冷牟田 竜之 インタビュー

ーそこで結成されたのがDAD MOM GODですね。

さぁやるぞって思った日の午前中にバンド名を決めてそれからドラム…と名前を挙げていって5分くらいでメンバーを決めたんですよ。

ーえ?!5分でですか?

で、決めたメンバーにもちろんセカンドとか考えずにファーストセレクトで選んだメンバーに連絡してすべてOKをもらいました。

ーということは構想段階で冷牟田さんの頭にはバンドの音のイメージがあった?

はい。基本1発で録れて、常に緊張感が保てる、自分自身が盛り上がれるメンバーで、と思って。あれはもうこれ以上ないっていうメンバーを集められた。で、最初の1枚目をどうしようって思っていきなりメジャーでっていうのも…とにかく早くやりたかったから、ベンジーのトコでやらしてもらうのが良いんじゃないかと思って。で、話をしに行ってデモを聴かせたら気に入ってくれて、sexystonesからリリースすることになった。

ーサウンド面では音像が前面に出てくるような無骨なサウンドが印象的でスカパラ時代の『MONSTER ROCK』や『LUPIN THE THIRD』などのセルフカバーもありました。

特に元々『MONSTER ROCK』っていうのはライブではものすごい数をやっていたんだけど音源としてはスカパラのファーストアルバムのしかなくて。もうそのテイクとは似ても似つかない楽曲になってしまっていたのでそれをまず残したいっていうのがあったし、あの曲だけはスカパラを抜ける時に自分で続けると言っていたので、これから続けるぞ!という思いを込められる楽曲をファーストアルバム『Poems like the Gun』に入れた。

ー音源とライブでの演奏の音が変わらないことにもびっくりしました。

そのままでしょ!録った(レコーディングした)音とライブで鳴ってる音が殆ど変わらないっていう…実はそれは意図してやっているところがあって。ギャップがあまりないものにしたいという想いがあって、かといってライブアルバム的なものでもなく。割とライブアルバムとかって聴いても少し音が後ろに引いてるような音作りが多くて。そうではない、前に音が飛び出してくるような、目の前で演奏されているようなサウンドにしたかった。

ー2ndアルバム『ISN’T IT DMG?』ではメジャーに。

あれは話をもらって最初、構想とかなかったんだけど1ヵ月くらいで曲を作って。ただ、バンドを始めたのは良いけど、みんな忙しすぎてスケジュールが取れなくて(笑)これは『このバンドは自由に動くことが出来ないんだな』って。そこでやっと気づいたっていうか(笑)まあ何とかうまく調整してやりくりできるんじゃないかと思ってたんだけど、結局みんなで集まって合わせるっていうのが難しいってなって。実はTHE MANの構想はその2枚目の頃にあったんですよ。

ーそれはスケジュール的なこともあってということでしょうか?

いや、やっぱりライブの出来の良し悪しの振れ幅が大きくなっていったのがあって。毎回違うライブを演るっていう意味では良いんだけど、当然良くないライブっていうのはやりたくないわけで。みんな良いところに向かわせようとするんだけど、意図せず結果的に良くないライブが数回あって。リハーサルもせずにいきなり本番ていうのが何回もあったから、これはきちんと活動できるバンドがもう1つないと無理だなって思った。

ーではTHE MANについてはどのようにメンバーを集めていったのでしょうか?

それは元々知っていたメンバーを集めたというよりかは全く知らないメンバーを集めていったので、いろんな場所に実際に観に行って。

ーリリースされたDAD MOM GODの『ISN’T IT DMG?』はファースト『Poems like the Gun』と違い多彩な印象があります。

まぁファーストと同じことをしても面白くないなていうのがまずあって。あとは全てそうだけどアルバムを作る時はライブで演るっていうのが大前提にあってライブでどういった楽曲が欲しいかっていう部分でファーストで足りなかった所をセカンドで作ったんだよね。で、2回目のレコーディング終わったくらいからバンドっぽくなってって。特にファースト〜セカンドっていうのは自分の意見を100%反映させたものだったけど、サードを作る時になると割とみんなに相談して決めたりとか、時々の寄せ集めではなく、ちゃんと参加するっていう。バンドって意識にかなり重点を置くようになった。

ーその間に震災・原発問題が起こって。以降、現実を作品としてどう音・言葉で表現するかというのは様々なミュージシャンが苦心していると思うのですが冷牟田竜之というミュージシャンにとって、どういう影響を与えたんでしょうか?

