☆Taku Takahashi(m-flo/block.fm)インタビュー

通算8枚目となるニューアルバム「FUTURE WOW」をリリースしたばかりのm-flo。そのメンバーとして、長年トップシーンを走り続けながら、様々なアーティストを世に送り出すプロデューサーとして、ダンスミュージックをこよなく愛する1人のDJとして、世界を飛び回っている☆Taku Takahashi。子供の頃に誰もが思い描いたであろう空想の中での宇宙。その世界観をそのまま落とし込んだあのフューチャリスティックなサウンドに魅了された人は数知れず。全開の遊び心に、POPさを散りばめながら、ベースにはアンダーグラウンドなサウンドがしっかりと根付いている。その独特の世界観を持った楽曲は、いかにして生まれたのか?自身の根底にある“ダンスミュージック”とは?幼少期まで遡って紐解いたロングインタビューを全4回に渡ってお届けします。

ー☆Takuさんの音楽との出会いはいつだったんでしょうか?その時に聴かれていた音楽は覚えていますか?

音楽との出会いですね。やっぱそういう質問になりますよね(笑)

ーはい(笑)まずそこから聞かせて下さい!

分かりました。そうですね、僕の場合は小さい頃ってみんなも同じだったと思いますけど、普通に童謡を聴いてましたよ。まあね、ここで本当は“マーヴィン・ゲイ”聴いてましたとか言ったらカッコイイんでしょうけど(笑)そういうわけにもいかないんで、普通の子供と一緒で、幼稚園の時に聴いた童謡が一番最初の音楽との出会いになると思います。ただ、幼稚園に入る時に入園用のテストみたいなのがあったんですけど、そこで質問されることに全部、歌で答えてたというエピソードはありますね。

ーえ?それはどういうことですか?

例えば、象のイラストを見せられて「これは何ですか?」って聞かれたら普通は“象”って答えなくちゃいけないですよね?でも、僕の場合は「ぞーうさん♪ぞーうさん♪」って、童謡の「ぞうさん」を歌ったり、とんぼが出て来たら「とんぼのめがねは〜♪」って、全部歌で答えてたんですよ。

ー本当に童謡が好きな子供だったんですね(笑)

そうなんです。だから、そういった意味では小さいながらに音楽というものをライフスタイルの中に取り入れてたんだとは思いますね。

ー馴染みやすい音楽とはいえ、既に生活の一部だったってことですね。

そうですね。でもまぁ、童謡って今僕がやっているダンスミュージックというジャンルとは全然掛け離れていますけどね(笑)

ー(笑)そのダンスミュージックに興味を持ったのはいつぐらいからだったんですか?

僕がダンスミュージックにハマっていったのは、確か小学校6年か中学1年ぐらいだったかな?友人のお姉さんが当時よくディスコに通っていて、そこから貰ってきたミックステープを聴かせてもらったのが最初ですね。もちろん中学生や高校生の頃は、他にロックとかも聴いていたんですけど、ダンスミュージックに一番のめり込んでいったんですよね。ちょうどDJを始めたのも中学生の途中ぐらいからでした。

ー中学生はかなり早いですね!ちなみに友人のお姉さんに聴かせてもらったのはどんな音楽だったんですか?

ハウスとか、ハイエナジー?いわゆるユーロビートですね。あとは、ダンクラ!(ダンスクラシック)まあ、当時のディスコでかかってた曲が入ってるミックステープだから、必然とこういうジャンルになりますよね。だって、もう芝浦GOLD(*参照1)が出来る前ですから。と、いうよりピテカントロプス(*参照2)が出来たばかりの頃だったんじゃないかな?と思います。

ーそれはもう初期の初期ですよね?

そう、もう本当に初期の時代、もしかしたらピカントロプスさえも出来てなかったかもしれません。僕が高校時代に出来たのが芝浦GOLDでした。芝浦GOLDが出来た頃は、他にも芝浦周辺にいくつかディスコがあって、インクスティックやエンドマックスとかもありましたね。そこがダンスミュージックの走りであり、“クラブ”の始まりだったんですね。まあ、そう言っても“ディスコ”だったんですけどね(笑)高校時代がそういったダンスミュージックが浸透し始めた時代だったから、背伸びしてディスコに行ったりもしましたね。当時は今ほどIDチェックとかに厳しくない時代だったから高校生でもこっそり入れたりしたんです。

ーそういう時代ですよね。私の時代は既に“クラブ”になっていましたが、一応、チェックはないけど、“20歳以下は入れません”って規制はありましたからね。チェックされない=入って良いと思って気にしたことなかったですけど(笑)

そうですね。今はもう徹底してダメだけど、当時はたまーに忍び込めたりしたんですよ。忍び込もうとして「ダメだよ」って言われることがほとんどだったんだけど(笑)やっちゃいけないことだって分かっていても、若い頃はやってしまいますよね。その頃はとにかくダンスミュージックにのめり込んでた時期だからディスコとかそういった環境にもすごく憧れていたし、やっぱり当時のディスコって、ものすごく“音楽的”だったんですよね。カルチャーの一部として楽しむ文化がそこにはあったし、行ってはいけないところに行って夜遊びしたいっていう、悪いことをして楽しむ不良的な考えではなくて、純粋にカッコイイ大人たちがいる場所でカッコイイカルチャーを味わえるのがディスコだったから、そこに入り込みたかったんですよね。

ーなるほど。そう考えると中学生から高校生に至るまで、音楽的な側面では”大人しか味わえないカルチャー”に触れる過ごし方をしていますよね。

確かにそうかもしれないですね。今の世代の子たちで考えたら、背伸びとかしないのかもしれないですよね。もしかしたら、背伸びというもの自体がないのかもしれない。違うベクトルに行ってるだけかもしれないですけど。

ー確かに当時よりも10代でクラブに行きたいという人は少ないのかもしれませんね。外での楽しみではなく、例えばゲーム等にハマっていってる気がするんですよね。

うん、でもそれはそれですごく楽しいことだと思います。ハマっているものがゲームであっても、そこから新しい音楽が生まれる可能性もあるし、ゲームに限らずインターネットが生まれて、ここまで需要を占める時代になって、音楽の売り方だけでなく作り方も変わってきていると思いますね。ゲームといえば、僕はゲームの発展と同じ成長の仕方をしているんですよ。小さい頃のゲームといえばファミコンでしたよね?そこからスタートしてニンテンドー64(*参照3)に行って、徐々に進化していってる。だからゲームにハマる理由もすごくよく分かります。

ー因みに☆Takuさん自身もゲームにハマったり、そういったゲームから影響された楽曲ってあったりするんですか?

