☆Taku Takahashi(m-flo/block.fm)インタビュー

通算8枚目となるニューアルバム「FUTURE WOW」をリリースしたばかりのm-flo。そのメンバーとして、長年トップシーンを走り続けながら、様々なアーティストを世に送り出すプロデューサーとして、ダンスミュージックをこよなく愛する1人のDJとして、世界を飛び回っている☆Taku Takahashi。子供の頃に誰もが思い描いたであろう空想の中での宇宙。その世界観をそのまま落とし込んだあのフューチャリスティックなサウンドに魅了された人は数知れず。全開の遊び心に、POPさを散りばめながら、ベースにはアンダーグラウンドなサウンドがしっかりと根付いている。その独特の世界観を持った楽曲は、いかにして生まれたのか?自身の根底にある“ダンスミュージック”とは?幼少期まで遡って紐解いたロングインタビューを全4回に渡ってお届けします。

ー☆Takuさんの音楽との出会いはいつだったんでしょうか?その時に聴かれていた音楽は覚えていますか?

音楽との出会いですね。やっぱそういう質問になりますよね(笑)

ーはい(笑)まずそこから聞かせて下さい!

分かりました。そうですね、僕の場合は小さい頃ってみんなも同じだったと思いますけど、普通に童謡を聴いてましたよ。まあね、ここで本当は“マーヴィン・ゲイ”聴いてましたとか言ったらカッコイイんでしょうけど(笑)そういうわけにもいかないんで、普通の子供と一緒で、幼稚園の時に聴いた童謡が一番最初の音楽との出会いになると思います。ただ、幼稚園に入る時に入園用のテストみたいなのがあったんですけど、そこで質問されることに全部、歌で答えてたというエピソードはありますね。

ーえ?それはどういうことですか?

例えば、象のイラストを見せられて「これは何ですか?」って聞かれたら普通は“象”って答えなくちゃいけないですよね?でも、僕の場合は「ぞーうさん♪ぞーうさん♪」って、童謡の「ぞうさん」を歌ったり、とんぼが出て来たら「とんぼのめがねは〜♪」って、全部歌で答えてたんですよ。

ー本当に童謡が好きな子供だったんですね(笑)

そうなんです。だから、そういった意味では小さいながらに音楽というものをライフスタイルの中に取り入れてたんだとは思いますね。

ー馴染みやすい音楽とはいえ、既に生活の一部だったってことですね。

そうですね。でもまぁ、童謡って今僕がやっているダンスミュージックというジャンルとは全然掛け離れていますけどね(笑)

ー(笑)そのダンスミュージックに興味を持ったのはいつぐらいからだったんですか?

僕がダンスミュージックにハマっていったのは、確か小学校6年か中学1年ぐらいだったかな?友人のお姉さんが当時よくディスコに通っていて、そこから貰ってきたミックステープを聴かせてもらったのが最初ですね。もちろん中学生や高校生の頃は、他にロックとかも聴いていたんですけど、ダンスミュージックに一番のめり込んでいったんですよね。ちょうどDJを始めたのも中学生の途中ぐらいからでした。

ー中学生はかなり早いですね!ちなみに友人のお姉さんに聴かせてもらったのはどんな音楽だったんですか?

ハウスとか、ハイエナジー?いわゆるユーロビートですね。あとは、ダンクラ!(ダンスクラシック)まあ、当時のディスコでかかってた曲が入ってるミックステープだから、必然とこういうジャンルになりますよね。だって、もう芝浦GOLD(*参照1)が出来る前ですから。と、いうよりピテカントロプス(*参照2)が出来たばかりの頃だったんじゃないかな?と思います。

ーそれはもう初期の初期ですよね?

そう、もう本当に初期の時代、もしかしたらピカントロプスさえも出来てなかったかもしれません。僕が高校時代に出来たのが芝浦GOLDでした。芝浦GOLDが出来た頃は、他にも芝浦周辺にいくつかディスコがあって、インクスティックやエンドマックスとかもありましたね。そこがダンスミュージックの走りであり、“クラブ”の始まりだったんですね。まあ、そう言っても“ディスコ”だったんですけどね(笑)高校時代がそういったダンスミュージックが浸透し始めた時代だったから、背伸びしてディスコに行ったりもしましたね。当時は今ほどIDチェックとかに厳しくない時代だったから高校生でもこっそり入れたりしたんです。

ーそういう時代ですよね。私の時代は既に“クラブ”になっていましたが、一応、チェックはないけど、“20歳以下は入れません”って規制はありましたからね。チェックされない=入って良いと思って気にしたことなかったですけど(笑)

