シアターブルック インタビュー

独占インタビューPART.2では各メンバーによる「佐藤タイジ」「沼澤尚」についてをお送りします。

ー沼澤さんがサポートで入られることになったときは、まだアメリカですよね?

沼澤:そうです。エピック時代はアメリカと日本を行き来してましたね。

エマーソン北村:2000年までですか?

沼澤:そう。オレたち(エマーソン北村)がジャケに出たのは「Reincarnation」からだよね。「オレタチフューチャー」の時代は2人しかジャケに出てなかったし、それまでは”サポートミュージシャン”ってクレジットだったしね。

タイジ:こっちはメンバーのつもりなんだけど、当時の契約なりでそういう線引があったのは疑問だったよね。レーベル変わったタイミングで、おしなべてメンバー表記にしようってなったのが2005年ですね。

ーエマーソン北村さんもそうですし、すでにメンバーとしてやっていたんですよね。

沼澤:気持ちはそうです。だって、自分が日本に戻ったのはシアターブルックがあったからなんで。このバンドがなかったらアメリカにいましたよね。「何をきっかけに帰って来たんですか?」って聞かれるけど「こんなおもしろいことやってるバンド、アメリカにはいなかったから」って答えてるもん。

エマーソン北村:僕もスタジオミュージシャンのようなことをやって来なかったんで、どの人とも”サポート”と”メンバー”の差がつかないですし、だからこそ同じようにレコーディングもライブもするっていうのがある意味、当たり前でしたね。

ー”サポート”という心理が薄いんでしょうし、だからこそ、今のシアターブルックがあるんだと思います。中條さんはリズム隊として、沼澤さん加入によって変化がありましたか?

中條:台風のような?

沼澤:ロサンゼルスのムカつく爽やかな風?

一同:(笑)

中條:正直、大物外人が入って来たと思いましたよ(笑)ちょっと萎縮してやりつつも、吸収できるものがいっぱいあるんだから一緒にやって、プラスになるものが増えていくのが嬉しかったですよね。

タイジ:2人に「メンバーになってくれ」と話ていたものの、バンドサイドとビジネスサイドとの足並みが揃わない状況が4年続いて…晴れてメンバーってなったときは、すごいスッキリしましたよね。今に至って思うことは、要するに人と人の関係って時間が掛かるんだよね。最初からこのメンバーが最高だってわかってんだけど、そこから時間を経てバンドの中での役割も認識して、それを継続出来てるから今があるのであって。ロックバンドに限らず、人の関係って時間掛けて継続して完成するものなんよね。いつもベストな関係性をイメージして継続することで、ベストな関係性になって行くんだっていうのを今のシアターブルックで思うっスね。

ー折角の機会ですので、みなさんがメンバーそれぞれをどう思っていらしゃるかをお伺いしたいです。まずはタイジさんについてをお願いします。

タイジ:悪口言った方がオモロイよ(笑)

ーいや、ありのままをお話して下さい(笑)

沼澤:オレはタイジくんについてというよりもね…メタリカのドキュメンタリー(真実の瞬間)じゃないけど、バンドという組織の中で葛藤しあった上で、1番最近のインタビューとかでラーズが「メタリカの歴史の中で、ベストシェイプだ」と。こんなにもバンドメンバーで仲良くやってる話をメチャクチャ楽しそうに話てて。他のメンバーと自分との関係っていう部分は、オレの場合は「タイジくんについて思う」ってことよりも、「タイジくんに対する自分のこと」だと思う。タイジくんに対する自分のことが、今になってコントロールできるようになって。例えば結婚したこともない人が、結婚について語るなとか…昔、父親と異常に仲が悪かった高1のときはなんだったんだろうみたいなね。それって、親父のこういうところが気に入らなくて、どうのこうのって思ってたりするじゃないですか?それって自分なんだって思うことに時間が掛かっちゃったっていうね。自分のメンタリティーの浮き沈みみたいなところが、こんな歳になってもいっぱいあって、「なんでこういう風にコントロール出来なかったんだろう?」みたいな。このメンバーに自分が入ってから、すっごい迷惑掛けてきたっていうのがよく分かるんですよ。音楽や音楽用語を習ったのが全部英語圏だったんで、音楽のフィールドでの人間関係も日本圏じゃなかったんですよね。それがメンバーに対しては、申し訳なかったなって思うし「これ…オレだったよな」っていうの連続だったっていうのが分かったのがこの1〜2年なんですよ。そこまでにすっごい時間が掛かって…こんだけの濃いキャラクターとルックスの人だからこその、ギターだったりするじゃないですか?曲1つ取っても他に聴いたことがないし、他に観たことないギターだし。そういうのが出てることに対する、自分のアジャストメントがコントロールできていなかったのが「これまで生きてきた50年以上だったのかな?」みたいな。もう16〜7年一緒に演奏してるんですけど、その姿をそれだけ長く観てる人はこの人だけだし、自分の音楽キャリアの中でもこの4人が1番長いんで。今でもバンド内で良いとき悪いときがある中で、そのコントロールをタイジくんは変わらないでいるのに、それに対する自分にそういうことを思いますね。

タイジ:確かに沼澤さんはここ1〜2年前とは違うよね。

沼澤:それなんですよ。オレが変えてるわけではないし、気がつくのが遅いんですよね。人が失敗してるのを見て「ああやっちゃダメなんだ」って思わない。子供のときからダメだって言われてるのにやって失敗したって思わない限り、改善できないタイプだったので。なんであのときに「焼き肉食いたくない」ってオレ言っちゃったんだろうって。「良いじゃん焼き肉でも」って言っておけば、そういう思いしなかったのにみたいな。

タイジ:あるある。焼き肉はある(笑)

沼澤:そういうのが整理されてきて、佐藤タイジっていう人にアジャスト出来てきてるのがここ最近。前からの知り合いっていうのはいますけど、続けてっていう人はここでしかいないから。怒ってたりしたときは自分の適応能力のなさですよね。

ーシアターブルックのカタルシスは、沼澤さんがタイジさんとアジャストすることで行われたんでしょうね。エマーソン北村さんはいかがですか?