ゲームサウンド自体にそこまでハマったというのはないかな?確かにChiptune(*参照4)の曲とか好きなのはあるし、初代ファミコンのサウンドをクラブミュージックに落とし込んでとか、そういうのは決して嫌いではないですけど。例えば、細野(晴臣)さんのアルバム「スーパーゼビウス(*参照5)」にすごくハマった!とかいうのはないですね。普通にゲームをやってたって感じです。って言いながら、実はけっこう好きなゲーム音楽がいっぱいあって、あのゲームのテーマソング歌ってって言われたら全然歌えちゃうんですけどね(笑)

ー(笑)例えば、サウンド面以外に世界観やビジュアル面で影響を受けた部分はありますか?

そうだね。ゲーム音楽っていうより、ゲームそのものにある波のあるストーリーみたいな”起承転結”の部分には影響されました。ゲームって脚本なんですよね。そういった部分の、気持ち良くするところとか、逆に負荷を与えるところとか、そういったところからいろいろ勉強させてもらったというのはありますね。遊びながら勉強させてもらって、今の自分のキャリアに影響を与えてもらったんじゃないかなとは思ってます。既に自分の中に刻み込まれているものだから、自然とクリエーションに映し出されてるんだと思いますね。

ーゲームを面白くするためのストーリーに構築されたプロセスの部分が、クリエイティブしていく中での発想に影響されたんですね。影響という点において、音楽以外だとガンダムやスタートレック、SFがお好きとのことですが?

SFは大好きです!ただ、「アニメ好きなの?」って聞かれるとそういうわけではないんですよ。特定の作品について話し出したらキリないぐらい、すっごく細かいところまで話せちゃうんですけど、ごく一部というか…例えば、阪神ファンは阪神だけが好きじゃないですか?でも、プロ野球そのものが好きって人は、一軍にいる選手が全部言えるとかってあると思うんですよ。僕は阪神ファンに近いところがあって、アニメ全部が好きというわけではなくて、その中のいくつかの作品がすごく好きで、ハマっていくタイプなんです。好きな作品にはとことんのめり込みます。

ー特定の作品で言うと、ガンダムやスタートレック?

いや、ガンダムはねぇ、好きは好きだと思いますし、普通に詳しいとは思うんだけど、実はそんなに好きではないかもしれませんね。

ーえ?あれ(笑)

確かにね、次の「ガンダムUC」も楽しみにしてるんだけど、ガンダムってあまりにも当たり前過ぎて、要は“みそ汁”みたいなものだと思うんですよ。みそ汁ってみんな当たり前に好きじゃないですか?だから敢えて「私、みそ汁が好きです」って言う人って、あんまりいないと思うんですよね。それと一緒で「ガンダムが好き」って言う人って、僕的にはちょっとおかしいって思っちゃうんです。それぐらい当たり前のものっていうのかな?もう最初からデフォルトとして社会にあるもので、ガンダムを見てない人でもアムロのセリフは知ってるみたいなことが、“みそ汁”ってことですね。

ーその例えわかりやすいですね(笑)見てないのに知ってるっていう人、多いですもん。

そう、だから「さんはガンダム好きでしょ?」って言われるとちょっと困っちゃいます。だけど、「ガンダムの話しましょうか」って言われたら、「はい、何でもどうぞ」ってなっちゃいますけど(笑)

結局、何でも詳しいというね(笑)

どちらかと言うとスタートレックが大好き。海外ドラマの中で、例えば、「HOUSE」とか、「デスパレードな妻たち」、「フリンジ」、アニメだったら「エウレカセブン」、「スペース☆ダンディ(*参照6)」、「カウボーイビバップ(*参照7)」、「攻殻機動隊」が好きだったりしますが、今の自分の中のトレンドは”サイエンスフィクション=SF”ですね。科学自体が大好きなんです。例えばインタビューで“今日はアニメ好きな人を連れて来ました!”というシチュエーションになっても話が全く噛み合わない場合があるんですよね。アニメ業界の人からは、僕はいわゆる“難しい系”が好きだという認識をされていて、毛嫌いされることもあります。

ーえ?そうなんですか?

うん。アニメはすごく大きな産業になってるから、ダンスミュージックと一緒でいろんなジャンルに分かれてますよね。ダンスミュージックでいったらEDM系のものもあれば、ベースミュージックもあります。僕はどちらかと言えば、アニメにおいてもベースミュージックよりの方なんですよね。だから、アニメとひと言で言ってもメインストリームのものが好きなタイプではないんです。

ーそれは作られてるサウンドや世界観からも分かりますね。

最近まで放映していた「スペース☆ダンディ」(2014年7月からシーズン2が放送予定)も、ギャグSFアニメなんですが、少しひねっていて凄くおもしろいんですよ。僕はサントラにも参加させて頂いてます。(一般的にアニメと言えば、“萌え“というイメージありますが、)「スペース☆ダンディ」は“萌え”とは違うおもしろさ、深さがあるんです。でも、この辺を話しだしたら、永遠とこの話になっちゃうからこの辺にしときましょう!(笑)

ーそうですね(笑)そういったSFから影響されて制作された楽曲というのは多いんですか?

結構、いっぱいあるかな?「スペース☆ダンディ」の総監督の渡辺信一郎さんが作った「カウボーイビバップ」を観て、そのインタールードの演出にはすごく影響を受けていますね。SF作品からは受けた影響はすごく多いかもしれません。僕は、タイムパラドックスネタが好きなんですよ。

ータイムパラドックスネタとは?

