日高 央(THE STARBEMS)インタビュー

BEAT CRUSADERSのボーカル&ギターとして多くのロックファンの支持を集め、BEAT CRUSADERSの散開後も、数々のプロジェクトに参加し、2012年12月に”THE STARBEMS”を結成。自身のバンドだけでなく、楽曲提供・プロデュースまで行い、多彩な才能を持ったロック界でも唯一無二の存在、日高 央さんのロングインタビューを全4回に渡ってお届け!!第3弾となる今回は、プロデュース・「MONOBRIGHT」・「Fed MUSIC」~THE STARBEMS結成までを深くお伺いしていきます。

ーそういえば、BEAT CRUSADERS散開直後にマンガやられてましたよね?

「ロッカフェラー・スカンク」ね。あれはBEAT CRUSADERS時代にあった企画なんですよ。だからツインペダル投入したり、早いビートの曲を中心に実験的に作っているんですよ。

ー散開直後に1番早く聴けた音源で、BEAT CRUSADERSとは異なる印象だったんですけど、THE STARBEMSを聴いて納得できる部分がありますね。

THE STARBEMSで採用した楽曲が3曲くらいあります。「MAXIMUM ROCK’N’ROLL」とかはあそこで作ったアイデアです。

ーまたプロデュース作品も増えた頃ですが自分のバンドでやることと、プロデュースをすることの違いはありますか?

ざっくり言うと、ジャンルで好きとか嫌いじゃなくて、オレは歌う人の声に合ってないものはあまり好きじゃないんです。歌っている人の声が好きかどうかなんですよね。やっぱり世の中の人たちの9割は声・歌しか聴いてないと思うから、その人の声が活きるやり方の曲にしようって思ってやってます。例えば木村カエラのときも「あまりカワイ子ブリっ子な感じはイヤだ」って言ってましたけど、「Snowdome」の「ああいうカワイイのも歌えよ、オマエはカワイイんだから」ってタイアップのJR SKI SKIのCMの監督も言ってて。カエラは嫌がってましたけど(笑)
あと「BiS」とかはストーリー的にも彼女たちには背負い込んでいるものが多いんで、ちょっとエモーショナルでキー高めな感じで歌ってくれって言って。基本的にはその人の歌声に合っている感じであればなんでもいいです。

ー女性ボーカルをプロデュースすることが多いですよね。「SCANDAL」にも楽曲提供されてたり。

モテないわりには女子ウケは良いんですよ(笑)電話番号、誰も教えてくれないですけどね。「メロン記念日」も「SCANDAL」もあれだけメンバーいれば誰か1人くらい教えてくれんじゃねーかって思ったし、「BiS」も結局教えてくれなかったので、そこは残念ですけどね(笑)もちろん椎名林檎ちゃんも教えてくれなかったんですがこれから聞く予定です(笑)林檎さんはさすがに大人なので、こっちから聞かないと失礼かなって思って。

ー(笑)女子以外でプロデュースをした経緯から「MONOBRIGHT」に加入されてますが、日高さんがイニシアチブを取らないバンドへの加入はおそらく初めてでしたよね?

そうですね。人のリーダーバンドは初めてですね。言うてもあれは企画モノなんで。1年1枚か2年2枚かみたいな…野球で言うところの外人選手ですね。

ー元々は期間限定?

2年ぐらいの冷却期間が自分的に欲しかったんですよね。いきなり違うことをパッとやるっていうのは簡単だけど、それはオレ的にも心苦しいし聴いてる人たちも絶対心苦しいと思うんで。だけど、みんなには引き続き”おまんコール的”に怒られたいっていうのがあったタイミングで、ちょうど「MONOBRIGHT」から何ならメンバーでプロデュースもって話だったんでOKしたんですよ。みんな絶対に怒るだろうなって思って。そしたら案の定、メチャクチャ怒られました(笑)BEAT CRUSADERSのファンと言うより、「MONOBRIGHT」のファンからね。こちらとしては「そうだろうなぁ」としか思ってないですけど(笑)元々はレーベルの先輩後輩で、メンバー内での敵対関係っていうのもない中に、オレが無理矢理ゴリ押しで入った訳じゃなかったし、楽しくやれてました。

