Stanley Donwood、『Hail To the Thief』とRadioheadの今後について語る

Stanley Donwood

レディオヘッドのアートワークを手掛けるスタリー・ドンウッドは自身の展覧会「セイクレッド・カートグラフィ」ならびにレディオヘッドの今後について『NME』のインタヴューに応じている。

ロンドンのジェラス・イースト・ギャラリーで現地時間11月24日に開幕した「セイクレッド・カートグラフィ」はスタンリー・ドンウッドが関心を寄せている地図と地形にまつわるスクリーンプリントを展示したもので、レディオヘッドが2003年に発表した『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』のアートワークも初めて公開されている。

「ずっと昔のものに興味があったんだ」とスタンリー・ドンウッドは語っている。「子どもの頃、地形に点在する古い古墳や地上絵、説明のつかないおかしなものに心を惹かれていた。つまり大昔の人々が遺したものだよね。ストーンヘンジみたいに、なんであんなことをしたのか分からないものだよ」

「2003年ぐらいから地図というアイディアに取り組み始めて、最終的に非常に明るい色を使って、『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』のような抽象的な地図を描くことになった。作品を作るのにいまだに同じ色を使っている。石油化学工業の産物の色なんだけどね。だから、自分のやっていることは古代と現代の融合なんだ」

作品を作るに当たってスタンリー・ドンウッドは英国政府の公式地図製作代理店であるオーダンス・サーヴェイ社の地図に修正液を使って、ここ数世紀の言葉や数字などを消していくことによって、その姿を「発掘」していったと説明している。

「地形の最も古い部分、平野の境界や生け垣、昔の轍を何度も掘り下げている自分がいることに気付いた。最終的にそれはヨーロッパと物理的につながっていた頃の古いルートが、パッチワークのように並んでいるんだ。それでストーン・サークルや丘上集落など、お気に入りのものが集まった地図ができて、そこにけばけばしい色を塗っていったんだ」

「同じように空と大地の関係というものにも興味を持っていて、というのも昔の人は宗教よりもアニミズムに重きをおいていたと思う。太陽や星、月を眺めていたわけで、色が漏れることによる漆黒でそれぞれのフィールドを繋ぐことにしたんだ」

スタンリー・ドンウッドは今回の展覧会がトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドの最新プロジェクトであるザ・スマイルの『ア・ライト・フォー・アトラクティング・アテンション』のアートワークと同じく、
他の「憂鬱で暗いモノクロの」作品と較べて「明るくカラフル」なものになっていると説明している。

「そこから離れようとしたんだ」と彼は説明している。「世界はこれ以上なくディストピア的で憂鬱なものになっている。それで逆に向かうことになった。新型コロナウイルスを巡る状況もあって、『なんてこった。僕が滅亡に関する不安な絵を加えなくたって、もう十分案ずるものばかりだ』と思ってね。だから、明るいものにしようとしたんだけど、生涯を通しての慣習を変えることは難しかった。みんな色が好きなんだね。最近、壁に『色は売れる』と書いたよ」

「長年、地形から空に色がはみ出す形でやってきたんだけど、ザ・スマイルはまったく違った。トムと僕は小さなスタジオでこれに取り組んだんだけど、最終的に同時に1枚の絵に二人で取り組むことになった。対立的な感じではなく、平等主義的で、それがうまくいったと思う。彼は丘陵が得意で、僕は海が得意なんだよ」

スタンリー・ドンウッドは1994年以来、トム・ヨークと共にすべてのレディオヘッドのアートワークを手掛けている。

トム・ヨークやレディオヘッドの音楽と精神的に結びついている自身の作品について訊くと、スタンリー・ドンウッドは次のように答えている。「分からないよ。音楽についてはまったく知らないしね。手助けにはなってくれているのかもしれないけどさ。このサウンドは好き、とか、このサウンドは好きじゃない、とか、それが僕の音楽的素養の限界なんだ」

「長い間、トムと僕は共に歩むこともあれば、離れることもあった。しばらく同じものに取り組んだ後に交代で作品に取り組むんだ。大抵は僕が優勢になって、それを引き継いで、僕の作品にすることになった。というのも、彼はミュージシャンとしての能力ほど、アーティストとしての能力を信じていなかったからね。それは事実だった。彼は古い音楽に造詣が深いんだ」

レディオヘッドやトム・ヨーク関連のアートワークであなたが最も気に入っているものといったら、どれになるでしょう?