そうですね。今はもう徹底してダメだけど、当時はたまーに忍び込めたりしたんですよ。忍び込もうとして「ダメだよ」って言われることがほとんどだったんだけど(笑)やっちゃいけないことだって分かっていても、若い頃はやってしまいますよね。その頃はとにかくダンスミュージックにのめり込んでた時期だからディスコとかそういった環境にもすごく憧れていたし、やっぱり当時のディスコって、ものすごく“音楽的”だったんですよね。カルチャーの一部として楽しむ文化がそこにはあったし、行ってはいけないところに行って夜遊びしたいっていう、悪いことをして楽しむ不良的な考えではなくて、純粋にカッコイイ大人たちがいる場所でカッコイイカルチャーを味わえるのがディスコだったから、そこに入り込みたかったんですよね。

ーなるほど。そう考えると中学生から高校生に至るまで、音楽的な側面では”大人しか味わえないカルチャー”に触れる過ごし方をしていますよね。

確かにそうかもしれないですね。今の世代の子たちで考えたら、背伸びとかしないのかもしれないですよね。もしかしたら、背伸びというもの自体がないのかもしれない。違うベクトルに行ってるだけかもしれないですけど。

ー確かに当時よりも10代でクラブに行きたいという人は少ないのかもしれませんね。外での楽しみではなく、例えばゲーム等にハマっていってる気がするんですよね。

うん、でもそれはそれですごく楽しいことだと思います。ハマっているものがゲームであっても、そこから新しい音楽が生まれる可能性もあるし、ゲームに限らずインターネットが生まれて、ここまで需要を占める時代になって、音楽の売り方だけでなく作り方も変わってきていると思いますね。ゲームといえば、僕はゲームの発展と同じ成長の仕方をしているんですよ。小さい頃のゲームといえばファミコンでしたよね?そこからスタートしてニンテンドー64(*参照3)に行って、徐々に進化していってる。だからゲームにハマる理由もすごくよく分かります。

ー因みに☆Takuさん自身もゲームにハマったり、そういったゲームから影響された楽曲ってあったりするんですか?

ゲームサウンド自体にそこまでハマったというのはないかな?確かにChiptune(*参照4)の曲とか好きなのはあるし、初代ファミコンのサウンドをクラブミュージックに落とし込んでとか、そういうのは決して嫌いではないですけど。例えば、細野(晴臣)さんのアルバム「スーパーゼビウス(*参照5)」にすごくハマった!とかいうのはないですね。普通にゲームをやってたって感じです。って言いながら、実はけっこう好きなゲーム音楽がいっぱいあって、あのゲームのテーマソング歌ってって言われたら全然歌えちゃうんですけどね(笑)

ー(笑)例えば、サウンド面以外に世界観やビジュアル面で影響を受けた部分はありますか?

そうだね。ゲーム音楽っていうより、ゲームそのものにある波のあるストーリーみたいな”起承転結”の部分には影響されました。ゲームって脚本なんですよね。そういった部分の、気持ち良くするところとか、逆に負荷を与えるところとか、そういったところからいろいろ勉強させてもらったというのはありますね。遊びながら勉強させてもらって、今の自分のキャリアに影響を与えてもらったんじゃないかなとは思ってます。既に自分の中に刻み込まれているものだから、自然とクリエーションに映し出されてるんだと思いますね。

ーゲームを面白くするためのストーリーに構築されたプロセスの部分が、クリエイティブしていく中での発想に影響されたんですね。影響という点において、音楽以外だとガンダムやスタートレック、SFがお好きとのことですが?

SFは大好きです!ただ、「アニメ好きなの?」って聞かれるとそういうわけではないんですよ。特定の作品について話し出したらキリないぐらい、すっごく細かいところまで話せちゃうんですけど、ごく一部というか…例えば、阪神ファンは阪神だけが好きじゃないですか?でも、プロ野球そのものが好きって人は、一軍にいる選手が全部言えるとかってあると思うんですよ。僕は阪神ファンに近いところがあって、アニメ全部が好きというわけではなくて、その中のいくつかの作品がすごく好きで、ハマっていくタイプなんです。好きな作品にはとことんのめり込みます。

ー特定の作品で言うと、ガンダムやスタートレック?