タイムパラドックス(時間の逆説)というのは、アニメやSF映画でも用いられるシチュエーションのことです。現代にいる自分が過去にタイムスリップすることによって、パラドックス(逆説)が起きてしまうことを言うんです。例えば、タイムスリップした時代で誤って自分の祖先を殺してしまった場合、自分は消えて存在しなくなってしまうのか?それとも消えずに存在するのか?ここにパラドックスが生まれます。パラドックスには、2種類の説があって、1つは殺すこと自体が起こりえないという説。歴史の力には修正能力があるから、殺そうとしたとしてもその前に自然の摂理で何かが起き、絶対に殺せない状態になるので、そんなこと起こりえないという説。もう1つの説は、殺した場合と殺さなかった場合で、それぞれ別のタイムラインが出来るという説です。殺した場合と殺さなかった場合に、起こるシチュエーションが枝分かれして進行していくという事です。だから結果、存在が消えて無くなるということは有り得ない結論なんです。 実際には、タイムスリップした人がいないから、何が正しいか分からない(知る術が無い)ですけど(笑)そういったストーリーを想像して考えるのがすごく好きだから、作品にも影響してきます。m-floの作品に関しては、タイムパラドックスネタのインタールード(*参照8)がここ最近は特に多いですね。

3月26日に発売された通算8枚目となるニューアルバム「FUTURE IS WOW」にまつわる貴重な裏話や楽曲制作秘話。世界を飛び回る☆Taku Takahashiだからこそ見える、海外と日本の音楽シーンにおける大きな違いや風営法に関する考えなど、熱いトークをお届け!

ー3月26日にリリースされたm-floのニューアルバム「FUTURE IS WOW」についてお聞かせ下さい。まずは、リリースおめでとうございます!

ありがとうございます。

ー今作で通算8枚目となりますが、楽曲・ゲストアーティスト含め、多彩なアルバムだと感じました。

そうですね。海外からはMark Ronsonの大ヒットシングル”Bang Bang Bang”に、Q-Tipと一緒にフューチャリングしているアメリカのシンガーMNDRも参加してくれました。

ーMNDRと言えば、今や一躍スターの仲間入りを果たしましたよね。それ以外にもBIG BANGのSOLさん、国内においては浜崎あゆみさんなど、様々なジャンルで且つワールドワイドな豪華ゲスト陣を迎え入れていて、現在の活動とすごくフィットしていると思うのですが、一方で制作するにあたってアルバムの全体像というのは見えていたのでしょうか?

制作方法というのは、アーティストによって皆さんそれぞれ違うと思うんですけど、”こういうアルバムにしよう”と思って作っているわけではないんですよね。作りながら出来上がってくるものなんですよ、アルバムというものは。最初の段階である程度”こうなったらいいなぁ”というぼやけたイメージはあるんですけど、最終的なものは作っていきながらでないと見えてこないんです。

ーアーティストによっては、シングルカットされた楽曲の順番や、アルバムに入れる曲数などの内容を最初に決めているという方もいますが、m-floではそういった具体的な設定はむしろ、”制約”になってしまうということでしょうか?

はい。例えば、スポーツゲームのサッカーの試合で、今日はここで左パスして、右パスして、シュートに持ち込もうって決めていたとするじゃないですか?でも、そうはいかないもので、やっぱり人生って何が起こるか分からないものなんです。だから、最終的に”こういうアルバムになった”という、全て結果論だと思うんですよね。ただ、自分たちの中で決めていることが1つあって、”気持ち良いものを作ろう”ということなんです。自然な感じを大事にしようと思って、いつも曲を作っていますね。

ー感覚という、ある意味では抽象的な部分を敢えて大事にしていこうという部分は、実は音楽をクリエイトするにあたってすごく大切ですよね。具体的にはどういった点なのでしょうか?

例えば、英語の歌詞になっていたものを無理矢理、日本語の歌詞にするのはやめようとか、日本語が浮かんできたら日本語でいくし、英語が浮かんできたら英語でいこうというように、自然の流れに任せるようにすることです。

ー確かに、m-floの楽曲には、英語の歌詞と日本語の歌詞の両方がありますが、楽曲に対して”気持ちの良いリリック”がたまたま両方存在したということですね。

そうなんです。僕たちは元々、幼い頃インターナショナルスクールに通っていたので、日本語も英語もどっちも母国語みたいなものなんです。まぁある意味、どっちも中途半端ってことなのかなって気もしますけど(笑)

ー自然に発せられているのでそんなことはないと思いますけど(笑)

子供の頃から両方の言葉を喋りながら生きてきたから、僕たちにとっては、英語も日本語も”自然に身に付いている言葉”なんです。だから、そういった自然な感覚を出していこうというのはm-floとして最初から決めていたことです。だから毎回そうなんですけど、アルバムがどうなるかっていうのは予測するのは無理ですね。もし最初から予測出来てたらもっとピシっとした作品になってたでしょうし(笑)

ーそれはそれで聴いてみたいですけどね(笑) これまでのアルバムを聴かせて頂いて感じるのは、おもちゃ箱のような”ワクワクして楽しめる”という、ある意味コンセプチュアルな要素に、すごくm-floらしさが溢れているなと思うんです。

そうですね。最初に”こんなジャンルを入れたい””あれやりたい””これやりたい”という希望が、やっていくうちに何となくまとまっていって、ちゃんと形になってくれるというのはm-floならではだと思っています。自分たちがやりたいって思っていたことが、結果的に付いてきているということになりますよね。

ーでは今回のテーマである”100年後の未来から今を見てる”という設定も後から決めていたんですか?

はい、10曲ぐらい溜まっていった時点で、大体完成する2〜3週間前ぐらいに考えました。曲を作りながら「今回のテーマどうする?」とか「インタールードどうする?」とかを相談し合って決めてるんです。

ーそれはズバリ、後付けということですか?(笑)

そうです、後付けですね(笑)案外そういう人多いと思いますよ。僕たちの場合は、感情の起伏を動かす部分をすごく重要視しているので、設定とかそういったものは決めないんです。もちろん、そこからきちんとソリッドなものに仕上げていくんですけどね。後付けなんだけど、後付けという名の”あの時、自分はこうだったんだ”と振り返るためのフラッシュバックでもあるのかもしれないです。あんまりカッコつけた言い方は好きではないので、両方あるって言っちゃいますけど、後付けとフラッシュバックのミクスチャーなのではないかなって思いますね。

ー参加されるゲストアーティストとのコラボも楽しみにしている方が多いと思うのですが、今回のアルバムの中では、「Champagne」のボーカルの川上氏が参加されているのが意外だなぁと思ったのですが。

Champagneと言えば、バンド名変わりましたよね、最近。

ーあ、そうですね。「Alexandros(アレキサンドロス)」というバンド名に変わっています。川上さんのハイトーンが今回の「FLY」でのエモーショナルさとすごくマッチしていますが、依頼された時から既にイメージがあったのでしょうか?

