独占インタビューPART.3では各メンバーによる「エマーソン北村」「中條卓」についてをお送りします。
ー続いて、エマーソン北村さんについてをお願いします。
中條:北村さんのようなミュージシャンになりたいですね。
沼澤:あぁ、オレすっごいわかる。
中條:スタンスっていうか…自分のいる場所のバランス感覚がすごくて。出す音もそうだし、普段の立ち位置もそうだし。このメンバーの中で1番付き合いが古いんですけど、やっぱり昔から見ていて何も変わらないんですよね。それが1つ抜けた個性になっているにもかかわらず、「これでは合わないだろう」っていうのが全くないです。どこへ入っても合っちゃうし、それでいて個性が強い。
ー普通だったら、変わったものが入ると敬遠したくなりますけど、何故かフィットしてしまうっていう。
中條:そう。本質が変わらないで入れているんです。
沼澤:今「変わったもの」って中條くんが言ったことって、当たり前だけど「変わったもの」として聴こえるはずなんですよ。でもそう感じないんだよね。
中條:ジャンルとして”エマーソン北村”になってるんですよ。
沼澤:ホントそう。中條くんが「北村さんみたいになりたい」って言ってるのと、全く同じ気持ちで羨ましい存在ですね。それは違う言い方をするだけなんだけど、作為的だったり変わったことをしたときの聴こえ方が全然ないの。本人としてはそのつもりが全くないんだろうけど、僕の知ってるキーボーティストの中では、エマーソン北村以外は全員「変わったもの」として聴こえてしまう。「あぁ、これ”Donny Hathaway”風ね」みたいな(笑)でもエマーソン北村が弾くと、変わって聴こえないのね。自分の場合だと例えば「”James Taylor”のドラムだったらこういう風に」って知ってたり、実際そう思うこととか演れちゃう自分が嫌なときがあるんですけど、北村さんが同じコードを弾いても何故かオルタナティブに聴こえるんだよね。「今、CM7弾いてるだけだよね?」みたいなときがいっぱいある。
タイジ:そうだよね。シアターブルックのライブでエマーソンが来れない現場があって、「どうする?誰か鍵盤入れる?」って話してたんだけど「エマーソンがいないからって他の鍵盤入れたところで、他の鍵盤はエマーソンじゃないから合わない」と。むしろ、「鍵盤を入れずに別の埋め方をしよう」ってなってパーカッションとかにした現場があったんだけど、そのくらい誰にもマネ出来ない存在なんよね。
沼澤:シアターで違う人の鍵盤の音が鳴ると…
タイジ:「あれ?」ってなるよね。
沼澤:タイジくんがいれば何とかなりそうなんだけど、何ともならないんだよね。
ー”エマーソン北村”っていうコピーが出来ないと。
沼澤:出来ない出来ない。だから羨ましいのよ。
タイジ:だから、オレの”エマーソン北村”は
一同:(爆笑)オレのって…
タイジ:オレの中では…シアターブルックはセルフィッシュレコード出身ですから、数々のハードコア兄さんと仲が良かったんですけど、今現存する日本の音楽業界の中で1番ハードコアですね。
ー”Lip Cream”兄さんでは勝てない?
タイジ:そんなん、完全競合ですよ(笑)その辺のパンク連中なんか軽くあしらわれますよ。オレの中での”エマーソン語録”があって。まずね、最初に演りだした頃にリハやって終わったら片付けとかダラダラやるじゃん?そのときのDJチームが若い連中で、ダラダラやってるのを見たエマーソン北村が「ほらほら、さっさと片付ける」って。
エマーソン北村:言うトコそこなの?
タイジ:あとね、こんな感じで4人でインタビューかコメントかしてたときに、オレがいらないことを言ったらバサッっと「うん、今のいらないっスね」って。
一同:(爆笑)
沼澤:あったね。コメントして「OK!」って出たんだけど、タイジくんがコメントしてたのに「今のNGっしょ」って。
タイジ:ですよね(笑)って。あとね、最近も「この人はハードコアだ」って思ったことがあって。シアターブルックでソーラーのこととかやってるやん?で、ディレクターと話してて、どうしてもオレが書く曲がそっち寄りになってしまうのが、果たしてそれで良いのかと。そういうのがなくなったときに「バンドのイメージとか戻せなかったどうする?」ってミーティングしてたら、エマーソン北村が「戻せなくて良いんじゃないですか?」ってバサッと言うわけ。
沼澤:「あぁ、そっか」って思ったよね。
タイジ:時間の経過によって、考え方が変わって行くことがあったとしても、人間なので変わらない部分もある中でエマーソン北村が言う「変えなくて良い」って言える人はスゲェ少ないと思うんすよ。そういうことが言えるって超ハードコアですよ。
沼澤:助かることが多いよね。
タイジ:そう。理論的にも変えないで仲間を増やしていくことで、再生エネルギーで国がまわるって分かってても、横でそう言ってくれる人がいるというのは力強いですよね。
ーお話を伺っているとエマーソン北村さんは決断力がズバ抜けて高いですよね。ご本人からしたら「そんなことないですよ」って言われちゃいそうですけど。
タイジ:そうかも。明らかに高いよね。
沼澤:要点だけを突いてくる感じだよね。オレは余計なことをいっぱい言ってから話すんだけど、全然真逆(笑)
タイジ:レゲエ業界ってそうなのかな?
