佐々木亮介(a flood of circle) インタビューvol.22

—AFOCを好きだって言ってくれる人全員に、少しでも良い景色を見せたい

「AFOCの47都道府県制覇!形ないものを爆破しにいくツアー」ではバンドとしても初のアプローチでしたが、佐々木さんにとってもバンドにとっても、重要な意味を持つツアーだったのでしょうか?

まず、「I’M FREE」を作って、到達したことに対して”自分にどう壁を作っていくか”がありましたね。メンバーは「ええ!?」ってなってましたけど(笑)ここ(日本)で生きていくと言ったことの生々しさや、はみ出す程の情熱を全ての街に見せれるってことは、計り知れない成長があると思えたし、逆に成長出来なかったら、バンドマンとしてクソだと思ってたから。

それは実際に、ツアー中で既に得られていたのでしょうか?

(佐藤)タイジさんや高野(哲)さんと話してて思うのが、「それぞれ街によって、問題は違う」ということで、俺もそれは感じてたんですよね。例えば打ち上げ1つ取っても県民性があって、食べ物だってその土地の特産物があり、街の景色の美しさもそれぞれある。それと同じように、その街でしかない問題や苦しいことはある。それこそエネルギー問題で言えば、原発もあれば、それ以外のエネルギーの問題だってある。

しかもそれらは実際に行って、見て、感じないと正確な情報を得られない部分が多いですしね。

そうです。特定の街に住んだことがない俺からしたら、ずっと同じ街にいるからこその楽しさや苦しみに憧れてる部分もあるけど、こうやって転がり続けて来たから、希望を歌っていくバンドマンとしての姿を見せるツアーが出来たと思ってましたね。

もちろんそこには、その場所ごとで人と触れ合っていたからこその体感ですよね。

そこが大きいです。ちゃんとその場にいる人に聴かせることですね。しかもロックンロールっていう、泥臭くて伝統のある音楽を今こそ伝えていくことの意味を持ちながら全国を周れたし、その後の曲作りにめちゃくちゃ反映されましたね。

「KIDS」や「アカネ」等がそれにあたりますか?

そうですね。あとは単純にそれまで詞先でやって来たのがあって、個人的な課題としては曲先で作ろうというのがありました。その年の5月に「I’M FREE」が完成して、そのあと周った「東北ライブハウス大作戦」の時点ですね。その3つのツアーを周るだけでも色んなことを感じますけど、その気持ちを言葉で表すんじゃなくて、先にリズムとメロディーにしようと思いました。

しかも、その感じたことで作り上げた楽曲は、悲しさや苦しみを表すのではなくて、むしろ逆の感情が剥き出しなっていますよね?

景気の良いビートとドカンと乗れるメロディーですね。しんみりした気持ちを持って帰ってくることはしなかった。それはまた戻って来たときに、景気の良い曲を持って行きたかったからなんです。

「KIDS」の持つ”明るい未来”がそれを表していますし、先程佐々木さんが言った”成長”という部分では「Buffalo Dance」のような踊れる楽曲の進化があります。

実際に形になるまで、翌年の1月まで掛かりましたけどね(笑)

(笑)今年に行った「a flood of circle 8th Anniversary Oneman Live“レトロスペクティヴ”」は、これまでの話の流れで言うと、また”壁”を作ったんですか?

(笑)まず、”全県”のあとに”全曲”って、絶対面白いと思いましたね。その頃にDuranを入れようっていう流れもあったから、今までのバンド・ストーリーに区切りをつけるって意味も大きかったですよね。

“全曲”って言葉にすると簡単ですけど、リハも本番も大変ですよね?

むちゃくちゃ大変でしたよ(笑)でも裏を返すと、ライブで暫く出来ていなかった曲があったからですね。

特にここ何年かは、必然的にHISAYOさんが入ってからの曲がメインになりますよね?

だからこそ、それ以前の曲を姐さんと演ることに、意味があったと思いますね。メンバー・チェンジが多いと、時期によっての好き嫌いが出ちゃうけど、昔のAFOCが好きだった人も観に来てくれてたし、その人たちに今のAFOCを観せられたのが良かったと思いますね。

たとえメンバーが変わったとしても、AFOCには変わりなくて、しかも今のAFOCが受け入れられたという結果は、転がり続けたからこそだと思うんですよね。

ホントそうで。俺は今までメンバーが変わっても止まらなかった分、メンバーやスタッフ、関わってくれた人全員、AFOCを”好きだ”って言ってくれる人に、少しでも良い景色を見せたいんですよ。アルバム毎に人が違うっていう部分で、拒否反応があるのもわかるんだけど、そういう人たちも連れて行きたいから。

過去ともきちんと向き合い、その久しぶりの楽曲たちを演奏する中で、どういった感情があったのでしょうか?