ーまた、「Fed MUSIC」(「ヒダカトオルとフェッドミュージック」)については「MONOBRIGHT」と対照的でしたよね。

「MONOBRIGHT」も基本的には歪んだ音楽なんで、歪んでないヤツもやりたかったんですよね。「GALLOW」っていうBEAT CRUSADERSのころに始めたネオアコ・ユニットで、歪んでない曲も書けないとミュージシャンとしてはダサイんじゃないかって思ってたのと一緒で。例えばボブディランは「フォークしか書けない」みたいなことにはなりたくなかったんです。ボブディランはやっぱりジャズの人と演ってもカッコイイし、ロックの人と演ってもカッコイイじゃないですか?それってミュージシャンとして大事なんじゃないかって思ってですね。ただBEAT CRUSADERSもないし、「GALLOW」もオレ1人だったんで、やる必然性があんまりないなっていうときに、ちょうど後輩のFedが困ってたんで、「じゃ手伝え」って言って始めたら、あいつらすぐ活動休止しちゃったんですよ。まるでオレが悪いみたいな(笑)

ー(笑)

あれは単純にギターの福井君が実家に帰るっていう理由で。で実家に帰る前にもう一花、日高さんと咲かせようっていう話でやってくれたんですよ。あのときは歪んでない音楽をちゃんとやる期間でしたね。常にそういう時期があるかな。

ーそれらを経て、THE STARBEMSに入っていくんですけど、元々は日高さんの「ヒダカトオルバンドセット」がスタート?

あそこが最初のスタートで、2010年の年末にあったカウントダウンジャパンかな。最初はハイスタ気取ってトリオでやろうと思ってやってみたんだけど、そしたら全然弾けなくて。やっぱ横山健くんとかシノッピー(渡邊 忍)スゲェなって(笑)そのときベース弾いてたのが派手な金髪で、ちょっとオカマっぽいあいつ(寺尾順平を指して)なんですよ(笑)

(高地広明:以下、高地)この格好(サスペンダーを指して)が(笑)

(寺尾順平:以下、寺尾)うるせーな気に入ってんだよ(笑)

ードラムは誰が?

高地:dijさんです。

あー「THE BEACHES」のdijだ。それが最初です。あそこで新曲を2,3曲演ってみて「ギターがいるな、鍵盤がいるな」っていう感じでちょっとずつメンバーが増えていったのがヒダカトオルバンドセットでしたね。

ーそのツアー時に震災があって、日高さんも実際に被災地へ行かれましたが、目の当たりにすることや震災への対応で、また”怒り”みたいなものが再燃したと思うんですが?

最初は郡山でライブが入ってたんですよね。それをやるやらないで揺れてて、ちょうど北関東と東北ツアーが入ってて。で、こっちは無理だろって思ってたんですけど、ハコ側が来て欲しいと言ってくれて。お客さんもやって欲しいっていう声が多かったんで、無理くり行ったら予想以上に反応は良くて。関東で見てる程のその…もちろん惨状は酷かったんですけど、逆に流通やインフラの動き、芸術的なことまで止まって本当にみんな鬱屈としてたんですよね。「弾き語りくらいで良ければ全然やるよ」みたいな感じで行って、そのあとバンドセットのツアーもしましたし。やっぱりバラッバラなんですよね、行政のやり方も県や市での違いもあるし。保証のされ方も「その塀が○メートル以上壊れたら全壊。で、そこから下は半壊」みたいな。でもそんな単純なものじゃないじゃないですか?被害に対するバラツキと行政対応のバラツキにみんなすごいジレンマを抱えてて。そこは実際に行けて良かったし、それは未だに全然解決してない部分なんで、THE STARBEMSもがっちり協力できたらなってすごい思ってます。

ーそれこそ、ラウドへの傾倒にも通じることですよね?

