レディオヘッドのフロントマンであるトム・ヨークは人工知能について人間の芸術的作品を「盗む」以上のことはできていないと語っている。
マーク・プリチャードとのコラボレーション作『トール・テイルズ』をリリースしているトム・ヨークは音楽業界やクリエイティヴ産業におけるAIの台頭について反対の姿勢を示し、テクノロジーはミュージシャンたちのアイデアを金銭的な報酬も支払わずに盗んでいると述べている。
トム・ヨークは『エレクトロニック・サウンド』誌に次のように語っている。「音楽やアート、クリエイティヴ業界において言えることはAIは今のところ、人間による芸術的表現のヴァリエーションを生み出すことしかできていないわけで、それは明らかだよね。AIに本当にオリジナルな創造的思考ができるのかな? 僕はまだ見たことがない。人間によるオリジナルの作品を認識することなく、分析して、盗んで、反復したものを構築してみせるけど、自動伴奏が有用であるのと同じように、あるいは億万長者の美しい自然景観のスクリーンセーバーが有用であるのと同じように、AIは色褪せた複製物を作成するんだ」
「でも、経済的な枠組みとしては道徳的によくないものになっているよね。AIがどの人間の作品をクリエイティヴィティの面で模倣したのか分からないし、作者に対価が支払われていない。ひどいテック野郎たちによる悪夢のような未来だよ。テック業界が最も得意とするところだよね。テクノロジーの影に隠れて、自分たち以外の人類を貶めているんだ。アメリカではいまやそれが政治にまで波及しているのを見せられているんだよ」
「今風に言えば、僕らはクリエイティヴということなんだろうけど、この言葉ってアートがデバイスの『コンテンツ』へと変化した頃に出てきたもので、本当に嫌いなんだよね」
昨年10月、トム・ヨークはABBAのビヨルン・ウルヴァースなどと共にAIの学習にクリエイターの作品を使うことに反対する書簡に署名している。
書簡では次のように述べられている。「生成AIの学習にクリエイティヴな作品を許可なく使うことがそれらの作品を手掛けた人々の生活に対する重大かつ不当な脅威であり、許可されてはなりません」
チャットGPTといった人工知能の学習にクリエイターの作品を使うことはクリエイティヴ界とテック企業の間で法廷問題まで発展している。
知的財産を許可なく使用することに反対する書簡には音楽界、映画界、映画界、出版界から11500人の署名が集まっており、ビリー・ブラッグ、ケヴィン・ベーコン、ロバート・スミス、ジュリアン・ムーア、カズオ・イシグロ、アン・パチェット、ロザリオ・ドーソンらも署名している。