☆Taku Takahashi(m-flo/block.fm)インタビュー

3月26日に発売された通算8枚目となるニューアルバム「FUTURE IS WOW」にまつわる貴重な裏話や楽曲制作秘話。世界を飛び回る☆Taku Takahashiだからこそ見える、海外と日本の音楽シーンにおける大きな違いや風営法に関する考えなど、熱いトークをお届け!

ー3月26日にリリースされたm-floのニューアルバム「FUTURE IS WOW」についてお聞かせ下さい。まずは、リリースおめでとうございます!

ありがとうございます。

ー今作で通算8枚目となりますが、楽曲・ゲストアーティスト含め、多彩なアルバムだと感じました。

そうですね。海外からはMark Ronsonの大ヒットシングル”Bang Bang Bang”に、Q-Tipと一緒にフューチャリングしているアメリカのシンガーMNDRも参加してくれました。

ーMNDRと言えば、今や一躍スターの仲間入りを果たしましたよね。それ以外にもBIG BANGのSOLさん、国内においては浜崎あゆみさんなど、様々なジャンルで且つワールドワイドな豪華ゲスト陣を迎え入れていて、現在の活動とすごくフィットしていると思うのですが、一方で制作するにあたってアルバムの全体像というのは見えていたのでしょうか?

制作方法というのは、アーティストによって皆さんそれぞれ違うと思うんですけど、”こういうアルバムにしよう”と思って作っているわけではないんですよね。作りながら出来上がってくるものなんですよ、アルバムというものは。最初の段階である程度”こうなったらいいなぁ”というぼやけたイメージはあるんですけど、最終的なものは作っていきながらでないと見えてこないんです。

ーアーティストによっては、シングルカットされた楽曲の順番や、アルバムに入れる曲数などの内容を最初に決めているという方もいますが、m-floではそういった具体的な設定はむしろ、”制約”になってしまうということでしょうか?

はい。例えば、スポーツゲームのサッカーの試合で、今日はここで左パスして、右パスして、シュートに持ち込もうって決めていたとするじゃないですか?でも、そうはいかないもので、やっぱり人生って何が起こるか分からないものなんです。だから、最終的に”こういうアルバムになった”という、全て結果論だと思うんですよね。ただ、自分たちの中で決めていることが1つあって、”気持ち良いものを作ろう”ということなんです。自然な感じを大事にしようと思って、いつも曲を作っていますね。

ー感覚という、ある意味では抽象的な部分を敢えて大事にしていこうという部分は、実は音楽をクリエイトするにあたってすごく大切ですよね。具体的にはどういった点なのでしょうか?

例えば、英語の歌詞になっていたものを無理矢理、日本語の歌詞にするのはやめようとか、日本語が浮かんできたら日本語でいくし、英語が浮かんできたら英語でいこうというように、自然の流れに任せるようにすることです。

ー確かに、m-floの楽曲には、英語の歌詞と日本語の歌詞の両方がありますが、楽曲に対して”気持ちの良いリリック”がたまたま両方存在したということですね。

そうなんです。僕たちは元々、幼い頃インターナショナルスクールに通っていたので、日本語も英語もどっちも母国語みたいなものなんです。まぁある意味、どっちも中途半端ってことなのかなって気もしますけど(笑)

ー自然に発せられているのでそんなことはないと思いますけど(笑)

子供の頃から両方の言葉を喋りながら生きてきたから、僕たちにとっては、英語も日本語も”自然に身に付いている言葉”なんです。だから、そういった自然な感覚を出していこうというのはm-floとして最初から決めていたことです。だから毎回そうなんですけど、アルバムがどうなるかっていうのは予測するのは無理ですね。もし最初から予測出来てたらもっとピシっとした作品になってたでしょうし(笑)

ーそれはそれで聴いてみたいですけどね(笑) これまでのアルバムを聴かせて頂いて感じるのは、おもちゃ箱のような”ワクワクして楽しめる”という、ある意味コンセプチュアルな要素に、すごくm-floらしさが溢れているなと思うんです。

そうですね。最初に”こんなジャンルを入れたい””あれやりたい””これやりたい”という希望が、やっていくうちに何となくまとまっていって、ちゃんと形になってくれるというのはm-floならではだと思っています。自分たちがやりたいって思っていたことが、結果的に付いてきているということになりますよね。

ーでは今回のテーマである”100年後の未来から今を見てる”という設定も後から決めていたんですか?

