磯部正文(HUSKING BEE)インタビュー

1990年代後半から日本のロック史を大きく変革し、今なお、輝き続けるジャパニーズパンクムーヴメント。そのシーンの中心であった”Hi-STANDARD”と共に、独自のスタイルでシーンを牽引し続けてきたバンド””HUSKING BEE””のフロントマン、”いっそん”こと磯部正文の歴史を紐解きながら、日本のジャパニーズパンクムーヴメントの黎明期から辿っていく。

ー「DEVILOCK NIGHT」にて7年振りの復活をされた”HUSKING BEE”ですが、先程もお伺いした通り、苦渋の決断の中での解散からもう1度動かす決断をしたのは、どういう経緯があって辿り着かれたのでしょうか?

まぁ解散以降も自分が活動していく中で、音楽辞めようかなとか真剣に思いましたし、でもまたレールを引いてもらって「この道(音楽)を走りなさい」って、自分で運転し始めたわけじゃないですか。何処へ着くものやら、また長いトンネルかもしれないとか思いながら走ってたところ、2011年3月11日の震災があって。僕は東京にいましたけど、これまでその中で考えながら生活をしてきたことから、それどころじゃない「生きるって何よ、電気って何だ、娯楽って何だ」って、今まで考えたことがないような数々の疑問が湧いてきたり。これはもう大変なことになってしまったんだなと思いましたし、笑っちゃいけないみたいな感じも存分にあったじゃないですか?その中で「音楽って必要なのかな」って思いましたし、暫く何も出来なかったです。

ー”音楽”ということの前に、”生きる”ということについて考え始めたと?

「どうなっていくんだろう」っていう中で、周りが解散だとか再結成するらしいとか色々耳にも入って来てたけど、自分は自分で被災地を回って、「音楽が力をもたらすとこもあるんだな」「良い影響を与えることもあるんだな」ということを知るきっかけにもなりましたし、今まで感じたことのない気持ちで、音楽やってきて良かったと思いましたね。

ー現地で音楽を届けることで、改めて磯部さん自身の生き方や音楽に対峙する理由が明確になった?

自分はやっぱ、みんなに届けるってことを常に重んじてやってきたから、「またデリバリーしたいな」ってことを思ったんですよね。で、「自分が出張するよ」みたいなことが続いたら最高だなって思ってるときに、”AIRJAM”が開催されると。で、健さんや難波さんから電話を頂いたりとかして、ツネさんはソロで一緒にやらせてもらってたのでツネさんとも話す機会はありましたし。

ー震災がきっかけとなって、”Hi-STANDARD”が動いたように”HUSKING BEE”へのオーダーもあるわけですよね。

健さんや難波さんは「”HUSKING BEE”出来ないかな?」って言葉を掛けて頂いてたけど、「4人で集まるのはけっこう難しいですね」って。「でも、”HUSKING BEE”の曲をやって欲しいんだよね」というのがありましたし、他のイベントのオファーとかでも「”HUSKING BEE”やってくんないかな」っていうことはずっとあったけど、お断りしてて。

ー止めざるを得なかったバンドだったからこそ、簡単には動かせないと。

自分の中では、”磯部バンド”のソロをどうしていくかみたいな中で、メンバーもちゃんとバンドを動かしてる人たちに集まってもらってましたから、割りと”磯部バンド”のスケジュールを組むだけでも大変だと。メンバーが合う日って中々ないから、リハも難しいし年間のスパンで見ても限られた日取りしか出来ない。そうするとライブが出来ないから、僕は他の日って全部ヒマだし、これじゃ生活も出来ない。

ー”届ける”ということをしたいが故のジレンマでもありますよね。

じゃあ他に仕事持ってやるのかっていったら、今から「僕バンドやってるけど、バンドのライブ入ったら休める仕事させて下さい」みたいなところってあんの?そんな融通きく会社に勤められるわけがない。それはジレンマですけど、その中で生きるには音楽で飯食わなきゃいけないし、色んな意味で全部の条件が”HUSKING BEE”にあるってことはわかってたけど、大きなイベントだけに誘ってもらって、そこでピンポイントで”HUSKING BEE”をやるってことには疑問がありましたから。

ー”HUSKING BEE”を動かすならコンスタントに活動をするバンドでいたいと?