Swedish House Mafiaの「Leave the World Behind」っぽい感じの曲をやりたいと昔から思っていて、ロックでカッコ良く歌える男性ボーカリストを探してたんです。そこでA&Rに紹介してもらったのがChampagneだったんです。すごくカッコ良いバンドだと思って、Vocalの川上洋平氏にオファーしました。最初のミーティングで会ったとき、彼自身もダンスミュージックをチェックしていたようで、話はとても早かったですね。

ー普段の音楽ジャンルが全く違うものでも、聴いている音楽や好きな音楽に共通点があることで、楽曲への可能性も広がりますしね。

やっぱり色々な音楽を聴いてるんですよね、カッコ良いバンドをやってる人たちって。

ーそういった意味では、☆Takuさんもプロデューサーとしていろんなアーティストを手掛ける側であったり、ゲスト参加をオファーされる側である中、影響された音楽やアーティストの方も多いと思うのですが?

アーティストでいえば、「テイ・トウワ」さんですね。 あと、「小西(康陽)」さん。だけど現在は、全然違う方向性に行ってますけどね(笑)

ー(笑)お二人共、一緒にお仕事されてたり、イベントに出られたりしていますよね?

はい、そうですね。一緒に出演することも多いし、お2人共リミックスしてもらってます。自分にとってすごく大きな転換期を与えてくれたアーティストです。

ー共通されている部分として、☆Takuさん自身もオーバーグラウンドとアンダーグラウンドの、両方のシーンに精通している日本では数少ないアーティストの1人だと思いますが、そもそも”シーン”という垣根のようなものはあるのでしょうか?

うーん、これはもう現在分析になってしまうんですけど、今の時代にメジャーシーンというものが、なくなってると思うんです。当たってるなぁって思うアーティストって正直言って5組もいなくないですか?以前はいわゆるメジャーシーンで当たってるアーティストって、たくさんいたと思うんですよ。今となっては、もう言ってしまえばBIG BANGの1人勝ちですよね。あとEXILEですね。
もちろん他にもセカオワ(SEKAI NO OWARI)とか人気のアーティストもいますけど、差が激しいんですよね。こういう言い方をするのはあまり好きではないんですけど、セールスの格差が生まれてしまってると思うんです。

ーセールス格差…日本特有の傾向とも思えるのですが、海外にも活躍の場を持たれている中で、特にダンスミュージックでは☆Takuさんから見た日本と海外の違いはありますか?

海外の方がマーケットがきちんとしていて、インフラも整っていますね。あとは、自分の国で完結するのではなく、他の国との連携をちゃんと図っていますよね。マーケットが昔みたいな売れ方をしなくなってしまっている中で、どうやって広げていけば良いか、どういうことが必要かをすごく理解していると思います。あと、日本人は海外の人ほど音楽を楽しめてないんじゃないかと思っています。決して日本人が音楽を楽しんでいないと言っているわけではないのでそこはきちんと明記しておきたいのですが、海外の人たちの方がお祭りをすごく楽しんでるって感じるんですよね。例えばヨーロッパもアメリカもそうですね。向こうって15万人規模とかのものすごい大きなダンスミュージックフェスがあるじゃないですか?その中の約10万人がたったの1秒でチケットを買うんですよ。

ー日本だとジャニーズやアイドル並みですね…

そうです、どんだけ競争率高いんだって話ですよね?だって、チケット取るのに必死になって電話するじゃないですか?あれがたったの1秒で終了してしまうなんて!(笑)でもそれって日本で起こり得るかって言ったら絶対に起こり得ない話だと思いませんか?

ー日本ダンスミュージックでは聞いたことがないです。もちろん音楽フェスの数は多いですし、前売りの時点でソールドアウトもありますけど、1秒はないです(笑)あと、規模感が全然違いますよね。

そう、それが差なんですよね。海外と日本の差をアルゴリズム的な数字で表すとしたらこういうことなんです。

ーそのアルゴリズムの背景として、例えば国民性である日本人のシャイな部分やリズム感が乏しいなどといった部分が影響していたりするんでしょうか?

それもあると思いますよ。何でそういったことが生まれるかというと、日本は世界と繋がってないからです。日本人は自分の知らないことに対してすごく弱い生き物だと思うんです。だから「今、何か知ったか言ってないかなぁ」とか「こうやって楽しむのは果たして合っているのかなぁ」とか心配になってしまうんですよ。それは作法を大事にする国民性だから。作法を知らないと消極的になっていきますよね。もし海外ともっと繋がっていたら、外の作法を知り、また違った国民性が生まれていたと思うんです。日本は海外との関わりをあまりにも遮断し過ぎてたんですよね。

ー様々な場面でその影響はありますね。海外では、特に音楽が日常的な文化として根付いてるように感じますが、日本ではその作法や楽しみ方を知らないという部分に通じるという。

まさに同感ですね。海外の人の方が日常的に音楽をすごくよく聴いてるんですよ。あとは、クラブに行くということが日常的な感覚の中にありますよね。さらに流行ってる音楽自体が、体感する音楽が多いんですよ。方や日本はそういった感覚的なものよりも、詞の部分を重要視したり、鳴っている音がどれぐらい低音が効いているかとか、どれぐらいノイジーかとかをそういう要素をすごく大切にするんですよね。”美しいメロディー””美しい旋律””美しい詞”とある中で、前の2つは体感するものじゃないですか?もちろん、気持ちの部分で感じれているとは思うんですが、じゃあ良い低音を感じた時と同じように毛穴から毛が立つ感じと同じものを感じれてるかって言ったら、違うと思うんですよね。そういった音楽の楽しみ方のトレンドも違うんだと思います。この前も香港行ったんですけど、音が”ドンドンドンドン”鳴ってる車がすごい多かったんですよ。日本ってたまにいますけど、そんなに見ないですよね?海外の人の方が、音楽を楽しむバリエーションを多く知ってるってことだと思いますね。あと、これはアジア人の1人として悔しい部分ではあるんですけど、ヨーロッパやアメリカの音楽がすごくおもしろいっていうのはありますね。メジャーなものからアンダーグラウンドなものまで素晴らしい作品が多いし、実験的ものが次々出来てきているから、それをもろに体感することが出来て、身近なものになってるんだと思います。日本はそういったところでもちょっと出遅れてしまっていますよね。

ー以前に台湾のガールズバンドにインタビューした際に、日本を含むアジアでのライブはそのバンドを知っているコアなファンばかりで、アメリカでのツアーは、その地元に住んでる農場経営者からおじいさんまで来ていて、一様にライブを楽しんでいて驚いたという話を聞きました。音楽が日常的であるという部分や、楽しみ方を知っているという差はこういった部分ですね。

アジア全体的に見ていると、逆にブランド志向が強いなっていうのは思いますよね。”この人はイケてるから、じゃあ聴いてみようかな”とか、”僕はこの人がイケてるっていう情報は知らないから、じゃあ、ここで飛び跳ねて盛り上がらなくてもいいか”とか。今はまた変わってきてるかもしれないですけど、日本は目利きの人が多かったんだと思います。要は安心したかったんですよね、これはイケてるのか?イケてないのか?分からないものに対して、自分で判断するんではなく、”これはイケてるんですよ”と目利きの人に言われたものを知ることで安心感を得ていたんでしょうね。

ーそういった”差”を生む要因の1つとして、ダンスミュージックに欠かせないクラブに関わる風営法問題も日本ではかなり大きいかと?