やっぱり色々と思い出しますよね。「こういうクセで作ってたなぁ」とか(笑)曲作りにも通じるんですけど、今までのリズムや構造のクセがわかった分、これまでやってなかったことが見えて来たんですよね。実際、ライブで身体はボロボロだったけど、泣いてるお客さんもいたり、長くからバンドの面倒を見てくれた人からも「すごく良かった」って言ってもらえて。

区切りという意味には、過去への決別ではなく、過去でさえ未来に連れていくんだと思いましたね。

“伝わる”ってそういうことだなと思いましたね。

—ロックンロールっていう音楽をシーンのど真ん中に持っていきたい

ただ、ある意味これだけ強固なバンドに昇華している中で、Duranさん加入がびっくりでしたね。

いや、俺もそう思ってました(笑)

今回のアルバム「GOLDEN TIME」に収められた「GO(Album ver.)」を聴いて、逆に納得というか、やられました(笑)アルバムの制作にあたって、全体像は見えていたんですか?

全然ですよ、「Golden Time」なんて後の方で作って、やっと見えてきたくらいです。しかもDuranが入ってくるのは超想定外だったから(笑)そもそも、ギタリストの枠なんて空けてなかったから。

その中でも、HISAYOさん加入時のように、人として共有出来る部分があったと?

その通りです。上手いギタリストならたくさんいるし。で、やっぱり同じ目線でやれるヤツだったからというのがデカイですね。

先程も触れさせて頂いた「GO(Album ver.)」はシングル・ヴァージョンに比べて、かなり広げた音の世界になってますよね。

元々、CM用に作った曲で「暑苦しいバンドはAFOCしか思いつかなかった」っていうオファーからだったんですけど、それは嬉しかったからミックスをモノっぽくして、突き抜ける音にしたんですよね。ただ、その突き抜け方が「FUCK FOREVER」くらいまで戻ってるような気がしてて。Duranのすごい所は、音を広げてもちゃんと存在感を出せるギターで、バンド人生10年分の苦しさや苦味みたいなものが、太い音で伝わってくるんですよね。

「スカイウォーカー」はまさにそうですね。

今までだったらコンプかけてましたね(笑)もっとオープンに入って来れる隙間を持ったままで、スピード感がある曲が作れましたね。

アルバムのリード曲でもある「Golden Time」は、ものすごい数のリズムパターンがあって、4人という存在感=今のAFOCが如実に出ていますよね。

歌詞にある”君”って、身近な人たちを歌ってるんですけど、”連れてく”って言葉がしっくりきていて。それは”良い景色を見せたい”ってことに繋がるんです。もっと言うとAFOCが好きな人だけじゃなくて、”ロックンロールこそが本当にカッコイイし自由だ”と思ってて、そういう生々しさが今の時代に必要だと確信してるから、ロックンロールっていう音楽をシーンのど真ん中に持っていきたいし、その時には俺が先頭に立っていたいから、それを歌詞に表してますね。

「STARS」の歌詞に注目したいんですけど、”1000の夜”に描写される景色が佐々木さんの実体験が描かれていると思ったのですが?

良い読みだと思います(笑) 「STARS」とか「ホットチョコレート」の様な曲って、毎日1曲は書けるんじゃないかっていうくらい得意な曲調なんですよ。高校生のときに作った「ロシナンテ」、「LOVE IS LIKE A ROCK ‘N’ ROLL」に入ってる「Boy」、「I’M FREE」に入ってる「Diamond Rocks」もそうで、俺の中で連綿としてるソング・ライティングなんです。だから、1番俺の根っこが出てる曲だと思う。「ロシナンテ」だと”何かを失くしながら、それでも生きていく”って書いてるんですけど、今は伝えたいことや目的がはっきりしてるから、今の「STARS」の歌詞になるんです。ライブを演ってても思うし、例えば前に出て行くのも盛り上げたいというよりは、それを体現したくて行ってる気がするんですよね。

“連れていく”という意味では「Golden Time」にも通じますしね。

そう。この連綿とした曲って、今まではリードにしてこなかったんですよ。でも今回は腹括ってリードにしたことも、進化の1つだと思います。

「ホットチョコレート」も”トゲトゲしさ”だけではない、佐々木さんの素が出ていて、バンドとしても次のステージに行った気がしますね。

敢えて言うと、「コイツ、色んな面を見せようと思ってるな」って見られると悔しいから、「ここが俺の天然だから」と言っておきたい(笑)

(笑) 「Golden Time」はバンドの”エクストリーム”が見られていて、ある種目的がはっきりしていましたけど?

