佐藤タイジ 独占インタビューvol.31

メジャー・デビュー20周年を迎え、全曲太陽光エネルギーだけでレコーディングされた「LOVE CHANGES THE WORLD」をリリースしたシアターブルック。豪華ゲストも多数参加した背景には、佐藤タイジが掲げる「再生エネルギーの利用」に賛同しているからである。9月におこなわれる「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」を控える中、佐藤タイジにその想いを語ってもらった。

—近年、ライブ・フェスと再生エネルギーを使用した活動を積極的におこなってきたわけですが、改めてシアターブルック・佐藤タイジが、この再生エネルギーを使用した活動、そして「LOVE CHANGES THE WORLD」のレコーディングに至った経緯を振り返られればと思います。

元々は、俺が1度も日本武道館のステージに立ったことがなくて、それをやっておかないとロック・スター、ロック・ミュージシャンとして死ねないというね。

—辿ると、ちょうどシアターブルックも2年間の休止明けで、また凄まじい勢いで活動していた頃ですね。

そうそう。「何を目標とするのか?」という部分でも武道館があって。周りで「ムリじゃん?いらないじゃん?」という意見もあったんだが、「バカやろう!やるんだ!」と言って、武道館に向けたチームを作りかけたときに3.11が来て、それどころではなくなったよね。

—直後に、現在も続けている「LIVE FOR NIPPON」へのアクションは早かったですよね。

実は、シアターブルックの過去作品を洗い出しながら、幾つかの成功と失敗を紐解いて、後輩の音楽業界人に啓蒙しようという企画があって、Ustreamで放送する場所も日にちを押さえてたんだよね。

—そのコンセプト自体も素晴らしいですね。

だが、3.11があって「シアターブルックの歴史なんかどうでもええわ!」と(笑)。直ぐ、復興支援イベントに切り替えて。アコースティック・ライブを演れてUstreamで流せることと、押さえてた日が3.17だったのが良かったんだよね。
そしたら、武藤・ウエノ、うつみようことか知り合いのミュージシャンが集まってくれて。当時は自粛ムードだったけど、俺は自粛する意味がわからなかったし、当日はアコースティック・ライブだったから、電気のことを考えずに済んだのもあるだろうけどね。

—そこには、演奏することを止めるよりも、演奏することで与えられることや機能することもあったわけですしね。

そう。イタズラに自粛することは良くないと思ってたし、あれをやってすごい良かった。ショック状態だったかもしれないけど、ミュージシャンは音楽をやってないと不安だし、健康ではいられないんですよ。奏でることで、精神的にも肉体的にも保ってられるからね。あと、3.11の1週間くらい前に、CHABOさんの還暦パーティーがあったんだけど、それがすごい良かったんだよね。先輩・後輩が一同に会して、CHABOさんが打ち上げの席で「これ、ステージで言うか迷って言わなかったんだけど、ここで言います。アイツ(忌野清志郎)が居てくれたらな…..」みたいなことを言うんですよ。それで後輩連中は1つになれてたし、そこで俺も初めて斉藤和義とかとも電話番号を交換してて、「LIVE FOR NIPPON」に飛び入りで参加してくれたり。

—「ずっとウソだった」にも繋がっていきましたね。

和義くんが「反原発の歌を作るわ」ってなって、俺も間違ってないと思ったし。今にして思えば、斉藤和義の”男”を完全に上げてますよね。その後、和義くんは「そういうアーティストだったのか」みたいな、大変だった部分もあるだろうけど、マスに対して影響力がある人がやるのは、すごい大事なことだと思うんですよ。

—ファンからは、共感と戸惑いの声が入り混じっていた中、芯を持っておられましたよね。

「ロック・ミュージシャンがやらないで、どうするんだ!」ってなるし、俺も替え歌で意見を提示して「LIVE FOR NIPPON」を続けたことが、明らかに「THE SOLAR BUDOKAN」のきっかけになりましたよね。

—公表自体も「LIVE FOR NIPPON」でおこなわれていました。

そう。俺も5 月くらいには精神的に落ち着いて、「武道館の話をしなくなったけど、震災が起きたからといって、武道館の夢を捨てるのは違う」と。ただし、状況は全く変わってしまったんだから、従来型の武道館ライブはないな、と。何が出来るかを考えた2秒後に「電気は全部ソーラーでやればええやん」って発想になったよね。

—きっかけを紐解くと、タイジさんが演奏し続けていたことが大きいですよね。

結局それがデカイんよ。俺が健康でいられたから、そういう発想になれるしね。

—更に、エネルギーにも風力、波力、地熱、もちろん太陽光と様々な再生可能エネルギーがある中で、太陽を選んだ理由は「ありったけの愛」を歌い続けたからこそ?

そういう発想になるよね。「ありったけの愛」が太陽に導いてくれたんだよね。もちろん、地熱とかも日本でもっとあって良いんだろうし、利用すべきエネルギーやと思うんです。

—ちょうど今日(取材日)は、広島に原爆が落とされて70年、その唯一の被災国である日本が、更にメルトダウンを経験している事実からも、改めてエネルギー選択の自由を考えさせられますし、どう変えていくのかをタイジさんは提唱され続けてきましたが、最初の武道館公演に当たって、その術を掴むまでの道のりは時間的な事も含め、かなり大変だったのでは?