そこが妙に合致しちゃって、自分でも悲しかったですよね。本来は平和に生きてる中での怒り…でもホントにシャレになんないっていうところは、歌わなくて済むんだったら歌わない方が絶対に良いことだと。震災に関しては特にね…だけど、やっぱりラウド系が反応してたのもそこかなとも思うんです。みんな、怒りをぶちまけながらライブをやっているバンドばっかりが行ってたんで。当時、あの界隈のみんながすごい一丸となってましたね。これ悪口ではないんですけど「BRAHMAN」のTOSHI-LOWって口うるさいので有名なんですよ(笑)アイツ、おせっかいおばちゃんなんで。だから震災のときに「逃げたバンドマン、オレが全員引きずり回す」って言って(笑)「まあまあ」ってみんなで取り押さえてたんだけど、ちゃんと震災復興を巡って本気のケンカしたりして。そんくらいみんな熱い気持ちで一丸となってやれてたんで、それは言い方悪いですけどバンドマン界隈的に気持ち良かったですよね。そこまで付き合いのなかったバンド同士が仲良くなったりするのもすごい良かったですし。「THE BACK HORN」と「BRAHMAN」は繋がってたけど、「THE BACK HORN」と「idolpunch」がTOSHI-LOW経由で仲良くなったりとか。あと、亡くなっちゃいましたけど「Bloodthirsty butchers」の吉村さんと「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のゴッチが被災地で一緒に弾き語りして仲良くなったりとか。で、「今度一緒にやろうぜ」みたいな。結局実現できなかったんですけど、そういう当時の美しい裏話がいっぱいあって。オレもそれまで「雷矢」とかも挨拶程度だったんだけど、そこで一気にぐっと話し込むように仲良くなって。すごい良かったって思いますよね、「SLANG」のKOちゃんもそうですし。

ーきっと、感じているところや見ているところが同じだったんですよね。

ま、ジャンルとか違ったりすると敬遠してたりとか遠慮しちゃってたりとかあったんですけど、それが遠慮なく交じるのが「AIR JAM」では如実に出ててすごい良かったと思いますね。
それまで一緒に演ることはないだろうなって思ってた人たちが一緒に演るようになって、それはすごく嬉しかったですよね。

ー日高さんも「BOYZ OF SUMMER」でそれをやってもらえるとファンとしては嬉しいです。

ちょうどこの間も「RAZORS EDGE」が大阪でやってたり、「Locofrank」「ロットングラフティー」もやってるし…今はちょっとフェス的なのが多いんで(笑)、それはもちろん喜ばしいことだし、出して貰えたら本当に嬉しいことなんですが、今オレが考えてるのは、年末にコピーバンド大会しようかなって(笑)昔、渋谷GIG-ANTICで毎年大晦日にコピーバンド大会があったんですよ。オレは5,6年連続出場してて。「ASPARAGUS」「SHORT CIRCUIT」「HUSKING-BEE」とか、まぁ横浜系のバンドがメインなんですけど。でもGIG-ANTICがなくなっちゃったんで、オレ主宰で今年やろうかなって思っているんで。

ーおお!

その代わりコピーバンドですよ(笑)「一切、オリジナルは禁止です」っていうのはちょっと考えています。

ー楽しみにしています(笑)話をTHE STARBEMSに戻させて頂いて、歌詞の内容でBEAT CRUSADERSがフィクションなストーリーだとすると、THE STARBEMSは完全にリアリティがありますよね。

今は完全にノンフィクションですね。元々BEAT CRUSADERSのときも、嘘は歌いたくなかったんですよね。フィクションのストーリーがあっても、その気持ちは嘘じゃないっていうか…例えば失恋話があっても「悲しくなければ悲しくない」、面白い話があるとしても「面白くなければ面白くない」っていう風に歌うようにしようって思って。そこに1つ、物語を挟んでたのが楽しかったし、BEAT CRUSADERSのようにお面のバンドっていうのは逆にその辺の距離感がちょうど良かったですね。お面被ったヤツにね、「人生諦めないで頑張れ」なんて言われても「まず、お面とれよ」「まずお前がいろんなこと隠してるくせに、そんな偉そうなこと言うな」とか思うんで(笑)でも今はTHE STARBEMSとして、別に隠すものは何もない。金玉も隠す必要ないですし(笑)

ー(笑)そこですよね。お面を外された後もきっとそうでしょうし、”日高央”としてやれるバンドがTHE STARBEMSになっているというか。

そう、完全にそうです。だからね、”MAN WITH A MISSION”に完璧なアドバイス出来るもん(笑)「頑張れ、二次元行くよな、行くよな(笑)次はフィギュアだぞ(笑)」とか思いながら見てるもん(笑)かわいい後輩ですし、すごく応援してるんです。彼も被災地にすごく行ってくれてるし、ありがたいですよね。人気のあるバンドが被災地に行った方が絶対に惹きもいいんで。

ー先程、「バンドセット時にギターとボーカルを演るのが大変」っていうことからボーカルに専念されたことは大きな変化だと思っていて。作曲は日高さんでも、今までギターを持ってステージに立っていたところから、ボーカルのみになった差は日高さんの中でどういったものがあったんですか?