はい、10曲ぐらい溜まっていった時点で、大体完成する2〜3週間前ぐらいに考えました。曲を作りながら「今回のテーマどうする?」とか「インタールードどうする?」とかを相談し合って決めてるんです。

ーそれはズバリ、後付けということですか?(笑)

そうです、後付けですね(笑)案外そういう人多いと思いますよ。僕たちの場合は、感情の起伏を動かす部分をすごく重要視しているので、設定とかそういったものは決めないんです。もちろん、そこからきちんとソリッドなものに仕上げていくんですけどね。後付けなんだけど、後付けという名の”あの時、自分はこうだったんだ”と振り返るためのフラッシュバックでもあるのかもしれないです。あんまりカッコつけた言い方は好きではないので、両方あるって言っちゃいますけど、後付けとフラッシュバックのミクスチャーなのではないかなって思いますね。

ー参加されるゲストアーティストとのコラボも楽しみにしている方が多いと思うのですが、今回のアルバムの中では、「Champagne」のボーカルの川上氏が参加されているのが意外だなぁと思ったのですが。

Champagneと言えば、バンド名変わりましたよね、最近。

ーあ、そうですね。「Alexandros(アレキサンドロス)」というバンド名に変わっています。川上さんのハイトーンが今回の「FLY」でのエモーショナルさとすごくマッチしていますが、依頼された時から既にイメージがあったのでしょうか?

Swedish House Mafiaの「Leave the World Behind」っぽい感じの曲をやりたいと昔から思っていて、ロックでカッコ良く歌える男性ボーカリストを探してたんです。そこでA&Rに紹介してもらったのがChampagneだったんです。すごくカッコ良いバンドだと思って、Vocalの川上洋平氏にオファーしました。最初のミーティングで会ったとき、彼自身もダンスミュージックをチェックしていたようで、話はとても早かったですね。

ー普段の音楽ジャンルが全く違うものでも、聴いている音楽や好きな音楽に共通点があることで、楽曲への可能性も広がりますしね。

やっぱり色々な音楽を聴いてるんですよね、カッコ良いバンドをやってる人たちって。

ーそういった意味では、☆Takuさんもプロデューサーとしていろんなアーティストを手掛ける側であったり、ゲスト参加をオファーされる側である中、影響された音楽やアーティストの方も多いと思うのですが?

アーティストでいえば、「テイ・トウワ」さんですね。 あと、「小西(康陽)」さん。だけど現在は、全然違う方向性に行ってますけどね(笑)

ー(笑)お二人共、一緒にお仕事されてたり、イベントに出られたりしていますよね?

はい、そうですね。一緒に出演することも多いし、お2人共リミックスしてもらってます。自分にとってすごく大きな転換期を与えてくれたアーティストです。

ー共通されている部分として、☆Takuさん自身もオーバーグラウンドとアンダーグラウンドの、両方のシーンに精通している日本では数少ないアーティストの1人だと思いますが、そもそも”シーン”という垣根のようなものはあるのでしょうか?

うーん、これはもう現在分析になってしまうんですけど、今の時代にメジャーシーンというものが、なくなってると思うんです。当たってるなぁって思うアーティストって正直言って5組もいなくないですか?以前はいわゆるメジャーシーンで当たってるアーティストって、たくさんいたと思うんですよ。今となっては、もう言ってしまえばBIG BANGの1人勝ちですよね。あとEXILEですね。
もちろん他にもセカオワ(SEKAI NO OWARI)とか人気のアーティストもいますけど、差が激しいんですよね。こういう言い方をするのはあまり好きではないんですけど、セールスの格差が生まれてしまってると思うんです。

ーセールス格差…日本特有の傾向とも思えるのですが、海外にも活躍の場を持たれている中で、特にダンスミュージックでは☆Takuさんから見た日本と海外の違いはありますか?

海外の方がマーケットがきちんとしていて、インフラも整っていますね。あとは、自分の国で完結するのではなく、他の国との連携をちゃんと図っていますよね。マーケットが昔みたいな売れ方をしなくなってしまっている中で、どうやって広げていけば良いか、どういうことが必要かをすごく理解していると思います。あと、日本人は海外の人ほど音楽を楽しめてないんじゃないかと思っています。決して日本人が音楽を楽しんでいないと言っているわけではないのでそこはきちんと明記しておきたいのですが、海外の人たちの方がお祭りをすごく楽しんでるって感じるんですよね。例えばヨーロッパもアメリカもそうですね。向こうって15万人規模とかのものすごい大きなダンスミュージックフェスがあるじゃないですか?その中の約10万人がたったの1秒でチケットを買うんですよ。

ー日本だとジャニーズやアイドル並みですね…

そうです、どんだけ競争率高いんだって話ですよね?だって、チケット取るのに必死になって電話するじゃないですか?あれがたったの1秒で終了してしまうなんて!(笑)でもそれって日本で起こり得るかって言ったら絶対に起こり得ない話だと思いませんか?