「分からないな」とスタンリー・ドンウッドは答えている。「僕はずっと最新のものが好きなんだ。だから、今の一番はザ・スマイルのものだね。『イン・レインボウズ』も素晴らしい。というのも、自分がやろうとしていたことの正反対になったんだ。自分の思う通りではなかったけど、最終的に出来上がったものを見て気に入ったんだ」

彼は次のように続けている。「あれはレーベル契約がなくなって最初にやったことだった。やりたいことはなんでもできた。40ポンドもするパッケージを作るなんていうのはクレイジーなアイディアだった。当時はクレイジーなことだったけど、今では普通だよね。高額パッケージがいろんな形で今はリリースされているわけだから」

ザ・スマイルが絶賛活動中で、ドラマーのフィル・セルウェイは来年新作のリリースが決定しており、エド・オブライエンは2020年にソロ・デビュー・アルバム『アース』をリリースしている。多くのレディオヘッド・ファンが気になっているのはバンドがいつ復帰するのかということだろう。エド・オブライエンは先日、「今はレディオヘッドの時期じゃない」として、今後の活動については「あるかもしれない」し、「ないかもしれない」と語っていた。

レディオヘッドの復帰はそう遠くない将来なのだろうかと訊くと、スタンリー・ドンウッドは次のように語っている。「分からないな。誰も何も言ってくれないんだ。僕はブライトンで海を眺めていて、僕を乗せるためにツートン・カラーのリムジンが海岸沿いを走ってくるのを待っている。必要なことであれば、何でもやるよ。憶測は禁物だね」

レディオヘッドにやってほしいことはありますか?

「ずっと素晴らしいものになるだろうなと思っている唯一のことはライヴ盤だね。でも、問題は全員が同じライヴ音源で満足するということがないことなんだ」とスタンリー・ドンウッドは語っている。「僕はデヴィッド・ボウイのような他のアーティストでもライヴ盤が好きなんだ。そこにいるように感じられるのが好きでね。自分たちが次にやることは分からないよ」

『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』の20周年は考えないほうがいいでしょうか?

「まったくもってないね」とスタンリー・ドンウッドは語っている。「『キッド A』と『アムニージアック』の20周年だからよかったんだ。そんなくだらないことを続けていたら、40周年になって、死んでいるんじゃないかな。そんなつらいことをするなら、別のことをやりたいね」

レディオヘッド関連以外ではグラストンベリー・フェスティバルのポスターやマーチャンダイズを手掛けているスタンリー・ドンウッドだが、2023年の作品にはぜひ取り掛かり始めたいと語っている。

「グラストンベリーに初めて行ったのはフェスティバルのためじゃなかった。エセックスからグラストンベリーまで自転車で行ったんだけど、数週間かかって、トーと呼ばれるエリアの近くでキャンプをしていたら、魔女みたいな人たちに会ってね」

「フェスティバルの前からグラストンベリー・トーとその神話については知っていたんだ。学生の時に誰かのヴァンの後ろで寝る形でフェスティバルに行ったんだ」

スタンリー・ドンウッドは家族ぐるみの友人を通じてグラストンベリー・フェスティバルを主催するイーヴィス家と会う機会を2002年に得て、新しいアイディアを試すことができるようになったという。

「自分のやっている作品とはまったく違うものなんだ。憂鬱なんてないからね」と彼は語っている。「去年のものが今回の展覧会にも展示されているんだけど、フェスティバル会場の地形パターンとグラストンベリー・トーを使ったものでね。2020年のアートワークとして作ったんだけど、その時は新型コロナウイルスで実現しなかったんだよね」

2023年のグラストンベリー・フェスティバルについては次のように語っている。「今年やることのアイディアはあるよ。でも、実現するかは分からない。いわゆるキャリア面でラッキーだったのは説明のために仕事をしなくてよくて、その時に正しいと思えることをやればよかったんだ」

「ラインナップも見てないけど、年々、知っている人が少なくなっていくね。正しいスペルか、間違ったアクセントじゃないか、調べなきゃいけないんだ。昔は全員を知っていたけど、今は『これって誰?』って感じだね」

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