エマーソン北村:タイジ先生に言いたいこと?もっとホントの意味でワガママで良いかなって。意外と大きいこと言ってるように思われるんですけど、その時々の流れに流されてというか…自分で具体的に言ってとなると、周りにお伺いしたりってなるんですよ。大きいこと言ってるっていうのはパブリックイメージです。

一同:(爆笑)

エマーソン北村:具体的な話において、ホントの意味での「オレはこうだ」みたいなものが出ても良いじゃないって。

中條:まぁ2人が言ったようにそんな感じじゃないですか?

一同:(爆笑)

中條:近所のガキ大将みたいな感じですよ。近所のガキ大将風なんですけど、それでケンカが強いとかそういう話ではなくて、兎に角騒ぎを起こす中心にいる人。で、本人に魅力があるから周りの人がついて来て、そういうのが出来る人。

沼澤:それで言うとさ、オレが長年思ってることがあって、”どっちでも良いもの”っていうのはどうでも良くて、「良い」「悪い」ってどっちかに言われた方が良くて。「誰にでも好かれる」っていうのはあるわけなくて、みんなが「良い」って思うものを「全然良いと思わない」ってことがあるじゃないですか?ということは自分もそう思われてるわけだし。強烈な個性なので、「すごい良い」っていう人と、「なんとも思ってなかったけどすごい良かった」っていう人がいるのがよく分かる。

ーありがとうございます。では、沼澤さんについてをお願いします。

タイジ:ここ1〜2年でっていうのはすげぇよく分かる。沼澤さんがさっき言ってたアジャストの仕方っていうのが、確かにこのバンドの中で変わったと思うの。シアターブルックは結成以来、1番ええ状態やと思うの。ディールがある・ないとかはどうでもええことで、間違いなくバンドが調子が良くて、それは「沼澤さんが大事なパートなんだな」っていうのが今話し聞いててすげぇ思ったし…90年代から口説いて良かった。

沼澤:(笑)

タイジ:当時、ソニーに金があって、呼んでおいて良かった(笑)

ー(笑)ドラムというパートではなく、人間としてという部分ですよね。

タイジ:そう。それが大事やって思ってるし、それがバンドに反映されてこの良い状態やからね。

エマーソン北村:最初に沼澤さんに教えられたっていうか…「16個の音符があるとしたら、それに収まらない音はないんだよ」っていうこと。もちろん収まらない音はあるんですけど、その音がどこにあるのかっていうところを、把握することが大事だっていうことですね。それを最初のリハで言ってて「なるほどなぁ」って。

沼澤:全然覚えてない(笑)

エマーソン北村:で、今日のネタとして沼澤さんに言うのは、「沼澤さんの演奏は、そこに収まらない部分がありますよ」っていうこと。

一同:(爆笑)

エマーソン北村:それがすごい音で出てますね。僕とかはインディーのシーンでやってきたから、そういうのを全部”雰囲気”で処理する人間が周り多かったんですよ。そういうことが目から鱗だったので、自分にとってもすごくありがたかったですね。

中條:今の北村さんの話の続きじゃないんですけど、いわゆる”プロフェッショナルな音楽家”っていうのはどういうものなのかっていうのは、日本のシーンでいうとスタジオミュージシャン云々は置いておいて、バンドでやるにしても音楽や楽器に対する姿勢とかが「アメリカ仕込み」って言ったら変ですけど、その姿勢が他の人と全然違うっていうのが思い知らされましたね。音楽に対する態度が違うから、それを実感して自分はダメだなって。

一同:(爆笑)

中條:それって音楽だけじゃなくて、それに付随することの体調管理や時間だったり。オレ、すごい遅刻癖があっていつもご迷惑をお掛けしてるんですけど(笑)今日1日の心構えっていうのが違いますね。

ー最大限のパフォーマンスをするために、必要なことを実践されているんでしょうね。

中條:あとはね、すごい細やかなんですよ。

タイジ:”おばちゃん”と言われてる(笑)

中條:一緒にツアーとか周ると細やかなんですよね。

沼澤:隣のうるさいおばさんですよ(笑)

中條:日本ではないところで培われたところなのかもしれないですけど、”レディーファースト”的な。

タイジ:音楽へのマナー的なところでもあるよね。

沼澤:気になることが多いから、良くも悪くもだと思いますよ。その人の長所って、その人の欠点になることも多いでしょ?それの典型的な例だと(笑)アメリカに長く居たっていうのも、良い部分と悪い部分があるなって。

中條:でもそういう人ってあんまりいないから。やっぱり面白い貴重な存在ですよ。

沼澤:だから「これははこうでしょ」って思ってたことが、「そうじゃないかもしれないな」って思うようになったのが、ここ1〜2年って話ですよ。

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