クラブというものは世界的な大きなマーケットであって、そこから生まれるクラブカルチャーというものが経済としてすごくプラスになるものだと思っています。ダンスミュージックにおいてのオーバーグラウンドなものからアンダーグラウンドなものがあって、アンダーグラウンドなものからまた新しいものが生まれて、そこがカルチャーの実験室の様なものになってると思います。音楽だけなく、そこからファッションも生まれるし、新しいカルチャーが誕生する場所だと思ってます。そういった場所が風営法という法律によって、0時までしか営業出来ないということはすごくマイナスになることだと思っています。人によっては”0時までに終わらせれば良いじゃん”って思うかもしれませんが、やっぱり時間帯によってクラブの雰囲気が変わるんですよね。例えば、今って冷凍技術がすごい発達しているからこの東京でも美味しいイクラが食べれますよね?でも、鮮度が全く同じイクラを北海道で食べたとしたらそっちの方が断然おいしく感じませんか?

ー北海道でという”シチュエーション”は大きいです。

そう、だから人間はシチュエーションによって物の感じ方が変わってくるんです。クラブの雰囲気も同様で深夜にやるからこそ、そこでしかないものが生まれてくるんだと思うんです。今の日本のビジネスチャンスも、新しいクリエイションを生む機会の妨げになっているのも、風営法という法律があるからだと思ってます。ただ、法律は法律なんです。それに対して僕自身も不満はありますけど、不平不満を言うだけでは法律を変えることは非常に難しいことだと思っています。自分がイヤだと思う法律ばっかり通りますけどね。でも、すでに出来上がってるものを中々変えられないですし、変えるには国だったり、変えられる力を持っている人たちに対して”これはメリットがあるんだよ”ということをきちんと証明しないといけないと思うんです。「深夜に未成年でもない成人がお酒を飲んで踊ることの何が悪いの?ケンカとか暴動とか危険がことが起きるから?そんなの居酒屋だって同じことじゃん。しかもクラブでケンカとか起きたらすぐに外に連れ出されてるし、ある意味居酒屋よりマナーにうるさいよ」といった感じに皆さん、理不尽に思ってるでしょうし、僕も全く同意見なんです。あ、別に居酒屋をディスってるわけではないんですけど、他にもっといっぱい危ない場所はありますよってことです(笑)

ーはい、分かっています(笑)

でもね、残念ながらそれを言っていっても何も変わらないんですよ。きちんと世界で成功している事例を参考にしたり、逆によりみんなが安全に楽しめる環境を作ることが大切だと思います。実際に、今それを実行しているクラブもたくさんあります。ただ、全部のクラブがやっているかと言えばそうではないので、もう少しここの部分を安全に出来るんじゃない?とか手荷物検査を厳しくしくてもいいんじゃない?とか思うところはありますね。危険なものを持ってくる人なんて、そもそもいないんですけどね(笑)だけど、”クラブ=ヤバいモノ持ってくる”みたいな報道をメディアでされちゃってるからそういう悪いイメージが付いちゃってるんですよね。もうね、”踊ってはいけない国”といろんなところで言われてますけど、僕は天下り団体を作っちゃえば良いと思うんですよ。

ークラブ業界の天下り団体ですか?

そうです。天下り団体って国にとって利益が出るじゃないですか?尚且つ、警察や警察経験者とかそういった人たちってトラブルが起きた時の対処法を知ってますよね。そういったノウハウを引退してからも活かしてもらって、クラブを完全に安全な場所にすればいいんです。さらにそれをライセンス制にするとか。

ー確かにその仕組みは、メリットを証明するには打ってつけかもしれないです。

日本はこれからオリンピックに向かっていきます。ただ、僕は、オリンピックがあっても、輸出能力が減っていっている現状では、経済的に厳しい状況になっていくと思うんです。クール・ジャパンなども、頑張っているんですが、その頑張りより時代の流れの方が圧倒的に早かったんですよね。海外に行ったりすると、日本人のスピード感って世界と比べると全然遅いなと肌で感じることがあります。取り残されたままでいると、輸出で稼げてたものが稼げなくなっていきますよね。そうなってくると観光産業を大きくするしかないと思うんです。日本はインフラもしっかりしているし、治安も良くて安全です。だから、海外の人たちに旅行で来てもらって、楽しんでいってもらって、少しでも日本にお金を落としていってくれたら変わっていきますよね。僕は、観光産業に広げる一つの施策として、クラブは非常に重要なものではないかと考えています。クラブというのはグローバルスタンダードであって、絶対必要不可欠なものなんですよ。僕は政治家でもないし、いちアーティストであって、プロデューサーであって、block FMというところのオーナーであって、政治家ではないですけど、風営法に関して何か出来ることがあったらしますよ!と思っています。活動家にはちょっと成れないけど(笑)でも、今いろんな人たちが動いていて、いろいろ変化して来ているから徐々に変わっていくと思います。

多くの人気DJが番組を持ち、様々な角度からダンスミュージックの魅力を伝えるインターネットラジオblock.fm。その主催であり、自らもいくつもの番組を手掛けている☆Taku Takahashiが、立ち上げにまつわる貴重な話から今後の展望について語る。新たなコンテンツの導入、インターネットラジオの可能性に挑戦し続けているblock.fm。音楽メディアが向かう先にあるものは?

ー☆Takuさんが主催されているインターネットラジオblock.fmについてお聞かせ下さい。
まず、スタートされたのはいつですか?

2008年にMyspaceで始めて、その後TCY Radio Tokyoとしてやっていたのを『11.11.11 PM 11:11:11』に『block.fm』と名前を変えてスタートしました。

ーblock.fmとしての決まりなどはありますか?

