時代の移り変わりと共に次々に誕生する新機能を持った音楽アプリ。ダンスミュージック界の最前線に居ながら、ユーザー目線での楽しみ方を常に考え、自身でも考案中という☆Taku Takahashiの考える、次の時代のアプリとは?
ーこのインタビューは音楽アプリ【LikeDis】内の記事になります。こういったスマートフォン用音楽アプリについてどういったご意見をお持ちですか?
まず、需要はあると思いますよ。ユーザー視点から言うと、今後はアプリに関してもキュレーション能力が重要になってくると思うんですよ。【LikeDis】もそのキュレーション能力を重要視しているアプリだと思っています。スウェーデン発の音楽ストリーミング配信サービス「Spotify」も電子アルゴリズムだけじゃなくて、ロンドンのクラブカルチャー誌「Mixmag」のページや、色々なアーティストのページが出来ていて、その上でSNS機能を使ってソムリエだったりキュレーターの能力を強化していく動きになっているんです。
ー「Spotify」といえば、2000万曲以上のライブラリーから好きな音楽が聴けて、今や2400万人のアクティブユーザーを持つという配信サービスですが、ここ最近は日本上陸が囁かれていますよね。
そうですね。これから「Spotify」みたいなサービスがどんどんど増えていくと思います「Spotify」のように膨大なデータ量を誇るアプリについては、ユーザー自身が好きな曲に辿り着くまでが非常に困難になってきます。その膨大なデータ量の中から、ユーザーが探したい情報を探すための指標として、キュレーションすることが必要になってくると思います。そういった意味で、【LikeDis】のようなアプリは需要が増えてくると考えています。一歩先を考えると、”どういったキュレーションをするのか?”その能力がすごく重要だと考えています。
ーそれは単に言葉の通り、収集した情報を分類するだけではなく、個のユーザーに対してユニークなキュレーションをしていくことが指標となると?
その通りですね。音楽については既にジャンルやレーベル、関連するアーティストというのはあって当たり前で、でもその分類だけでは好きな曲に辿り着くプロセスを担っていないんです。アルゴリズムだけで届けるという概念は、今後は通用しないと思っています。
ーその上で、☆Takuさんは【block.fm】でアプリ制作中とのことでしたが、そういったサービスは【LikeDis】含め、競合になってくるのでしょうか?
それは考え方次第だと思うんですけど、競合になるのではなく、アプリ同士のそれぞれが持つ特性を活かして連携していくことが出来たらいいなと思っています。【LikeDis】はダンスミュージックだけでなくロックやポップス、色々なジャンルに幅広くリーチしていますよね?その点、【block.fm】はダンスミュージックに特化しています。【block.fm】の強みって何かというと、日本のトップクリエイター・トップDJの方々が、番組レギュラーとして集まって頂いていることなんですよね。なので、お互いの良さを活かしてマーケットを共有することが可能だと思います。例えば、今はもうコカ・コーラを飲んでてペプシの話をしちゃダメとか、トヨタに乗ってるから日産の話をしちゃダメっていう時代じゃないと思うんですよね。せっかく同じ車同士なんだからって言う時代が既に到来していると思います。だから、同じアプリ畑だとしても、もし【block.fm】と同じようにインターネットラジオ番組を【LikeDis】が持っていたとしても、それは競合ではなく戦友だと僕は思っています。
ーそう言って頂けると心強いです。実際にそういったアプリとアプリを連携させている例はあったりするんでしょうか?
元々、アプリ同士の連携をやってる人はいないと思うんですけど、リンクから他のアプリへ遷移することなどは現在でもありますよね。例えば単純に、FacebookアプリからSafariのブラウザに飛んだり、Facebookのメッセンジャーのアプリが立ち上がったりとか、そういったことは技術的に可能になってますよね。アプリ同士のAPIを介して連携も出来るかもしれません。でもシステムの部分だけじゃなくて、何より肝心なのは”コンテンツ”ですからね。技術面においてユーザーが負荷を感じずにシンプルに使いやすくする環境作りはもちろん大事ですが、コンテンツが何も無く空っぽだったら、それはそれでダメだと思いますし、逆にコンテンツはいっぱいあるけど、負荷があるソフトはそれはそれでダメだし、両方必要だと思います。
ー確かにおもしろそうだと思ってダウンロードしたアプリがものすごく使いにくいものだったり、逆に使い方は簡単なんだけど、全然面白さがないとかありますね。
はい。なので使い易いけど、コンテンツが充実していないアプリケーションに【block.fm】のコンテンツがあったら…とか考えちゃいますけど、これはもう話し始めたらいろいろなアイデアが次々と浮かんできちゃって止まらなくなっちゃいますね(笑)だから、【block.fm】がアプリになったからといって、別のアプリに対してライバルというような感覚はないですよね。もちろん良い意味で、お互いにプラスになるような切磋琢磨があり、相乗効果になるような関係でありたいと思います。
ー【LikeDis】は”ジャンル”という概念では包括的にカバーしているものの、【block.fm】のように専門性があるわけではないので、是非コラボレーションさせて頂けると嬉しいです!
面白そうですね!何かやりましょう!