まずは「BEAT CRUSADERSの繰り返しになってはいけない」と思ってたんで、パートを変えようとしたんですね。オレがギターかボーカルに専念するかっていう。ただ、歌声が良いって褒められてるから、ギターに専念しちゃったらもったいないっていう(笑)

ーもったいないですね(笑)

じゃあ、ギター置いて歌おうとなったけど、ピンボーカルも大変でしたね。やっぱり運動量がギタリストの比じゃないというか(笑)”BRAHMAN”のTOSHI-LOWとか”怒髪天”の増子さんてすごいなーっていうのが最近分かった(笑)本人達には絶対言わないですけど(笑)

ーライブの気迫がすごいですよね。さらに日高さんがギターを置いたにもかかわらずTHE STARBEMSはギター3本あるっていう(笑)

そうですね。鍵盤的な役割がやっぱり欲しかったんで。当初はキーボードを入れて何度かバンドセットを演ってみたんですけど、どうしてもアレンジがBEAT CRUSADERSっぽくなっちゃうんですよね。そうすると、楽曲に制限が出てきちゃうんで、なるべくBEAT CRUSADERSっぽくないっていう意味でギターを3本にしました。カッコイイこともできれば、ラウドな方にも振り切れるし。あとは単純にキーボードのバンドが増えすぎてて、ダサイなって思うようになっちゃって。

ー天邪鬼的なワケではなく、みんなが同じになってしまうのがイヤなんですもんね。

そう、音楽って波があって、多分パワーポップっぽいのが1番ダサいでしょ。今、カワイイ女の子とデートしてて「オレ、”WEEZER”好き」なんて、絶対に言わないじゃないですか(笑)クルマ乗って、ラジオとかCDかけるときに”WEEZER”流すとちょっとダサいみたいな(笑)だったら、まだ”SKRILLEX”とか”STEVE AOKI”かけてた方がカッコイイ。そういう意味でBEAT CRUSADERSっぽいのは、正直言ってオレの中ではダサいんですよね。そういうのは多分2,3年経てばまたカッコ良くなるだろうし、ニッチじゃないとカッコ良くないっていうか。ミュージシャンとしては矛盾してるんですけど、大体みんなが好きなのはオレ好きじゃないんですよ。1人でも多くの人に聴いてもらいたいとは言いながらも、みんなが好きな物を全然好きじゃないっていう。やっぱり、スターってダサいじゃないですか。スター的なことってなんかカッコ悪いんですよ。”知る人ぞ知る”っていうのが1番カッコイイと思います。

ーアンダーグラウンドでもオーバーグラウンドでもないという…

タモリさん的なね。昔読んだ本の話ですけど、ピアニストの山下洋輔さんが九州でツアーしてるときに、ホテルかどっかで打ち上げしてたらしいんですど、その乱痴気騒ぎの現場にタモリさんが勝手に入ってきて。誰かがハナモゲラ語をやったらタモリさんもハナモゲラ語を返して、デタラメ中国語をやったら、タモリさんもデタラメ中国語で返してきて。「おまえ、メチャクチャ面白いな、誰だ?」って聞いたら全然知らない人だったっていう(笑)それで「あ、森田です」っていう、その感じです。で、山下洋輔さんたちがそれを面白がって、タモリさんを東京に連れてきて、赤塚不二夫さんが最終的に面倒みたっていう。でも当時はあの界隈しかタモリさんのことを知らなくて、テレビにも深夜にしか出てなかったし。だから、大橋巨泉よりタモリだなっていう。巨泉さんみたいな、誰もが知ってる名司会者よりは、タモリさんみたいにワケの分からないことをずっと言ってるけど、堂々と全国的なテレビに出てるっていうのは、すごいパンクスだなって思いましたね。「笑っていいとも!」でも最後の最後で、「ネットで期待してますよ、みんな」ってなっても「明日も見てくれるかな」って最終回で普通に言いましたからね(笑)それがタモリさんだなと。

ーTHE STARBEMSの始まりもそうでしたけど、中学生のときに聴かれていた”LAUGHIN’NOSE”から得た初期衝動とずっとリンクしてるような気がしますね。

そうですね。基本的には、思春期に学んだ事を丁寧にやってるだけなんですよね。

ー昨年リリースされたアルバムの中で「HUMAN RIGHTS」に代表されるような、事実ベースの歌詞が先程のお話にあった震災や、常に抱えている反逆精神みたいなところをそのまま反映されているような気がしますね。