これは、立ち上げ当初から言っている事なんですが、運営方針として、ひとつだけルールがあってレコード会社からのスポンサードは受けない方針をとっています。レコード会社をスポンサードに入れてしまうと、レコード会社側からのバイアスがかかってしまう。場合によっては納得いかないアーティストの曲を流さなきゃいけなくなったりする可能性がありますよね。block.fmは、音楽を愛してやまないリスナーのためのものであって、そこの信頼関係は何よりも大事。勿論、レコード会社側からゴリ押しされたアーティスト全てが悪いわけではないのですが、僕らとしては、番組それぞれのクオリティを守る義務があるので、最初にこの指針をとる事を決定しました。

ーこれまでのメディアになかった素晴らしい考えですね。☆Takuさんご自身で立ち上げようと思ったきっかけは何だったんでしょうか?

これはすごく大事なことなんですけど、僕がblock.fmを始める少し前に、日本でダンスミュージックを紹介できるメディアがなくなっちゃったんです。3年前にblock.fmを始めた頃、ローカル局を抜かすと、東京全体のFM局でおそらく1番組しかなかったと思います。最近になって、ようやく少しずつ増えてきたとは思いますけど。前にも話しましたが、アメリカやヨーロッパを中心に世界規模でダンスミュージックというものがきちんとビジネスとして成り立っています。近年でシーンもどんどん広がっているし、次々と新しくておもしろい音楽が生まれていて、アーティストにとってもいろんなチャンスが生まれてる。そんな状況の中、日本にはダンスミュージックに特化したメディアがなく、アーティストが活躍出来る機会がないというのはすごく問題だと思ったんです。せっかく良いものを作っていたとしてもそれを発表する場がなければ広がっていかないのから、チャンスを少しでも作ろうという思いで、block.fmを立ち上げることにしました。

ー確かにダンスミュージックに特化したメディアは、テレビやラジオなどをはじめ、マスメディアにおいてものすごく少数ですよね。block.fmはインターネットラジオですが、今の時代に合わせたメディア選択だったのでしょうか?

願わくは、FM局で帯の番組を持てれば良かったのですが、やはりスポンサーの問題など、非常に難しいんですよね。だったら、自分で出来る海賊ラジオから始めようと思って始めたんです。最初は☆Taku Takahashiという名前も伏せて始めました。でも、やっぱり自分1人でやっていても広がらないってことが分かりました。そこで、僕が仕事やプライベートで関わっているDJやアーティストの方々を中心にお声掛けをして、ダンスミュージックを主軸としたいろいろな番組を作らせてもらいました。現状、国内だけでなく海外のアーティストもいますし、ジャンルもテクノ、ハウス、HIPHOP、レゲエなど様々です。block.fmを通してダンスミュージックを広げていくには、いろんな音楽・ジャンル・人々と一緒にやっていくことが大事だと再認識しましたね。おかげで今となっては、月50種類以上もの番組がblock.fmから生まれています。

ーテクノ、ハウス、ヒップホップ、ダブステップ、EDM等、本当に多くのアーティストの方の番組がありますよね。月に50以上もの番組がある中で、生放送の番組が多い印象を受けるのですが、ここへの拘りはあるのでしょうか??

特に生放送には拘っていません。収録をしたものを編集して、放送している番組もあります。また、ほとんどの番組が放送したものを翌日アーカイブとして配信しており、いつでも聴ける状態になっています。生放送や収録、アーカイブの有無は番組を持たれている方々、それぞれの意向で決めています。もちろん生放送は生放送で、ライブパフォーマンス的要素として、オーディエンスと同じ時間を共有出来るという良さもありますし、TwitterなどのSNSを通じたユーザーからのダイレクトな意見が、インタラクティブに番組の方向性を変えたりする面白さもあると思うんです。block.fmのサイトに設置してある「Hooooo!」ボタンなど、リスナーが手軽に参加して楽しめるアイディアだと思い、最初から取入れ、今でもblock.fmの名物となっています。

ー確かにインターネットラジオの楽しみ方として、アクセスできる端末があればラジオを聴きながら同時にSNSに書き込めて、好きなアーティストやMCと同じ時間を共有出来るという満足感が得れますよね。生放送以外での収録番組としての面白さも教えて下さい。

例えば、僕と、『カウボーイビバップ』や『交響詩篇エウレカセブン』などのアニメ脚本家の佐藤大さん、声優の名塚佳織さんと三人でやらせて頂いている「don’t_blink」という番組があるんですが、これは完全編集です。後から編集することが分かっているので、生放送の場合は絶対気にしないといけない放送禁止事項など全く気にせず話せるので、とても勢いのあるトークが生まれるんですよね。 もちろん、後からダメなところは削って、編集して放送出来る状態になってからオンエアしますが、そこから出来るダイナミズムはものすごくおもしろいものがあるんですよね。

ーラジオもテレビ同様に生放送の場合、MCの方が言葉を選んで話さないといけなかったり、NGを出してしまう可能性もありますもんね。それが生のおもしろさであるのかもしれないですけど、個人的には「don’t_blink」の収録現場に潜入して、炸裂したトークを聴いてみたいです(笑)

生放送も収録した番組もそれぞれ一長一短だと思います。そういった、いろんな番組があるのがblock.fmの特徴なんです。音楽だけを流す番組や、トークを中心とした番組、音楽にジャンルも多岐に渡り、EDMからテクノ、ヒップホップなどなど様々な番組があります。

ーblock.fmの特徴の1つとして、同じ時間を共有する以外にアーカイブでの楽しみ方もありますね。

生放送でも編集された放送であっても、放送時間になり、初出しでストリーミングされることは変わりはなく、みんなが同じタイミングで聴いて共有したいという拘りはあります。でも、放送時間のみ限定して聴けるだけじゃなく、後からもアーカイブとして聴けるようにしました。それはなぜかというと、3年前ぐらいまでは、Twitterが広がったことによって”みんなで今を共有すること”がすごく重要視されていましたが、現在はオーディエンスが個々に自分の好きな時間で、みんなとも共有出来て、自由に音楽を聴ける環境というものに需要が高まってきていると思っています。

ー各個人の生活サイクルがある中、生放送では聴けない人も必ず出てきてしまう分、アーカイブ放送があるというのは、聴き逃してしまった人にはとても嬉しいシステムですよね。

さらにアーカイブ放送を聴いて下さるオーディエンスでも、タイムラインに沿ってその時、みんなが書き込んだSNSの閲覧が出来て、違う時間軸の人の会話を楽しみながら、リアルタイムに聴いているのと同じように楽しめるシステムを取り入れていこうと考えています。

ー今年の1月にリニューアルされたのはそういった楽しみを増やす布石だったのでしょうか?

