クリープハイプ 1/8(火)下北沢DaisyBarで行われた「太客倶楽部」会員限定ライブ“ひめはじめ4” シークレットゲストにyonigeが出演

クリープハイプが「ホーム」(尾崎世界観はMCで「実家」と表現していた)といえるライブハウス、下北沢Daisy Barにゲストを招いて行う自主企画「ひめはじめ」も今年で4回目。新年の始まりに、ぎゅうぎゅうのフロアでクリープハイプ。なんとも贅沢というか、超プレミアムなチケットを手に入れてこの場所にたどり着いたお客さんのその高揚感が、開演前からみなぎっている。
今年もゲストバンドは当日までシークレット。開演予定時刻を少し回り、明かりの落ちたステージに3人の人影が見えると、お客さんがざわつき始めるそして鳴らされた1曲目のイントロ。この曲は――そう、今日のシークレットゲストは、大阪・寝屋川のガールズバンドyonigeだ! ギターを背負った牛丸ありさが目をつむってマイクに向かって歌い始めたのは「さよならアイデンティティー」。シークレットという条件ゆえか、それともこの「ひめはじめ」の独特の雰囲気がそうさせたのか、どこか緊張を帯びた牛丸の声と、小さなステージからぎゅっと凝縮されて繰り出されるスリーピースのサウンドが、空気をビリビリと震わせていく。「あけましておめでとうございます、yonigeです。よろしくお願いします」という簡単なあいさつに続いて、「リボルバー」「our time city」と曲を重ねていくなかでバンドもお客さんも少しずつ緊張を解いていく。曲が終わって拍手が起きると、牛丸もベースのごっきんもちょっとほっとしたような笑みを浮かべる。

撮影:松木宏祐

シーンに登場してきた当初、クリープハイプを引き合いに出されることも多かった彼女たち。音楽のスタイルが似ているというよりも、曲が生まれてくる根っこに相通じるものがあるような気がする。何か胸の中にぽっかりと空いた空間を、歌と言葉が埋めていく、そのために鳴っているロック。切ない、という言葉だけでは説明しきれない、生々しくてヌルヌルとした感情。「最終回」「バッドエンド週末」そして「2月の水槽」と楽曲を畳み掛けるなかで、その感情がだんだんとお客さんに伝播していくようだ。
軽やかなリズムが哀愁を誘う「さよならバイバイ」を経て、ラストは抑えていた感情が溢れ出るようなバラード「最愛の恋人たち」。「ありがとうございました」と言ったあとの余韻が心地よかった。

撮影:松木宏祐

そしていよいよクリープハイプの出番。いつもどおり真っ暗なステージに登場した尾崎、小川幸慈、長谷川カオナシ、小泉拓の4人。尾崎は拍手が小さいとさっそく悪態を付いている。「あけましておめでとうございます」という一言のあと、最初に演奏されたのは『泣きたくなるほど嬉しい日々に』から「泣き笑い」だ。さらに「一生のお願い」「おばけでいいからはやくきて」と、リリースからツアーと昨年末のフェスを通して今のクリープハイプを伝えてきた楽曲が並ぶ。メンバー4人の距離感がいつも以上に近く、だから音もぐっと近い。大きなハコだったらきっと聞こえない音も、この距離と規模だったら聞こえてくる。カオナシがボーカルを取る「私を束ねて」を終え、「Daisy Barというのはクリープハイプが始まった場所です。ほんとに独特の空気感、嬉しいんだか悲しいんだかわからないお客さんの眼差し。昔はこうだったなと思いますね。実家に帰ったような気持ちです。正月も帰ってたんだけど、似てるな、あなたたちは(笑)」と尾崎は言う。

ここからはレアな曲を連発。「クリープ」、4年半ぶりにやったという「ごめんなさい」、そして「わすれもの」。耳をつんざくようなハイトーンを、顔を歪めて歌う(というより叫ぶ)尾崎の姿がなんだかちょっと懐かしい。リリースのツアーでも、代表曲を求められるフェスでもない、このイベントだからこそ、こうした曲たちにも光が当たるわけで、それだけこの「ひめはじめ」は特別だし、何よりクリープハイプ自身にとっても大事な時間なのだと思う。
「ファンクラブなんて死ぬほどダサいと思っていたけど……誰かを好きになったり、誰かに好きになってもらうということはすごくダサいことだと、やっと、この歳になって気づきました。我を忘れるくらい人を好きになることはすごく恥ずかしくてダサいことだなと。だから、こうして今、目の前に居てくれるお客さんにはちゃんと伝えたいです」。そんな尾崎の言葉に続いて、「さっきの話」から「ABCDC」「手と手」「愛の標識」を立て続けに披露。何度もライブで聴いてきた曲だが、いつも以上に濃密なものを感じたのはさっきの尾崎の話があったからだろうか。
この日、1月8日はドラムス小泉拓の誕生日。40歳となった彼をお祝いする一幕を経て、ライブはいよいよフィナーレ。このメンバーになって今年で10年となるクリープハイプの進み方を象徴するような「二十九、三十」で特別な夜は幕を閉じた。