TOSHI-LOW(BRAHMAN)インタビュー

ーTOSHI-LOWさんが今を懸命に生きた暁に目指していること、若しくは得たいものはあるのでしょうか?または全くそうではなく、仮に明日で終わったとしても、悔いはないとなるのでしょうか?

うーん…今日こういう風に自分の話ばっかしてさ。「どんだけ自己中心に話してんだよ、オマエ」って話をずーっと聞いてもらって幸せだと思ってるよ。飲み屋でこんなことやったら嫌われるよね?
「なんだこいつ、自分の話ばっかしやがって」って(笑)それをさ、してもらえるんだから幸せだよね。でもね、これとオレが思ってる満足は全然違う話だと思ってるんだよ。だからこれを話したからって、スッとすんのか?っつったらむしろモヤモヤがたくさんあるし。今日話せば話すほど自己嫌悪になるし。やっぱ自分の内臓をひっくり返して話してるみたいなところもあるから。そうすっと「また、オレってこんなもんか…」って思う部分もある。でも「生きてく証」っていうのは、そういうことなんじゃないかなと思う。「成功すること」「幸せになること」「認められること」だけじゃないし。ほら、バンドなんかアルバム出す度に嫌われたり、好かれたりするじゃん。全部受け止めるしかないんだよね。チヤホヤしてくれる人だって、次の瞬間に手のひら返してそうじゃなくなるのをたくさん見てきたし。でもオレが思ってる表現の行き先っつうのは、そんなものと全く違うとこなんだと思う。それも自分自身の問題だと思うし、だから未だに、練習してるんだと思う。クズみてぇな進み方しかできねぇけど、それでも辞めないと思うし、1歩1歩進んで試していくしかないんだよね。泥沼に入ってしまっても、「あ、泥沼に入ったな」っていうことを確認してもがきながら、苦しんでいくしかない。

ーそれは例えば”勝ち負け”なんてチープなことではなく、どういった状況でも今、この瞬間を確かめて生きることであると。

だって勝ち負けなんかさ、勝ったら負けるよ。勝った人はまた…

ーなるほど、勝ち続けることはない。

ないよ。どう考えたってずっと晴れの日は続かないでしょ?どんな偉大なチャンピオンだって、負けるその日は訪れる…だから「負けない心」だよね。勝ち負けに左右されるではなく、元々の負けない心。って言っているオレが1番左右されてたりすんのよ、意外に(笑)こんなに言ってんだよ?こんなに言ってんのに、褒められりゃ…さっきの話だけど、褒められりゃ図に乗るし、けなされりゃ落ち込むし。そんなとこ気にしててもしょうがねぇって分かってる。でもね、やっぱり心が揺れたりすることもある。勿論、跳ね除けることもある。時には善人ぶってさ、支援活動してるときもあれば、本当は悪人のクソみてえなヤツなのに、作り笑顔してしまうときもあるしね。自分でも心底嫌になってしまうけど、何にもねぇところからたまたまオレ達は生まれて来て、また何にもないところに戻るわけでしょ?ってことは、別に失うものなんて始めから何もねぇってことだし。人からの評価や金や財産とか、何も持ってくことは出来ないわけだから、最終的にはこの瞬間を確かめて生きるっていうことだけが、その先に繋がるんじゃないかな。

ー先を求める前に、今を生きないことには何もないっていうところに帰結していくんでしょうね。

うん、今日がなかったら明日はないからね。

ー”NO FUTURE”ですね。

うん、だからオレはその考え方がすごい好きなんだ。ずっとそれが刹那的だと思ってたんだけど、今はそうじゃねぇんだなと思って。”NO FUTURE”って本気で言う為には、今日すげぇ頑張らないとダメなんだなってことが、大人になって分かってきた。子供の時に言ってたその”NO FUTURE”は「関係ねぇよ!」みたいな、ただの発散で「オレは早死にするんだ!」と思い込んでたから。あ、さっき神社で写真撮ってたら、オレの年が前厄って書いてあったけどさ(笑)

ー(笑)

そんな年まで生きてしまったわけだよ。”NO FUTURE”って言ってたときの倍以上生きてしまったよ。けど、その”NO FUTURE”の言葉の響きは、今でもオレの中では新鮮だし、素敵な言葉だよね。

ー反骨精神での”NO FUTURE”から、今を生き抜くからこその”NO FUTURE”なんだと。

やっぱどこまで行ってもパンクスなんだもん。ただ、自分に正直でいる為、自分にワガママに生きる為には、努力が必要な年になったんだよね。それが責任というのか…でも責任取れてねぇところなんて今でもいくらでもあるし、自分は何もできてねぇなって感じるところもいっぱいあるしね。「まだまだだな」と思うことばっかり。で、それをまた忘れてヘマすることもあって、なかなか成長しないよね。つくづくバカなんだろうね。