実際のところ、現在はまだリニューアルβ版といった状態です。やりたいことが多過ぎて、すべてのタスクをまだクリアー出来ていないのでβ版としている状態なんです。ですが、ここから一気にリニューアルしていく予定です。

ー具体的なアイデアはすでにお持ちなんですか?

block.fmのユーザーの60%以上が、スマートフォンユーザーなんです。多くを占めるスマートフォンユーザーに使い易くなってもらいたいので、ひょっとしたら、ホームページより先に、スマートフォン用のアプリがローンチされるかもしれないです。これはまだどこにも発表してないことなんですけど…(笑)コンテンツのリニューアルとしては、先ほど言った過去のSNSとの連動もそうですが、あとはダンスミュージック関連のニュースをテキストで読める形にしていきたいと思ってます。スマートフォン用のアプリで、ダンスミュージックに関する最新のニュース、リアルタイムと同じように書き込まれた過去のSNSを閲覧しながら、通勤しているときや帰宅中にblock.fmを聴けるようにする。そういった状況を目指して制作を進めています。今まで技術的に難しく、Android端末ではblock.fmを聴けない機種がありましたが、技術的に追いついてきたのでiPhoneだけでなく、Androidでも使用出来るようになると思います。

★block.fmについて
「日本最⼤級、唯⼀無⼆のインターネット・サウンド・メディア」
block.fmとは日本のトップDJ、世界を舞台に活躍する海外勢、さらにこれからのシーンを担うDJ達がレギュラー番組を持つインターネットラジオです。生放送でのインタビューや、どこよりも早い新譜情報のほか、DJミックスやチャート番組、そしてパーティー情報の紹介など多種多様。現場のリアリティある音楽が最近のメディアでかかる機会が少ない中、トップDJたちのセンス、そして海外のクリエイターやプロモーターから直接新譜を送ってもらう事によって、常にカッティングエッジな音楽や情報をどこよりも早くリスナーに届けます。block.fmは、m-floの☆Taku Takahashiを発起⼈として、日本の音楽業界に大きな影響力を誇るトップDJ・クリエイターらの賛同によって⽣まれました。⾳楽のみならず、映像や写真、アニメーションやカルチャーなど、多種多様なジャンルそれぞれに大きな影響⼒を持つ、国内外のトップクリエイターがレギュラー番組を展開しています。

時代の移り変わりと共に次々に誕生する新機能を持った音楽アプリ。ダンスミュージック界の最前線に居ながら、ユーザー目線での楽しみ方を常に考え、自身でも考案中という☆Taku Takahashiの考える、次の時代のアプリとは?

ーこのインタビューは音楽アプリ【LikeDis】内の記事になります。こういったスマートフォン用音楽アプリについてどういったご意見をお持ちですか?

まず、需要はあると思いますよ。ユーザー視点から言うと、今後はアプリに関してもキュレーション能力が重要になってくると思うんですよ。【LikeDis】もそのキュレーション能力を重要視しているアプリだと思っています。スウェーデン発の音楽ストリーミング配信サービス「Spotify」も電子アルゴリズムだけじゃなくて、ロンドンのクラブカルチャー誌「Mixmag」のページや、色々なアーティストのページが出来ていて、その上でSNS機能を使ってソムリエだったりキュレーターの能力を強化していく動きになっているんです。

ー「Spotify」といえば、2000万曲以上のライブラリーから好きな音楽が聴けて、今や2400万人のアクティブユーザーを持つという配信サービスですが、ここ最近は日本上陸が囁かれていますよね。

そうですね。これから「Spotify」みたいなサービスがどんどんど増えていくと思います「Spotify」のように膨大なデータ量を誇るアプリについては、ユーザー自身が好きな曲に辿り着くまでが非常に困難になってきます。その膨大なデータ量の中から、ユーザーが探したい情報を探すための指標として、キュレーションすることが必要になってくると思います。そういった意味で、【LikeDis】のようなアプリは需要が増えてくると考えています。一歩先を考えると、”どういったキュレーションをするのか?”その能力がすごく重要だと考えています。

ーそれは単に言葉の通り、収集した情報を分類するだけではなく、個のユーザーに対してユニークなキュレーションをしていくことが指標となると?

その通りですね。音楽については既にジャンルやレーベル、関連するアーティストというのはあって当たり前で、でもその分類だけでは好きな曲に辿り着くプロセスを担っていないんです。アルゴリズムだけで届けるという概念は、今後は通用しないと思っています。

ーその上で、☆Takuさんは【block.fm】でアプリ制作中とのことでしたが、そういったサービスは【LikeDis】含め、競合になってくるのでしょうか?

それは考え方次第だと思うんですけど、競合になるのではなく、アプリ同士のそれぞれが持つ特性を活かして連携していくことが出来たらいいなと思っています。【LikeDis】はダンスミュージックだけでなくロックやポップス、色々なジャンルに幅広くリーチしていますよね?その点、【block.fm】はダンスミュージックに特化しています。【block.fm】の強みって何かというと、日本のトップクリエイター・トップDJの方々が、番組レギュラーとして集まって頂いていることなんですよね。なので、お互いの良さを活かしてマーケットを共有することが可能だと思います。例えば、今はもうコカ・コーラを飲んでてペプシの話をしちゃダメとか、トヨタに乗ってるから日産の話をしちゃダメっていう時代じゃないと思うんですよね。せっかく同じ車同士なんだからって言う時代が既に到来していると思います。だから、同じアプリ畑だとしても、もし【block.fm】と同じようにインターネットラジオ番組を【LikeDis】が持っていたとしても、それは競合ではなく戦友だと僕は思っています。

ーそう言って頂けると心強いです。実際にそういったアプリとアプリを連携させている例はあったりするんでしょうか?