その…震災の前から思っていたんだけれど、『必ず同じ明日が来るとは限らない』っていう気持ちで生きていかなきゃいけないなってすごく思ったし…後は原発のことかな。あれに関しては完全にNOだなって。これはないなって。サードアルバム『Broken Noses』に『kick up the dust』って曲があるけどこれは原発のことを歌ってて。原発を止めるのはみんなの気持ち次第だよっていう。原発事故は絶対繰り返しちゃいけないね。

ーライブ公演では原発事故から近しい東北方面でも積極的に演奏されていますがオーディエンスの印象というのは?

ARABAKIもそうだし、気仙沼や福島にも行ったけど、実際行くと地元の人達は元気で笑顔で逆にこっちが元気をもらえたりするんだけど。それがね、余計に痛々しいなっていうのがあるし…福島には親友が住んでいるのもあって何とかしたいっていう気持ちが強くて。そういう意識はもう色んな人が持ってると思うけど。一番問題なのはダブルスタンダードっていうか『本音と建前』って常にあって…っていうのはもういいんじゃないかって。本音でみんなが意見をいう時なんじゃないかってすごい思っていて。あとは『見て見ぬ振り』と『自分で行動しない』っていう。人に任せて文句だけ言うみたいな。そういうのはもうやめないといけないし。最後に 『物事には表と裏がある』。メディアで発信してる表だけ見るのではなく、裏も感じて欲しいなって、若い人たちにはそう思っている。

ー最近ではブログやメルマガも始められたりと冷牟田さんのメッセージが発信される場所が増えましたがこういったことも関連するのでしょうか?

よりダイレクトに伝えたい事を伝える為にもそうだし、支えてくれる人達とはちゃんと繋がっていたいというのがあって。
自分が出した音楽のフィードバックとかも欲しいし。今までスカパラやっててそれがあまりなかったから、そういった経験も踏まえて繋がれる活動をしたいと。

ーTHE MANでは路上でのゲリラライブという風に繋がっていきますね。

スカパラの最初の頃がそうだったからまた渋谷の街で始めたら良いんじゃないかなって。で、ダイレクトな反応というのが自分達のモチベーションに繋がるんだけど、やっぱりやってみてそれが足りなかったんだなって気づいて。

ー然しながら規制とか大変そうですね(笑)

警察に毎回止められます(笑)

ーそしてTHE MANとしてアルバム『THE MAN』もリリースされました。

並行してDMG(DAD MOM GOD)もTabooもやって行くけど、THE MANに比重を置いてやっていきます。今は力をいれるタイミングだなと思っているので。

ー秋にはツアーも始りますが対バンの意図については?

新しく出て来たものってちゃんとムーヴメントにしていかなければいけないと思っていて。ただ1バンドだけそのムーヴメントを作るより2バンドの方が強いと思って。カルメラは方向性は違うけどオーディエンスの気分を高揚させて楽しませるっていう意味では一緒で、新しいバンドだし良いかなぁと。アルバム出る前から知ってるけどライブを見てそう思った。

ーその他の今後の活動について教えてください。

まず、11月にTabooが来年15周年を迎えるにあたって、そのプレパーティーを渋谷AXでやって。来年はその規模を大きくしたTaboo15周年があります。またTHE MANについては次作はメジャーからリリースします。で、再来年は東南アジア、南アメリカ、イタリア、スペイン、フランス等で海外にも活動の幅を広げたいと思っています。

ーTaboo15周年にTHE MANの海外展開とこれまで以上に精力的な活動ですね。

スカパラでやっていた手法っていうのが地方のイベンターに任せて全てお膳立てされた状態で乗っかるっていう感じだったから、そうじゃなくてもっとピンポイントにその場所でこのバンドが見たいとか呼んでみたいとか思ってくれる人と直接ライブを作っていきたいと思ってます。国内外問わず、全て同じスタンスでやろうと。来年、メジャーにいくとメジャーの活動も増えるだろうけど、常にこのスタンスは失くさずに活動していきたいと思います。

ーありがとうございます。最後にファンの方へメッセージをお願いします

っきもちょっと話したけど、自分で動かないと何も変わらないし、何も生み出せないし、閉塞感があるなら動いて、動く度に色んなものを見て欲しい。あと、政治には参加して欲しい。これから先がどうなるかなんて誰もわからない状態の船に乗っているような状況だから人に任せずに自分で舵取りをしないといけないと思う。


取材:2013.09.12
テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330
撮影:Eri Shibata

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