いや、ガンダムはねぇ、好きは好きだと思いますし、普通に詳しいとは思うんだけど、実はそんなに好きではないかもしれませんね。

ーえ?あれ(笑)

確かにね、次の「ガンダムUC」も楽しみにしてるんだけど、ガンダムってあまりにも当たり前過ぎて、要は“みそ汁”みたいなものだと思うんですよ。みそ汁ってみんな当たり前に好きじゃないですか?だから敢えて「私、みそ汁が好きです」って言う人って、あんまりいないと思うんですよね。それと一緒で「ガンダムが好き」って言う人って、僕的にはちょっとおかしいって思っちゃうんです。それぐらい当たり前のものっていうのかな?もう最初からデフォルトとして社会にあるもので、ガンダムを見てない人でもアムロのセリフは知ってるみたいなことが、“みそ汁”ってことですね。

ーその例えわかりやすいですね(笑)見てないのに知ってるっていう人、多いですもん。

そう、だから「さんはガンダム好きでしょ?」って言われるとちょっと困っちゃいます。だけど、「ガンダムの話しましょうか」って言われたら、「はい、何でもどうぞ」ってなっちゃいますけど(笑)

結局、何でも詳しいというね(笑)

どちらかと言うとスタートレックが大好き。海外ドラマの中で、例えば、「HOUSE」とか、「デスパレードな妻たち」、「フリンジ」、アニメだったら「エウレカセブン」、「スペース☆ダンディ(*参照6)」、「カウボーイビバップ(*参照7)」、「攻殻機動隊」が好きだったりしますが、今の自分の中のトレンドは”サイエンスフィクション=SF”ですね。科学自体が大好きなんです。例えばインタビューで“今日はアニメ好きな人を連れて来ました!”というシチュエーションになっても話が全く噛み合わない場合があるんですよね。アニメ業界の人からは、僕はいわゆる“難しい系”が好きだという認識をされていて、毛嫌いされることもあります。

ーえ?そうなんですか?

うん。アニメはすごく大きな産業になってるから、ダンスミュージックと一緒でいろんなジャンルに分かれてますよね。ダンスミュージックでいったらEDM系のものもあれば、ベースミュージックもあります。僕はどちらかと言えば、アニメにおいてもベースミュージックよりの方なんですよね。だから、アニメとひと言で言ってもメインストリームのものが好きなタイプではないんです。

ーそれは作られてるサウンドや世界観からも分かりますね。

最近まで放映していた「スペース☆ダンディ」(2014年7月からシーズン2が放送予定)も、ギャグSFアニメなんですが、少しひねっていて凄くおもしろいんですよ。僕はサントラにも参加させて頂いてます。(一般的にアニメと言えば、“萌え“というイメージありますが、)「スペース☆ダンディ」は“萌え”とは違うおもしろさ、深さがあるんです。でも、この辺を話しだしたら、永遠とこの話になっちゃうからこの辺にしときましょう!(笑)

ーそうですね(笑)そういったSFから影響されて制作された楽曲というのは多いんですか?

結構、いっぱいあるかな?「スペース☆ダンディ」の総監督の渡辺信一郎さんが作った「カウボーイビバップ」を観て、そのインタールードの演出にはすごく影響を受けていますね。SF作品からは受けた影響はすごく多いかもしれません。僕は、タイムパラドックスネタが好きなんですよ。

ータイムパラドックスネタとは?

タイムパラドックス(時間の逆説)というのは、アニメやSF映画でも用いられるシチュエーションのことです。現代にいる自分が過去にタイムスリップすることによって、パラドックス(逆説)が起きてしまうことを言うんです。例えば、タイムスリップした時代で誤って自分の祖先を殺してしまった場合、自分は消えて存在しなくなってしまうのか?それとも消えずに存在するのか?ここにパラドックスが生まれます。パラドックスには、2種類の説があって、1つは殺すこと自体が起こりえないという説。歴史の力には修正能力があるから、殺そうとしたとしてもその前に自然の摂理で何かが起き、絶対に殺せない状態になるので、そんなこと起こりえないという説。もう1つの説は、殺した場合と殺さなかった場合で、それぞれ別のタイムラインが出来るという説です。殺した場合と殺さなかった場合に、起こるシチュエーションが枝分かれして進行していくという事です。だから結果、存在が消えて無くなるということは有り得ない結論なんです。 実際には、タイムスリップした人がいないから、何が正しいか分からない(知る術が無い)ですけど(笑)そういったストーリーを想像して考えるのがすごく好きだから、作品にも影響してきます。m-floの作品に関しては、タイムパラドックスネタのインタールード(*参照8)がここ最近は特に多いですね。

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