エマーソン北村:確かにレゲエ業界の物言いなんですよ。
一同:(笑)
エマーソン北村:「変わらなくて良い」っていうのは、完全に忌野清志郎さんの影響なんですよ。
タイジ:あぁ、なるほどね。エマーソンのキャリアは超ハードなんすよね。今回の話、オモロいんちゃいます?
沼澤:普段、話さないからね(笑)
タイジ:お互いに個々が切り開いてる分野がちゃんとあって、日本の音楽シーンの宝みたいなね。
ーホント、そう思います。シアターブルック自体が唯一無二ですから。最後に中條さんについてをお願いします。
タイジ:よくね、中條さんのことを話すときは”共犯者”と。
一同:(爆笑)
タイジ:これが泥棒団だとしたら、最初に相談するヤツですよ(笑)「あそこの金庫、どうもユルいらしいから取りに行こうや」って最初に持ちかける。このバンド内の図式自体も大体そうだからね。
中條:そうなんだ(笑)
タイジ:オレの中ではそうだよ。
タイジさんにとって、メンバーの中で相談しやすい相手が中條さん?
タイジ:それはあるかもな。このバンドでは1番古いし年齢も近いし、お互いの癖とか手の内が分かってるから余計なこと話さなくて済む。あとは、年上2人は煙草を吸ってないんだけど、オレと中條さんは止めるに至ってない(笑)
ー喫煙談とかありますよね(笑)リズム隊として沼澤さんはいかがですか?
沼澤:オレは”共犯者”ではないけど(笑)シアターブルックで一緒に演って、他の仕事でも「ベーシストは誰が良いか?」ってなったら誘いたい人。それは最も長くリズム隊として演っているのもあるし、自分が変化をつけたときに細かい演奏レベルの話をしなくても、分かってくれる人って中條くん以外にはいないんですよね。
中條:そんなに意識はしてないけど、同じ曲を何度も演ったりすると、その日その日で曲の捉え方が変わったりして。頭でというより、感覚に近いところで沼澤さんと演っているんだなって思いますね。
沼澤:”昨日よりイケてる”ってことが何度もあって。それこそ、この前「ドレッドライダー」をリハで演ったときも思うわけ。何百回も演っていてもすごい良い変化が中條くんだとあるよね。
中條:そのリハはオレも思った。長く演ってる曲でも、超えられることがあるっていうのは面白いですよね。
エマーソン北村:僕はホントはもっと頼りたいです。タイジ先生が言ったみたいに、僕はそんなに一徹に言わないので(笑)
一同:(爆笑)
エマーソン北村:音楽的なリズム面もそうですけど、コード面でベースは決定権があるので常に頼らせて欲しいですね。
ーありがとうございます。先程タイジさんがおっしゃった様に、今のバンド状況が最高になる以前、2007年に休止という形をバンドとして取りましたが当時のバンドの状況や、その決断についてはどう思っていたのでしょうか?
タイジ:何かね…「1回休めた方が良いよ」って感じだったんだよね。感覚的な話だけど「こういう理由で休止」とかではなくて…今考えたら「何で休止したんだろう」って思うくらいやな。イメージとしては1回止めてしゃがんで、もう1回再開して飛ぶときにジャンプアップ出来るようにしようと。そのとき、再開して飛ぶポイントだけは決めといて、そのときはなるべく派手に始めようって。
ーそれが2009年のリキッドルーム?
タイジ:そう。オレの中で勝手に「2009年に日本で皆既日食が見える」っていうのは、何かのきっかけに違いないからその年に復活させようと思ったんよ。今、考えると2009年で良かったって思うし。それから2010年にツアー演って、次は武道館で演りたいって思ってたときに3.11があったけど、ソーラーで武道館が演れて。今の活動があるのも2007・2008年に休んだことが”吉”と出てるんよね。
ー2009年からの活動履歴を辿るとそうですよね。また再開時は、2年の休止中に個々で得たパワーみたいなものがバンドに還元されたのでしょうか?
タイジ:やっぱね、中條さんと沼澤さんが”ブルーズ・ザ・ブッチャー”でずっと演っていたということが、シアターブルックにはデカイことやったね。ドラムとベースの食いつき方が全然違うしね。たまに”ブルーズ・ザ・ブッチャー”でギター弾きに行かせてもらうんやけど、楽しいしさ。それがシアターに還元されたのは嬉しいよね。