ただ動かすだけなら色んな人が喜んでくれるだろうけど、やっぱコンスタントにやっていくようなバンドじゃなきゃ意味ないなと。新しい作品を作ってツアーで色んな所に行けたりっていうのが”HUSKING BEE”ならではなんじゃないかなと。

ー”HUSKING BEE”はそういう活動をしてきたバンドですもんね。

ライブハウスやレコード店も喜んでくれるんじゃないかな。僕がまた別バンド組んで、それがまた何のカテゴリかわかんないですけど「僕のCDどうまとめんだ」みたいな(笑)”HUSKING BEE””MARS EURYTHMICS””磯部バンド”この次どうすんだ、「もう”HUSKING BEE”戻ろう!」みたいな。そうですね、数え上げたらキリがないぐらい理由は揃うかな。

ー実際に久しぶりの”HUSKING BEE”としてステージに立たれて、”届ける”という部分と、磯部さん自身はステージを楽しむことが出来たのですか?

まぁ、その日は”HUSKING BEE”だけを観に来て下さったお客さんだけじゃないのは、はなからわかってたので、自分としてはなんとも言えないです。そのときは「”HUSKING BEE”、今日やらせて頂きます!」みたいな感じだったんです。「遠藤くんがやってくれっていうんで乗っかりました、リクエストに答えます」みたいな。何人かはね…この何万人かの中の2,3人はすごく喜んでくれてるだろうなぐらいの感覚しかなかったですよ。でも久し振りだし、噛み締めながらやろうって。「やんなよ」って思う人もいるだろうし、みんながウェルカムなわけじゃないだろうけど、こっちは楽しかったですよ。

ーだとすると”AIRJAM”の方がより”HUSKING BEE”の意義が鮮明になる様に思いますが、一方であのタイミングでの最後の”HUSKING BEE”であるという、複雑な状況であったと思うのですが。

あの”AIRJAM”は「東日本を元気にするんだ」っていう意義がありましたし、とある部分では”HUSKING BEE”として出させてもらって、”HUSKING BEE”を続けると決めたんですがメンバーが変わるという色んなジレンマあるなと。なので、気持ちは複雑でしたよね。でもライブの一番最後のMCで話すことは決めてました。「”HUSKING BEE”、今日観れて良かったわ」と思ってくれたら最高だなと思いながらやってました。

ーお客さんの歓声が、それを物語っていたと思います。

まぁTEKKINとはね、ホントは一緒に出来たら良かったんでしょうけど、事情はあるわなと。子供3人いたらね…子供3人いて現状、ちゃんと仕事してる人をいきなりまた「”HUSKING BEE”やろうぜ」って呼べないし、現実的に無理かなぁ。誘うにも、誘う方が酷だなぁと思いましたしね。お客さんからしたら、そういう裏事情はわかんないでしょうから「なんでTEKKINじゃないんだ?」ってなるでしょうけど、複雑だったんですよね。

ーそして4人のメンバーで再スタートを切りましたが、先程触れさせて頂いた「動かすからには新曲とツアー」という言葉の裏には、以前葛藤のあった”バンド内でのぶつかり合い”や、若い2人だからこその新しい取り組みはありますか?

僕からしたら12、14歳差のメンバーを迎えてやってますから、一生その年齢差は縮むことはないですし、ジェネレーションギャップも抱えながらずっと付きまとうんだろうなと思いますね。それ以外にも人生観とかも違いますし。まずは自分のモードが昔と違うので、こう…褒めちゃおう!みたいな(笑)自分に子供が出来てから学ぶこともあって、それがバンドの方にもリアルに反映されて。まぁ、駄々こねたりするじゃないですか?メンバーを見てると駄々こねるじゃないけど”大きい子供”に見えてくるんですよ。

ーバンド内で磯部さんが”親”のような存在で?