武道館っていう規模もあるけど、電気を選択することは大変やったね。でも「LIVE FOR NIPPON」があったから、協力を申し出てくれる人は集まりやすかったし、その連鎖やったと思うんですよね。松葉(THE SOLAR BUDOKAN:プロデューサー)くんが色んなソーラーパネルの会社に話をしてくれて。その中には「1社プレゼンツで」っていう話もあったんだけど、俺のビジョンは”スター・ウォーズ”っぽかったから(笑)。

—フォースを集めてみたいな?

いや、見えないデス・スターがあるなと(笑)。対抗するルーク・スカイウォーカーたちは、色んなところから1つの意思で集まってるやろ。だから、1社じゃなくて、色んな人との協力でやりたかったんよ。

—それは出演されたミュージシャンにも、同様のことが当てはまりますよね?

そう。もうシアターブルックで武道館をやることが重要なわけじゃなくて、ソーラーでやることの重要度が増したわけやん。提示したことで、その手柄をソーラーにしたかったのはあるな。1人でも武道館やれるミュージシャンもいたけど、みんなでやることが大事だし、それを協力してくれる会社にも求めたんよね。音楽ってさ、ビジネス以外の部分がすごい大きいからね。

—「太陽光発電だけで大規模なロックフェスは可能なのか?」という問いに対して、成功という答えを示せたと共に「クリーンな電気は音が良い」という発明も手に出来たことは、今の道標にもなりましたよね。

最初は素人考えで「ソーラーパネルから、電池に貯めて発電する」というところからで、まずはロック・バンドが演奏すると、どのくらい電池が必要なのかを実験したんですよね。俺のマーシャルアンプをいつものコンセントから電池に差し替えて弾いたら、音のレヴェルが格段に上がってるんですよ。考えてみれば、ここで発電して余計なものを介してないから、ノイズが入る余地がないなと。音響エンジニアたちは、音をクリアにする為に時間と労力を使うわけだが、東電が公表している通り、流通している電気はきれいではないんだよね。だけど、独立して作ることによって、ノイズの無い電気を確保出来るし、音響機器に有効であることに気づいたとき、俺の道が照らされた気がしたもんね。「タイジ、こっち行けよ」って(笑)。

—(笑)。これこそ、音楽の力だと言えますし。

色んな人間の魑魅魍魎を飛び超える力やな。間違いなく、俺の力でもなければ電気屋さんの力でもなくて。あの武道館は、みんなで参加したことによる、音楽の勝利やったよね。やってみたらキレイだった(笑)というのはあるけど、巨大なギフトなのは間違いなくて。最初は、武道館が終わったときに、俺は泣くかなって思ってたの。

—初めての武道館で、且つソーラーだけで出来たという喜びもあったでしょうし。

CHABOさんは、俺を泣かしにかかっとったしね(笑)。ただ、やれたという事実が、誰かにとっては不都合な事実だろうなとも思ったわけよ。「やれました!」って言ったとき、完成して終えたというよりも、これが始まりで続けなアカンってなって、泣くのは違うなと。

—当初の「シアターブルックとしての武道館」という目標ではなく、ソーラーの力を発信するスタート地点に変わった出来事だったからですね。

そうやな。続けて行かんと、再生エネルギーだけでライブが出来るとか、太陽光の音はクリーンやという事実が広まらないってなったよね。その武道館の打ち上げで、協力会社から「野外やりましょう」というところから、その会社が中津川やったから「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」になって行くんやけど、もう武道館という場所の拘りよりも、ソーラーの拘りが大きくなってたね。

—しかも「中津川フォークジャンボリー」の開催地でもあったという。

「とても不思議な力に導かれているな」っていう感覚はあったよね。

—そして、昨年には「LOVE CHANGES THE WORLD」にも収録されている「もう一度世界を変えるのさ」を太陽光エネルギーのみでレコーディングされました。

ライブでやれているんだから、レコーディングもやるべきでしょうっていう、自然な流れだったよね。今回のレコーディングで前回と違うのは、シングルのときはアナログで録音したんだけど、昔の機材ってものすごい電気を食うんよね。だから、今回はPCで録音したくらいかな。

—実際の制作にあたり、20周年という節目も踏まえ、ゲスト・ミュージシャンは決めておられたんですか?

元々、「もう一度世界を変えるのさ」が出来たときに、俺のイメージの中では大人数で歌っている音像やったんよね。今回の「もう一度世界を変えるのさ album ver.」に行くためのシングルがあった感じ。

—言い換えると”album ver.”が”完成版”とも言えますね。

そうそう。これが第一にあって、せっかくだから他の楽曲にも参加をお願いしていったんだよね。スケジュール調整は大変だったけど、みんな快く参加してくれたし、これだけのミュージシャンが一同に会すというのは、ビジネスだけでは不可能やん。ソーラーがあって、そのコンセプトに賛同してくれて、こういうのがやれるバンドがあるということを知って欲しいしね。

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