「ホットチョコレート」は日常の中で見逃しそうなことを敢えて表現していて、目的だけじゃない部分に人の態度や感覚って表れるから。ちゃんとそういう部分を曲にしておきたかったし、それがないとダメだとも思ってますね。

「Black Eye Blues」は、今回の”壁”としていた曲先だったんですか?

そうです。Duranのスライドやリフ在りきで考えました。この前、リリース前にライブで演ったらむちゃくちゃ盛り上がったんですけど、コーラスの部分がちゃんとハマったと思いましたね。4人のことをどう歌詞にするかと考えたときに、そのままバンドのことになったんですけど(笑)

(笑)全県ツアーや、Duranさんのことも描写されていますね。

お互い二十歳で「これから頑張っていこうぜ」って出会ったんじゃなくて、戦って苦い汁も舐めてからの出会いだから、お互いのストーリーも意識していますね。で、それをバンドで表現したかった部分が書けたと思うから、俺以外の3人に感謝もしています。

「KIDS」や「アカネ」はアルバムに収められるまで、ライブでの成長も見せてきた楽曲ですが、改めて収録してみて、その成長は感じれますか?

アルバムの中で言うと、今までってシングル曲を前半に収めてたんですけど、今回の楽曲はどれも良かったから、「シングルは後ろで待ってて下さい」って感じでしたね(笑)
もちろん、成長は感じれたんですけど、この2曲があったから”リズムとメロディーから作る”っていう感覚を取り戻した楽曲が出来ましたね。

今回は「東北ライブハウス大作戦」に持って帰れますし。

そう、石巻にやっと持って行けるから、どう成長出来たかの答えがまた見れると思いますね。

—こんなギリギリのライブやっても、明日ライブがある

「Party!!!」の!を3つを並べるあたりから、この曲の持つ意味や感覚を物語っていて。

今回のタイトルってアホなのばっかりですよ(笑)

(笑)このフルメンバーでのライブを期待したくなりますね。

これは、全県ツアーの後に達成感があると思ったら、全然なくてむしろ悔しさだけ残ったんです。今まで椅子がない場所で散らかしながらライブをやったあとに、野音っていう椅子があるところでやったら、戦い方がまだまだ出来てなかった。もちろん、良いライブではあったけど、まだまだやれると思いまいしたね。それがあって、また椅子があるところで戦うときのために、ホーン・ピアノ・コーラスっていう豪華メンバーで録りました。

以前だったら、削っていたかもしれない要素ですよね?

ホントそう。でも、デカイとこに行く予定だから入れとこうと(笑)そのつもりで生きてるし、その辺がお笑い芸人っぽいって言われるけど(笑)いつかこのメンバーでライブしたいですね。

“衝動を更新し続けるバンド”であると個人的解釈をしていて、それはこれまでの作品然り、今の体制、そして「GOLDEN TIME」という作品が生まれた意味にも繋がると思うんですね。

“ギリギリを求め続けた”っていうのはあると思います。元々特定の街に住んだことがないから変化に対して恐れはない分、逆に変化を恐れることの方が恐ろしい。特に俺の周りは変わらないでいてくれるから、変化し切れるだけしたいんです。ロックンロールバンドって転がり続けることが大事だけど、転がるために妥協したくないから。

安定では転がれないし、転がるには変化が必然であることを理解しているからですよね?

そうですね。ツアーファイナルじゃなくても、1本1本のライブで「これで死んでもいい」って思って続けてこれた奇跡があって、”こんなギリギリのライブやってるのに、明日もライブがあるの?”って思わせられたら、「明日はない」って未だに歌ってる意味があることだと思うし。

“Golden Time Rock’n’Roll Show”は今回パッケージしたものを解き放つ空間にもなり、またその変化が見られる時間となりそうですね。

今回のアルバムを作るにあたって、「GOLDEN TIME」は”a flood of circleの時間が「GOLDEN TIME」である”というコンセプトがあって。朝イチの「中津川THE SOLAR BUDOKAN」でも、夜中のFUJI ROCK「ROOKIE A GO-GO」でも楽しい時間は自分たちが作れるというね。Duran入って最初のツアーでもあるし、どの場所でもギリギリの先にある変化をしながら、転がり続けたいですね。


取材:2014.11.10
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330
photo by Susie

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