ー日本ダンスミュージックでは聞いたことがないです。もちろん音楽フェスの数は多いですし、前売りの時点でソールドアウトもありますけど、1秒はないです(笑)あと、規模感が全然違いますよね。

そう、それが差なんですよね。海外と日本の差をアルゴリズム的な数字で表すとしたらこういうことなんです。

ーそのアルゴリズムの背景として、例えば国民性である日本人のシャイな部分やリズム感が乏しいなどといった部分が影響していたりするんでしょうか?

それもあると思いますよ。何でそういったことが生まれるかというと、日本は世界と繋がってないからです。日本人は自分の知らないことに対してすごく弱い生き物だと思うんです。だから「今、何か知ったか言ってないかなぁ」とか「こうやって楽しむのは果たして合っているのかなぁ」とか心配になってしまうんですよ。それは作法を大事にする国民性だから。作法を知らないと消極的になっていきますよね。もし海外ともっと繋がっていたら、外の作法を知り、また違った国民性が生まれていたと思うんです。日本は海外との関わりをあまりにも遮断し過ぎてたんですよね。

ー様々な場面でその影響はありますね。海外では、特に音楽が日常的な文化として根付いてるように感じますが、日本ではその作法や楽しみ方を知らないという部分に通じるという。

まさに同感ですね。海外の人の方が日常的に音楽をすごくよく聴いてるんですよ。あとは、クラブに行くということが日常的な感覚の中にありますよね。さらに流行ってる音楽自体が、体感する音楽が多いんですよ。方や日本はそういった感覚的なものよりも、詞の部分を重要視したり、鳴っている音がどれぐらい低音が効いているかとか、どれぐらいノイジーかとかをそういう要素をすごく大切にするんですよね。”美しいメロディー””美しい旋律””美しい詞”とある中で、前の2つは体感するものじゃないですか?もちろん、気持ちの部分で感じれているとは思うんですが、じゃあ良い低音を感じた時と同じように毛穴から毛が立つ感じと同じものを感じれてるかって言ったら、違うと思うんですよね。そういった音楽の楽しみ方のトレンドも違うんだと思います。この前も香港行ったんですけど、音が”ドンドンドンドン”鳴ってる車がすごい多かったんですよ。日本ってたまにいますけど、そんなに見ないですよね?海外の人の方が、音楽を楽しむバリエーションを多く知ってるってことだと思いますね。あと、これはアジア人の1人として悔しい部分ではあるんですけど、ヨーロッパやアメリカの音楽がすごくおもしろいっていうのはありますね。メジャーなものからアンダーグラウンドなものまで素晴らしい作品が多いし、実験的ものが次々出来てきているから、それをもろに体感することが出来て、身近なものになってるんだと思います。日本はそういったところでもちょっと出遅れてしまっていますよね。

ー以前に台湾のガールズバンドにインタビューした際に、日本を含むアジアでのライブはそのバンドを知っているコアなファンばかりで、アメリカでのツアーは、その地元に住んでる農場経営者からおじいさんまで来ていて、一様にライブを楽しんでいて驚いたという話を聞きました。音楽が日常的であるという部分や、楽しみ方を知っているという差はこういった部分ですね。

アジア全体的に見ていると、逆にブランド志向が強いなっていうのは思いますよね。”この人はイケてるから、じゃあ聴いてみようかな”とか、”僕はこの人がイケてるっていう情報は知らないから、じゃあ、ここで飛び跳ねて盛り上がらなくてもいいか”とか。今はまた変わってきてるかもしれないですけど、日本は目利きの人が多かったんだと思います。要は安心したかったんですよね、これはイケてるのか?イケてないのか?分からないものに対して、自分で判断するんではなく、”これはイケてるんですよ”と目利きの人に言われたものを知ることで安心感を得ていたんでしょうね。

ーそういった”差”を生む要因の1つとして、ダンスミュージックに欠かせないクラブに関わる風営法問題も日本ではかなり大きいかと?