元々、アプリ同士の連携をやってる人はいないと思うんですけど、リンクから他のアプリへ遷移することなどは現在でもありますよね。例えば単純に、FacebookアプリからSafariのブラウザに飛んだり、Facebookのメッセンジャーのアプリが立ち上がったりとか、そういったことは技術的に可能になってますよね。アプリ同士のAPIを介して連携も出来るかもしれません。でもシステムの部分だけじゃなくて、何より肝心なのは”コンテンツ”ですからね。技術面においてユーザーが負荷を感じずにシンプルに使いやすくする環境作りはもちろん大事ですが、コンテンツが何も無く空っぽだったら、それはそれでダメだと思いますし、逆にコンテンツはいっぱいあるけど、負荷があるソフトはそれはそれでダメだし、両方必要だと思います。

ー確かにおもしろそうだと思ってダウンロードしたアプリがものすごく使いにくいものだったり、逆に使い方は簡単なんだけど、全然面白さがないとかありますね。

はい。なので使い易いけど、コンテンツが充実していないアプリケーションに【block.fm】のコンテンツがあったら…とか考えちゃいますけど、これはもう話し始めたらいろいろなアイデアが次々と浮かんできちゃって止まらなくなっちゃいますね(笑)だから、【block.fm】がアプリになったからといって、別のアプリに対してライバルというような感覚はないですよね。もちろん良い意味で、お互いにプラスになるような切磋琢磨があり、相乗効果になるような関係でありたいと思います。

ー【LikeDis】は”ジャンル”という概念では包括的にカバーしているものの、【block.fm】のように専門性があるわけではないので、是非コラボレーションさせて頂けると嬉しいです!

面白そうですね!何かやりましょう!

ーありがとうございます!今後、【block.fm】、【LikeDis】を含めた音楽サービスとしてアプリは浸透していくと思いますか?

現実問題から言うと、まず一つは日本のレコード会社がどこまで音源の配信を許諾してくれるかいうこと。あとは【LikeDis】は、自分のスマホのiTunesに入っているアーティストのニュースをキュレーションするという、過去に事例のない特殊なアプリなので、ユーザーがどれだけそのニュースを購読し続けるかということが浸透する大きな鍵だと思います。ただ、日本人の音楽の楽しみ方って海外の人達と全く違いますよね。海外と日本は、生活様式も全く違うので流行る音楽も違いますし。だから、ただ海外のまねごとをやっても成功しないという事は自分自身の肌でも感じていますし、今までの方法論を継続していけば良いというものでもありません。僕は、現在の日本の音楽業界のことを、徐々に死んでいっているという意味で”Japanese music industrial dying slowly”と言っています。日本の音楽業界は他の国と比べ、いきなりの大打撃を受けていないので、あまり危機感を強く感じている人が少なかったんです。前から危機感は囁かれていたんですが、最近になってようやくそれを感じる人が多くなってきて、変革期が訪れています。【LikeDis】のアプローチは、海外のマーケットを見ても事例がないので、実際どうなるかという答えを正直僕は持っていません。ただ自分の願望としては、成功して欲しいとも思っていますし、成功しないといけないと思っています。あとは、このサービスを海外に発信していくことも大事なんじゃないかと思います。

ーありがとうございます。【LikeDis】は6月に、「YouTube」「Soundcloud」「bandcamp」などから集めた音楽を、パーソナライズしたキュレーションをしてストリーミングするリニューアルを控えています。それによって、より広い層のユーザーが増えていくと考えていますがいかがでしょうか?またそのタイミングで同時に英語版のリリースもする予定です。

例えば、これは【block.fm】のリスナーに関していえることですが、いわゆる一般的にいうところのマニアックな人達がリスナーなんですよ。僕らの世代でいうと大手のCDショップではなく、アナログのレコードショップに通っていた人達のような感じだと思います。そういったマニアックな人達が、「Soundcloud」や「bandcamp」などをチェックしていると思うんですよね。次の【LikeDis】のリニューアルによって「Soundcloud」や「bandcamp」などの利用率も上がってくるかもしれませんね。

ー一般的なリスナーは音楽情報をどこで得ていると思いますか?

やっぱり一般的には、TVとか、「ニコニコ動画」が多いと思います。「Soundcloud」を使っているユーザーは、日本より海外が多いですよね。もちろん日本でも徐々に増えてきているとは思うんですが、やはり「ニコニコ動画」の方が多いと思いますね。確かに「ニコニコ動画」や、ニコ生のコンテンツは面白いものが多いと思いますが、どうしても内向きで自分達の中だけで完結してしまっているように感じますし、自ら鎖国を選んでいるようで、少し残念だと僕は思いますね。

ー”メディア=テレビ”というのは日本特有だと感じますね。「ニコニコ動画」が浸透しているのもオタク文化の浸透と同様で、”自分だけ分かっていれば良い、自分だけの世界でいたい”と言ったあまり外に広げたくないといったクローズドな世界を好む人が多い気がします。

まさに今の日本を表していると思いますね。

ー【block.fm】【LikeDis】の未来についてはどうお考えでしょうか?

今後、アプリの流れとしては「Google」のWEB検索や、「Spotify」のようなアルゴリズム型と、【LikeDis】のようなキュレーション型がはっきりと分かれた形で伸びていくと思います。よくどっちの方が良いという議論がされますが、これだけの情報が氾濫している世の中だと、アルゴリズムがなくては生きていけないと思うし、逆にアルゴリズムだけだとパーソナリティーという部分は非常に重要だと思っています。もちろんアルゴリズムがAI(人口知能)まで進化すれば、話は変わってくると思いますけどね。だからこれからはますます共存していくべきだと思います。そういった意味で【LikeDis】は、今までに無いアプローチの面白いアプリだと思うので、今後もこういった優れたものを作っていくこと、あとは証明出来れば必ず残っていくものだと思います。【block.fm】は、ダンスミュージックというコンテンツを本当に好きな人達が集まってくれているので、スマートフォンという今や保持していて当たり前のデバイスに対してもきちんと対応していくことで、まずはユーザビリティを向上させたいと思いますし、このデバイスだからこそ出来るコンテンツを作っていこうと思います。お互い切磋琢磨し、協力し合いながら一緒に残っていければ良いと思っています!

ー【block.fm】でのアプリ制作もその中の1つだと思いますが、☆Takuさん自身が今後やってみたい事があったらお聞かせ下さい。また、今後の活動予定についても教えてください。

とてもm-floらしいアルバムが完成したので、それに伴いライブツアーを5月から予定しています。個人としてはDJの活動も引き続き行なっていきます。あとは、【block.fm】としての活動が凄くエキサイティングなものになっていくと思うので、是非チェックしていって欲しいと思っています。


取材:2014.04.02
撮影:Akisome