ーありがとうございます!今後、【block.fm】、【LikeDis】を含めた音楽サービスとしてアプリは浸透していくと思いますか?
現実問題から言うと、まず一つは日本のレコード会社がどこまで音源の配信を許諾してくれるかいうこと。あとは【LikeDis】は、自分のスマホのiTunesに入っているアーティストのニュースをキュレーションするという、過去に事例のない特殊なアプリなので、ユーザーがどれだけそのニュースを購読し続けるかということが浸透する大きな鍵だと思います。ただ、日本人の音楽の楽しみ方って海外の人達と全く違いますよね。海外と日本は、生活様式も全く違うので流行る音楽も違いますし。だから、ただ海外のまねごとをやっても成功しないという事は自分自身の肌でも感じていますし、今までの方法論を継続していけば良いというものでもありません。僕は、現在の日本の音楽業界のことを、徐々に死んでいっているという意味で”Japanese music industrial dying slowly”と言っています。日本の音楽業界は他の国と比べ、いきなりの大打撃を受けていないので、あまり危機感を強く感じている人が少なかったんです。前から危機感は囁かれていたんですが、最近になってようやくそれを感じる人が多くなってきて、変革期が訪れています。【LikeDis】のアプローチは、海外のマーケットを見ても事例がないので、実際どうなるかという答えを正直僕は持っていません。ただ自分の願望としては、成功して欲しいとも思っていますし、成功しないといけないと思っています。あとは、このサービスを海外に発信していくことも大事なんじゃないかと思います。
ーありがとうございます。【LikeDis】は6月に、「YouTube」「Soundcloud」「bandcamp」などから集めた音楽を、パーソナライズしたキュレーションをしてストリーミングするリニューアルを控えています。それによって、より広い層のユーザーが増えていくと考えていますがいかがでしょうか?またそのタイミングで同時に英語版のリリースもする予定です。
例えば、これは【block.fm】のリスナーに関していえることですが、いわゆる一般的にいうところのマニアックな人達がリスナーなんですよ。僕らの世代でいうと大手のCDショップではなく、アナログのレコードショップに通っていた人達のような感じだと思います。そういったマニアックな人達が、「Soundcloud」や「bandcamp」などをチェックしていると思うんですよね。次の【LikeDis】のリニューアルによって「Soundcloud」や「bandcamp」などの利用率も上がってくるかもしれませんね。
ー一般的なリスナーは音楽情報をどこで得ていると思いますか?
やっぱり一般的には、TVとか、「ニコニコ動画」が多いと思います。「Soundcloud」を使っているユーザーは、日本より海外が多いですよね。もちろん日本でも徐々に増えてきているとは思うんですが、やはり「ニコニコ動画」の方が多いと思いますね。確かに「ニコニコ動画」や、ニコ生のコンテンツは面白いものが多いと思いますが、どうしても内向きで自分達の中だけで完結してしまっているように感じますし、自ら鎖国を選んでいるようで、少し残念だと僕は思いますね。
ー”メディア=テレビ”というのは日本特有だと感じますね。「ニコニコ動画」が浸透しているのもオタク文化の浸透と同様で、”自分だけ分かっていれば良い、自分だけの世界でいたい”と言ったあまり外に広げたくないといったクローズドな世界を好む人が多い気がします。
まさに今の日本を表していると思いますね。
ー【block.fm】【LikeDis】の未来についてはどうお考えでしょうか?
今後、アプリの流れとしては「Google」のWEB検索や、「Spotify」のようなアルゴリズム型と、【LikeDis】のようなキュレーション型がはっきりと分かれた形で伸びていくと思います。よくどっちの方が良いという議論がされますが、これだけの情報が氾濫している世の中だと、アルゴリズムがなくては生きていけないと思うし、逆にアルゴリズムだけだとパーソナリティーという部分は非常に重要だと思っています。もちろんアルゴリズムがAI(人口知能)まで進化すれば、話は変わってくると思いますけどね。だからこれからはますます共存していくべきだと思います。そういった意味で【LikeDis】は、今までに無いアプローチの面白いアプリだと思うので、今後もこういった優れたものを作っていくこと、あとは証明出来れば必ず残っていくものだと思います。【block.fm】は、ダンスミュージックというコンテンツを本当に好きな人達が集まってくれているので、スマートフォンという今や保持していて当たり前のデバイスに対してもきちんと対応していくことで、まずはユーザビリティを向上させたいと思いますし、このデバイスだからこそ出来るコンテンツを作っていこうと思います。お互い切磋琢磨し、協力し合いながら一緒に残っていければ良いと思っています!
ー【block.fm】でのアプリ制作もその中の1つだと思いますが、☆Takuさん自身が今後やってみたい事があったらお聞かせ下さい。また、今後の活動予定についても教えてください。
とてもm-floらしいアルバムが完成したので、それに伴いライブツアーを5月から予定しています。個人としてはDJの活動も引き続き行なっていきます。あとは、【block.fm】としての活動が凄くエキサイティングなものになっていくと思うので、是非チェックしていって欲しいと思っています。
取材:2014.04.02
撮影:Akisome