もちろん、人権侵害という単語はどこかデフォルメ的な言い方だとは思うんですけど、海外に行けば、そういうのは往々にしてあるものだし。人種差別問題にしてもそうで、日本ではみんなが気づいてないだけで実際には人種差別もあるし、人権侵害もあるわけじゃないですか?そういうものを実際の衝突では何も解決出来ないって気づいているのに、まだ衝突するんですよね。デモに参加したりだとか、一生懸命Twitterでケンカすることも大事かもしれないですけど、今は何の解決にもならないですよ。もちろん、歌を歌うことだって何かの解決にはならないんですけど、知ってるか知らないかということは、大きな違いになってきていると思いますね。今、Twitterでケンカしている人に声を大にして言いたいのは「ケンカする前に、とにかく知らせればいいじゃん。知ったらそこでもう、おしまいで反論よしなさい」ってことで、反論しているつぶやきがもったいない。そういう意味では、それをCDとして作品に残せるっていうのはすごくありがたいことだな、と思いますね。どこのシチュエーションで聴いても、なんとなく自分が関与してる人権問題みたいな感じに捉えられるように、多角的な感じで書いてるしそれこそ、世界全体の人権問題のことですよね。ヨーロッパに行けば、それは人種の問題であるだろうし、日本国内だったらもうちょっと…まあ、言いにくいな(笑)人種の問題だよね(笑)オレ的には、個人的な人種の問題や宗教的な差別も一切ないから、歌詞に関して誰が聴いても同じように捉えられるように、フラットに書こうと思ってますけどね。ただ、怒りながらフラットに書くっていうのが難しいんですよ。直接書いちゃう方が簡単で、例えば「第二次世界大戦がダメだ」っていうのをそのまま歌にするのって別に難しくないんです。だけど、そんなのはわかってることだから、改めて歌詞に書くよりはそこに1個、入り込みやすい入り口となるキーワードがあった方がバンドとしては良いし、自分が実際に好きで聴いてたバンドも、そういうことがすごく多いんで。

ー実際、それは日高さんが1番描写しやすいものであり、やる意義があるものなんでしょうね。

そう。あとで調べると”THE BEATLES”の「Taxman」とか、当時は確かイギリスの税金が6~7割取られていたらしいんですよね。当時はビートルズの曲で莫大に儲けたジョージ・ハリソンが、例えば1億円稼いだら7千万とられたっていう、それは庶民の年収の割合で考えたら怒るよね(笑)でも、その怒りが名曲になるっていうのは、すごく良いことで。
「Taxman」って語呂も良いしカッコイイじゃないですか。やっぱり音は違えど、ああいう風にやっていきたいなと思いますよ。

ー今回6/4にリリースされる「ULTRA RENEGADES E.P」は”SXSW 2014″に出演された後、アメリカでそのまま録音されたとのことですが、その場所を選ばれた理由をお聞かせいただけますか。

まずは、SXSWに出たかったんですよね。やっぱりBEAT CRUSADERSはアニメの勢いで海外にウケてたっていうだけで、海外の人からすれば、普通のロックに聞こえちゃってたと思うんですよ。だけどラウド系に関して言えば、海外と同時進行っていうことが多いんで、海外の人が今のTHE STARBEMS聴いたらどう思うかっていうのを確かめたくて。で、去年はエントリーしたんですけどダメで、今年は受かったし張り切って行ったんですけど、せっかく行くんだったらレコーディングしちゃおうと思って、オースティンでレコーディングスタジオ探してもらいました。

ー実際にライブを演って、皆さんの反応をそれぞれお伺いできますか。

高地:SXSWの場合、街全体が音楽と共にあるというか。普通に生活に根付いていて、飲むついでにフラッと会場に入ってくる環境がすごいなと思いました。

寺尾:踊り狂ってたもんね。みんな、その期間はそのためにメチャクチャ集まってるもんね。

高地:柵もないし、レストランみたいなところでデッカい外人が暴れながら踊るからすごい楽しかったです。

寺尾:ライブやった場所がパブみたいなところで、ちゃんとしたステージじゃなかったんですよね。段もないし、目の前にお客さんがいる状態でやってたので、ダイレクトっていう言葉がそのままって感じで。僕なんか、目の前に日高さんとニシくんがいたんで良いですけど、日高さんはお客さんと顔を突き合わせて歌っているような状態だったんですよね。もう、そのダイレクトな感じが気持ち良かったですね。