ーどれだけ一生懸命に生きたとしても、「良いとき」「悪いとき」があり、結果は別であることを理解されているから、今の話に紐づくんだと思います。

だっていいことやってたから幸せになるとか、長生きするとは限らないじゃん。だったらあの震災起きないよね。だから、人生はこんなに不条理であるっていうことを、真っ直ぐ受け止めなきゃいけない。そして、自分もなんて矛盾してるんだろうっていうことの、その矛盾自体を真っ直ぐ受け止めなきゃいけないっていう。今、ギリギリ言ってるけど、言葉にしたら分かんないことだってある。「不条理受け止めるってどういうことよ?」「矛盾受け止めるってどういうことよ?」って。でも、人生はそういうものだから。正しさって言った瞬間にもう悪さが出てしまうし、善て言ったら悪も出てくるし。そんなに二極化したものなんかほとんど無くてグレーゾーンだらけでもあるし。

ーそれらには共通して、強さがないと受け止めるのはすごく難しいはずです。TOSHI-LOWさんはそこの強さ持っていらっしゃる人だから、真っ直ぐ受け止められているのだと思います。そうでない人がうまく避けるのか、楽な方向に行くのかなと。

楽な方に、生きてる実感があればいいんだよ。そしたらオレもそっちに進むと思うし。ただオレの生きてきた短い経験上では1回もないよ。例えば楽して手に入れて良かったもの、たまたま運が良くて手に入ったもので大事にしてるものとか。苦労して、泣く思いしてなんとか手にしたものが、今でも残っているものだし。何度も何度も「辞めよう」って思いながら、才能もねぇのに苦しんで苦しんで生み出した歌が、今オレ自身を助けてくれる。だから、楽に生きてやっていけると思ってる人の方が強いと思ってる。

ーあぁ、逆に。

ただ、その楽な道行っても、必ずどっかでつまづくから。これはオレ自身だけだけど、そん時に起き上がれなくなんのは怖いから。何があってもっていう準備をしとかねぇと。

ーだからこそ、話が戻るんですけど今を大切にしない限りはないわけですよね。

そうね、今を生ききる。死に切りたいっつうか。

ー全うするということ?

そうだね。だから楽に生きていない、こういうタイプの人間がこうやって取材を受けるわけでしょ?
だって普通の楽な道を行く人達が、雑誌とかのインタビュー受ける側にはならんじゃん。

ーあぁ、多分そういう人達だとつまらないと思うんですよ。

そう、つまんないんだよ。だって、生きてる実感ないもん。

ーどっちかに振り切れていた方が、お話してて楽しいです。

だって裏社会の人だって話したらおもしれぇよ?

ー(笑)すいません、まだそこは経験ないです…

ヤクザと政治家って元々一緒だし、わかるじゃんそんなの。全ての表のものっつうのは裏も表もどっちも持ってるから面白いんだよね。それは危険なものも含めてね。三陸の海が魚の宝庫だって津波は来る。だからああやって町が出来たわけだし。じゃなかったらもうちょっと平坦なところ…山でもね、地崩れはあるし山津波があるけども、やっぱり生き方が違うじゃん。1年に1回だけ収穫できる、農民的な生き方と、獲れたときにはものすげえ金がね…マグロが○億売れるみたいな漁師の生き方って違うと思うし。ちゃんと住んでる地域毎に意味があるんだよ。だけど、日本はだんだん平坦化しててさ、どこにでも同じ店があって、同じテレビやってて。結果、同じ風になってきちゃったから、結局つまんなくなってきてる。これから「グローバル化だ」なんて言ってたら…やめてよ、せっかくこんなアジアの端っこにちょん切れてある国の面白さ無くなっちゃうじゃん?と。

ーそうですね。世の中を面白くする人や事柄には、先程のTOSHI-LOWさんの言葉の通り「真剣に今を生きること」が必要で、そうなると「平坦」や「楽」の真逆の道になる。

うん、そうそうそう。

ーインタビューをさせて頂いて、TOSHI-LOWさんがまさにですし、これまでさせて頂いた方々もそうだと感じました。

だってお前が選んでる人達、みんなすったもんだした人達ばっかりじゃん(笑)そのままストレートに”スコーン”といった人少ないよね。まあ佐藤タイジはそのすったもんだの方に気付いてないだけの話だし(笑)

ー(笑)振り切れてるかもしれないですね…

「オレはそんなこと言ってないよー」って、多分それを見えてないだけっていう(笑)

ーTOSHI-LOWさんは理解されてますよ(笑)

今日を生き切ったら、オレにもまたたくさんの「すったもんだ」が来るんだろうね(笑)


取材:2014.01.22
撮影:Eri Shibata
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330

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