クラブというものは世界的な大きなマーケットであって、そこから生まれるクラブカルチャーというものが経済としてすごくプラスになるものだと思っています。ダンスミュージックにおいてのオーバーグラウンドなものからアンダーグラウンドなものがあって、アンダーグラウンドなものからまた新しいものが生まれて、そこがカルチャーの実験室の様なものになってると思います。音楽だけなく、そこからファッションも生まれるし、新しいカルチャーが誕生する場所だと思ってます。そういった場所が風営法という法律によって、0時までしか営業出来ないということはすごくマイナスになることだと思っています。人によっては”0時までに終わらせれば良いじゃん”って思うかもしれませんが、やっぱり時間帯によってクラブの雰囲気が変わるんですよね。例えば、今って冷凍技術がすごい発達しているからこの東京でも美味しいイクラが食べれますよね?でも、鮮度が全く同じイクラを北海道で食べたとしたらそっちの方が断然おいしく感じませんか?

ー北海道でという”シチュエーション”は大きいです。

そう、だから人間はシチュエーションによって物の感じ方が変わってくるんです。クラブの雰囲気も同様で深夜にやるからこそ、そこでしかないものが生まれてくるんだと思うんです。今の日本のビジネスチャンスも、新しいクリエイションを生む機会の妨げになっているのも、風営法という法律があるからだと思ってます。ただ、法律は法律なんです。それに対して僕自身も不満はありますけど、不平不満を言うだけでは法律を変えることは非常に難しいことだと思っています。自分がイヤだと思う法律ばっかり通りますけどね。でも、すでに出来上がってるものを中々変えられないですし、変えるには国だったり、変えられる力を持っている人たちに対して”これはメリットがあるんだよ”ということをきちんと証明しないといけないと思うんです。「深夜に未成年でもない成人がお酒を飲んで踊ることの何が悪いの?ケンカとか暴動とか危険がことが起きるから?そんなの居酒屋だって同じことじゃん。しかもクラブでケンカとか起きたらすぐに外に連れ出されてるし、ある意味居酒屋よりマナーにうるさいよ」といった感じに皆さん、理不尽に思ってるでしょうし、僕も全く同意見なんです。あ、別に居酒屋をディスってるわけではないんですけど、他にもっといっぱい危ない場所はありますよってことです(笑)

ーはい、分かっています(笑)

でもね、残念ながらそれを言っていっても何も変わらないんですよ。きちんと世界で成功している事例を参考にしたり、逆によりみんなが安全に楽しめる環境を作ることが大切だと思います。実際に、今それを実行しているクラブもたくさんあります。ただ、全部のクラブがやっているかと言えばそうではないので、もう少しここの部分を安全に出来るんじゃない?とか手荷物検査を厳しくしくてもいいんじゃない?とか思うところはありますね。危険なものを持ってくる人なんて、そもそもいないんですけどね(笑)だけど、”クラブ=ヤバいモノ持ってくる”みたいな報道をメディアでされちゃってるからそういう悪いイメージが付いちゃってるんですよね。もうね、”踊ってはいけない国”といろんなところで言われてますけど、僕は天下り団体を作っちゃえば良いと思うんですよ。

ークラブ業界の天下り団体ですか?

そうです。天下り団体って国にとって利益が出るじゃないですか?尚且つ、警察や警察経験者とかそういった人たちってトラブルが起きた時の対処法を知ってますよね。そういったノウハウを引退してからも活かしてもらって、クラブを完全に安全な場所にすればいいんです。さらにそれをライセンス制にするとか。

ー確かにその仕組みは、メリットを証明するには打ってつけかもしれないです。

日本はこれからオリンピックに向かっていきます。ただ、僕は、オリンピックがあっても、輸出能力が減っていっている現状では、経済的に厳しい状況になっていくと思うんです。クール・ジャパンなども、頑張っているんですが、その頑張りより時代の流れの方が圧倒的に早かったんですよね。海外に行ったりすると、日本人のスピード感って世界と比べると全然遅いなと肌で感じることがあります。取り残されたままでいると、輸出で稼げてたものが稼げなくなっていきますよね。そうなってくると観光産業を大きくするしかないと思うんです。日本はインフラもしっかりしているし、治安も良くて安全です。だから、海外の人たちに旅行で来てもらって、楽しんでいってもらって、少しでも日本にお金を落としていってくれたら変わっていきますよね。僕は、観光産業に広げる一つの施策として、クラブは非常に重要なものではないかと考えています。クラブというのはグローバルスタンダードであって、絶対必要不可欠なものなんですよ。僕は政治家でもないし、いちアーティストであって、プロデューサーであって、block FMというところのオーナーであって、政治家ではないですけど、風営法に関して何か出来ることがあったらしますよ!と思っています。活動家にはちょっと成れないけど(笑)でも、今いろんな人たちが動いていて、いろいろ変化して来ているから徐々に変わっていくと思います。

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