後藤:本当の意味での距離が近いっていうね。バンドとお客さんの距離っていうか。

寺尾:日本でもフロアライブってあり得るだろうけど、その距離で外人の前で演れたっていうのがすごい嬉しかったですね。

後藤:言葉が通じないから、自分たちの熱意をそのまま叩き付けないといけないっていう。こっちが100投げたら向こうも100…下手すると120返してくるみたいな。それでいて、お酒飲んで「イエーッ」ってやったりモッシュしたリ、1人1人ぞれぞれがピュアに楽しんでるんだなっていう印象を受けました。

日高:まあ、今の三人の感想はみなさんの想像力の範疇ですけどね(笑)ここから先は、日高央の考えるSXSWの情報をお伝えします。

ーありがとうございます(笑)

SXSWはスタートしてからもう20年ぐらい経っちゃったんで、フェス内で貧富の差があるんですよね。iTunes Festivalみたいに世界的に中継されるものは、ものすごくお金をかけて宣伝するしチケット代も高いし、セレブしか入れないんです。実際、SXSWも通し券を買うと5、6万するんですけど、1日券とかiTunes Festivalなどのホール以外の通常ライブを見るのは非常に安いんです。街中のパブやバーでのライブは治外法権で、まず舞台監督がいないし機材もない。アメリカでは当たり前のことで、運営スタッフもiTunes Festivalとか大会場の方で忙しいから勝手にやってくれってスタイルなんです。

ーPA卓やモニターもですか?

4チャンネルぐらいの卓が隅っこの方に(笑)

ー(笑)辛いですね。

だからこそ燃えましたね。SXSWでは過去にFacebook・Instagram・TwitterなどがSXSWインタラクティヴ・アウォードで受賞して、それを切っ掛けに当っちゃった経緯があるので、IT系かiTunes Festivalみたいなホールを貸し切って全国的に中継するようなものは盛り上がる感じですけど、街中は相変わらず飲んだくれのお金持ってないヤツらがウロウロしながら街ごとパーティーという感じなんです。

ーそれを狙ってらっしゃたんですよね?

iTunes Festivalも出れるなら出たいですけど(笑)まずは街中でパーティーする感じを狙ってました。ただパーティーのイメージが日本とは違うんです。日本は、誕生日だとか名目がいるじゃないですか?でもアメリカではホームパーティーが当たり前なんで、お題が要らないんです。お題がなくても、お酒飲んで素敵な音楽に身を委ねることが出来るんです。オレらもライブハウスのときはお金をもらってる分、ちゃんと観せなきゃいけないっていう気持ちがあるんですけど、アメリカ人には申し訳ないけど3ドル分ぐらいのラフな受け入れ方をやってみないとちゃんとしたことも出来ないと思ったんで、そういった意味で良い修行でしたね。で、ちょうどオレらがライブをやったベニューの2Fで完全にマリファナの匂いがして、「上はゲイ・パーティーだから気をつけて」なんてことを言われて(笑)どうもメンバーがしきりに呼ばれてるなと思ったら…(笑)

ー呼ばれちゃうんですね(笑)

行かなかったですけど、もし行ってたらライブは出来なかったでしょうね(笑)でもそういうことも含めて面白かったです。ああいうことは日本ではそうそうないですし。

ー実際のライブはどれぐらいの時間演奏したんですか?

30〜40分ぐらいを3回ですね。オーディエンスも日本が好きで、アイドルやアニメ等をよく知ってる人もいれば、フラっと入ってきた大学生みたいなヤツが、「お前らめっちゃクールだったから、このキャップあげるよ」って”New York”って書かれたキャップをくれたり(笑)全員が演者なんですよね。日本だと、はっきりオーディエンスと演者って分かれちゃうじゃないですか。アメリカ人はライブが良ければ盛り上がってくれるし、実際には言わないにしても、ヘタすりゃ「ちょっとギター貸してくれよ」みたいなことを言ってきてもおかしくない連中なんで。そういう意味では、客席とステージ上がイーブンなんですよね。フロアライブなんで文字通りイーブンな関係でやってるし、つまらなかったらすぐに帰るし、面白けりゃ踊ってくれるし。それは自分にとって凄く良いバロメータになりました。

ー反応がダイレクトなんですよね。

そういう意味で反応が良かった。45歳だけど、まだバンド続けていいかなとは思いました(笑)

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