「よしよし」みたいな。自分の子供のグズり様からしたら、遥かに可愛いもんなんです。「大人なのにグズってる、もういい年なのにグズってるよ~、答えが見つかんないよ~」みたいな。昔だったら年齢が近い同士でぶつかりやすかったし、わだかまりもなく「何だこの野郎!」みたいな感じだったんですけど、今の人はぶつかるとすぐ辞めますからね。同じ年代の友人達から聞いても、まず20代の子は説教したらすぐ「僕、辞めます」って。 それが”ゆとり教育”だとか、そういう整理をしたくないし育て方っていうのがあるんじゃないかと。色んな本を読んで「人を褒めて育てる」とかね。「人のことを褒めたら自分も褒められてると、脳は錯覚するらしいよ」ってFacebookでまわって来たり。とにかくね、ぶつかることよりも楽しく制作しちゃおうってなりました。

ーお子さんの影響が大きいですね。

最近ね、リーダーなのかわからないですけど、リーダーって全体を見渡して指揮を取って、細かいところまで全部世話するわけじゃないですか?今回は「知らん」って思ったんですよ(笑)勝手に自分で考えて下さいと。で、自分自身ももっと成長したいって思ったし、そう考えると子供の影響はデカイかも…子供のグズりが1番デカイ(笑)電車に乗るときに「今、グズりませんように。グズると”うるさい子いるよ”みたいな顔されるから」って。

ー(笑)今、ツアーの真っ最中ですけど、ステージ上でも昔はぶつかり合ってたとするのであれば、今の”HUSKING BEE”はそれとは違う表現がなされていると?

ある意味、ドンドン(平林)は僕の1個下ですから、もうちょっと開花して欲しいんですけど、いつまで経っても馬鹿振る舞う部分が開花しないんで(笑)不思議ちゃんだなと思いながらやってます。基本的には”HUSKING BEE”が楽しくやってるのがね、お客さんにとっても楽しいでしょうから。TEKKINとかいるとね、ツッコミ入れて「お前、何やってんだ」みたいなのが面白いんだけど、今のメンバーにツッコミいれても全然…お客さんから見ても、僕がツッコミ入れてるのは面白くないでしょうし、1人でバカやってる方が面白いみたいで。

ーボケとツッコミみたいな関係がないんですね(笑)

ないんですよ(笑)ちゃんとボケてくれないし、天然ボケみたいな人もいない。かといってね、「君たち前出てやって下さい」って言うのも違いますしねえ。昔はすぐ怒ってましたけど、今は基本的には1人でやってて、すごく良い気分でまわしてます。

ーでは、今回のツアーも”HUSKING BEE”を楽しんでる真っ最中?

今回、対バン形式でツアーさせてもらってますから、すごく良いですよ。対バン相手のライブの後は気合はいるし、「負けてらんねぇ」と。いつまで経っても、そういうのは大事なのかもなぁとも思いますね。

ーそれによる刺激の得られ方はワンマンとは違いますよね。まだまだツアーは続いていきますし、夏にはフェスへの出演も複数決まっていますが、最後にどういったライブをお客さんに届けたいかというところをお聞かせ下さい。

えっと、後半戦も多分そうですけど”HUSKING BEE”らしさを今は育んでいて。それは対バン形式のライブツアーをする過程で、自分達自身が”良い部分”と”悪い部分”を経験することと、対バン相手の”良い部分”を吸収してる段階だと思うんですよ。毎日、曲を変えたりしてるのも、僕ららしさをツアーで進化させたくてなので。そこに、さっき言った様にワンマンでは足し算にしかならないとしたら、対バンすることでの掛け算が生まれるのを今回のツアーで感じてます。まだまだツアーは続きますが、そこで”HUSKING BEE”らしさが磨かれて、フェスはそのバンドらしさが顕在してると思うので、これぞ”HUSKING BEE”という感じが観せられたらと思います。


取材:2014.06.18
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330
撮影:Rhiset

 

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