回は修正して、セカンド・サンプルまで作ったものもあるし。やっぱり俺の名前がついて出るものだから、もう1回サンプルを作るとお金掛かっちゃうけど、「いや、それ自分でお金払うから作りたいです」とか。

—更に言うと、届け方=売り方も初めての経験になりますよね?

T$UYO$HI:そう。俺はユーザー目線で”完全に俺が着たいもの”なんだけど、会社としては目線がまた違うんですよね。具体的に言うと「卸してるお店の人にひっかかる服をT$UYO$HIは作らないといけない」とか。「そうか、お客さんに届ける為には、まず卸すお店の人にキャッチされることを考えて作らなきゃいけないのか」っていうね。取引してるお店が食いついてこないことには、そこの先にいるユーザーには届かないっていう理論ですね。俺は今までバンドでやってきたから「ネットだったりで、直接売ればいいじゃん」って思ってたから。

—要は、自分のバンドのCDがCD屋さんにあるか、なくても通販で届くじゃん!みたいな?

T$UYO$HI:まぁそうっすね、ちょっと直接売りたい気持ちも出てきてるかなぁ。これまたインディペンデント的な。例えば、自分が作りたい曲・聴いて欲しい・カッコイイなという曲を作って、それを良いと思う人に届けたいんだけど、俺たちが売るのはお店になのか?というか…。だってね、定価3,000円のCDがあって、それを例えば1800円でお店に卸すのに、ファンの子はそれを3,000円で買うんでしょ。だったらそれをもっと定価安くして直接売れば良いじゃんって。そしたら両方嬉しいでしょ?あ、でもお店は悲しむなぁ(笑)。

—難しいですよね(笑)。ライブでも、イベンターさんにお願いすることと似てるのかなと。バンドで仕切れない宣伝を担ってくれるわけですし。

T$UYO$HI:そうそうそう。自分じゃできなことを誰かに頼んで、範囲を広げてもらうことは全然して欲しい。CDショップもそうだけど、そういうのはいいんすよ。ただ、やろうと思えば自分達でできることなのに、誰かに頼んで経費がかさむのは避けたいという感じですね。
そういうのもあって、最近は「価値とか値段ってなんだろう」ってすごく思うかな。昔、『いとしの未来ちゃん』っていうドラマがあって。ずっと先の未来でおばあちゃんが子供に過去の出来事として、ドラマが放送されてる現在から少し未来の話をする話なんですよ。そこに電子マネーの回があって、やがてお年玉も電子マネーでピッ、ピッってやってるみたいなね。で、泥棒はその電子マネーを盗むようになるんだけど、現ナマの香りがしないからつまらなくなっちゃう。で、泥棒は逆に現ナマを色んな人に配りまくって、「このお札の香りって懐かしいね」って、結局電子マネーが無くなったって話をすごく思い出すというか。俺もなんだかお金って怖いもん。

—Suicaもそうだし、ネットの買い物なんか使ってる感覚ないですもんね。

T$UYO$HI:ただボタンを押してるだけでね。例えば音楽を作るときの音源とかも、年末に半額セールとかやって、「今だと3万円です!」なんて。「こないだまで6万円だったし買っちゃおう。ポチッ」ってなるけど、お店にいってそれが3万で売ってて現金で払うんだったら躊躇するもんなぁ。そこで数字に「ポチッ」だと買っちゃうな、俺…みたいな(笑)。

—(笑)。しかも、それで得たものがソフトだと尚更ですよね。

T$UYO$HI:そう。しかも、音源とかダウンロードするだけだから。モノはこれからどんどん無くなっていくんだなって思いますけどね。

—それでも、ライブなんて形のあるものじゃないけど、何かをもらいにいく訳じゃないですか。

T$UYO$HI:二極化するんだろうね。自分が体感するものと、モノとしてじゃないと成立しないことと。

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